Daily-EROtic バイブ・ローター

12/20
 長い影が公園の地面に映っていた。
 水銀灯の光が作り出す、手をつないだ男女のシルエット。縁のはっきりしない、ぼんやりとした影が公園の固い土の上で移動していく。
「………」
 そして、北川に手を引かれるようにしてふらふらと歩いている香里の中から…その影と同じくらいにぼんやりとした音が響いていた。注意しなければ聞き逃してしまうくらいの音だし、たとえ聞こえたとしても普通なら気に留めないような音だ。携帯のバイブ着信に気づいていないとか、原因に関する想像はいくらでも付けられる。
 まさか、その振動が香里の身体の中を一日中襲っていたなどと言う事は、誰も想像しないだろう…
「よし…香里、脱げ」
「………す、するの…?」
「当たり前だろ。この前だってしたじゃないか」
「………」
 香里はそう言われるだけで、続ける言葉を失ってしまっていた。一日中続いたバイブレーションは、香里の官能だけでなく理性も溶かしきってしまったようだ…
 とんっ…
 香里はハンドバッグを石のベンチの上に置き、茶革のかっちりした靴を脱ぐ。そして銀色をしたスカートの金具に手を掛ける。そのしっかりした生地の黒いスカートは、カチリと金具が外れると同時に締まった土の上に滑り落ちていた。
 紫色をした香里の下着は…水銀灯をバックにした、影に覆われた状況であっても明白なほどに濡れてしまっている。振動が始まって1分後には潤いを帯び始め、10分の後にはぐっしょりとなってしまった下着である。
 しゅるっ…
 香里がその下着を降ろすと、その内側に畳まれたハンカチが2枚ばかり入っているのが見えた。何とか下着の濡れを抑えようとトイレに入った時にした処置だが、その8枚重ねられた生地も今ではすっかり香里の淫液が染み込んでしまっている。
「すごいな…」
 香里がベンチの上に置こうとしたそれを、北川はパッと奪い取る。
「あっ!」
 じゅぅ…
 ぽたぽたっ…ぽた
 北川はそれを雑巾しぼりにしてのけた。軽く力を入れただけでも、そこからは淫靡な液体が大量にしたたり落ちていく。
「んー…」
「あ…北川君…」
 手の平にべっとりとついた液体を北川がぺろぺろと舐め取っているさまを、香里は恥辱に染まった顔で見つめていた。
「したくてたまんないって味だな」
「………」
「そうだろ?」
「………だって…こんなに…されたらっ…」
「こんな風にか?」
 ヴィィィィィ…
「ああっ!」
 北川が突然出力を上げる。公園の静けさの中に、大きな振動音が響きわたっていった。
「や、やめて…だめっ…こんな…」
 ヴィィ……ィィ…
「あ…ああ…」
「香里、自分で腰振れよ」
 そう言いながら、北川はポケットに突っ込んでいた手を出してジーンズを降ろした。トランクスも一緒に、ちょうどペニスが露出するだけの最低限度だけ…
 たんっ。
 北川は石のベンチに飛び乗ると、そこに身体を寝かせて香里の方を見つめる。
「………」
 香里は何も言わず股間に手を伸ばし、自分のドロドロになった部分へ指をつっこんだ。そして今もなお振動し続けているボール状の玩具をぬるりと取り出す。
「こ、これはどこに…」
「口ん中入れておけよ」
「…えっ!?」
「早くしろよ」
「そ…そん…な…」
 香里は言いつつも、自分の手にした小さなローターをゆっくりと口に近づけていく。
「ス、スイッチ…」
「そのまんまだ」
 北川は即答した。
「…あ…ああ…」
 嘆きのような憂いのような声と共に、香里はその濡れそぼった球体を唇の間から入れる。
「んんっ…」
 唇にブルブルという振動が加わったかと思うと、その振動は次の瞬間舌の上に移動していた。酸っぱい香気に満たされた口内を、ゆるい振動が伝っていく。
「うっ…んぅぅっ…」
 香里はその奇妙な物体を口に含みながら、石のベンチに上がった。
 そして北川の身体をまたぎ、ナイロンジャケットの下からのぞいているペニスを指でつかむ。そのまま腰を落として、潤いきった性器を近づけていく。
 ぬちゅり…
「ふんんっ…」
 水っぽい音がして、香里の中へと北川の肉棒が導かれていった。
 ぬちゅ、ぬちゅ…
「ん、んん、んん…」
 香里は靴下が滑りそうなつるつるした石の上で必死に身体を安定させて、腰を上げ下げする。香里の中は鈍い振動によってすっかり目覚めきっており、北川の固いモノでこすられる度にジンジンと快感を生んでいた。
「ぬらぬら光ってるのがよく見えるぞ」
「んんっ…んんーっ…」
 最近ようやく温かくなってきたこの街の風も、濡れた部分に当たると冷たく感じられる。その度に、ちょっと普通では考えられないほど濡れているという事を思い知らされてしまう。
 香里は北川に助けを求めるような悲しい目をしていたが、ローターが口の中にあって声は出せなかった。行為を早く終わらせるには、北川を一刻も早く満足させるしかないのだ。
 ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅ
「んっ、んんっ」
 潤った秘部が露骨に見えてしまうのも構わず、香里は自分の出来る限りのスピードで腰を動かした。高ぶりきった香里の身体はすぐ絶頂に達しそうになってしまったが、それを抑えて何とか腰を上下させる。北川のモノに、濡れた粘膜での献身的な愛撫を伝えようとする。
 ぬちゅっ、ぬちゅ…ぬちゅっ、ぬちゅ…
 それでも、一日中なぶられていた香里と北川では差がありすぎた。
「んんーっ…」
 ひくんっ…ひくんっ、ひくん…
 香里は腰の動きを止め、がっくりと北川の身体に両手を突きながら膣内を収縮させる。今日何度迎えたか分からない、軽めのエクスタシーだった。
「なんだ…イッたのか」
「ん……うう…」
 憔悴しきった顔で、香里は北川に懇願するような目を向ける。前髪が汗で額にべっとり張りついていた。
 ぬぢゅっ! ずぐ…
「んっ、んぅっ!」
 北川は下から激しく香里を突き上げる。
「もう少しで俺も出すとこだったのに…根性なさすぎるぞ」
 ぬぢゅっ! ずちゅっ!
「んーっ、んううう、んうううーっ…んー!」
 香里は北川の身体に手を突いて倒れないようにするのが精一杯だった。北川の跳ね上がるような突き上げが、香里の最深部を襲ってくる。絶頂直後の敏感な身体の奥底から、また熱い脈動が膨れ上がってくる。
 ずぢゅっ! ぢゅぐぢゅぐっ!
「よし…出すぞ」
「んっ、んっ…んんんーっ!!?」
 びゅるっ、びゅっ、びゅ…びゅびゅ…
 ビクンッ…ビクンッ! ビクンッ、ビクンッ…! ビクッ…!!
「んあっ…ああーっ、あっ、はああっ…ああ…!」
 香里は口の中からローターをぽろりと落とし…一日中のくすぶった欲望を燃え上がらせるような大声を、公園の静けさの中に響きわたらせた…



11/15
 ヴィイイイイ…
「やだっ、やだよっ…祐一、止めて…」
「止めない」
 祐一が手についた雫を舐め取りながら言う。
「だって…だって…だめぇっ…」
 名雪はバタバタと脚を動かしながら暴れていたが、祐一がそれをしっかりと抑え込む。手の方は、なわとびを使ってベッドに縛り付けられていた。それほどきつい拘束ではないが、かと言って暴れるだけでほどけてしまうほどに生やさしいものではない。
「いや、いや、いやあ…」
 祐一が体重を掛けながら名雪の太股を抱え込めば、名雪は背中を動かして悶えるくらいの事しかできなくなってしまう。
「感じるだろ」
 ヴィイイイ…
 半纏(はんてん)の中から伸びたピンク色の安っぽいコードは、祐一の手の中にあるスイッチにつながっている。
 ヴヴヴヴッ…!
「はぁぁっ…!?」
 名雪が目を大きく開いて、脚を内側にぎゅうっと押しつけようとする。
「あっ…ああっ…あ…」
 ヴィィィィ…
「んっ…はぁ…はぁっ」
 一度高まった振動が、また少し落ち着いたものになる。祐一が出力をコントロールしたのだ。
「ゆ…祐一っ…」
 しかし、振動の大きさが最初と同じ物に戻ったとは言え、名雪の切なそうな表情はいっそう煩悩の色を濃くしている。息を何回も詰まらせている様子は、名雪の奥に渦巻く衝動を解き放ってしまわないように必死で耐えている姿にも見えた。
 ヴィイイイイイイイッ…
「ん…んんーっ…んんんーっ!!」
 また、振動が強まる。名雪は全身をくねらせるようにしてその甘美な感覚に耐えようとする。
 ヴィィィ…
「はぁ…はぁっ」
 そしてまた振動が元に戻る。
「名雪、ガマンしてるだろ?」
「そ、そんなこと…ないよっ…」
「もっとしてほしいだろ?」
「ち、違うもん…」
 名雪は頭を左右に振ったが、その目はもうかなり精気を失っている。
 ヴィッ、ヴィッ、ヴィッ…
「あっ、あっ、あっ!」
 小刻みに祐一が振動を強めると、名雪がうわずった短い声を上げて体を跳ねさせた。
「う…うう」
「どうだ?」
 得意げな顔をして祐一が名雪を見つめた。祐一の手のスイッチは名雪の秘裂の中に埋もれた淫らなおもちゃを動かす能力しかないはずだが、まるで名雪自身の体全体を支配下に置いているかのようだ。
「私、こんなの好きじゃないよっ…」
「…ふぅん」
 祐一はそう言うと、名雪の太股を押さえる位置をやや下にずらす。
「やっ…だめっ!」
 名雪は引きつった声を上げるが、その時には祐一の頭が半纏の下にもぐりこんできていた。
 ぬちゅ、ぬちゅ…
「あっ…うああっ!」
 器用に動く祐一の舌が、名雪の秘裂の間に一瞬で入り込んで敏感な粘膜をなぶり出す。
「すっげぇ濡れてる…」
 半纏の分厚い生地の下から、祐一の声がくぐもって聞こえてくる。その声の振動はローターの振動よりもよほど弱いはずなのに、名雪の体を突き抜けるほどの甘い刺激だった。
 ぢゅう…ちゅる…
「んっ…あ…そこはっ…だ、だめぇっ…」
 長い間放っておかれていた微細な突起に祐一が吸い付くと、名雪は祐一の頭をありったけの脚の力で挟み込みながら弱々しい声を上げた。ローターをくわえこんだ部分から、じゅる、じゅるっと新しい愛液がこぼれ落ちるのが名雪自身の体にも感じられる。
「………」
「……ゆ…祐一…?」
 ヴィィィィ…
 しかし祐一はそれ以上動かなかった。ローターの振動だけが、あくまで着実に名雪の体の中を熱くしていく。
「や、やだ…祐一っ…」
 名雪は祐一の頭を今一度締め付けながら腰をわずかに動かす。しかしそれでも祐一は動かなかった。
「だ、ダメ、祐一…だめだよっ」
「………」
「ゆ、ゆういちーっ…」
 段々名雪の声が焦ってくる。
「…やだよ、こんなのじゃ…」
 恥ずかしそうに名雪は告白した。このままでは、ローターの鈍い振動だけで高みに達してしまいそうなのだ。
「…じゃあ、約束するか?」
「うん…」
「よし…」
 カチ。
 祐一がスイッチを切る。そしてコードを引っ張り、名雪の体の中から粘っこい液体に濡れたローターを取り出してやった。
 ぬぽっ…
「んっ」
 意識しなくても自然に締め付けてしまう、タマゴ型のおもちゃ。それが体の中から抜け落ちた瞬間、名雪は思わず小さな声を出してしまった。
「なんだよ、ぐいぐい締め付けて」
「だ、だって…」
 名雪は口答えしようとしたが、祐一がぐちょぐちょになったローターを見せつけると口をつぐんでしまった。
「…メチャクチャしたかったんだろ」
「そ、そんなじゃないよ」
「じゃあなんでこんなに濡れるんだよ」
「だ、だって、祐一だからっ…」
 名雪は目をそらして言う。
「名雪がエッチなだけだろ…」
「祐一がエッチなんだよっ…」
「絶対名雪の方が上だ」
「そんなことっ…あ」
 祐一が名雪の腰を持ち上げようとすると、名雪が口を閉ざす。
「濡れてるのがよく見えるな」
「やだっ、そんなの見ないでっ…」
「舐められたくせに、いまさら何言ってるんだ」
「で、でも…やっぱりやだよっ」
「…ま、そろそろするか」
 祐一はそう言って、無造作に腰を名雪の体に向かって押しつけていった。
 ぬちゅっ
「あ」
 ぴたりと入り口にペニスが当てられると、名雪がすこし表情を固くする。
「入れるぞ」
 ぬちゅり。
 祐一が腰を押し出すと、ペニスは簡単に名雪の中に侵入していった。
「や、やだ、まずこれほどいてよ」
「このまんまでいいだろ」
「良くないよ…」
 ぬちゅ…ぬちゅぷっ。
 二人で言い交わす間にも、祐一のペニスはさらに奥まで突き進み、あっという間に全体が名雪の中に入ってしまった。潤滑の液があまりに豊富なのだ。
「ん…」
 名雪が鼻にかかった声を出すと、同時に祐一のペニスが激しく締め付けられる。
「う…」
 ぬちゅっ、ぬちゅ…
 祐一は小さくうめくような声を出しながら、前後運動を開始した。
「ん…んん」
 ローターでとろかされた膣壁は、祐一のペニスが勢い良くえぐってもじわじわと快感を生んでいくようだった。名雪は両手を拘束されたまま、腰をゆっくりと動かし始める。
「っ………」
 祐一はその中を、闇雲な動かし方でかき回した。あたたかな柔肉が祐一のペニスを包み込み、それを押し返すような勢いで祐一のペニスが動く。そうすると、柔肉はさらに祐一のペニスを強く包み込んでくる。
「んっ…私…んふぅっ…」
 名雪は早くも腰をピクピクと痙攣させ始め、縛られた手首から足の先までをしきりによじらせ始めた。挿入の前から、既に絶頂寸前まで追いつめられていたのだ。祐一の激しい動きに、名雪は最後の階段を勢い良く駆け昇っていく。
「…あ…だめっ…だめ…」
 ぬちゅっ、ぬちゅ…
 祐一の腰の動きに合わせて動きつつ、名雪はその淫靡な動きに反する言葉を発する。
「……だめ…!」
 ビク、ビク…
 名雪が吐息混じりの色っぽい叫び声を上げた瞬間、全身が激しく痙攣した。祐一のペニスも、ギュッギュッという激烈な締め付けに見舞われる。
「ぐ…」
 …びゅっ!
「えっ」
 びゅっ、びゅっ、びゅくんっ、びゅる…びゅ…びゅ…
「っ…はぁっ…はぁっ」
「え…祐一、もう…?」
 獣のような声を出しながら放出する祐一に、名雪は意外そうな声で問いかけた。未だにひくひくと媚肉を痙攣させているのに、それを微塵も感じさせない呑気な声である。
「仕方ないだろ…お前がずっと嫌がっていたんだから」
「あ、祐一、ずーっとガマンしていたんだ?」
「当たり前だろっ」
「私、てっきり自分でしているんだと思っていたよ」
「するかっ…」
「だって、それぞれの部屋にいればお母さんだって気づかないと思うし…」
 事故に遭った秋子が家に帰ってきたのは、ちょうど一週間前だった。
「こいつ…一人で…でも、お前さっき約束したんだからな」
「う、うん…だけど、できるだけ静かにしてね」
「わかったって…」
 ようやく収まってきた放出。祐一は気怠そうな顔をしながら名雪の上に倒れ込んだ。



