Daily-EROtic 志保

12/31
「………」
 静かな口づけだった。
 浩之と志保の唇は、滑らかに合わさってそのまま動かなかった。それだけの緩いキスだ。しかし近くまで寄り添った二人の顔は、同じように満足を映している。志保は目を閉じ、浩之は開けたままという違いはあるが、そこには控えめな満足が共有されていた。
 ちゅ…
 そして志保がかすかに唇を開き、舌をほんの少しだけ差し出す。
 ちゅるっ。
 浩之はその先をさらうような一瞬のタッチで志保の舌を奪い、すっと身を後ろに引いた。
「…ヒロ…」
 長身の浩之の腕の中に抱かれたまま、志保はゆっくり目を開ける。濃密ではない流れるようなキスの後に、志保の言葉はかえって熱っぽく響いた。
「寝ろよ…志保」
「…うん」
 浩之が背中を撫でるようにしながら腕を解くと、志保は浩之のベッドに下着姿の身を移していく。フローリングの上のしっとりした室温から、熱を予感させるソフトなタオルケットの上へと…さらけ出した肌の触れる場を移動させていく。
「ん…」
 枕の上に栗色のショートヘアが乗った瞬間、志保は息を漏らしていた。落ちつかなさそうな素振りで、前髪を何度もかき上げる。
 身につけられたオレンジの下着の明快なトーンから、志保自身が浮いてしまっているようにすら感じられる。志保が自ら服を脱いだ時には見えなかった微細な不安が、浩之にも確実に聞こえ始めていた。
 …どんっ…
「よっ…と…」
 浩之は軽くジャンプしてベッドに上がる。安物のベッドが動いてしまいそうな勢いだった。
「………」
 しかし、その物理的衝撃も志保の表情を和らげるには至らない。志保は相変わらず焦点の合わない目で、トランクスだけしか身につけていない浩之の方をぼんやり見つめていた。
「志保、シャキっとしろよ」
「…だって」
「志保らしくねーぞ。お前の方からリードしてくれるって思ってたくらいだ」
「初めてなんだから、緊張したって仕方ないでしょ」
「俺だっておんなじだって…さっきまではハイテンションしてたくせに」
「…そう…だね…」
「しおれた声出すなよ…調子狂う」
 浩之はざっと前髪を後ろに上げてから、志保をまたぐようにして覆いかぶさる。
「ブラ取ってくれよ。外し方わかんねー」
「教えるほど難しくないわよ」
「背中の後ろにあって見えないんだって」
「…もう」
 志保はやや躊躇を見せたが、自分の背中に手を回してカチカチと金具の音を立て始めた。
 カチ…カチッ
 そして浩之の予想したよりもだいぶ長い時間が経ってから、やっと志保が手を背中から出す。
 ぱさ…
 浩之がその生地をつまんで引っ張ると、抵抗無くブラジャーは持ち上がって志保の胸が露わになった。腰のラインから続く自然な膨らみは、見ているだけでも十分なほどに魅力的だ。
 くにゅっ…
「…んんっ!」
「なにビビッてるんだよ…普通に触っただけだろ」
「手…冷たいわよ…」
「文句言うなって…」
 くにゅ…くにゅっ…
 浩之は下から持ち上げるような手つきで志保の胸を揉み続ける。志保は少し唇を噛んだ不満そうな顔をしてそれを見つめていたが、見る見るうちに顔を真っ赤にしていった。
「冷たいんじゃなかったのか?」
「…んっ…! やめてよ…ヒロっ」
 志保の頬に浩之が手を当てると、志保が片目を閉じて鬱陶しそうな顔をする。しかしそのまま浩之が片方の手で胸を揉み続けると、志保はますます顔の紅を濃くしていった。
「はぁ…」
 少し潤んだ目で、志保が息を吐き出す。
 むにゅー…
「んっ…やだ…やめなさいよっ」
 それを見計らって浩之が志保の頬を引っ張ると、志保はさすがに嫌そうな声を出した。
 むにゅー…ぽんっ
 浩之は胸を揉んでいた方の手まで参加させて志保の頬を左右に引っ張り、そして離す。
「何すんのよっ!」
「志保、すこーし落ち着け」
「そんな事言ったって…今あたし達何してんのかわかってる?」
「H」
「ヒロ、絶対あんたわかってない」
「志保もわかってない」
「………」
 むにゅー…
 ぽんっ。
 浩之がもう一度志保の頬を引っ張ってから離した。
「ヒロ…」
 志保が目を何度かしばたたかせる。瞳に浮かんだ潤みがはっきりしてくる。
 ずるっ!