11/13
「あのー」
「…?」
「失礼しますー」
「Who?」
 気怠そうに寝転がっていたレミィが、ベッドからドアに目を向ける。
「すいません、おやすみされていた所を」
「ンー…」
 逆さまの視界の中でぺこりと頭を下げた少女に、レミィは見覚えがあった。耳につけたセンサーを見れば、間違えようがない。
「アナタ、確かシンディが買ってきた…」
「はい、メイドロボットのマルチですー」
「Multi?」
「はい」
 マルチがベッドの方に小走りで駆けてくる。
「たしか、アナタの名前、もっと別のムズカシイ名前だった気がするケド…」
 それを見ながら、レミィは額に手を当てて考え込み始めた。
「それに、もっと…なんてゆーカ…」
「どうかされましたか?」
 ベッドの脇にまで来たマルチが、レミィを不思議そうな顔でのぞきこむ。
「…inhuman−like」
 レミィはその純朴そうな目をのぞき返しながら言った。
「??」
「inhuman−like…」
「あ、あの、私、英語はわからないんです〜」
「ア…だから、もっと、人間じゃナイ…」
「あ、そういうことですか」
 マルチがぽんと軽く手を叩く。
「実は、シンディ様が私の中のプログラムを書き換えてくださったんです」
「シンディが?」
「ええ」
「シンディ…Engineer…?」
「??」
「ン…それはいいけど…フゥ」
 レミィが体を伸ばしながらあくびする。
「それで、アタシに何か用?」
「はい。シンディ様が」
「シンディが?」
 レミィが問い返すと、マルチがベッドに上がってくる。
「はい」
 マルチはうなずいた。そしてレミィの長い脚をまたぐような位置に体を持ってくる。
「失礼しますね」
「?」
 レミィはいぶかしそうな顔でマルチの事を見上げていた。だが、それ以上に動くことはしない。いくら寝転がっているとはいえ、長身のレミィと小柄なマルチを比較すると相当に差があるのだ。突然馬乗りになられたとしても、まるで迫力がなかった。レミィがちょっと脚を跳ねさせただけで、マルチの体は吹っ飛んでしまいそうだ。
「よいしょ…」
 マルチはずりずりと腰を動かして、レミィの太股の辺りまで移動していく。
「で、シンディがどうしたノ?」
「ええ、シンディ様が」
 世間話のような口調で言いながら…マルチの手が、レミィのタンクトップをめくり上げてショーツをつかむ。
「!?」
 つやのある淡い紫の生地の間に、レミィの肌がのぞいた。それも、ヘアに覆われた少女の無垢なデルタゾーンの部分だ。
「ッ…ちょっと、やめてッ!」
「シンディ様が、レミィ様は欲求不満の傾向があるので私にレミィ様の性欲を処理しろと…」
「シッ…シンディィィィッ!?」
 レミィは大声で叫んだが、階下からは何の反応もない。
「皆様、お出かけになられました」
「だ…だめッ! シンディの言うことなんか信じちゃッ…」
 慌ててレミィは体を暴れさせ始めるが、マルチは小柄なのに恐ろしいほど力が強かった。馬乗りになられて太股を脚ではさみこまれているだけなのに、抜け出す事が出来なくなってしまう。
「シンディ様は、レミィ様が何を言っても専門家の自分の方に理があるのだとおっしゃっていました」
 マルチはショーツをずり下げてしまうと、腰の位置を少しずつ後ろに戻しながら体を前傾させていく。
「シ、シンディはまだ専門家じゃ…イヤアッ!?」
 そしてマルチが体をぺったりとレミィの脚に沿って覆い被せるような姿勢になる。レミィもその意図に気がついたようだった。
「失礼しますー」
 ちゅっ。
「ヤダァッ…」
 マルチの小さな唇が秘裂にキスすると、レミィは両手で顔を覆ってしまう。
 ちゅっ……れろん…
「ダメェ…そこはッ」
 唇に比例して小さな舌が、レミィの下の唇を割って入ってくる。その生暖かいぬるんとした感触が、レミィの敏感な突起を撫で回し始める。
 れろん…くちゅくちゅ…れろんっ
「うッ…はッ…やめてッ」
 レミィは手で顔を覆ったまま、力無く頭を左右に振った。腰の辺りにじわーっとした熱い感覚が生まれてきている。頭の中にも、ぼんやり霞がかかり始めている。このままでは完全におかしくなってしまいそうだった。
「やめませんー」
 マルチは一度顔を上げて言うと、レミィの内股を舌でくすぐり始める。
「いやッ、いやッ…そんな…ところッ」
 ぺろ、ぺろ…じゅる、じゅる…
 滑らかな感触の舌に丁寧なタッチで撫でられる。レミィは全身が総毛立ってくるような気がした。
「んんーっ」
「はぁンッ!」
 そして全身が敏感になった所で、また秘裂の中の固い突起を転がされる。
 ぷちゅぅ…
「ああッ…!」
 レミィはぎゅうーっと体をすくめて、顔を左右にぶんぶん振った。熱い液体が外にあふれてしまったのは、本人が一番よくわかっている。
 ぴちゃ、ぴちゃ…
「ヤッ…音…そんなにィッ」
 ぴちゃ…ぴちゅ…
 当然のように、マルチはそれを舌ですくって味わい始めた。
「んん…レミィ様の、とってもおいしいですー」
「い、言わないでッ…」
「じゃあ、今度は…」
 マルチがまた顔を上げて、最初していたような馬乗りの姿勢に戻っていく。その間も注意深く体重が掛けられていて、レミィが抜け出すチャンスはどこにもない。
「これでお相手して差し上げますね」
 そのマルチの声に、レミィは恐る恐る顔から手を離して目を開ける。
「エ……エッ!?」
 にゅぽっ…
 レミィが目を開けると同時に、黒いスパッツを履いていたマルチの股間から何かが飛び出す。どうやら、そこにスリットがあったらしい。
「そ、それッ…」
「ちょっとだけ痛いかもしれませんけど、がまんしてくださいねー」
 スパッツの間から顔を出しているのは、ピンク色をした肉の棒に他ならなかった。全体が何かの液体で濡れていて、凶悪な光を放っている。そして明らかに重力に逆らって、固く固く勃起していた。
「ヤダッ! ヤダッ、ヤダッ! イヤッ、お願い、それだけはイヤァッ!」
「大丈夫です、本物よりずっと小さいですから」
 マルチがレミィの腰に手を掛けて、ひょいと持ち上げる。
 ぬぷ。
「No…No…」
 一瞬にして、レミィは性交直前の姿勢にさせられていた。マルチの肉棒が秘裂の中にうずまって、激しい熱と固さをレミィの粘膜に伝えてくる。
「いきますー」
「ヤダァァ…」
 ずぶ…
 力無い叫びを上げるレミィの中に、マルチの肉棒が入り込む。
「Oh…Ohhhh!」
「大丈夫です、力を抜いてくださいね」
 ずぶ…ずぶ…
 均一な太さをした肉棒は、いとも易くレミィの中に侵入していった。
「イ、イタイッ…イタイ…もう、やめてッ…!」
 …ずぶ…
「ほら、もう一番奥まで入っちゃいました」
 マルチは少し頬を赤くしながら、スパッツに覆われた恥丘をレミィのそれに出来る限り押しつけた。液体を吸いやすい生地に、レミィのはしたない液体とわずかな血液が染み込んでいく。
「ヤダ、ヤダ…抜いて…これ、抜いてッ…!」
 金色の髪をふるふると揺らしながら、レミィが涙をこぼした。
「あとは気持ちいいだけですよー」
 カチ。
 マルチの体の中から、何かのスイッチの音がする。
 ヴィーーーーーーっ。
「ンふッ…!?」
 いきなりの振動に、レミィが驚いて体を引こうとした。無論、マルチはそれをしっかり押さえて体を密着させたままにする。
 ぐり…ぐりぐり…
 ヴィーヴィーヴィー…
「あッ…はぁッ…!?」
 マルチの体の中から響いてくる鈍い振動が、正確にレミィの秘裂の中の突起を刺激していた。マルチが腰を押しつけてくるほどに、その振動は強く感じられる。外側からの間接的な刺激とは言え、既にマルチのクンニリングスで興奮していた部分を刺激されて何も感じないわけがない。
「んん…私も…気持ちいいですっ…」
 腰をいやらしくグラインドさせながら、マルチも惚けた表情になっていた。
「い、イヤァァッ! こんなの…こんなの…もう…」
「だ、だめですよっ…ちゃんと、レミィ様がイクまで…ですから…」
 ヴィイイイイイ…
「ああーッ!?」
「はぅ…あああっ」
 マルチの中からの振動音がさらに大きくなる。
「あッ…ああーッ…ダ、ダメェェ…あッ、あッ、あッ」
「ん…はぁっ…はあっ…」
 どうやら、その振動はマルチの性感帯にも少なからず刺激を与えているようだった。マルチが目を潤ませて、虚空を見つめながら機械的に腰を押しつけ始める。マルチ自身にも余裕がなくなっている事は明らかだ。
「ああ…アッ…ひぃィッ…!」
 だがそれ以上にレミィが悶えているのも確かだった。破瓜の痛みをまだ感じているのかいないのか、突起への振動だけで全身をよがらせてしまっている。
「レ、レミィ様、もうイキますか」
「ち、違うゥ…アタシ、そんなんじゃないッ…」
「そ、そうですか、わかりました」
 ヴィイイイイイイイッ!
「ああーッ!!」
「くっ…あ…ああ」
 マルチの中からの振動が最高潮に達した。マルチは顔をしかめながら、思い切り腰をレミィの感じる部分に押しつける。
「ああっ、アアッ、アアーッ!? ダメェェッ!! ダメェェェェッ!!!」
 …ビクンッ! ビクッ、ビク…!
「あッ…はぁ…アアッ…イヤァ…」
 レミィが全身をぶるるっと震わせて、泣いているような声を出す。完全にクリトリス・オルガスムスに達してしまったようだった。
「よ、良かったです…レミィ様に、ちゃんとイッて頂いて…」
 しゅぅ…
 空気が抜けるような音と共に、レミィの体の中を満たしていた肉棒が消えていく。マルチの体の中からの振動も止まる。
「シンディ様は、一日一回はエクスタシーに達するべきだとおっしゃっていました…」
「やだッ! もう、アナタ、どこかに行ってぇッ!」
「え…あ、あの?」
「行ってッ! 壊すわヨ!?」
「はわっ…わ、わかりましたっ…お休みなさいませっ…!」
 マルチはびくりとしながら、レミィの体から飛び退く。そしてベッドから降りると、今にも転びそうな勢いで部屋のドアから出ていった。
 ばたんっ…
「ヒ…ヒロユキ…」
 レミィはうつぶせになって、枕に顔をこすりつけながらつぶやき続けた。



11/11
「い…いややっ…返して…それ」
「ダメだ」
 浩之が薄手のコートをくしゃくしゃと丸めながら突っぱねる。
「さ…寒ぅて…」
「………」
 智子が、身を縮こまらせて体を手で覆った。浩之はその姿を、上から下まで舐め取るような視線でゆっくりと観察する。
 もう秋もだいぶ深まりつつあり、確かに薄手のコートくらいは身につけていないと寒風が身に染みてくるような季節といえるだろう。しかも、今は深夜の一番冷える時間帯だ。
「そ、それに、誰か来たら…」
 ましてや、申し訳程度にしか体を覆っていない、黒光りする革のボンテージだけでは寒さに震え上がるのも当たり前のことだろう。胸とヒップのラインを強調する目的の方が強調されているような下着だった。胸は乳頭の部分も含めてぽろりと露わになってしまっているし、秘部は下着が恥ずかしい所を隠していると言うよりも、その敏感な部分にぐいぐいと固い紐を食い込ませているような感じだ。
 当然のように、智子の陰毛は綺麗に剃り取られていて、割れ目のラインに沿って黒い革がきつく締め付けているのが丸見えだった。
「か、返して」
 逆に言えば、智子は自分の体を手で覆っているというのに、肝心の一番恥ずかしく強調されている部分を隠していないと言うことだ。
「じゃあ、言うこと聞くか?」
「う…な、何するん…?」
 その原因が、威圧的に振る舞う浩之の存在である事は想像に難くない。智子の眼鏡の奥の瞳は、浩之に対する恐怖のような畏怖のような感情に満ち満ちていた。
 ざく、ざく…
 浩之は公園の砂っぽい土を踏んで音を立てながら、智子の後ろに回り込む。わざわざ音を大きく立てているような浩之の足取りに、智子は気が気でないようだった。
 …ぷちっ。
「あっ…」
 智子の秘部に食い込んでいた革の生地が、はらりと下に垂れる。浩之が、ボンテージの後ろについていた金具を外したのだ。普通の下着で言えばショーツに当たる部分、しかし実際にはただの固い革ひもでしかない部分が智子の体の前にぶらんと垂れ下がる。
 がさがさっ…
「ふ、藤田君…?」
 浩之が智子の後ろで、家から持ってきていたコンビニの袋を漁っている音がする。智子は恐怖に怯えつつも、ただじっと立ちつくして浩之の行動を待っていた。
 カチ。
 ビィィィィィ…
「そっ…そんなのいややっ…!」
 突然鳴り出した振動音だけで、智子は悟ったようだった。数え切れないほどそれで犯されてきたのだから、音だけでも何が準備されているのかは十分わかる。ボンテージの色とお揃いの、凶悪な太さをしたバイブだ。
「動くなよ」
 浩之が、そう言うと同時に智子の太股に何か冷たい物を押しつけた。
「え…?」
 振動していないので、バイブ自体ではない。智子は浩之の意図を探りかねていたが、
 ビビビビっ。
 明らかにガムテープとわかるものが押しつけられた物の上からぐるぐる巻き付けられ始めると、段々浩之が何をしようとしているのか理解し始める。
「やだっ、やめてっ…」
 ヴヴヴヴヴ…
「あぅっ…!」
 智子の声に構わず、浩之が振動するバイブを智子の中にねじりこんでくる。
「はぁっ…あああっ…!」
「濡れてんじゃねーか。あそこに食い込んでるだけで感じてたのか?」
「ち、ちがうっ、そんな事ないっ…」
「ウソつけ。ほら、いいんだろ? 外でバイブ入れられて、感じまくってるんだろ?」
 ヴィゥ…ヴィゥ…
「んはぁっ…!? う…動かさんといてっ…!」
「どんどん濡れてきてるぜ?」
「っ…うううっ…」
 智子は体の中からあふれてくる甘い液体を何とかしてくい止めようとするが、それは膣を収縮させてバイブの振動をさらに強烈に感じてしまう事にしかならなかった。バイブの隙間からじゅくじゅくと愛液があふれているのを、否定しようがない。
「さてと…」
 浩之はバイブを動かす手を止めて、立ち上がる。
「あ…ふ、藤田君、本当に寒ぅて私…」
 刺激が多少収まると、再び突き刺すような寒さが感じられるようになってきた。愛液で濡れた部分は、気化熱でますます冷たく感じられてしまう。
「そ、それ、着させて…」
「なんだよ、今感じまくっていたクセに」
「だ、だって…風邪引いてまう…」
「じゃあ、これから言うことをきちんとしろよ」
「う…うん…」
 浩之はまたコンビニの袋をがさがさと漁る。
 そこから取り出したのは、サイズとしてはあまり大きくない、ピンク色のローターだった。水銀灯の光の中でも、黒ずくめに近い智子の姿に比べればだいぶ派手に見える。
「ほらっ」
 ぽんっ、と浩之がそれを放った。放物線を描いて小さなローターが宙を舞い、公園の端にある砂場に落ちる。
「犬になって、アレ取ってこい」
「…えっ?」
「犬なんだから返事はワンだ。四つん這いになれ」
「………」
 智子は冷たい汗を浮かべて浩之の目を数秒間見つめていたが、比較的素直に浩之の言葉に従って四つん這いの姿勢になった。体自体をいたぶられるよりはマシと思ったらしい。
「ほら、取ってこい」
「わ…わん」
 智子はバイブを生やした秘部を浩之の方に晒して、土の上を四本の手足で歩き始める。
 ヴィーヴィ…
 体の向きが変わったせいか、バイブの当たる角度も少し変わったようだった。変則的な振動が、智子にバイブの存在をより大きく感じさせる。左の太股にきつく固定されたスイッチボックス、秘部をぐりぐりと責め立てる太いバイブ、そして腰から上を相変わらず窮屈に締め付けてくるボンテージ。
 体の要所要所を締める拘束が、智子の快感を内へ内へと封じ込めていく。大きく喘いでしまう事こそしないものの、今にも何かが爆発してしまいそうな、そんな不安感が智子の中にどんどん溜まっていく。
 ざく…ざっ。
 高まる体に、はぁっ、はぁっ…と息を熱くしながら智子は砂場の中に入っていった。そして、ちょうど真ん中の辺りに落ちていたローターを何とか口でくわえこむ。砂も一緒に口の中に入ってしまったが、ムリヤリに口の中に入れてしまう。
「よし、走って帰ってこい」
「ん、んんっ」
 智子はローターをくわえたまま、何とか返事をした。体を反転させて、出来る限りのスピードで手と足を動かす。犬のように走るというわけにはいかなかったが、早歩きをするように四本の手足をがむしゃらに動かす。バイブの高速振動に煽られるようにして、浩之の元に一心に戻っていく。
「んっ…ふぅぅんっ」
 やっとの事で浩之の所までたどりつくと、智子は唾液に濡れ濡れたローターを浩之の差し出した手に吐き出した。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
 運動量にすれば大した物ではないはずだが、智子の体を大きな疲労感が包んで、なぜか涙がすぅっと頬を伝っていく。
「ったく…大喜びでやりやがって。濡れたあそこにバイブ突っ込んで、そんな格好してて恥ずかしくねーのかよ?」
「…そ、そん……………わ…わん」
「ケツを振りながら歩いて行ってるの、犬にそっくりだったぜ。バイブをホントのしっぽみてーに振っててさ。嬉しいとしっぽ振るとこまで、犬とおんなじかよ。バイブをぶんぶん振って、感じてます濡れてます嬉しいですって一生懸命言っていたんだな」
「わ、わんっ、わんっ!」
「そうか、『私もそう思います』か」
「わっ…わん…」
 智子の目から、涙がじわじわあふれていく。
 しかし、それと同じか、あるいはそれ以上に秘部から愛液があふれているのを智子は自覚していた。
「じゃあ、ご褒美だ。これ使ってオナニーしろ」
「っ…」
「そんなに外で恥ずかしい事するのが好きなんだったら、オナニーするのなんて嬉しくてたまらねーよなぁ?」
「わ…」
 浩之の悪魔的な笑みに、智子の理性が崩れ落ちる。
「わんっ…わんっ、わんっ!」
 智子は狂ったように叫んで、四つん這いのまま右の手を差し出していた。勢いのあまり、眼鏡が外れて土の上に転げ落ちる。
「よし…」
 かちっ。
 ヴィヴィヴィヴィーッ!
 浩之はスイッチを入れてやってから、ローターを智子の手の平の上に乗せる。
「わんっ…」
 智子はそれをもどかしそうに股間に持って行った。バイブが突っ込まれて蠢いている部分の上、固い突起が眠っている所に何とかローターをめり込ませようとする。
 ガガガガガガっ…
「あっ! はぁっ…あああーっ!?」
「おいおい、ムチャすんなよ」
 二つの振動具がこすれあって、耳障りな音を立てる。それでも、最も敏感な部分を直接ローターで刺激する快感に智子は飲み込まれてしまったようだった。ぐりぐりと自分の手でローターを突起に押しつけて、自虐の快感を引き出す。
「はふっ…あはぁっ…ああっ…」
 智子は、後ろから突き刺さってくる浩之の視線が物質化しているような気がしていた。浩之の視姦、バイブの膣への陵辱、クリトリスによるローターの自涜。3つの快感が、ボンテージの拘束と、鋭い夜風と、夜の公園の静けさによって智子の内側へと濁流のように流れ込む。
「んっ…はっ…はぁぁぁっ…!?」
 それがもはや内面に溜め込めなくなった瞬間、既に全身が性感帯のようになっていた智子の官能が、一気に外側に飛び出した。智子の愛液、痙攣、涙、喘ぎ、全てが外面に放出されていく。
「あっ、あっ、あああーっ!? あっ、あああーっ!? ああっ!!?」
 わなわなっ、わなわなっと幾度か体を震わせてから、完全に裏返った声を出して智子が背中をギュンと反らせた。
 ビクゥビクッ! ビクンビクンビクンッ…ビクンッ!
「イッたな…」
「あっ…あっ…ふ、藤田くぅんっ…私…私…」
「イッたな?」
「う、うん…藤田君に見られて…バイブ入れられて…自分でもオナニーして…私、気持ちよすぎてイッてもーた…」
「まだ、オナニーしたいか?」
「う、うん…したい…私、もっと、オナニーしたい…」
 ゆるみきった関西イントネーションの卑語は、柔らかさと艶っぽさを備えて非常にいやらしく響いた。その言葉に違わず智子はローターを土の上に投げ、今度は自分の指でクリトリスを優しく撫で始める。
「そしたら、あれにまたがってこいよ」
「え…あっ…」
 浩之が指差した児童用の鉄棒に、智子の目がまた溶けそうな色になっていった。



11/3
 ぐにゅぐにゅ…
「あっ…お、太田さんっ…」
 赤ん坊のような、無邪気な指さばきが僕のペニスを揉むように撫でてくる。
 ぐにっ、ぐにっ、ぐに…
 太田さんの指先は、狂気を感じさせる包帯に覆われた顔や発情しきった瞳にそぐわないほど、ひんやりとしていて女の子を感じさせた。多少乱暴に扱われていても、太田さんのあのすらっと長そうな指が嬉しそうに僕のペニスに絡んでくると思うだけで背筋が震え上がるほど気持ちよくなってしまいそうだ。
 精神がどんな状態なのかとても想像はつかないが、太田さんの指はまだまだ教室でシャープペンをすらすらと滑らせている時の理知的で綺麗な指と同じように思えてしまうのだから…
「いい格好じゃないか」
 太田さんの後ろに立った月島さんが、僕を見下ろしながらからかうように言う。
「………」
 僕は目をそらしたかったが、体はぴくりとも動かなかった。
 ぐにぐにっ…
 太田さんは僕の太股の辺りを両脚まとめて持ち上げて、ペニスをいじっている。腰の部分も床につかず、背中だけを床につけさせられている状態だ。月島さんの目には、僕の脚の間が全て見られてしまっていることになる。太田さんに責められている勃起したペニスから、後ろまで…
「…そうだ、太田さん…」
 月島さんの目がいやな輝きを見せる。
「…ほら、太田さんの大好きなものだ」
 そう言って、月島さんは僕のペニスを爛々とした目で見ている太田さんの頬にピンク色をした玩具を押しつけた。呼びかけには全く応じていなかった太田さんが、ゆっくりとそれに目を向ける。
 ぱっ!
 そしてそれが何であるのか気づくと、月島さんの手から奪うようにしてピンク色のリモコン式ローターを受け取った。僕のペニスから完全に興味を失ったようだ。
 ヴィー…ヴィー…
「うあ…あああ」
 太田さんは僕の脚を抱えたまま、膝立ちになってそこから思い切り脚を開き、高い音を立てるローターをぐりぐり押しつけ始める。月島さんがスイッチを入れてやったようだ。
 ヴィ…ヴィー…
 一転して、僕は鑑賞者になる。視線の端に映る太田さんの自慰から、目をそらす事は僕には出来ない。
 もっとも、顔が自由に動いたとしても、そこからきちんと目をそらせていたかは少し疑わしいが…
 あの太田さんが、自慰をしている。あられもなく性器を見せつけながら、高速振動を自分の感じる所に押しつけている。ぐちゅっぐちゅっという音を立てながら、濡れた部分をかき回している。実際に見る女の子の自慰は、あまりにリアルでいやらしかった。
 ちり…ちり…
「うっ…!?」
 その時、頭の中に、またあのちりちりという感覚がやってくる…
「太田さん、ストップ」
「………」
 あれだけ自慰に夢中になっていた太田さんが、ぴたりと指を止めて月島さんの事を見上げていた。
「それがどれだけ気持ちいいのか、彼にも教えてやりなよ」
「えっ!?」
「彼も、お預けを食らってうずうずしているはずだからね」
 ヴィーヴィーヴィー…
「うあっ…!」
 濡れた振動が、僕の後ろの方を襲う。太田さんは月島さんの命令を何のためらいもなく実行しようとしていた。
「や、やめっ…太田さん…!」
 何かが口元にこみあげてくるような感触を覚えながら、僕は懸命に体を動かして逃げようとする。だがやはり体は動かない。太田さんに脚を持ち上げられて弱い部分を丸見えにしている状態から、ほんのわずかにも動かない。
 ヴィーヴィーヴィー…
「うっ、かはっ、ああぅっ」
 太田さんが圧力を段々強くしてきているのがわかる。苦しさも、それに比例して大きくなってくる。
 ちりっ…ちりちりちりっ…
「ああっ!?」
 僕は思わず叫んでいた。
 脳天を直撃するような激しい電波が叩きつけられたのだ。
「もうちょっとゆるめてもらおうか」
「あっ…あぐ…」
 全身が弛緩していく。電車が減速して止まるような感じで、僕の体が弛緩してゆるゆるになっていく。
「太田さん…」
 ぐぐ…ぐぐぐ…
「あっ、あーっ…!?」
 だめだっ…
 もう入りそうになっている。それが、自分でもよくわかった。震える部分が外側だけじゃなくて、内側にまで触れてきているのが感じられる。
「女の子がどういう風に感じるのか、キミもよく勉強するんだね」
 月島さんは、最初に太田さんにローターを手渡した時と同じ瞳で僕を見つめていた。頭のいい人間がバカらしいことを考えついた時に、こういう瞳をするのだ。僕は妙な納得を感じていた。
 ぐ…ぐぐ…
「あっ、ぐぅ…」
 しかし、今はそれどころではない。太田さんの愛液のぬるっとした潤滑も加わり、ローターは今にも…
 ぐ…ぐぐぐ…
「ああっ…うああああぁ…」
 入れられて、しまった…!
「あっ…くぁ…」
 灼熱の物体が入っているような、重苦しい感触だった。それにくわえて、えぐるような痛みが僕の腸内を襲ってくる。激しく貶められている、そんな事を感じずにはいられない痛みだった。
「どうだい? 初めてを失った気分は」
「と、止め…」
「なかなか苦しいもんだろう? そこから永遠に抜け出せないんじゃないかって、そういう事を思わせる苦しさだろう? 僕は、直接には経験したことがないからわからないけれどね」
 ヴヴヴヴヴ…
 月島さんが言う間にも、中はえぐられ続ける。
「しかし」
 ちりっ…ちりちりちりっ…
「うあっ!?」
 脳にまた電撃が走る。そのパルスは、あっという間に体を駆け抜けて僕の腸内を包み込んだ。
 ちゅぼっ!
「あっ…ああっ…」
 その時、太田さんが僕の両脚を離して、吸い込むように僕のペニスをくわえこむ。ずっと放っておかれたペニスは、後ろで感じている苦痛とあいまって甘すぎる快感を僕に与えた。
 ちゅぱ、ちゅぱ…ちゅぷるっ
「うっ…はぁ」
 積極的に舌を使う太田さんのフェラチオ。それを感じている間に、ねずみのようにせわしなく走るパルスが、腸内の感覚とペニスの感覚を結んでいく…
「んっ…あっ、あっ…あ…」
 なにか、痺れるような感覚が生まれてきていた。
 さっきまでえぐられていた部分が、麻痺したようになって痛みを感じなくなってきている。代わりに、どんよりとした異物感だけが僕の中に生まれている。
 ちゅぷ、ちゅぷ。ちゅる…
 それに、太田さんの絶妙な舌の動きが気持ちいい…
 こ、これって…?
「苦しさを感じるよりも、快感に思ってしまった方がもっと抜け出せない無限地獄のようになることもあるのさ」
「か、快感なんか…!」
 ちり…ちりちりちり…
「あっ…!」
 全身が一瞬ビクゥッ、と収縮しそうな気がした。
 ヴヴヴヴヴ…
「うっ…あっ、あああああああぁっ…」
 だ、だめだ…
 痺れていた部分が、一気に快感を感じる部分として開花したような感覚だった。痛みを感じていた部分というのがウソのように、内面からのくぐもった快感が僕を襲ってくる。
 ちゅぽん。
 太田さんが、僕のペニスから舌を離した…
「さあ太田さん、彼がこのまま出してしまう所を見届けるとしよう」
「そんな…バカなことは…」
 僕は精一杯に強がって見せたが、うねるような射精感はもう腰の奥底にドクドクと溜まりだしていた。しかも、太田さんが口を離したというのに止まらない…ローターの鈍い振動が、どんどん僕の快感を引き出してくるのを誤魔化すことは出来ない…
「うっ…はぁっ、はぁっ…」
 呼吸を乱しながら、僕は必死で括約筋を締め付ける。だが、それはローターをよりきつく感じてしまう結果を生む事に他ならなかった。
 ヴヴヴヴ…
「くぅぅぅっ…」
 かと言って…このままゆるめていたら…
「限界だね」
「う…ううっ、ううっ、ううううーっ…」
 ぷちゅっ、と半透明の液体がペニスの先からほとばしりでた。
「くっ、くっ、くふぅぅっ…」
 慌てて、ありたけの力でバルブを締め付けようとした結果…僕は、ローターの振動を最強に近いまでに受け止めてしまうことになり…
「っ!」
 びゅっびゅびゅっ!
「あっ…」
 …びゅっびゅっびゅっ……びゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅっ…
 一度放出が始まってしまうと、止めることはもう不可能だった。僕は床の上に自分の精液が、信じられないほどの量吐き出されていくのを呆然と見つめる。
「無様だね」
「………」
「でも、奪われているばかりじゃキミのような奴は被害者面をし始める。次はキミが奪う番だ」
「………?」
 未だローターの振動は止まっておらず、僕は月島さんの話を霞がかった状態で聞いていた。
 …がちゃり。
「ユ…ユウくん!?」
「ご苦労様。その子をこっちに連れてきてくれるかな」
 そして僕の耳に入ってきたのは、怯えきった新城さんの声だった…



11/1
 ブ…ン
 鈍いモーターのような音が収束し、セリオがゆっくりと目を開く。
「…おはよう、セリオ…気分はどう?」
「正常に起動しました」
「そう?」
「ええ」
 セリオははきはきと答える。数秒前までは死んだように目を閉じて動かない状態だったのだから、少々奇妙な光景だった。ぴったりと手を体の脇につけて首だけを綾香の方に向けている様子は機械的だが、それでも容姿が完全に人間である以上、寝起きの状態が存在しないのが不自然に見えるのは否めない。
「綾香様、SEXをされるのですか?」
 そして直接的に訊く。
 確かに、休止状態の間に服が完全に剥ぎ取られていて、ベッドの上に上がってきた綾香も裸だったとなればそういう風に考えるのが自然かもしれない。綾香に求められて交わるのは、これが初めての事ではない。
「ん」
 綾香は少しだけうなずいてそれを肯定した。
「はい」
 セリオはうなずき返すと、全身を少しリラックスさせて体を開く。それでもまだ、セリオの肢体はかっちりとした機械的な印象を保持したままのものだったが…
 しかし、綾香が下半身に近づいてくるのに合わせて視線を自分の下半身の方に向けた時、セリオはかすかに動揺を見せる。
「これは…?」
「ふふ、多分自己診断プログラムにも引っかからないんじゃないかしら」
「綾香様、これは…」
 セリオは自分の下半身の、なだらかな恥丘の部分を食い入るように見つめていた。普段は滑らかなカーブの上にすっと細い筋が入っているだけのはずの所だ。
 そこに、セリオの肌と同じ色をした肉の棒がにゅっと生えていた。
「………」
 セリオは思わず、それに自分の指を添えて表面を撫で始める。セリオにとっては、そこは存在しないインターフェイスのはずなのだ。
「うっ…」
 だが、セリオは小さくうめいて手をそこから離してしまった。
「感じる?」
「な、なぜ…」
 セリオにとって、自分の体から生えているものであっても自分のプログラムが認識できない物は存在していないに等しいものである。ところが、今セリオの股間から生えた肉棒はプログラムが認識しないにも拘わらず、触った時にセリオの快感中枢を刺激してきたのだ。
「やっぱり、完全に隠し機能みたい。その方が面白そうだけど…」
 綾香の目が妖しく輝いた。そして、綾香は顔をセリオの脚の間に突っ込んでくる。
「………」
 太股に触れる綾香のさらっとした髪の感触は、前にも感じた事があるものである。しかしセリオは、その細やかな感触を妙に敏感に感じ取ってしまっていた。ただ髪が脚に触れているだけのはずなのに、快感中枢がピクリと反応してしまう。
「いくわよ…」
 綾香がセリオの股間の前でつぶやいた。
 …はむっ…
「………!」
 綾香の唇に肉棒がはさみこまれると、セリオの体に電撃のような快感が走る。
「んーっ…んんー」
 ぬぷ、ぬぷと唇を使って上下に肉棒がゆっくりとしごかれる。そうしながら、綾香は上目を使ってセリオの反応をじっと見ていた。前髪に隠れかけた綾香の瞳が、興味津々にセリオの表情の変化をうかがう。
 口一杯に肉棒をくわえこんだ綾香の顔は、いたずらっぽそうな調子も残していたが非常に誘惑的だった。その表情が、その瞳に見つめられることが、セリオの快感中枢をさらに動かす。無感情であるはずのセリオが、綾香の淫乱な様子を見ていることでなぜか震えるような物を感じてしまう。
 カチ。
 ヴィーン…
「………」
 その時、綾香の体の方からセリオにも聞き覚えのある振動音が響き始める。セリオの記憶しているデータによれば、それはピンク色をした扁平な形のローターであるはずだった。前に、何度か使われた事がある。色々な所に当てられた事も、中に挿入されたこともある。
 しかし、今のセリオはその振動に若干の不安を覚えざるを得ない。
 ヴィーン…
 振動音が近づいていく流。果たして、綾香が体の下の方から持ち出してきたものはセリオの知ったローターだった。綾香はそれを自分の頬の横の辺りまで持ってきて、セリオに存在を見せつける。
 ぬぷ、ぬぷ…
 そして綾香は肉棒を唇でしごく動きを再開させながら、ローターを肉棒の根元の辺りに近づけていった。
 ヴィー…ぶ…ぶぶぶ…ぶぶ…
「あ…ああ…!」
 ローターが肉棒にあてがわれると、振動音が少し低くなる。それと同時に、セリオの体を快感が突き抜ける。
 ぶぶぶ…ぶぶ…ぶぶぶぶ…
「く…う…ううっ…」
 セリオが声を漏らすなど、滅多にない事だ。少々の苦痛程度では、表情一つ変えないセリオである。しかし舐められて敏感になった肉棒を刺激され、さらに秘裂の中に収まっているクリトリスにまで間接的に振動を与えられてはセリオもたまらないようだった。
 もっとも、前にローターを使われた時はクリトリスに直接あてがわれてもセリオはほとんど無反応であったのだが…
 綾香はセリオの反応に、満足そうな表情を浮かべる。そしてローターを移動させ、秘裂の中にぐりぐりと押し込んでいく。
 ぬちっ。
 セリオの入り口の部分は、とろんとした液体を垂らして侵入物を今か今かと待ちかまえているようにすら見えた。綾香はその入り口近くをローターで撫でてから、ずぷりと振動するローターを中に押し込んでいく。
「ああああっ…綾香様っ…!」
 ヴヴヴヴ…ヴヴ…
 粘っこい液体に満ちた膣壁にくるまれて、ローターの振動音はさらに低くくぐもった物になる。だが、音が低くなったという事はそれだけローターの振動がセリオの膣壁に直接響いているということだ。
 すっぽりとローターをセリオの中に挿入してしまうと、綾香はくわえっぱなしにしていた肉棒の方に再び取りかかる。
 ちろ、ちろ…
「あっ…ああ…」
 しごくだけでなく、先に近い方を舌先で丁寧に舐め転がすとセリオが溶けてしまいそうな声を出した。普段の事務的で落ち着いた調子を完全に失ってしまっている。
 ちろ、ちろ…
 満面に笑みを湛えたまま、綾香は舌なめずりでもしているかのように真っ赤な舌を少しだけ出して小刻みに動かす。綾香自身は快楽をむさぼっているというわけではないのに、その表情はひどく淫らだった。
 ヴヴヴ…
「んーっ…はああっ…!」
 中からのローターと綾香のフェラチオ、二箇所の責め立てにセリオは完全に支配されてしまったようだった。
 すりっ…すり…
「!!? 綾香様!?」
 それに、さらに第三の刺激が加わろうとする。
 ちゅく、ちゅく。
「そ、そこは…なぜ…」
 セリオのヒップの奥のすぼまりを、綾香の指先が触っていた。さっきローターを入れるときに使った指らしく、ねとねとした液体で濡れている。その液体をまぶすように、綾香はそこを撫でていく。
「く…あ…ああ…!?」
 ロボットである以上、そこはただの「飾り」の器官でしかない。そういうはずなのだが、セリオはそこを触られてくるうちに変な感覚が生まれてきたのを否定できなかった。快感中枢に近いのだが、少し違う。まるで第二の快感中枢が生まれて、それが第一の快感中枢に影響を与えているような感じだ。
 ちろ、ちろ…
 そうしながら、綾香はさらにセリオの肉棒を舐める。セリオの体の弛緩がさらに強まる。
 …つぷ
「んはぁっ!?」
 その弛緩が十分にまで達したと思った所で、綾香の指がセリオの窮屈な所に侵入した。
「あ…ああっ、ああ…!」
 ぎゅうぎゅうと綾香の指が締め付けられる。その収縮を見極めながら、綾香は少しずつ指を動かす。
「あっ…綾香様…そ、そこは…」
 そうするとセリオは切羽詰まった声を出した。だが、ロボットである以上やめてくれと言うことはない。そこを刺激されたからと言って、ロボットとしての機能に損傷が出るわけではないのだから…
 くに、くに…
「う…ああ…ああ」
 綾香のしなやかな指が煽るようにセリオの中を動く。前に入れられたローターの悩ましい快感と、肉棒を綾香が舐めるとろけるような快感が合わさって、そこに狂おしい指責めの快感が加わる。
「あ、綾香様…もう…私は…」
 セリオの体の中に、何か強烈なエネルギーが溜め込まれるような感覚が生まれる。一瞬セリオはオーバーヒートしそうなのかと思ったが、そうではない。溜め込まれているのは、セリオの中に抑えておくことが出来なくなって爆発しそうになっている快感だ。
「う…うう」
 体をよがらせながらセリオがか細い声を出す。普段は何の感慨も与えないセリオの声も、切なそうに息を吐き出す唇から高いトーンで生まれてくると実にいじらしく、色っぽい響きを持つ。
 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ…
 ぐに、ぐにっ。
「あっ…はぁんっ…ああああああっ…!」
 最後に、綾香が唇と指を思い切り動かしてセリオにとどめを刺した。ローターの振動に下支えされた快感が、一気にボーダーを越えて跳ね上がる。
 どぴゅっ! びゅっ、びゅるっ、びゅるっ、びゅるるっ…
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああーっ…」
「!!」
 綾香の口の中に、あふれんばかりの白濁液が放出された。
 びゅっ、びゅくっ、びゅぅっ、びゅ…
「あっ……あっ…ああぁ…」
 脱力しきったセリオの声。
「…っは…」
 綾香は口元からおびただしい白濁液を垂らし、顔のあちこちに白濁液の放射の直撃を受けた状態だった。途中で飲み込むのを諦めて口を離したが、速いペースの脈動から逃げる事はとてもできなかったのだ。
「あ、綾香様…申し訳有りません…」
「い、いいのいいの…少し量を増やしすぎちゃったかな…こんなに出るなんて思わなかった…」
「量を…?」
「関係ない関係ない。セリオが感じてる顔を見られたからいいわよ。やっぱり何をしても反応がないのより、こっちの方がずっと面白いし」
 綾香は少し舌っ足らずな声で言いながらティッシュの箱を取ってきて、口元や顔をぬぐっていった。
「ふふ、まだこんなに立ってる…ローター入れっぱなしだからね…今度は、どうしよっか…」
 そう言いながら、綾香はセリオの頬を撫でる。
「綾香様…」
 セリオは戸惑いを浮かべた声を出しつつも、綾香の事を熱さを感じさせる目で見ていた。