「あっ! ちょっと! いきなり何すんのよっ!?」
「スキありだ」
 浩之は志保のショーツを思い切り下の方まで引っ張っていく。
「あっ…あっ!」
 志保が脚をばたつかせようとした瞬間、オレンジ色のショーツは志保のつま先から抜き取られていた。
「やだ…」
「だめだって」
 おずおずと秘部に手を動かそうとする志保を、浩之は制止する。
「やだ…やだって言ってるでしょっ…」
 浩之がさらりとしたヘアの合間を指で探ると、志保はその上から手を覆い被せて目をそらした。
 だが浩之はそのまま恥丘の中央の合わせ目の中へと指を入り込ませていく。
「あうっ」
 ねちっ…とした感触が生まれる。志保はピクンと体を跳ねさせてからぎゅうっと手で押さえつける力を強め、浩之はそこで指をじわじわと動かし始める。
「だめ…だめ…ヒロ、だめぇっ…!」
「なんだよ、お前自分で触るの慣れてるって言ってただろ?」
「そ、それは…だからって…」
「手、どかせよ。そんで、お前どうするのが好きなのか教えてくれよ」
「イヤよっ! そんなの…」
「ほら、実演して見せてくれ」
 しゅる、と志保の手の下から浩之の手が抜け出る。
「そんなの…あっ!」
 一生懸命自分の秘裂を押さえている体勢に気づいたのか、志保は慌てて手の力をゆるめた。
「見ててやるから…志保」
「………」
 浩之の声に、志保は沈黙する。
「志保」
 そう言いながら、今度は志保の手の上に自分の手を乗せてぐいぐい押しつける。そうしていると、志保の手が予想以上に華奢なのがよくわかった。こういう関係に至るまでになってもまだ手を繋いだ事もない志保の手は、浩之にとって新鮮だった。
「あかりもね」
「ん?」
「あかりもね…知ってるんだ」
「何をだ?」
「女同士で結構人数いて、なんだったか忘れたけどそーいう話題になって…初体験と…それから…アレをしてるかしてないか」
「オナニーか?」
「露骨に言わないでよっ…」
 志保が恥じらいと抗議を半々にして言う。
「で、あかりはしてないって? それがどうした?」
「そうじゃなくて…!」
「なんだ? あいつもしてたって? 意外だ」
「そうじゃなくてっ! それで、昨日あかりに会って聞いたのよ…」
「しているかどうか?」
「ちょっと聞いてよっ!!」
「…落ち着けよ」
「……ヒロと…してもいいかって…あかりに…!」
「………」
「だって…やっぱりそうでしょ」
「何がそうなのかはよくわかんないけどな…」
「それとこれと、また別でしょ」
「そうなのか…?」
「ヒロとしたいから…あかりから取っちゃったみたいなのは…そうあかりに思われてるかもしれないってだけで…平気じゃいられなくなっちゃうから…」
「バカか。んな事あいつが思ってるわけねーだろ。それに、あかりから取ったって…」
「あんたは鈍感だって事だけ、もう少し自覚しなさいね」
「…ひどい言われようだな」
「いいの」
「…で、何か? 俺としますってあかりに報告してきて…それがお前のオナニーとどう関係するんだよ」
「話がずれてるわよっ…だから、あたしはヒロとするためだけにヒロと付き合うようになったんじゃないって事をはっきり言っておきたかったからっ…!」
「…よくわかんないやつだな」
「それで、あかりは…」
「変な顔してただろ」
「………あたしの気持ちが分かるって言ってくれたわよ」
「あいつも、お前に愛想使わなきゃいけないなんて大変だな」
「違うわよっ! そんなんじゃ…」
「あかりに気を使ってるフリして、お前が一番気を使ってもらってるって事わかれよ」
「……あたしは……」
「反省として、しばらく黙ってろよ」
 浩之は志保の手を秘裂の上からどかしながら言った。
「ただし、どこがお前の感じる場所なのか俺に教えてからな」
「…教えないわよっ! そんなのっ!」
 志保は一声叫んでから、手の平で目じりをぐいとこすった。
「じゃあ俺が探す」
 浩之は無防備になった志保の秘裂を広げて、指をとある一点に密着させる。
「………!」
 不意の一撃に、志保はびくんっと体を震わせて反応してしまっていた。
 くりゅ、くりゅっ…
「あ、あんたっ…」
 指の腹で優しく転がす動きは、多少ぎごちなさもあったが確実に一点を刺激し、興奮させている。ほどなくそこはピンク色に充血し始めて、自身の存在と状態をはっきりと浩之に知らしめるようになってしまった。
「し、知っていたクセに変なこと聞いてっ…!」
「ん? 何をだ?」
「…知らないっ!」
 ぐりっ…
「あっ…」
 いきなりの強烈な刺激で、志保の体はするっと弛緩してしまう。
 ちゅぷっ!