10/29
(9/9の続き?)
「名雪、屋上でした時、ひとりエッチなのにすごいスムーズにしてたし感じまくってたよな」
「だ、だって…ずっとこんなのを入れられていたのに、祐一がしてくれなかったから…」
 名雪は絨毯の上に正座して、まだローターが入ったままのあそこを両手で押さえつけながら答える。裸のままちょこんと座って、情けない格好をしている名雪を見ていると俺は自分の態度がますます威圧的になってきたような気がした。
「そもそもだ。名雪、普段からひとりエッチ隠れてしていたんじゃないのか?」
「な、なんで…」
「そうじゃなかったら、あんなに慣れた感じで出来っこないだろ」
「べっ、別に、ひとりでするのは、祐一にしてもらうのを代わりに自分の指とかでするだけだし…」
「『とか』ってなんだよ」
「い、意味なんてないよ」
「嘘つけ。普段から指以外の物も使ってしていたから、思わず言っちゃったんだろ」
「そんなこと…」
 名雪は斜め下に視線を向けてうつむく。
「正直に答えろって言ったよな。嘘つくんなら、今日はもうこれっきりだ」
「そ、そんな、祐一、いやだよっ!」
 慌てて名雪が身体を乗りだし、半分背を向けた俺を引き留めようとする。
「………」
 俺は冷たい目で名雪のことを見ていた。できればローターの振動をもっと強くしてやりたかったが、あいにく出力は既に最強だ。
「ゆ、祐一…」
 が、にらみつけるような強い目で潤みきった名雪の目を見返してやることが、何より名雪を陥落させる武器になるようだった。名雪は改めて絨毯に正座し直し、あそこを押さえ直し、こくりとつばを飲み込む。
「し…してるよ」
「俺がいるのにか?」
「だ、だってっ。みんなでテレビとか見ている時とか、学校の授業中とか、朝とか…そんな時に祐一に言っても、してくれるわけないか、時間がないかどっちかだし…」
「おい、それって」
 共通点は、名雪がいつも寝ぼけていたり眠ろうとしている時だ。
「じゃあ、眠い眠いって言ってたのは」
「ね、眠いのも本当なんだよ…だけど、ちょうどそういう時に限って…なんだか…」
「授業中にもしてるのか?」
「そ、それはできないから、目を閉じてあそこを椅子にすりすりってしたり…終わった後、休み時間にトイレに行って、できるだけたくさんしてっ…」
 名雪がもじもじと脚を動かす。恥ずかしさか、ローターの振動でまたどんどん気持ちよくなってきてしまったからか。
「ったく…」
 俺は、名雪が学校でああいう事をするのにそれほど抵抗を覚えなかった理由をやっと理解した。どちらかと言えば、行きの道と帰り道、外の空気に触れていた時の方が名雪は緊張していた気がする。さすがに屋根のない所でひとりエッチした経験はなかったという事なのだろう。
「名雪、お前異常だぞ」
「そ、そんな言い方ひどいよ…」
 言いながら、名雪はあそこを押さえる力をまた強くする。
「じゃあ、学校でも平気な顔してひとりエッチしているような奴がまともだって思うのか?」
「だ…だって…だって…祐一が私の事をこんな風にしたんだよっ…!」
 悲しそうな声で言いながら、名雪はまたはぁはぁと息を激しくし始めた。押さえた手を離せば、新鮮な愛液が生まれ流れ出てくる様子が見えることだろう。
「名雪、お前ひとりエッチ始めたのいつなんだよ」
「え…それは、祐一に初めてしてもらってから、しばらくしてから…だよ…」
「嘘言うな。名雪、初めての時に感じてただろ」
「そ、それも、祐一だからっ」
「お前、嘘が元々下手なんだから無理するなよ。ひとりエッチも知らないのに、あんなにぐちょぐちょになっちゃうなんておかしいだろ」
「……だって…だって」
 名雪が顔を伏せて、肩を震わせ始めてしまった。一瞬泣きそうなのかと思ったが、やはりただイキそうになっているだけのようだ。
 …カチ。
 俺はローターの振動を止めてやる。
「…あ…」
 顔を上げた名雪の目に、もう理性は見えなかった。一日中イキッぱなしで完全に参ってしまったらしい。
「で、いつからなんだよ」
 名雪の顔に自分の顔をぐぐっと近づけて、訊く。
「…祐一の帰った…あの冬から…」
「…あの冬って…」
「あの冬から…私…祐一の事を思い出そうとする度に、うまくいかなくて…」
 名雪が独り語りのような声になる。
「代わりに、変なことばっかりが頭に浮かんでくるようになっちゃって…」
「名雪…?」
「顔や体のりんかくまでは浮かんでくるのに、祐一の言ってくれた言葉の最初のなんもじかだけは浮かんでくるのに、そこからは全部おかしくなっちゃうんだよ…。祐一の顔から口だけが見えたり、祐一の体からアレだけが見えたり…言葉が聞こえても、全部いやらしい言葉ばっかりで」
 名雪の手が、びちょびちょになったあそこから離れた。
「あはは…やっぱり、私、異常かな…?」
「…名雪」
 何か、もやもやしたものが頭の中に生まれてきている。
 振り払おうとしたが、うまくいかなかった。頭の中で考えるだけでは、そのもやもやはどうも晴れそうにないようだった。
 …俺は、一体どうしたんだ?
「………」
 よくわからない。
 ただ、俺は半分無意識のうちに名雪のあそこに手を伸ばしていた。
「祐一…?」
 そこから、指を目一杯動かしてムリヤリに名雪の中に入ったローターを抜き取る。黒いローターはもう名雪の愛液と一体化してしまったように見えるほど、ねばっこく濡れて光っていた。
 俺はそれを思い切り投げ転がす。表面がねばねばしたローターはあまりよく転がらなかったが、なんとか勢いによって名雪のベッドの下にまで入っていった。
 しゅる…しゅっ。
「え…いいの…?」
 俺が半端に下りたトランクスとズボンを脱ぎ去ると、名雪がむしろ意外そうな声で訊(たず)ねてくる。
 …どんっ。
「あっ…」
 答える代わりに俺は名雪の肩を押して絨毯の上に転がし、その上にのしかかった。
 ずちゅぅぅ…
「あっ…はぁんっ…ああああっ…!!」
 狙いもつけず、鎌を振るような勢いで突っ込んでいくと吸い込まれるように名雪の中に俺のペニスが入っていく。どぷりという程に愛液に満たされた名雪の中は、俺のペニスが名雪の奥にぶつかった瞬間きつく収縮した。
 ビク、ビク、ビク…
「あっ、あっ、ああーっ」
 全身の痙攣に合わせて名雪が喘ぐ。これだけで、もうイッてしまったようだ。
「まだまだ、いくからな」
 じゅごっ、じゅるっ、ぶじゅるぅっ…
 痙攣がまだ続いている名雪の中を、俺はさらに突き続けた。愛液が撹拌され、鈍く泡だった音が立て続けに響く。さっきまでは俺のモノに比べれば随分小さい球が刺激し続けていた部分を、俺は力任せに突いて膣壁をこすった。名雪の好きな、膣の前側の方に太くなった部分がぐりぐり当たるように腰をグラインドさせる。
 そして両手で胸の膨らみをつかんで、突くのと同じくらい乱暴に揉む。決して小さくない名雪の胸の膨らみのふよふよとした部分が、上に下に奔放に飛び回るくらいに強く揉む。
「…祐一…いいっ…す、すごいっ…」
 絶頂が少しは収まったのか、痙攣が止まってきたかと思うと名雪はうわごとのようにつぶやいて腰を自分でも振り始めた。ばたっ、ばたっと絨毯を叩く音を立てながら腰を跳ね上げる、ぎごちない動作。乱れる名雪の髪。恍惚とした、名雪の顔。
 じゅぐ、じゅぶるっ、ぐじゅっ
「あーっ、ああーっ!」
 とんでもなく濡れまくってしまっている、名雪のあそこの中。名雪の、押し殺そうともしない露骨な感じている声。
 普段から感じていたもののはずだ。一日か二日に一回は普通に見ることが出来ていたはずのものだ。それなのに、今はそれをローターや名雪の指や、教室の椅子に味あわせてしまっていた事が妙に悔しくてならなかった。
 ぐじゅっ、ぐじゅっ。
 なぜだろう…
 俺はありったけの力を込めて名雪の中をかき回しながら、考える。
 その答えは、いくら考えても同じだった。
 …名雪が可愛いんだ。
 このいつもぼけっとしている俺のいとこが、名雪が、何故か知らないけれど今日はたまらなく可愛いんだ…
 ぐじゅぐじゅぐじゅっ!
「ひぅっ、も、もうだめっ、私、また、イクよぉっ!! 祐一、私イッちゃうよっ!!」
「…俺もだ。名雪、俺もイキそうだ…」
「なっ、中に出してっ!! 祐一、私の中にいっぱい出して、祐一をたくさん感じさせて…!!」
「わかってるっ…!」
 俺は名雪の一番深いところにペニスを差し込んで、腰を小刻みに震わせた。
「あああーっ! 私、私っ…!! イクぅぅうぅぅぅうーっ!?」
 ペニスを、熱い物が走り抜けていく…!
 ビクビクビクっ、ビクンビクンビクっ、ビクビクビクビク…
 びゅっびゅっびゅるっ…びゅるるっ、びゅっびゅっびゅるぅ…
 激しい締め付けと痙攣。名雪が背中を何回も跳ね上げては絨毯に身を落とした。それに加えて、つんざくような高い大声。絶対に、秋子さんに気づかれたに違いない…
 でも、それすらも今の俺には快感だった。
 呆れるほどに長く続く放出を、同じくらい長く続いている名雪の絶頂の中で、俺は心底から気持ちよく思っていた…



10/24
「さっ…寒い…よ…」
 名雪は制服の裾を少しでも下ろそうと試みる。服の生地がだらしなく伸びてしまいそうだったが、それでも何とかして制服、ブラウス、シャツを合わせて押し下げる。
「返して…栞ちゃん…それ」
「だめですよ」
 栞は平然と言って、手にした名雪のスカートとショーツをぽんと香里に向かって放る。
「お姉ちゃん、持っていてね」
「あなたがするの?」
「うん」
 さらに肩に掛けたショールもくるくると丸めて、香里に手渡す。香里は少し呆れたような顔をしながらそれを受け取ると、ポケットの中を探って栞にボール状の器具を与えた。
「もう一個」
「…二個?」
「うん」
「栞、自分にも入れる気?」
「そうじゃないよ」
「…ま、壊さないでね…安いもんじゃないんだから」
「うん」
 香里がまたポケットを探り、栞に同じボール状の器具をもうひとつ手渡す。そして、名雪の服と栞のショールを抱えたまま腕組みをするような体勢で二人の事を見守り始めた。
 その間にも、名雪はかたかたと歯を小刻みに鳴らしながら震えている。ひゅうう、とこの地方にしてみれば比較的穏やかなくらいの風が吹くだけでも、名雪は顔を青ざめさせてますます震えを大きくしていった。
「どうですか、名雪さん? いつもと違ってこういう所だと、気分も変わりますよね」
 どんよりとした曇り空の下の、凍り付くような空気。学校がやっている時ならば一階の廊下から見ることができる位置にある、駐車場としても使われている裏庭。
「さ、寒すぎるよ…助けて…」
「名雪さんは自分の名前に入っているくらいだから、雪が大好きだって祐一さんが言ってましたよ」
「で、でも、こんなのは嫌だよ…」
 名雪は足元を見やる。
 そこには、名雪が身を屈めて冷気に当たる表面積を小さくできない理由、深さ40センチほどに積もった雪が一面に渡っていた。名雪の履いている長靴も、どうかすると雪が入ってきてしまいそうな状態である。
 そして、名雪の立っている所から少し離れた所の積雪は、不規則についた足跡でかなり乱されていた。どうやら、名雪が下半身の着衣を脱がされた時の跡らしい。氷点下の中、長靴を履いた状態からスカートとショーツを脱いでしまうのは並大抵の苦労ではなかっただろう。
 しかも、名雪が座ってしまう事ができないように、栞と香里はわざわざ名雪を乱されていない雪の所まで移動させたらしい。
 ざっ、ざくっ…
「さてと…名雪さん、お楽しみの時間ですよ」
 栞は名雪に近寄りながら、ネイビーブルーのボールをぺろぺろと口でなめる。幼い容姿に浮かんだ残虐性は、小悪魔的と言うに相応しかった。
「………」
 名雪は怯えを浮かべながら、近づいている栞を見つめるしかない。制服を少しでも下ろそうと裾をひっつかんだまま、一歩も動けなかった。
 ざくっ。
 栞は、名雪の目の前まで来ると立ち止まる。そして、平然と雪の上にしゃがみ込んだ。キツネ色の毛皮のようなコートを羽織って、撥水の長いブーツを履いている栞は少しくらい雪の上に脚を置くくらいではまるで冷たさを感じていないようだ。
 そして、名雪が必死で押し下げている制服の下にボールの片方を滑り込ませる。名雪の秘裂は押し下げられた制服によってほとんど隠れていたが、それもぎりぎり隠れているといった程度のものだ。栞はさしたる苦労もなく名雪の秘裂にボールをあてがう。
 ぐにゅっ。
 そのボールを、栞は遠慮無しに名雪の秘裂の中に押し込み、さらに名雪のヴァギナの入り口を探った。視界は十分ではないというのに、栞は一瞬にして名雪の入り口を探り当て、ぐいぐいと中に押し込む。
 …んちゅっ
 鈍い粘液質の音と共に、名雪は小さな卵のようなボールを受け入れてしまった。
「名雪さん、やっぱりもう濡らしていたんですね」
「そ、そんなこと…」
 ない、とは言えなかった。
「お姉ちゃんー」
「ん…」
 香里は気のない返事をすると、またポケットに手を入れた。
 ヴー…
「っ………」
 振動音を立てて暴れ始めたボールに、名雪は無反応ではいられない。すっと名雪の瞳に潤みが走るのを、栞は悪戯っぽい目で見た。制服の裾をつかむ手に力が入ったのも、すぐにわかることだ。
 ヴー…
 うねるようにヴァギナの中を振動するボールは、自らの動きによって少しずつ奥に向かっているようにすら感じられる。名雪は意識のなかにむらむらとした物が沸き上がってくるのを感じて、それを必死に打ち消した。
 ざっ…ざっ。
「え…」
 そこに突然、栞が足元の雪をかき集め始める音がする。少し前に積もった雪で、今はざらっとした感触に近くなっている雪を、栞は小さな手でぎゅうぎゅうと押し固めていた。直の手で触っているのだからかなり冷たいはずだが、やがて栞の手の中には氷のように固そうな球が出来上がる。サイズは、栞の握りこぶしほどもあった。
「名雪さん、雪好きなんですよね?」
「な、なにするの…し、栞ちゃん、あの…ひょっとして…」
 動揺する名雪に、栞はくす、と微笑んで見せた。そして、その球をおもむろに名雪の内股の辺りに押しつける。
「いやっ!! つ、つめたいっ…やだ、やだっ、やめてっ!!」
「つるつるしますね」
 栞は名雪の体温で表面が溶け始めた氷の球で、名雪の太股を撫でるようにして上に進んでいく。
「つ、冷たいよ…!! 栞ちゃん、お願い、許して…!!」
 名雪は氷の球が制服の裾に当たりそうな所まで来たのを見て、一瞬躊躇する。だが、結局服がびしょびしょになってしまうのを避ける事を選んだ。自らの手で、少しだけ服をまくりあげて何とか服を乾いた状態に保とうとする。
 その代わり、名雪の秘裂は上端から全て外気の中に晒されることになった。すーすーと風が吹き抜ける感触、そしてすぐそこに押し当てられる凍るような氷の球の感触。ずっと肌に押し当てられていたためか、氷はかなり溶け始めていたが、それは名雪の体温がそれだけ奪われたと言うことを意味している。
「う…いや…もういやだよ…」
 名雪は、体内からの鈍く熱い感覚と冷え切った肌の感覚の温度差に、頭がおかしくなりそうだった。
「お姉ちゃん」
「…はい」
 ヴン…
「えっ…!?」
 くぐもった音がしたと思った瞬間、名雪の秘裂に当てられていた氷の球がはじけたような感覚が生まれる。
 ヴィー…ヴィーヴィー
「ひっ…つ、つめたいっ!」
 不意に走った突き刺すような冷たさに、思わず名雪は声を上げていた。秘裂の表面だけではなく、割れ目の中にまで氷のカケラが入ってきている。そして、それを撹拌するかのように新たな振動が名雪の秘部を襲う。
 栞が、氷の球の芯にさっきのボールを使っていたと気づいたのは、一瞬遅れてのことだった。
 ヴィーッ…
 名雪の全身の中でも、特に熱の集中した部分。そこに細かく爆ぜた氷のカケラが張りつき、どんどんと溶けて名雪の温度を奪っていく。
「あっ…んああっ」
 しかし、栞がボールを名雪のいたいけなクリトリスに当てた瞬間、名雪の中からは反転するかのように激しい熱が沸き起こってきた。
「名雪さんったら、ココがそんなに好きなんですか?」
 栞がからかうような口調で言う。
「ん…んーっ」
 焦点を失って空の一点を見つめる名雪の目から、幾筋かの涙がこぼれ落ちる。ぴくんぴくんと全身が震える。温感を滅茶苦茶に操作されて、名雪は体力を消耗した上に理性をだいぶ奪われてしまったようだ。名雪は狂気を発したかのような虚ろな表情になる。
 だが、理性のタガが外れた事によって、名雪の肉体は淫靡なバイブレーションに対して極めて素直に反応し始めていた。ボールによってかき回されたヴァギナからは透き通った液体がスポンジを絞ったかのようにぽたぽたとあふれはじめ、クリトリスはピンピンに充血してひっきりなしの快感を名雪に与える。
 その熱く滑らかな液体が秘部をまんべんなく濡らし、氷のカケラは綺麗に溶け去っていった。
 栞はもうほとんどボールを操作することなく、ただクリトリスの中心にぴたりとボールを当ててじっと待つ。栞の白い頬も、興奮のためかうっすらと紅潮していた。少し物欲しそうに足をくねらせたりもしていたが、コートを羽織った状態では外部からそう簡単に刺激を加えられるはずもない。やがて栞はそれを諦め、名雪の太股にべろを当てて垂れてきた液体を舐め取る。
 雪の上にもたっぷり垂れ落ちているその液体を舐め取ることで、栞は少しでも興奮を味わおうとしているようだった。
「あっ…ああ…あぁ」
 そのねっとりした遠回しなキスが引き金となって、何かが収束していくような声を名雪が上げる。
 …ビクン…ビクっ、ビクぅっ…
 腰をがくがくと震わせて、ぬじゅっとはしたない液体を雪の上に放出しながら、名雪はあえなく絶頂に達していた。
「…名雪さん、こんな所でイッたんですね…えっちです…」
 栞が揶揄するように言うが、その声も少しかすれているようだった。ぐっちょりと濡れたボールを名雪の秘部から離しながら、ぬらりとした光を帯びたそれを呆然と見つめる。
「…こんなのも面白いかもね」
「え? あ、お姉ちゃん」
 いつの間にか、香里は校舎の側に近づいて背伸びするような動作をしていた。そして、何かを折り取ると栞に見せる。
「あ…つらら」
「結構立派なもんよ。ほら」
 ざく、ざく…
 香里は近づいてきて、栞にそのサイズを提示する。
「本当だ…」
「栞、あなたはこれでしてあげるから、コートまくってあそこを出しなさい」
「えっ…お姉ちゃん、私は…」
「こんな所まで来て、ローターじゃ面白くないわよ」
「べ、別に私は」
「それに、このまま家に帰ろうとして、途中で栞がトイレに行きたがるよりはマシよ」
「……ええと…」
「ずっと待っていても、全然出てこないんだから」
 香里が言う。
「………」
 栞が横に目をずらすと、名雪は中にうごめくボールをくわえこんだまま、栞の事をじぃっと見ていた。栞が顔を赤くする。
「…栞ちゃん、トイレで何してたの…?」
 名雪は下半身裸のまま、栞をジト目で見つめて言う。非道な仕打ちの仕返しのつもりらしい。
「え、えっと…そ、そんな事言う人嫌いです…」
 栞は言いながら、そそくさと自らの濡れた部分を晒す準備をし始めた。



10/19
「や、やめてぇっ、香里…」
「名雪、こんなに濡らしてるのに言っても説得力ないわよ」
 ぐぐぐ…
「き…きついよっ」
「力を入れるからよ。もっと力を抜きなさい」
「うっ…うー」
 ぬぷっ。
「ほら、入ったわ」
「や、やだ、苦しいよ…」
 ぐぢゅっ…
「や、やめてっ…そんなに深く入れたら、取れなくなっちゃう」
「いいんじゃない? 四六時中ローターを入れっぱなしで歩くの。スケベな名雪にはお似合いよ」
「ひ…ひどい…う…ああ」
 ぶーん…
 香里がスイッチを入れると、すっかり名雪はおとなしくなってしまった。すんすんと鼻を鳴らしながら、悲しそうな目で香里の事を見つめる。
「感じてるじゃない」
「感じてなんか…ないよっ…」
 ぶぅぅぅぅん…
「あっ…あっ」
 名雪の目が一層うるんで、切なそうな吐息が大きくなる。自分の体を自分の腕で抱え込んで、何かに耐えている事が明らかな体勢になる。
「感じているわね?」
 香里はスイッチを見せつけ、今にも振動を強めそうな様子で名雪に言った。
「…う…感じているよ…」
「いやらしい。どこが感じるのよ?」
「ろーたーが入っているところ…」
「それはどこ?」
「あ、あそこ」
 ぶうううんっ…ぶううんっ…ぶううんっ…
「あ、あっ…! お、お○んこっ!」
 煽るような断続的な振動に、名雪は卑語を叫ぶ。
「名雪はいつもそこをどうしているの? 答えなさい」
 香里が冷ややかな目で見つめる。
「わ、私は、毎日自分のお○んこを指でさわって、おなにーしています」
「救いようのない変態ね…足を前に出しなさい」
「あ、足?」
「両足を私の方に。早く」
「う、うん」
 名雪はすらっとした脚を揃えて、香里の方に出す。香里はその両足首をつかんで、ぐいと持ち上げた。
「…???」
 意図が読めないのか、名雪は混乱した顔をする。ローターの挿入された、濡れそぼった無毛の秘裂をさらけ出しているというのに呑気なものだった。
 …ぐぢゅっ!
「うわっ…香里っ!?」
 ぐぢゅぐぢゅぐぢゅっ!
 香里は靴下を脱いだ足の裏を名雪の股間に押しつけて、激しい振動を加えた。名雪は反射的に腰を動かして逃げそうになるが、香里が名雪の足首を両方つかんで思い切り引き寄せているために逃げようがない。
 ぐぢゅぐぢゅ…ぢゅくっ!
「い、いやああ…やめてっ」
 乱暴な振動によって、名雪の中からあふれ出た蜜液が香里の足の裏でしきりに粘っこい水音を立てる。中に入ったローターを押し込むような、名雪の陰唇を無茶苦茶に変形させているような動きだった。
「この変態っ! こんなのでも感じるんでしょ!?」
「はぁんっ…そんなことっ…ないよっ…ううっ…」
「嘘おっしゃい! 感じてるくせにっ! あそこをぐちょぐちょにしてよがっているのに、よく言うわねっ…!」
「違うぅっ…そんなこと…ないっ…ああっ…はあああっ…」
 がくがくと揺さぶられて震える名雪の声。直接の刺激自体はそれほど大きいものではないのだろうが、勢いのある香里の責め立てと言葉の辱め、それに合わさってくるコンスタントなローターの振動が名雪の興奮をかなり高めているようだった。
「イキなさいっ! イキなさい、名雪っ!」
「いやっ…やだよっ…」
「我慢してもムダよっ…ほら、イキなさい、イクのっ!」
「いやあっ…やだ、やだ、やめて…はあっ…はああんっ…いや…イッちゃ…う…」
「ほらほらっ! もうおしまいね」
「あっ…だめ…イク…イク…イクぅぅぅぅっ!!」
 ビクッ…!
 その瞬間、香里は確かに足の裏へ名雪が昇天した痙攣を感じた。
「う…あっ…ああ」
 ばたっ。
 快感に震える名雪の両脚を、香里は乱暴に絨毯の上に放り投げた。
「はあ…はあ」
 名雪は数秒間そのままの姿勢でいたが、
「ふぅっ」
 不意に目を開くと、ぴょこんと絨毯の上に起き上がる。
「良かったよ」
 微笑みながら、絨毯の上に座った香里の横にぴったりと肩を並べる。そして、香里にしなだれかかるようにして密着した肌を押しつけた。
「…でしょう?」
 香里は頬を赤らめながら、口元に手を当ててこほんと咳払いする。
「うん。私も香里とおんなじくらい感じちゃったね。こんなにいいなんて、自分でも思わなかったよ」
「加減を知らずにやられたこっちはいい迷惑よ…全く、変なこと思いつくんだから」
「香里だって思いっきり私にしたよ」
「幅跳びやっている人間の足と一緒にしないで」
「やっぱり、それって関係あるのかな?」
「おおありよ…やられてみないとわからないだろうけど」
「ふうん…でも、自分の足で自分のあそこをぐりぐりするのは無理だね」
 言いながら、名雪は香里の秘部に手を当てて揉むようにまさぐった。そこにあるのは、名雪の中にあるのと同じ鈍い振動である。
「や、やだ、やめて…まだ敏感なんだから」
「だらしないよ。一回イッたくらいで」
「あっ…あっ…いや…そこはっ…!」
「香里、もっと慣れないとだめだよ」
「うあっ! あっ! あっ! …やめてっ…お願い…」
「今日は、とっくんだよ」
 名雪は香里の太股をがっちりとつかまえると、股間に顔をうずめた。
 ぺちゅっ。じゅるっ…
「い、いやああああっ…!」
 舌で紅に光る真珠の包皮を剥かれ、直接舐められると香里はそれだけでイキかける。だがそれは、数時間に渡って続く地獄のような快感の始まりに過ぎなかった。



10/16
「ふぅ…」
 かちゃかちゃとティースプーンを触りながらのため息。
「結局、全部才能なのね」
「随分と安易な言葉で片付けること」
 弥生がぴたりと瞼(まぶた)を閉じて、笑む。少し淡めのルージュの色彩から白い歯がのぞいた。
「今となって思えば、弥生が抜けていったのも全部才能だったって気がしない?」
「私に聞かれても」
「弥生と一緒に抜けていれば良かったのかな」
「あら? 4年前には呆れるほどヒステリックにわめき散らしていたのに、随分と意見を変えたものね」
「…もういいでしょ? 皮肉は1時間たっぷり聞かせてもらったわよ。あの時の事は若気の至りだと思って、こっちの愚痴も一つや二つ言わせてくれたっていいじゃない」
「私も、1時間と2分だけきっかり聞かせて頂きましたから」
 弥生がリストウォッチのコンパクトな文字盤をさりげなく示して、他人行儀に言う。
「弥生が呼びつけたんでしょ。しかも用事まで言いつけて。愚痴の言い合いでトントンじゃ割が合わないわよ」
「そうね、美菜子の力をお借りさせて頂いたんだからもう少し私も謙虚になるべきかしら」
 それでも余裕の笑みは崩さず、弥生はティーカップのハーブティを口にした。
「悪党」
「あなたも立派な共犯よ」
「はぁ…そうね」
 美菜子はレイヤーボブの髪をかき上げながら、ティーカップの中に入った赤みがかったブラウンの液体を舐めるように飲む。
「全く、塩酸入ってても気づかなさそうな物を飲ませてくれるわね」
「体にいいのよ」
「お茶で病気が治ればクスリ屋は要らないわよ」
「大学にいた頃は、あなたももう少しナイーブに東洋医学を受け入れていたんじゃなかったかしら」
「へぇ、ハーブが東洋医学? それはそれは、初耳ね」
「言葉のあやよ」
「篠塚弥生様らしくないいい加減さで」
 カチン、とティースプーンでソーサーを叩く。
「…もう帰ろうかしら」
「ご自由に」
「じゃあご自由にさせて頂くわ」
 美菜子は横の椅子に置いてあったハンドバッグをつかむと、立ち上がる。
 大して人も来ない16畳のリビングと6人掛けのテーブルは、そのままならがらんとした印象を与えてもおかしくないはずだ。なのに、美菜子が立ち上がっても不思議と部屋の空気の密度は変化していなかった。弥生によって計算され配置されたインテリアと、弥生自身の存在感だけでこの部屋は生き物のようなダイナミズムを感じさせた。弥生の象徴はむしろスタティックなものであるはずだが、そのスタティックが完璧につなぎ合わされるとそこにはダイナミズムがあった。
「辟易するほど、立派なお屋敷ね」
 美菜子はリビングを今一度見渡してからそう評価をつけ加えた。
「私は行くわ。せいぜい完全犯罪を目指して頂戴」
「送るわよ」
「…意外ね」
「旧友が来てくれたのだから、当然でしょう」
 弥生は数式がはじき出せそうな曲線動作で椅子から立ち上がる。
「確かに、これが今生の別れになるかもしれないわね」
 美菜子は横目で弥生を見ながら言った。
「人の縁はそう簡単に切れる物じゃないと思うわよ」
「あなたが言うと、それほど胡散臭く聞こえる言葉もないと思うけれど?」
「本心よ」
 弥生はテーブルを回り込んで、美菜子の所まで歩み寄る。
「…そうね。とっくの昔に切れて月と地球くらい離れているかと思った糸が繋がってる事もあるんだから」
「そういうこと」
 言いながら弥生はすっと手を伸ばし…美菜子の胸を触った。
「な」
 ふにゅっ…くい、くいっ…
 両手で胸をすっぽりと包み込み、グレイのジャケットの上から遠慮無しに揉む。
「ちょ…弥生っ! そういうつもりで言ったわけじゃないわよ!」
 顔色を変えた美菜子が、ぱっと弥生から飛び下がる。
「弥生がそこまで往生際の悪い女…だなんて…お…おもっ…おもっ…て…てっ…」
 しかし、一気にまくしたてようとした言葉は途中で途切れた。美菜子の瞳が焦点を失い、手にした黒い革のハンドバッグがぽとりと床に落ちる。
「自覚症状が無しに進行するというのは本当のようね」
「ど…どういう…それって…!!」
 美菜子は苦しそうに眉をしかめて、右の腕で自分の胸を抑え込んでいた。
「う…うっ…ああ…!」
 ほどなく左の手が動いて、タイトスカートの生地をぐぐ、と自ら押し込むように抑える。
「な、なんで」
「いきなり実地で使用するわけにもいかないでしょう? あなたアルコールが入ると、人体実験がどうしたこうしたと騒ぐのが得意だったじゃないかしら」
「あ、あれはお酒のせいで…くっ…はっ…はぁぁぁっ…!!」
 美菜子は頭を体に押しつけそうなほどに首を曲げて、全身をわななかせていた。
「情報を与えておいてあげるわね。ハーブティの中に1グラム入れさせてもらったわ。あなたはそれを9割以上飲んだ」
「い、い…1グラム」
 絶望的な声だ。美菜子はその意味する所を熟知しているようだった。
「次の段階に移るわよ」
 弥生は宣言すると、片膝を立てて美菜子の前に身を落とす。まるで銃でも構えているかのような隙のない姿勢で、弥生は美菜子のタイトスカートに手を伸ばした。
 ベルトを外し、スカートを脱がせ、パンティーストッキングをくるくると丸めるように脱がせる。美菜子がジャケットとラズベリーのショーツというアンバランスな格好にされるまで、30秒とかからなかった。美菜子の左の手も、弥生が作業をしている間にいつの間にか力無く下がってしまって、抵抗の役目をわずかたりとも果たさなかった。
「や…やめて」
 美菜子が弱々しく言うが、弥生は舟形にシミが出来たショーツを躊躇無く脱がせる。恥丘に生えたヘアの中央部分は、何かの液体でじっとりと濡れてしまっていた。
「4年前には嫌と言うほど見たわよ」
「それと…これとは…」
 喘ぎながら美菜子は拒絶を示す。緋色に塗られた爪の先がそこに忍びより、細い指で開かれてしまうと美菜子の喘ぎが大きくなった。
「変わっていないわね」
 弥生はそんな評価を加えながら、スーツのポケットを探る。まるで膨らんでいるように見えないそこから、弥生は二つの黒い球を取り出した。正確には完全な球ではなく、楕円形にやや伸びている。
「い…いやよ」
「しばらく味わっていなかったんじゃないかしら? それとも忘れられずに使っている?」
 弥生はその球のひとつを美菜子の秘裂の中、その肉の隙間にぬるりと押し込む。
「ああ…」
 しとどに濡れた美菜子の膣は、そのピンポン玉ほどの球体を軽く飲み込んだ。しかし、美菜子自身は軽く済ませるというわけにはいかないようだ。美菜子の体の震えが大きくなる。
 さらに弥生が球を取り出したポケットに手を入れて何事か操作すると、
 ヴィーン…
「くぅぅぅぅっ…」
 弥生の手に残った球と、美菜子の中に挿入された球が同時に高い振動音を立て始めた。
「16分45秒1番を挿入。50秒スイッチON」
 まさに機械的な言語を吐き出す。
 ヴィヴィヴィヴィヴィヴィ…
「あ、ああ、ああああーーっ!?」
「55秒クリトリスに2番を固定」
 弥生の手が、凶悪な振動を産み出すローターを美菜子の秘芯にあてがう。そして、敏感な肉真珠に、一定の力で圧迫を加えた。痛がらせるほどの無理な力ではない、しかしローターの振動が強烈にいたいけな秘芯を震わせ、不可避の絶頂へと導くには十分すぎるほどの圧迫だ。
「あっ、うあっ、ああ…!」
 その状態から、1ミリたりとも動かない。美菜子は悶えながら腰をしきりに揺らしていたが、弥生はそれを完全にトレースして相対位置を維持する。美菜子は体にわずかに残った力を振り絞って逃げようとしても、全く無意味だった。弥生の偏執的なまでのバイブレーション刺激によって、一直線に上昇する官能を感じる他ないのだ。
 ピク…ピク…!
 決して性に暗くない25歳の女体が、少女のように翻弄されて最後の崖端から突き落とされる。
「いやああ…!」
 ビクンッ! ビクン!
 童顔気味の美菜子の顔が悲痛に歪んで、裸足の爪先からグレイのジャケットに包まれた上半身、そして肩にかかった髪までを同時に勢い良く痙攣させた。さらに膣孔から、体の収縮に合わせて豊富な愛液がにじみ出てくる。この上ない絶頂の表象だ。
「17分22秒、オルガスムスに到達」
「っ……うっ……うっ」
 弥生がクリトリスに当てたローターを離したことで、美菜子はようやく官能の半分から解放された。それでも、膣に挿入されたローターは未だに強い振動を膣壁に与え続けている。
「いい仕事をするわね、美菜子」
「ぬ…抜いて…あそこの…中の…」
「ちょうどいいから、次のオルガスムスを計測させてもらうわ。4年ぶりの味なんだから、もっと楽しみなさい」
 ヴィヴィ…
「いやああああっ…!!?」
 充血して膨れ上がった美菜子のクリトリスに、再び黒い球が押しつけられた。



9/19
「よし、じゃあ商店街寄ってくか?」
「…え」
 栞がぴくんと身体を震わせて、立ち止まる。
「別に、いつもの話だろ」
「そ、それは…そうですけれど…」
 つないだ手を引っ張ろうとする祐一に、栞はうつむいたまま抵抗した。商店街の入り口の方をちらちらとうかがいながら、左の手の指をもじもじとすりあわせる。
「ひ、人が」
「そりゃ土曜だからな」
 商店街は、学校帰りの学生があちこちにたむろして賑やかだった。祐一と栞のように、手をつないで歩く恋人同士の姿もちらほらと見受けられる。祐一と栞がそこを歩いていても、何ら不思議はないだろう。
「だ、だったら祐一さん…」
 だが、栞は祐一の手を引っ張り、道をそのまままっすぐに進んでいこうとする。
「なんだよ」
 祐一は動かずに、ちょっとした笑みを浮かべながら栞の事を見ていた。栞はもっと力を込めて祐一の事を引っ張ろうとするが、祐一は動かない。
「祐一さん…」
 二人の様子は子供っぽかったが、栞の瞳は困惑の色を浮かべた落ち着かないものになってきていた。段々と冗談ではなく、本気で祐一の事を引っ張るような力になってくる。
「い、行きましょうよ」
「アイスは食べたくないのか?」
「食べたい…ですけど、別の所でもいいじゃないですか」
「いつもはここがいいとかあそこがいいとかこだわる癖に…」
「祐一さんっ〜」
 栞は少し膨れたが、そこには多少の紅が見て取れた。栞の透明感すら感じさせる白い頬を知っていれば、普段との差異は簡単に分かるはずである。もちろん祐一も気づいていたが、それを気遣うような言葉はなかった。
 いや、むしろ…
 カチ。
「あっ」
 ぶぅぅん…
「い、いやっ…ダ、ダメですっ!こんなところでっ…!」
 栞は叫び上がりそうな声を必死に押さえて、自分のお腹の辺りを手で押さえる。
「行くか」
 その、力が抜けた瞬間を見計らって祐一が栞の手を引っ張った。栞はバランスを崩して、ふらっと祐一の方に引っ張られていく。
「そ、そんな」
  商店街の中に入ると、すぐに祐一と栞は人混みの中に混じっていった。栞はぐぐぐっと祐一の手を握りしめながら、うつむく。しかし、かえって不自然であることに気が付くとまた顔を上げて、精一杯の平然を装っていた。
「も、もし気づかれたら…」
「そんな小さい音で気づかれやしないって。周りがこれだけうるさいんだから」
「でも…」
 栞は多少内股気味に、雑踏の中を一歩一歩と歩いていく。一度商店街のモザイクタイルの上に足を踏み入れてしまうと、もう戻れないようだった。今方向転換しようとしたなら、栞はかなり不自然な動きをしてしまうことだろう。それで転んだりしたなら、一巻の終わりである。今の栞には、まっすぐに進んでいくのが精一杯だった。
「い、いやです…だ、だめ…」
 だが、次第に栞はまっすぐ歩くのすらおぼつかなくなってくる。その理由は、祐一が右手をポケットの中に突っ込んでいるのを見ればおおよそ察しは付くと言えるだろう。注意すれば聞こえるはずの鈍い振動音は、商店街に入った時に比べてだいぶ大きくなってきていた。
「こ、このままじゃ私…」
「どうなる?」
「そんな事言う人嫌いです…あ…あぅぅぅぅっ…」
 栞が歩きながら、眉をしかめる。栞の中から聞こえてくる音は、少し近づければ分かるほどに大きいものになってきていた。それでも、周りの学生達はおしゃべりやショッピングに余念がなく、祐一や栞のことなどまるで気にしていないようだ。
「あ…!あ…、あ…!」
 とは言え、ますます感じる振動が強くなっていく栞自身はそうも言っていられない。横を通り過ぎる学生服の中学生が、数人で歩いている近くの女子校の制服を着た少女達が、自分の事を注視しているように思えてならない。あるいは、自分の事を噂されているように思えてならない。
 栞は何度もスカートの上を手で押さえそうになりながら、それをぎりぎりの所でとどめていた。そんな事をしたら、ここにいる全員に栞の事を気づかれてしまう。栞は冗談抜きでそう思っていた。
「ゆ、許してください…祐一さん」
 泣き出しそうなか細い声で、栞は訴える。時折、栞は身体を小さく跳ね上がらせ始めていた。
「栞のえっちな匂いがするぞ」
「そ、そんなの嘘ですっ…」
「ほんとほんと。このままじゃ、匂いだけで栞が感じてるってばれるかもな」
「嘘ですぅっ…」
 ついに、栞は目から一粒の涙を落としてしまう。だがそれすらも性感を示す証拠となるものであるかのように、栞は涙を必死になってこらえていた。もう栞には、身体が示す反応全てを押さえ込むことしか出来なかったのだ。
「お願いです…止めてください…」
「じゃあ、その代わりに」
 祐一は栞の耳にそっと口を近づけた。周りの人間が誰も聞いていないのだから、どんなに淫靡な会話であっても耳打ちする必要性はないはずだ。どちらかと言えば、栞が耳元に吐息を吐きかけられて切ない興奮を高めてしまう事の方が主目的のように思える。
「…そんなの…」
 栞は赤い顔で呆然とつぶやく。
 ぶうううんっ…!
「わ、わかりましたっ!だから、止めてくださいっ!」
 これまでよりも一段と強い責め立て。栞はかくんと膝を折りそうになりながら、何度も頭を縦に振っていた。
 歩いている少女にそれほどの変調があっても、周りの人間は気づいていないようだった。

「お」
「祐一さん…」
 込み合ったファーストフードの店の、隅にあるテーブル。ハンバーガーのセットを前に座っていた祐一の前に、栞が戻ってくる。先ほどに比べれば表情はだいぶ落ち着いていたし、振動音もしていない。しかし栞はどこか落ち着きのない様子だった。
「座れよ」
「はい…」
 栞は殊更にスカートを気にしながら、ゆっくりと祐一の向かい側に座る。そして、手提げの鞄を祐一に差し出した。
「どれ」
 祐一は鞄の金具を外して、中を見る。
 勉強道具の入れられている一番上に、かなり大きなシミのついているショーツと、濡れそぼったピンクのローターが入っていた。それが栞の恥ずかしい液であるのは間違いない。栞の淫乱な匂いが、鞄の中にたっぷりと充満していた。さっき外で祐一が言ったのは冗談だったかも知れないが、今の鞄の中はまぎれもない栞の匂いで満ちている。
「そ、そんなに見ないでください」
「すごいぞ。ほら、こうすると糸引いてる」
 祐一が鞄の中に手を突っ込んで、そこから何かを引き上げるように指を上げる。それを、ぺろっと自分の舌で舐め取った。
「栞のえっちな味がするな」
「………」
 栞は下を向いてしまった。
 かちっ。
 祐一が鞄を閉めて栞に差し出すと、栞は少しだけ顔を上げてそれを受け取り、椅子の下に置く。
「約束だからな」
「ひどいです…」
「しなかったら、さっきのを男のトイレの中に置いて帰るからな」
「あんまり…見ないでくださいね」
 栞はそう言うと、固く閉じていた両脚を少しずつ開いていく。祐一は椅子を少し下げて、深く腰掛けた。テーブルがあまり大きくないために、そうするだけでも栞のスカートの辺りがよく見えるようになってしまう。
 すると、スカートの中から何かの灯りが漏れているのが見えてきた。栞がさらに脚を開くと、何か小さな電球のようなものがスカートの下にあるのが見えてくる。
 それは、ペンライトだった。しかし、もちろんそんな物は栞が椅子に腰掛けるまでは無かった。つまり、それは…
「ぶるぶる言わないから、いいだろ」
「こ、これだけでもきついです…」
 栞が言って、指をスカートの裾から中の方に入れていく。そうすると、さらにスカートがまくり上がり、ペンライトが栞自身の秘部に刺さっているのがはっきり見えるようになった。ローターの代わりに、栞の恥ずかしい部分を明々と照らし出す物体が挿入されていたのだ。
「よーく見えるぞ。ぐちょぐちょになってる栞のあそこが」
「…そんな事言う人嫌いですっ」
 そう言う栞の声は、もう余裕を完全に失っていた。栞の指は、もうクレヴァスの一端に触れるまでになっている。にちゃにちゃとした感触を確かめているだけで、栞の性感はぐんぐん高まっていった。
「そんな事してても、終わらないぞ」
「わかって…ます」
 栞の指がクレヴァスを割っているペンライトに絡む。そして、クレヴァスの上端とペンライトの間に空いた隙間に人差し指を差し込んでいった。
 店の中の喧噪の中に、はぁはぁという栞の熱い吐息が響いていく。祐一はそれを固唾を飲んで見守る。既に栞は周囲の視線を見失って、二人だけの空間に入り込みつつあった。
 つん。
「ひっ…」
 栞がビクンと震えて、喉を反らせるほどに頭を高く突き上げる。一瞬遅れてショートカットの髪が揺れ動いた。
「あ…ふぁ…んん」
「どうだ…ここでするオナニーは」
 祐一の声が、栞を現実の世界に引き戻す。栞は耳たぶまでかあっと熱くなったような感覚を覚えていた。
「す、すっごく恥ずかしくて…それでなんだか…」
「興奮するか?」
「か、身体が熱くなっちゃいます」
「栞、本当はいろんな人に見てもらいたいんじゃないのか?」
「ち、違いますっ…私、そんな子じゃありません…」
 言いつつも、栞は自分のクリトリスをねちっこく撫で上げ続けていた。祐一は栞の尖った花芽を見る事は出来なかったが、栞の小さな指がうねるように動き、時折粘液にきらめいているのを見るだけで栞のクリトリスがどんなに容赦ない刺激を受けているのかはすぐわかる。
「こんな事こういう店の中でしてるだけで、もう変態だよな」
「ゆ、祐一さんが言ったんです…!」
「でも、嫌がらずにして、感じまくってるだろ?やっぱり栞は元々好きなんだよ、そういうの」
「嘘です…そんなの…」
 言葉とは裏腹に、栞の指の動きはハイピッチになって露出したピンク色の突起をこれでもかと言うほどにこすっていた。手淫自体にかなり慣れているのは間違いない。あふれかえりそうになった愛液は、辛うじてペンライトによってくい止められ、わずかに椅子の上にこぼれ落ちるだけになっていた。
「あ…ふぅ…ふぅっ」
 栞が、腰をくねらせ始める。ローターによって興奮させられていた栞の性器は、もう限界を迎えてしまったようだ。栞は自分を絶頂に追い込むべく、感じすぎる部分をぐいぐいと指先で押し込んだ。
 がたっ。がたがたっ。
「!!!」
 その瞬間、栞がさっと表情を変えて身を縮める。後ろの方の席に座っていたグループが席を立ったのだ。距離は少々離れていたが、栞は指の動きを止めて硬直する。絶頂に向かうための刺激をキャンセルしようと全力で試みる。
(あ…あっ…あああぁ…!)
 しかし、止まらない。クリトリスに指が触りっぱなしになっているだけで、栞の性感は激しく膨れ上がってボーダーを突破してしまった。後戻りできないレベルに達した性感によって、栞は一瞬で持ち上げられていく。
 …ビク、ビク、ビク…
 そして栞はイッた。
「っ……っ……っ……」
 栞は瞳を思い切り閉じて、自分の反応を最小限に止めようとした。だが、身体がびくんびくんと痙攣してしまうのは避けられない。それでも、栞は何とかして喘ぎ声が出そうになるのを抑え込んでいた。痙攣も、身体が跳ね上がりそうなほどの強いものだったにも拘わらず、椅子にヒップをぴったりと押しつけて我慢する。
 見知らぬ人間の存在を感じながら絶頂を迎えているという、異常な状況に栞は背徳の極みを感じていた。
「…どうだ?オナニー好きの栞でも、ここまでスリルのあるのは初めてだろ」
 ようやくグループが立ち去ったところで、祐一が話しかけてくる。
「はぁっ…そ、そんなの別に好きじゃないです…!」
 ヒクヒクと未だに身体を震わせたまま、栞はやっと充血しきったクリトリスを自分の指から解放した。潤みきった瞳が祐一を見つめる。
「どうだか。今のだって、満足できたわけじゃないだろ」
「そ、それは…」
 栞は口ごもった。
「どうしてほしい?」
 祐一が身を乗り出して聞くと、栞の胸がきゅんと締まる。すーすーと秘部までもが空気に晒されている不思議な感覚に、栞の羞恥心はあっけなく崩壊した。
「祐一さんので…してください」
 浮かされたような栞の声に、祐一は満足げに微笑む。
「よし、これ食べたら行くぞ」
「はい…」
「家に帰って、ローターで栞が連続何回イクか実験だな」
「そんな事言う人、嫌いです」
 栞はうつむきながらも、本気で悲しそうな声で言った。



9/9
(はるか昔、名雪[振動]のラスト部分があっけない…という意見を頂いたような気もするので)
 かちゃっ。
 荷物を部屋に置いた俺は、すぐに名雪の部屋に向かった。
「…祐一っ…」
 それとわかるほどに名雪の声は震えている。もう名雪は服を全部脱いでいた。部屋の真ん中に立って、両手であそこを押さえながら俺のことを見つめている。ちょんと押すだけで、力を失って倒れてしまいそうに見えた。
「どうだ、名雪?」
 この期に及んで俺は聞く。
「は、早くしてよ…」
「そうだなぁ…」
 俺は黒いスイッチボックスを手の中でぽんぽんともてあそぶ。
「い、家に帰ったらしてくれるって言ったんだよっ…」
「そうだな。でもすぐにするなんて言ってないよな」
「そ、そんなのひどいよっ…」
 言った瞬間、あそこを押さえている名雪の指の間から透明な雫がぷちゅっとあふれてきた。
「ううっ…」
「すごいな…ほんとにぐちょぐちょじゃないか」
「や、やだよ…」
 名雪が懇願するような目で俺の事を見る。そう言っている間にも、指の間からあふれた液体は手を伝って名雪の太股に垂れていった。この様子だと、名雪のショーツと俺の貸してやったハンカチは救いようのないほど濡れてしまっていることだろう。名雪の半日分の愛液を吸ったのだ。
「ただでやっちゃあ面白くないよな」
 俺はローターのスイッチを指でつまんだ。
「………!!」
 段々と振動を強めていくと、ただでさえ切なげだった名雪の表情がどんどん余裕をなくしていく。俺の耳にも、名雪の中で動いているローターの鈍い振動音が聞こえるようになってきた。
「だ、だめぇ…祐一、許して…」
「名雪がまたイク前に、俺のを口で出させたらしてやるよ。できなかったら今日はずっとお預けな」
「むっ…無理…だ…よ…」
 名雪は立っているのがやっとという様子だった。指の間からはひっきりなしの透明な液体がこぼれだしていて、もう押さえている意味もほとんどなくなってしまっているほどだ。床のフローリングには、名雪の愛液が小さな水たまりを作り始めていた。
「ほら、そのままだったらまたすぐにイッちゃうぞ?」
「うっ…うー…」
 名雪はふらつく足取りで俺に近づいてきた。手をあそこから離した瞬間、名雪の割れ目がエッチな液体でべとべとになっている様子が丸見えになる。ヘアが薄いだけに、幼くも見える名雪のあそこがぐちょぐちょになっているのはいつ見てもいやらしい光景だった。
 がくんと膝を折るようにして床にひざまづき、おぼつかない様子の手で俺のズボンのチャックを探る。
 じーっ…
 名雪はそれを下げるだけの事に、かなりの時間をかけた。もう意識が危なくなっているらしい。確かに、家に帰ってくるまでの間も何度も転びそうになったり車に気づかなかったりしていた。もう名雪も限界に近づいてきているのだろう。
「はぁっ…はぁっ…」
 荒い息を立てながら、名雪はチャックの中に手を突っ込んで俺のペニスを引っぱり出そうとする。
「おいおい」
 かちゃ。
 そのままだと痛そうだったので、俺は自分でズボンのホックを外した。名雪をサポートする事になってしまうが、仕方ない。
 ばっ!
 俺がそうするや否や、名雪は乱暴な手つきでトランクスをずり下ろした。俺のペニスが名雪の顔の前に思いっきり飛び出す。
「はぁっ…!」
 ちゅぼっ!
 名雪はそれを大きく開けた口でぱっくりとくわえた。
「んっ、んっ、んっ、んっ!」
 なりふり構わないといった勢いで、名雪が頭を前後に振る。
「ふぅ…」
 俺はため息をついた。俺としても一日中名雪の痴態を見せられていてお預けを食らっていた形になるわけだから、名雪の口の中でペニスがしごかれるのは素直に気持ちいい。
「んっ、んっ、んっ…」
 だが、名雪のフェラチオは勢いがあっても細かい動きに欠けていた。ただ俺のペニスの真ん中あたりを唇で包んで、上下に動かしているだけである。ある程度の気持ちよさはあっても、舐められるごとに限界に向かって一歩ずつ追いつめられていくというようなねちっこさはない。
 これなら、数分間は耐えられそうだった。しかし、名雪は…
「んんっ…んふぅーっ…」
 30秒もすると、もう口の動きが止まってきた。
「なんだよ、もうダメなのか?」
「ん…んんん…」
 俺が言うと、名雪は何とかして勢いを取り戻そうとする。だが、ぽたぽたと割れ目から愛液を垂らしてしまっている様子を見ても、名雪の限界が来てしまっているのははっきりしていた。クリトリスでも触ったなら、一瞬で名雪はイッてしまうだろう。
「じゃあ、そのままイッちゃえよ」
 俺は名雪の頭を撫でる。
「うー…ううっ」
 名雪の動きは完全に止まった。俺のペニスは律儀にくわえたままだが、全く刺激が加える様子はない。目をぎゅーっと閉じて、腰をくねらせたり、脚を閉じたり開いたりしているだけだ。全身がぴくぴくと震え始めているのがよくわかる。
「うっ…うっ…んむぅーっ!!」
 ビクン!
 名雪が俺のペニスをくわえながら、今日何度目かわからない絶頂を迎える。
 ビク…ビク…ビク…
「んっ…んぅぅ…」
 不自然な体勢で身体を痙攣させるのは辛そうだった。閉じた名雪の目から、頬を涙が伝う。
「名雪…」
 今日俺が見てきたなかで、一番苦しそうで恥ずかしそうな名雪の絶頂だった。俺は名雪を激しく犯してしまいたいという衝動に駆られるが、なんとかそれを押しとどめる。
 ちゅぽ…
 いきりたつペニスを、自分で名雪の口から引き抜く。
「ゆ、ゆういち…」
 名雪は未だ身体をひくつかせながら、呆然とした目で俺の事を見上げていた。まだスイッチは切っていないのだ。絶頂後の敏感な身体に、まだ容赦ない振動が加わっているのである。しかし俺はローターのスイッチを最強にしたままにした。
「お、お願い…なんでもするから…これ止めて、祐一のでして…」
「せっかく与えてやったチャンスを無駄にしたんだろ?」
「なんでも…なんでもするよ…」
 名雪の声はかすれている。もう理性が半分は吹き飛んでいるのだろう。
「じゃあ、俺の言う質問に答えろ。正直に。そしたら、考えてやるかもしれないぞ」
「う、うん」
 俺の言葉に対し、名雪は何も聞かずにうなずいた。もう名雪の瞳はとろけきっている。半日の間入れていたローターの効果は決して小さくないようだ。俺は名雪がここまで落ちたのを見たことがなかった。
「まず…」
(続く?)



9/1
 …ぎゅ。
「………」
「どうだ?」
「別に」
「ふぅん…」
 浩之は密着していた綾香の背中から身体を離す。
 ぴったりと触れていた肌と肌。二人ともそれなりに筋肉質ではあるが、ほとんど半裸の状態で異性が触れあっていれば一定のニュアンスを醸し出さずにいられない。ただ、綾香の瞳がタオルで覆い隠された事で、二人の間にはより沈黙した空気が入り込んだようだった。
 かさかさ、と浩之がシーツの上を移動する音が部屋の中に響く。綾香は脚を伸ばして座った状態だ。少しだけ脚を開かされれば、ヘアだけでなく性器の様子も露わになってしまうだろう。しかし綾香は身じろぎもせずにいた。
 するっ…
 浩之が軽く綾香のすねを撫でる。
 極めて微妙なそのタッチにも、綾香は何も反応しなかった。
 …ごそ。ごそっ…
 そして、しばしの間が空いてからまた別の音が聞こえてくる。ベッドの下に置いてあるバッグを探る音だ。やがて、がちゃがちゃという音がして浩之が何かを取り出す。
「………」
 気配で浩之がまた身体に近づいてくるのは感じられたが、綾香はやはり無反応だった。
 ……カチ。
 ぶぅぅぅ…ん
「ぇ……」
 振動音に隠れるような微かな声が漏れる。
 ぶぅん…ぶぅううん…
 存在を強調するかのように振動音が高く、低くなる。同時に浩之は無造作に綾香の脚の上へと乗っていった。
「………」
 ごく薄くではあったが、綾香の頬に汗が生まれる。
「やっぱビビってるか?」
「…別に?」
 やや語尾が上がっていた。
 ぶううぅん…
 ひときわ振動音が大きくなったかと思うと、おもむろに綾香の腹部に強いバイブレーションが走った。
「………!」
 綾香は呼吸すら押さえ込んで反応を抑えているようだ。横隔膜に直接響いてくるような振動。そして、今にも敏感な部分に動かされてきそうな振動。
 身体を弛緩させてリラックスすることもできず、綾香はぎゅぅっと脚を強く閉じることに意識を集中させていた。痛くなるほどに筋肉を収縮させ、タオルの下に隠れた目を思い切りつむる。
 ヴ…
 その筋肉をほぐそうとするかのように、浩之はバイブの先端を下の方へスライドさせていった。
 ヴヴッ…ヴ…ヴヴ…
 脚の真ん中のデルタゾーンに滑り込ませたバイブを、強引に脚の間に突っ込んでいく。突然強烈になった刺激に綾香は思わず脚の締め付けを強くしていたが、それによって性感帯の延長線上とも言える太股にますます強い刺激が走っていった。
「っ…っっ…っ」
 ついに綾香がくたりと力を抜いて、侵入に身を委せる。
 ヴヴヴ。
 途端に、クレヴァスの上にぐいと押しつけられたバイブが加減も容赦もない振動を与えていった。間接的にクレヴァスの中のクリトリスはたっぷりと刺激を与えられ、綾香の性感に火をつけていく。
 その状態が、なぶるようにずっと維持された。時折ぐりぐりと回転させてクレヴァスの中に押し込むような力が加えられるが、決して粘膜の中に直接の刺激が与えられることはない。だが、その度に走る不安感と焦燥感が綾香の理性を徐々に突き崩し、刺激と性感の間に築かれた抵抗を少しずつ取り払っていく。
「はぁっ…あ…うっ」
 わずかに開いた唇から、苦しげな息が漏れてくる。滅多な事では取り乱さない綾香だが、閉ざされた視界によって不安と焦燥を倍増させられているのは間違いなかった。周囲の状況を把握できなければ、対処の仕方をあれこれと考えて意識をそらす事もできないのだ。
 いつしか、綾香は透明で熱い液体をクレヴァスの中にあふれさせてしまっていた。どこで崩れ落ちてしまったのかは分からないが、気づいたときには止めようもないほどに液体の量は増えて、クレヴァスから外にあふれ出さないように身を縮めることしか出来なくなる。
「なんか、賭けにもなってないな」
「う…うるさいわよ」
「もう終わりにするか」
 じゅぷるっ。
「んんっ!」
 バイブがクレヴァスを割った瞬間、ぬめった水音が響く。と同時に、綾香のクリトリスは直接バイブの振動に晒された。
「んっ!んっ!んっ!ひ、浩之ぃっ!」
 綾香がうわずった声を上げ、身体を引きつらせる。
 ぬぷ…。
 次の瞬間、クリトリスをこするように動かされたバイブの先端は綾香のヴァギナの中にすっぽりと埋まっていた。
 ぶぶぶ…
「うっ…うあっ…」
 ぬめった粘膜に包まれて振動音は鈍い物になっていたが、その低くなった音のぶんの振動は綾香のヴァギナに伝わって官能を引き出している。奥底に響いてくる振動に加えて、バイブの中程の粒々がうねうねと動いてびりびりと快感を与えていた。
 浩之は振動するバイブを綾香の中に突っ込んだまま、綾香の背中の方にまた戻っていく。
「はぅっ…浩之…」
「俺の勝ちっぽいんだが、いいか?」
「う…うっ…」
 だらしなく開かれた脚の間からバイブを生やした綾香に、いつもの気の強さを見出すことは出来なかった。
 浩之は、綾香を背中からがっしりと抱きしめる。そして顔を綾香の髪に埋めて黙り込む。
「はぁ……はぁっ」
 ぶぶ…
 バイブの振動で追いつめられていく綾香の官能を、浩之は抱きしめて逃そうとしない。加速度的に高まる快感に、綾香はとても耐えきれなかった。
「っ!!」
 ビクン…ビクン、ビクンッ!
「うっ…んぅっ」
 綾香の身体が痙攣し、その度にヴァギナが強く収縮してバイブを締め付ける。臨界を越えた綾香の性感を、さらにバイブが責め立てていく。
 …がくん。
 長い絶頂が終わった時、綾香は精根尽きて首を垂れていた。
「俺の、勝ちな」
「ぬ、抜いてよ…浩之」
 力の入らない身体を浩之に支えられながら、綾香はタオルにじっとりと涙を染み込ませ、シーツに液体の大きなシミを作っている。
「いや。罰ゲームってことで、もう少し入れとく」
「や、やめて…お願いだから」
 弛緩しきった身体に恥辱を感じつつも、綾香は浩之の情けに期待するしかなかった。
8/20
 ………
 ぼそぼそとしゃべる教師の声…ほとんどの人間は聞いちゃいない。それには僕も含まれている。
 だけど、教師もほとんどの生徒に気を配っちゃいないのだ。当然、そっちにも僕は含まれている。そしてほとんどの生徒…いや、全ての生徒は僕に注目なんかしているはずがない。ごく少数の生徒が教科書に目を落とし、他の生徒は束の間の暇つぶしか居眠りにかまけているのだ。
 この恐ろしく視線に欠けた空間の中では、きっと僕の視線はぎらぎらと輝いている事だろう。視線を映すフィルムとかがあったら面白い。赤外線みたいに。
 そこで僕の視線は、暗く不健康な紫色のビームみたいに光って、教室の前の方の太田さんの後頭部に突き刺さっているのだ。
 実際、網膜はそのビームをぼんやりと映しているようにすら思えた。そうかもしれない。僕の網膜は、とっくの昔に現実を映す事に飽きてしまっているのだ。
 太田さんは…そう、その健康的で知的な風貌の中にローターを入れているのだ。僕が入れた。スイッチは当然入れっぱなしである。モーターの音がいつ教師や周りの人間にばれないかと恐怖しながら、太田さんは平静を装って授業を聞いているのだ。
 ぴったりと椅子についているお尻が、小刻みに震えているのが僕には見えた。僕以外の人間はそんな事を知らないのだ。ちょっと活発な所があっても、男友達もそれほど多くなく、ましてや恋人の噂が立ったことなど一回もない太田さんが処女じゃないなんて。
 太田さんの媚肉の中で無機質な物体が強烈に振動し、パンティをぐしょぐしょにしている状況が僕には見えた。あんまり愛液の量が多いものだから、染みだして椅子にまで濡れた跡がついてしまっている。彼女のそういう淫乱さを、誰も想像しない。
「えぇと、前回はこの列だったか…じゃあ、今日はこの列。太田」
「はい」
 静やかだが、自信のある声が教室に響いた。がたっと音を立てて、太田さんが立ち上がる。そして英文を、ちょっと気の利いた発音で読み始める。
 僕は狂喜した。世の中は思ったよりもうまく出来ているのだ。
「The more prevalent view of...」
 つっかえもせず、声を震わせもせず、太田さんは英文を読んでいく。女の子のプライドが作り出すパワーはすごいものなのだ。教師の目の前でローターをぶるぶる言わせているのに、何もないフリをできるなんて。
 太田さんの後ろ姿を見つめながら、僕は机の下に入れた右手を左手の上に乗せて、何かをつまむような形をさせた三本の指をゆっくりと回した。
「...linked by a purely formal system of...」
 心なしか、少し読むスピードが上がった。さすがに無反応ではいられなかったようだ。他の人間には、そんな小さな変化など誤差の範囲で済まされることなのだろう。でも、僕はその原因を知っている。半径1センチ、30度の回転がもたらしたエッチないたずらを。
「よしそこまで。じゃあ田中、訳」
 がた…
 太田さんが席に座る。だが腰を下ろした瞬間、太田さんが小さく身体を揺らしたのを僕は見逃さなかった。
 そのまま太田さんは机に両手を置き、顔を伏せてしまう。
 何事もないように次の人間はノートに書いてある訳を読み上げていたが、明らかに腰を下ろした瞬間に太田さんには変化が起こったのだ。耐えきれる快感のリミットを越えて、独り太田さんは絶頂してしまったに違いない。かれこれ数時間もローターを入れっぱなしだったのだから、そうなって当然だ。
 腰を下ろすときに慎重になりすぎて、周りの人間から不自然に思われないようにした結果だ。異物の挿入されたあそこが椅子にぶつかって、強烈な衝撃が生まれたのだろう。結果、ぎりぎりで耐えていた太田さんも快感の爆発を押さえ込む事ができなくなったのだ。
 衆人環視の中でイクなんて…
 僕はほくそ笑んだ。この事がバレたなら、清純活発な太田さんのイメージは台無しだろう。でも僕はそんな事をしない。周りからピュアだと思われている太田さんにそういう事をするのが、楽しいのだ。
 そして…周りからピュアだと思われていたいという願望が、太田さんを僕に縛り付けているのだ。
 まっ、これ以上いじめるのも可愛そうかな?
 僕は再び机の下に手を入れて、さっきとは逆側にひねった。
 そうしてからしばらく経つと、太田さんが伏せていた顔を起こす。ようやく絶頂から解放されたのだ。
 だけど、僕がまたいつ動かし始めるのかという恐怖に、ずっと太田さんは震えているはずなのだ…一度イッて敏感になった身体は、あっという間に彼女を追いつめて第二の絶頂に追い込んでしまうだろう。そうなれば太田さんも、ポーカーフェイスでいる事はできない。押し殺した嬌声を漏らしたり、愉悦を顔に浮かべたりしてしまうはずだ。
 僕は優しいから、そこまではしないけどね…
 慈愛の言葉を口の中で言ってから、僕は机の上に腕と顔を乗せて眠りに落ちていった。

「ん…」
 あちらこちらから喧噪が聞こえてくる。授業が終わったのだ。
「香奈子、今日の帰り服見に行くの付き合ってくんない?」
「いいわよ、何か目つけてるの?」
 そこの中から、僕はひとつの声を正確に選び取る。太田さんだ。そちらの方を向くと、女子と話をしている太田さんの姿があった。
「そういうわけじゃないけど…なんか最近服足りないなぁって。久々に香奈子の抜群のセンスに頼ってみたくなりました、ってとこよ」
「贅沢ね…それだから金欠だって騒ぐことになるのよ?」
「いーじゃない、人の勝手でしょ」
「あ、瑞穂も誘おうかな」
「あの子、言っても来ないんじゃない?」
「そうかも」
 勝手にしてくださいな…
 服の一枚や二枚、なんだと言うんだ。
 いつも通りの爽やかな太田さんの顔だけをイメージに焼き付けて、僕はまた眠りに落ちていった。休み時間の睡眠じゃ、夢を見ることすらできないとわかっていたが…


7/28
(既にシリーズ化してきちゃったな、これ…過去ログで香里の辺りを参照してくださいませ)
 カラ…
 小さな音だった。引き戸をゆっくりとずらす音。喧噪に満ちた教室の中に、その音が聞こえるはずもない。
 そして教室の中に、ふたりの少女が入ってきた。栞とあゆである。制服のリボンの色を見れば、1年生なのは明白だった。
 無言で、しかもふたりで入ってきた下級生に、ドアの近くにいた生徒が少しだけ注意を向ける。しかし声を掛ける事はしなかった。二人とも思い詰めたような表情をして、黒板の前を教卓の方へまっすぐ歩いていたからだ。
 たん、たん、たん。
「………」
 だが、それと同時に響いていく別の足音には、数人の生徒が注意を向け始めていた。香里である。
 音の大きさという意味では栞とあゆの足音とそう変わるわけではない。ただ、形容しがたい威圧感がそう聞こえさせるのだ。幾人かの生徒が静かになったことで、ますます香里の足音が通るようになる。それは段々と周囲に波及していって、香里に注目する生徒の数はどんどん多くなっていった。
 たん。
 教壇の上に足を乗せる、決定的な音によって教室は完全に静まり返る。7時間目のホームルーム直後の喧噪が嘘のようだった。
 一部の生徒は、何か知った様子で目配(めくば)せしあっている。残りの生徒は、何事が始まるのかと、興味よりも不安が先行した表情で見ている。教壇の下で佇む二人の下級生の姿も、謎を大きくしている原因だった。
「あゆ」
「う…うぐぅ…」
 短く香里が言うと、あゆが泣きそうな顔になった。しかし香里は冷ややかにその顔を見つめるだけである。栞は心配そうな表情をしつつも、顔は伏せたままだった。
 たん…
 あゆが震えた足を教壇の上に乗せる。かなり大きい教壇だ。人が乗っても、教卓に隠れてしまうという事はなく、高くなった部分から全身を提示できるスペースがしっかりとある。
 たん…
 栞は、下を向いたままあゆに続いた。
「…うぐぅ」
 あゆは、今にも泣き出しそうに、教室の中央へと向き直る。ただでさえ背の低い身体は、教壇の上に立っても全く大きく見えなかった。それは栞も同じことである。
 それだけに、香里の教室中を見下ろすような威圧感が際だっていた。
 ちら、と香里があゆの方を見る。それだけで、あゆはピクン…と身体を震わせた。普段から感じている上下関係に加えて、この雰囲気に完全に飲まれてしまっている。
 ぎゅっとあゆが自分の制服の上着をつかんだ。まるで、誰か別の人間の服をつかんでいるかのように、力加減の合っていないつかみ方だ。緊張しきっている。
 …ばさっ。
 無理矢理にそれをまくり上げて、あゆは制服を頭から脱いでしまった。カチューシャでまとめられていた長いブラウンヘアーが大きく乱れる。
 その下は、下着すらつけていなかった。小さな乳房が、数十人の視線の下に露わになる。
「う…うぐっ…」
 しかも、その乳房の先端には、ピンク色をしたローターがテープで貼り付けられていた。伸びたコードは背中の方に回されている。
 沈黙は守られていたが、教室の中の空気が一気に色めき立った。露骨に動揺を表す者、目をそらす者、硬直して食い入るように見つめる者。最初から知った顔をしていた生徒達は取り立てた反応を返していなかった。また、あゆが服を脱いだことで、状況を把握したかに見える生徒が増えたようだった。
 あゆは涙を目に滲ませながら、スカートに手をかけて、一気に下ろす。何もかもかなぐり捨てたような乱暴な動きだ。だが、その後には隠すことすらせずに全裸の身体を晒した。当然のように、下半身にも下着はつけられていない。
 秘部からは、ローターと同じ色をしたバイブが生えている。長すぎて、あゆの中に収まりきっていないのだ。そのコードとスイッチボックスは、あゆの脚に回された黒いバンドで固定されていた。
 少女達の視線があゆの肢体に向けられる。この特異な環境の女子校においては、性玩具を目にした経験のあるものは多いだろう。かと言って、それが衆人環視の場で使われているのを見る事など絶対にあり得ない。
「栞?」
「は、はいっ」
 カチ。カチ、カチ。
「う…うぐぅっ…うぐぅっ!」
 名前を呼ばれた栞は、ビクッと身体を震わせて、手の中にあった3つのスイッチを立て続けにONにした。
 ヴヴ…ヴ…
 くぐもった振動音が教室の中に響く。身体に無理矢理密着させられているぶん低い音だったが、それが淫靡さを強調していた。
「ひ…ひぅっ…ううっ…」
 あゆはたまらず身体をくねらせ始めるが、隠したり、目を閉じたり、視線をそらしたりする事は許されていない。ぽたぽたと涙を流しながら、異常な辱めに耐えるだけである。
 いや、それだけでは済まされなかった。
「あゆ」
「うぐっ…うぐぅっ」
「あゆっ!」
「あ…」
 香里の叱責にあゆは身を震わせる。そして、一瞬の躊躇の後に指を秘裂に向かって伸ばしていった。
「うっ…」
 暴れ回るバイブの上の、秘裂の間に埋もれたクリトリスを指で探る。
 見ている少女達に秘裂の中の様子は見えないが、ほぼ全ての少女にとって経験済みの行為であるはずだ。何をしているかは明らかである。
「うぐぅっ…」
 あゆがそこを何度もこすっていると、たまらずにバイブの隙間から透明な雫が垂れ始めた。バイブの立てる振動音も、よりぬめりを帯びたいやらしい物になってくる。
 しかし、あゆは行為をゆるめず、むしろ段々と激しくしていった。
 完全に香里に言いなりのあゆの姿に、教室内の数十の視線が集中している。ついでに言えば、他人の自慰など滅多に見られる物ではない。初めは気の毒そうにしていた視線やそらされていた視線も、もうあゆの痴態に向けられて動かなかった。
「私は」
 しかし突如香里が口を開くと、注目が一気にあゆから香里に動く。
「美坂香里は…生徒会長に立候補します。クラスのみんなの応援をお願いするわ」
 ざわっ、とまた空気が動く。
 状況を把握している人間達にとっては、ついに来たかという確認。知っていない人間にとっては、香里の言葉と行為の間の関連性が見いだせない事による混乱だ。
「そ…」
「イ…イキます」
 何か香里が続けようとした所に、あゆが突然言う。
 確かに、太股を伝って落ちる愛液の量は相当なものになってきていたし、クリトリスを刺激する強さもスピードも激しくなっている。元々敏感なあゆが、そう耐えられるわけもない。
「うっ…うぐぅっ…イクぅぅっ…」
 ビクンッ!
 あゆは立ったまま身体を跳ね上がらせた。
 ビクン、ビクン、ビクン…
 上履きと靴下しか身につけていない肢体を、弾けるように痙攣させる。露出されたオナニーの絶頂を、あゆはとどめる事も出来ずに晒し続ける。
 カチカチ…カチ…
 栞は静かに玩具のスイッチを切った。最初からずっと、視線は下に向けられたままである。
 だんだんだんっ。
 余韻の感覚に未だ震えているあゆの横を、不機嫌そうな香里が通り過ぎた。
「あ…おねえちゃ…」
「うぐっ…うぐぅ…」
 それを栞は追おうとしたが、あゆの姿を見て立ち止まる。
 ガラっ…ビシャっ!
 香里が引き戸を開け、乱暴に閉めて教室を出ていく。
「あ、あゆちゃん、服着ないと…」
「えぐっ…うぐぅ…」
 あゆは泣きながら教卓の陰に隠れ、栞の差し出した服を身につけていった。バイブとローターを外すことはできなかったが、垂れた愛液を拭いて処置をする。
 教室の中には、ようやく喧噪が戻り始めていた。その内容に耳を閉ざしながら、あゆと栞はそそくさと教室を出て香里を追った。


7/18
 がちゃ…
「あ…あ…ごめんなさいっ…ボク、あやまりますから…こ、これを…」
「…随分と素直になったわね」
「ごめんなさいっ、ボクが悪かったんですぅぅっ…だ、だから、もう、助けてください…」
 あゆは後ろ手に縛られて、足首も拘束された状態で床に転がされていた。ロープは香里の机の脚につながっており、ロクに動くことは出来ない状況である。
「あ、あゆちゃん、このままじゃ…早く抜いてあげないと…」
「いいのよ栞。もう少し思い知らせてやりましょ」
「い、いやだぁっ!謝りますっ、なんでもしますっ…こ、このままじゃボクおかしくなっちゃう…」
 あゆの秘裂からは…ピンク色のバイブレータが生えている。あゆの中で強烈な振動とうねりが発生しているのは、くぐもってはいるがかなり大きめのモーター音を聞くだけで明らかだ。
 最初は破瓜の激痛をもたらしたそれも、栞の丁寧な愛撫とクンニリングスを経て、すっかり快楽の道具と化してしまっていた。
「お、お姉ちゃん…このままじゃあゆちゃんが」
「うぐぅ…栞ちゃん、助けて…」
 思い切りバイブを突っ込まれたまま、スイッチを最強にされて数十分もの間放っておかれたのだ。あゆの顔は涎と涙でくしゃくしゃになっていたし、フローリングの床には愛液が水たまりを作ってしまっている。全身が小刻みにふるふると震えて止まらないようだった。
「頼む相手が間違っているわよ。栞は関係ないわ」
「あっ…。…お願いです、美坂先輩…ボクを許してください…」
「それ相応の誠意が必要ね」
「なんでもします、おち○ちんをなめるのもざーめんを飲むのもいやじゃありません…ボクの中に入れてもらってもいいです…」
「当たり前でしょ、そんなこと」
 香里は冷ややかに言い放った。
「じゃ、じゃあ…んああっ…」
 あゆが腰をよじる。
「お、おなにーを美坂先輩の前でしたり…」
「普通ね」
「そんな…あ、あの、外でおなにーしたり…」
「外の、どこ?」
「ひ、ひとがいなければ学校とか…夜の公園とか…ひぅっ…」
 あゆがまた腰をくねらせる。そのまま、しきりに身体をくねらせ始めた。
「……そうね」
「あっ…じゃあ、これを抜いて…」
「気が早いわよ。まず、私は美坂先輩の言うことならなんでも従いますって言うのが先ね」
「そっ、そんなこと言ったら…うぅ…何を言われても…」
「口答えする気?」
「ちっ、違いますっ…はあぁんっ…わ、わたっ、私はっ、美坂せんぱいのっ、言うことなら…あ…ぁ…!」
 あゆの息が急に荒くなる。全身がひくつき始め、あゆは何かに耐えるかのように身を固くしていく。
「最後にイカせるのも悪くないわね…どうせ今から抜いても、もう間に合わないし」
「た、助けて…」
 あゆがかすれた声で言うが、香里は冷たく笑みを浮かべてそれを見つめるだけだった。栞は心配そうに見ているが、口を挟んだりあゆを助けに駆け寄ったりする様子はない。
「うぅ…イクぅ…」
 ビクンッ…
 あゆが力無く背中を反らせた。
 ビクン!ビクン!
 あゆ自身に体力はほとんど残っていなかったようで、ぐったりとしたままにあゆは悶えた。だが、身体は勝手に痙攣したし、その痙攣の度に透明な雫がバイブの隙間から勢い良く吹き出している。数十分の責め立ての後にこうなるのだから、性への耐性はかなり持っているらしい。
「…気絶したみたいね」
 そしてついに動かなくなったあゆに歩み寄りながら、香里が言う。そして秘裂から引き抜いたバイブは、べっとりと初々しい愛液に濡れて光っていた。
「…あゆちゃん、このままで大丈夫なんでしょうか」
「いいんじゃない。とりあえず、セレモニーにはこの子を使うわよ」
「セレモニー…?」
「そろそろ、本格的に戦いが始まるって事よ…栞」
 香里は不敵な笑みを浮かべながら、ぺろりとバイブに付いた愛液を舐め取った。


7/7
「な、なんで、浩之ちゃん、そんなの」
「いや…ちょっとこういうのも試してみて面白いかと思ったからな」
「い、いやだ…なんだか、怖いし…」
 あかりは浩之の手にあるものから目をそむけて言う。そこにあるのは、ごくごく小さなサイズをした、口紅よりやや大きい程度の大きさのローターだった。
「別に、痛いわけじゃないし、いいじゃねーか」
 浩之はそれをぽんっ、と宙に放ってから無造作につかむ。
「で、でも…」
「な?」
 浩之はあかりの膝の上辺りに陣取って、左手を太股の上に滑らせる。
「あっ、浩之ちゃん…」
「別に大していつもと違うわけじゃないって」
「でも…」
 浩之は右の手も同じように滑らせて脚の付け根の所に近づけていく。肌に、光沢のあるピンクの玩具を触れさせながら。
「あ…」
「な?別に触っても変な感じじゃないだろ」
「…浩之ちゃん、それ自分で買ったの?」
「え?」
「そういうの、浩之ちゃん、自分で買うの?」
「…な、なんでだよ」
「なんだか、浩之ちゃんそういうの自分で買わないんじゃないかと思ってたから」
 あかりは済まなさそうな表情になりながら言う。浩之はそれを見ていると、どことなく罪悪感のような物を感じてしまった。
「…プレゼントだよ」
「プっ、プレゼントなの!?」
 あかりは素っ頓狂な声を上げる。
「誕生日に、どっかのバカが『これで楽しみなさい』とか言って渡してきやがったんだ」
「…ひょっとして、志保?」
「知らねーよ」
 浩之はぶっきらぼうに言って、突然玩具をあかりの秘裂にあてがう。じわじわと近づけるような配慮などなく、ただいきなり真上から密着させた。
「質問、それだけでいいだろ」
「…志保が渡してきた時、それって箱に入っていたの?」
「は?」
「その…その、それ」
「箱?んなもん無かったぞ。ガッコで突然手の平に押しつけてきやがったんだ」
「それって、新品じゃないってことかな…」
「………」
「ご、ごめんなさいっ!なんでもないのっ」
「…ったく…」
 浩之は脱力した声を上げて、小さなボタンを押し込む。
 ヴィ…!
「あっ」
「どうだ?」
「な、なんだか…ブーンってなってる」
「…そりゃそうだろ」
 浩之はそのままあかりの割れ目をなぞるようにローターを動かしてみる。
「く、くすぐったいよぅ…」
 あかりは困った声を上げた。浩之は仕方なく、やや慎重になりながらも秘裂の中にそれを押し込んでいく。
「んん…やっぱり、少しくすぐったいみたい…」
「でも痛くはないんだな」
「うん、痛くはないよ」
 浩之はいつもしているように、粘膜の中心の部分を狙って刺激を加えていった。自分の指にも感じる振動が、どこかいつもと違う雰囲気を醸し出す。直接的に触れていないぶん、かえってエロティックな気もした。
「あ…」
 あかりが甘い声を出すと、蜜が媚肉の間からにじみ出す。
「いつもと変わんないみたいだな」
「浩之ちゃんの指の方が…私、好きだと思う…」
「たまには、こういうのも面白いと思わないのか?」
「で、でも、浩之ちゃんの指の方がもっとやさしいし、柔らかいし、ていねいだし…」
「………」
 反論するわけにもいかず、浩之は返す言葉を失う。
 かと言って今更やめる気もないのか、浩之はローターでぐいっと小粒の突起を撫で上げる。
「ううんっ」
 あかりが鼻に掛かった声を上げた。
「やっぱり、ここはこれでするとなんか違うだろ?」
「びりびりって来て…ちょっと強すぎるかも…」
「それもいいだろ」
 浩之はローターの先の部分をぴったりと突起に当てて、前後左右にほんの少しだけ揺らせる動きを続ける。時折顔を見せるピンク色の突起は確かに膨らみ始めていたし、あかりの漏らす透明な蜜も量が増えてきた。
「いつもより感じてないか?あかり…」
「だって、強いんだもん…」
「悪くないだろ?」
「うーん…」
 快感に頬を上気させながらも、あかりは明確な答えを出さなかった。
「…じゃあ、こっちはどうだ」
「え?」
 浩之はローターを、蜜のあふれ出す部分に当てる。
「えっ?そこも?」
「そうだ」
「で、でもこういうのって、最後にする時の前に気持ちよくなるために使うんじゃないのかな」
「せっかくもらったんだし、出来ることは全部やってみたいだろ」
「でも…」
 浩之が少し力を入れると、あかりのそこは簡単に受け入れていく。すぐに全部がすっぽりとあかりの中に吸い込まれていってしまった。浩之が指を離しても、中から抜け出す様子はない。
「な、なんだか…変な気分」
「でも、これはいつもじゃ出来ないだろ」
「だ、だけど…なんだか変だよ」
 あかりは自分で秘裂の周りに指を当てたりしながら、中から沸き上がってくる振動に困惑している。
「気持ちよくないのか?」
「中に当たってぶーんってなるから…気持ちいいと思うけど…」
「なんか、中途半端な返事だな」
「だって、こんなのはじめてなんだもの…」
 浩之は今一度秘裂を広げて、あかりの様子を確認した。蜜の量は間違いなく増えているし、固く尖った突起はいやらしい色に輝いている。浩之はそのまま人差し指を突起に当てて、ぐりぐりと擦った。
「あっ!浩之ちゃん…」
「どう見たって、感じまくってる時のあかりじゃねーか」
「だ、だって浩之ちゃんが触るから…」
「そうじゃなくて、俺が触る前からそうなってたろ」
「そんなことないよ…浩之ちゃんが触ったとき、ぐーんって気持ちよくなっちゃったし」
「…わかったよ」
 浩之はあかりの突起をバイブレーションするように刺激し続ける。あかりは溜め込んでいた衝動を吐き出すかのように身体を振って反応した。
「あっ、浩之ちゃん、浩之ちゃん!」
「どうだ…あかり」
「き、気持ちいいよっ、浩之ちゃんの指、すっごく気持ちいいよっ!」
「な、なんなんだよ、あかり…突然」
「だって、だって浩之ちゃんの指の方が何倍も気持ちいいんだもん」
「…はぁ、わかったよ」
 浩之はいつもしているような愛撫を始める。あかりの最も感じるその部分に対する、緩急や強弱の差をつけた集中的な愛撫だ。人差し指と中指で交互に、あるいは同時に行う指戯。
「浩之ちゃんっ!浩之ちゃん、浩之ちゃん!私、もう、もうだめぇぇぇっ!」
 ぷぢゅっ!
 あかりが溜まらずに蜜を吹き出させる。
 ビク、ビク…
 見てそれと分かるほどに激しくあかりは身体を痙攣させた。そこに入っていたのが己の分身だったなら、さぞ強く締め付けられた事だろうなどと浩之は思ってしまう。
「ひ、ひろゆきちゃん、これ、ぬいて…」
 息も絶え絶えになりながらあかりが言った。
「そうだな…」
 浩之は指をあかりの密壷に突っ込んだ。
「ふぁ…」
 それだけで、あかりは再びとろけた声を出してしまう。
「あ、あれっ?くそっ、なんだこりゃっ」
「え…どうしたの?」
「…とれない」
「え!?」
「なんか震えてるせいで、うまく指が引っかからないみてーだ…」
「ひ、浩之ちゃんっ!?」
「どうしたもんかな…」
「こ、困るよっ、私、とれないと…」
「…冗談だって」
「えっ?」
 ひょい、と浩之は蜜に濡れそぼったローターを取り出す。
「んなわけねーだろ」
「も、もう、浩之ちゃん、意地悪」
 本気で安堵したという声だ。
「お前が変に強情張って気持ちよくないとか言うからだ」
「嘘言ってないもの…私、浩之ちゃんの指がなくちゃ気持ちよくなんてなれないよ」
 あかりは絶頂の後のぼうっとした表情に戻って、そう言った。
「…じゃあ試すか?」
「ええっ!?」
 ずぶっ。
 浩之が再び震えるそれをあかりの奥深くに突っ込む。
「あ、ああっ!?」


6/26
 ヴ…
「いっ、いやだよっ…こんな変なの」
「でも、ここは嫌そうにしてないよな」
「うぐぅ…言わないで」
 情けない声を上げて、あゆは自らの身体がくわえこんで離さないピンクの玩具に目をやる。自らめくり上げたスカートを持ったまま。
 脚をすり合わせたり腰を上下に動かしたり、あゆも色々としていたが、結局あゆの身体は鈍い振動音を立てるそれをしっかりと締め付けてしまう。
「抜けないよ…これ」
「あゆが締め付けてるからだろ」
「だ、だって、自然にそうなっちゃうんだから仕方ないよ」
「それだけあゆがやらしいって事だろ」
「うぐぅ…女の子の普通の反応だもん」
 段々潤んできた瞳で、あゆはすねた表情を見せる。
「普通じゃないと思うけどな…」
 祐一は、玩具とあゆの秘部が接している辺りに指を当てて、なぞる。そこには、玩具とあゆのヴァギナの狭い隙間からあふれ出した透明な液体で濡れていた。粘りの少ない、さらっとした液体だったが、それはあゆの興奮を証す徴(しるし)に他ならない。
「普通だよ、こんな事されたら濡れてきちゃうのだって」
「そうだな、あゆが一番好きなココにもきちんと当たっているもんな」
「だ…だって、そこが女の子の一番気持ちよくなっちゃうところなんだよ」
 玩具は双頭だった。
「自分で言うことか?」
「うぐぅ…祐一君が言わせたんだもん…」
「違うだろ」
「だ、だって、だって」
 あゆは祐一を見たり視線をそらせたり、落ち着かない様子を見せる。
「今度、名雪に聞いてみるか。女の子なら誰でもこうなるのか」
「そ、そんなのいやだよっ!」
「なんでだ?」
「ボクの事、名雪さんにバレちゃう」
「もう半分は気づいているんじゃないのか?この家に来る回数増えすぎだもんな」
「こ、恋人同士なんだから当然だもんっ」
「名雪がどう思うかは別問題だろ」
「うぐぅ…言わないでよぉっ…はぁ…」
 あゆが熱くなった息を吐く。目は完全に涙目になっていた。
「どうなってきた?」
「うぐぅ、イッちゃいそう」
「普通、そんなに簡単にな」
「こんなもの使ったらそうなっちゃうよ…ふぅん…」
 鼻に掛かった声を出して、あゆは身体をよじらせる。
「要するに、気に入ったんだな」
「ち、ちがうよっ」
「言い逃れ出来ないと思うぞ」
「気持ちよくなっちゃうのと好きになるのは別だようっ…あ…あっ」
 あゆはスカートの生地を持ったまま、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「だ、だめ…ボク、イッちゃう」
 飛び跳ねた拍子に、ぽたっと愛液の雫がこぼれ落ちる。だが、玩具の方はまるで落ちる様子がない。
 ついにあゆはぐっと身体を縮める。
「あ…あーっ!」
 そして、高い声を上げて、あゆが昇天したことを伝えた。




6/7
 ぶ…
 低い振動音が響き始める。
 震えているのは、苺を象(かたど)った自慰用の玩具…つまり、ローターだ。普通の苺ならば極めて大粒であると言わざるを得ないが、きちんと苺の形をしている真っ赤なローターである。
 震えるそれをつまんでいるのは、名雪。
 だが、本来独りで楽しむべきこの状態を見ている人間がいた。祐一だ。
 上半身はシャツだけという姿にされ、下半身からは全ての着衣を取り去った状態。名雪はそれでベッドの上に座っている。両脚を固く閉じているために秘部が直接晒される事は無かったが、ほとんど裸に等しい格好だ。
 そして右手の指でローターをつまんだまま、名雪はずっと逡巡していた。低いモーター音だけが名雪の部屋に響いていく。祐一はそれをじっとながめていた。
「…や、やっぱりできないよ、祐一」
「何を言ってるんだ」
「お願い、許して」
「あのなぁ、名雪」
 祐一はそれらしく腕組みをして名雪の事を見下ろす。
「別に、秋子さんの目に入るところにそれこっそり置いておいてもいいんだぞ」
「えっ…」
「びっくりするだろうな。さすがに秋子さんでも」
「だ…だめっ!!」
 名雪が身体をこわばらせながら叫ぶ。
「だったら、諦めるんだな」
「ひ、ひどいよ…祐一…こんな事する人間だと思ってなかったよ」
「俺も、名雪がこんな事する人間だと思ってなかった」
「………」
 墓穴を掘った名雪は、絶望的な表情で右手に震えるそれを見つめる。
 そして、唇を噛みしめながら両脚をゆっくりと開き、姿を現した秘部にローターを近づけていった。どこかあどけなさの残る名雪の顔、それなりに成熟した名雪の身体、真っ赤なローター。その対比はひどくエロチックだった。
「そ…そんなに、みないで」
 少女として、最も恥ずかしい行為…
「わかってると思うけど、隠すなよ」
 名雪の懇願も全く受け入れられない。
「それから、目を閉じるのも駄目だ」
「そんな…」
 恥辱に染まった表情を浮かべながらも、名雪は露わになった自らの秘部を見つめざるを得ない。
 そこに、名雪はローターをそっと這わせていった。表面をくすぐるような、微かなタッチである。それでも、モーター音がわずかに低くなった事で名雪の身体に振動が伝えられているのははっきりわかる。
 そのあまりに直接的な刺激を受ければ、見られているという異常な状況下でも性的な感覚を感じずにはいられない。眠っていた神経が目を覚まし、段々と名雪の身体を熱くしていく。
 身体に一度火がついてしまうと、収まる事はない。名雪がいかに刺激を小さくしようとしても、少しずつ快感が蓄積されて名雪の判断をおかしくしていく。いつものように快感をむさぼりたいという欲望が、ちろちろと頭をもたげてくる。
 もちろん、祐一が見つめているという事態は変わらなかったのだから、名雪はそう簡単に意識を暴走させる事はしなかった。だが、そのために我慢が我慢を呼び、名雪はどんどん追いつめられていく。表面を撫でているだけなのに、普段感じないような、今にも爆発しそうな欲求が風船のように膨らんでいく。
「名雪…濡れてるじゃないか」
「え…!」
 唐突に声をかけた祐一に、名雪は驚く。
 次の瞬間、それが紛れもない事実である事を知り…名雪が必死で耐えている間に、シーツにシミを作るほどに愛液は垂れてきていたのだ…名雪は顔を真っ赤に染めた。
「我慢するなよ」
「………」
「思いっきり、やっちゃえよ」
 普段想像もしていなかった、残酷な言葉…
 それが名雪の何かを壊した。
 ヴゥン…
 名雪は、ローターを秘裂の中に押し込む。
「うぅ…!」
 待ち望んだ快楽が生まれた。ローターは無造作に名雪の秘裂を割り開き、先端がクリトリスに触れて強烈なヴァイブレーションを加えていく。既に固く張りつめていたその部分は、名雪に激烈な快楽を与えていった。
「あ…ああっ」
 名雪は指でつまんだローターを小刻みに操る。愛液でべとべとになった秘裂の中で、ローターは自在に動いて名雪の性感を刺激した。ぷちゅぷちゅというくぐもった水音が響きわたる。名雪はもはや祐一のことを見ていない。ただ、いつもしているような自慰行為に耽っていた。
 あっという間に快感は膨れ上がり、名雪は限界まで近づいていく。我慢を重ねた分、膨れ上がった快感は圧倒的だった。
 祐一が何か揶揄の言葉を口にしたが、名雪にはまるで聞こえていない。身体をばたんとベッドに倒し、無茶苦茶にローターで秘裂をかき回す。
「…………っ!!」
 そして、背中を大きくのけぞらせて、身体を硬直させた。
「は…あ…はっ…」
 ぽと…
 何も考えられなくなった名雪の手から、力つきたように濡れそぼったローターがこぼれ落ちた。




6/15
 くち…
「んぅっ」
 やや苦しげな声が漏れる。
 その秘部には、派手な色をしたピンクの玩具が差し込まれていた。その先からは同色のコードが伸びて、箱形のスイッチにつながっている。
「なんだかんだ言って、飲み込んだじゃないか」
「い、いや…こんなの」
「締め付けてるぞ」
「い…言わないでっ」
 確かに、差し込まれた瞬間から、留美のヴァギナは中に侵入してきたヴァイブレータをきつく締め上げている。留美が顔をしかめているのを見れば彼女にとって不本意な行為であるという事はわかるが、留美のヴァギナはほとんど不随意筋のように異物を締め付けて彼女自身に性の刺激を与えていった。
「お、折原のでしてくれないといやだっ」
「だったら、自力で抜けばいいと思うぞ」
「手を縛り付けたのはどこの誰よっ!」
 確かに留美は後ろ手に縛り付けられて、座椅子に固定されている状態だった。
「力を抜けば自然に落ちるはずだ」
「ば…ばかっ!信じられないっっ!」
「じゃあスイッチを入れてみるか」
「人の話聞きなさいよっ!」
 浩平は無造作にスイッチに指を伸ばし、パチンとONにスライドさせる。
「ちょ、ちょっ…あっ…!」
 ヴィィィ…
 高いモーター音が響き出すと同時に、留美がビクンと身体を跳ね上がらせた。
「あ…あ…やだ…やだっ」
 留美は脚を開いたり閉めたり、ばたつかせたりしながら必死でヴァイブレータの振動から逃れようとする。だが、締め付けの強さがそれに勝ってしまっているようだった。
「矛盾してる行動だな…」
「す、好きでくわえこんでるわけじゃないわよっ」
「身体は正直ってか」
「オヤジくさい事言わないでよっ!……ん…あ…あああぁっ」
 怒鳴り散らしながらも、留美は機械の容赦ない刺激に対して無反応でいる事はできない。段々と暴れる力が弱くなっていって、ついには身体を小さく震わせたまま浩平の事を見つめるようになる。
「バカ…最低っ」
 少々唾液で濡れた唇から、つぶやく。
「そっちの刺激だけで十分濡れてるな…クリをいじってやろうかと思ってたが、必要ないみたいだ」
「知らないっ」
「俺は見ているだけで楽しいぞ」
「こっちは楽しくないわよっ」
「感じているのを否定するのはよくないな…」
「こんなもんで感じてる自分がいやになるわよっ…うっ…」
 しゃべっていると、無意識のうちに締め付けを強くしてしまうようだった。
「焦らなくても、時間はたっぷりあるからな」
「バカ」
 留美は吐き捨てるように言って、そのまま数分間の辱めに耐えた。
「…あ、…あっ、……ああ…ああっ」
 やがて、留美が切なそうな声を上げながらしきりに腰をよじらせ始める。
「おめでとう。よく耐えた」
「う…嬉しくないっ」
 留美は声をかすれさせながら必死で抗議する。
「あとどれくらい耐えられるか見物(みもの)だ」
「や…やだっ」
 浩平の揶揄。そのせいで、絶頂を我慢しなくてはならないという理不尽な思いが浮き上がってきてしまう。
「ひ…だ、だめぇっ」
 そんな事は不可能なのだが、留美は律儀にもぎりぎりの所まで粘って絶頂を耐えた。
「ひ…ひっ、あっ!?」
 ついに留美の身体は昇天する。
「あ…ああ…」
 悔しさすらにじませた、留美の声だった。我慢しただけ強烈だった絶頂の余韻を、ぴくぴくと震えながら感じている。
「ね、ねぇ…これ、止めてよっ」
 留美の胎内では未だにヴァイブの振動が続いていた。
「ん。もう少ししたらな」
「や、やだっ、バカ言ってないでっ」
「このまま第二回戦だ」
「ちょ…ちょっとっ!?」