「!」
 その瞬間、志保にも聞こえるほどの露骨な音を立てて浩之の指を透明な液体が濡らした。
 くりゅ、くりゅ…
「あ…ふぁっ…」
 志保は真っ赤になりながら自分の体を制御しようとするが、一度弛緩してしまった体はもう元に戻らない。あたたかな体温を帯びたいやらしい液体は、量を増すことすらあれ減ることは一向になかった。
 くちゅくちゅ…くちゅくちゅ
「………」
 浩之は肥大した秘芯から指を離し、志保の濡れそぼった部分を指でかき回す。志保はようやく収まった激しい官能に胸を撫で下ろしていたが、派手に響く愛液の音は志保の心を羞恥心で満たしていった。志保の動揺は全く収まりそうにない。
「もう、十分だろ…」
「う…」
 ちゅぱっ…ちゅぱ…
 濡れた指先を浩之が舐める。志保は全身がくすぐられるような心地になりながらそれを見つめていた。
「ふぅ………」
 それをすっかり浩之が舐め終わって息をついた瞬間、志保はどきりとする。次に浩之が吐く言葉が怖かった。
 しかしいくら待っても、浩之が感想を述べる事はなかった。
 するっ。
 浩之は実にあっけない仕草で、己の下着を脱いでいた。志保の視界の隅に、黒さを帯びた肉の棒が現れる。
「入るの…?」
「何、言ってるんだよ」
「お、大きいから言ってるんじゃない」
「お前は濡れやすいみたいだから、大丈夫だろ」
 浩之は志保のヘアの辺りを指で押さえ、そのまま上下左右にゆすってちゅくちゅくという音を立てさせる。ぴたりと柔らかい部分に包まれた粘膜は、先程よりもいっそう淫らな音を立てていた。
「いくぞ」
「…うん」
 志保がうなずくと浩之は指で秘裂を広げ、一気にペニスの先端を濡れた部分に密着させる。
「力、抜けよ…」
 ぐぐぐっ…
 そして浩之は少しずつ体重を掛けて、志保の中への侵入を試み始めた。
「ん…う…」
 志保のつぶやくような小さなうめきがあって、
 ずっ…!
 プツンと何かがはじけ飛んだような感触と共に、浩之のペニスは志保の中へと入っていく。
「くぅっ…」
「志保…ガマンしてろよ」
 ずっ、ずずっ、ずっ!
「あっ…ああっ!」
 何段階かに分けての、強い押し込み。それを三回行った後には、肉棒は完全に入り込んでいた。
「あ…は…入ったの」
「入ってる。わかるだろ?」
「う…うん…ヒロの…大きい…」
「普通だ。動くぞ」
「優しく…してね」
「ああ」
 ずちゅっ…ずぐ…
「んっ…ううー…ヒロぉっ…!」
 たっぷりの潤滑液の間に、志保の失った処女の血が混じる。膣壁に加わる摩擦は随分と軽減されているようだが、やはり今は痛みの方が先行してしまっているようだった。
 ずちゅ…ずぐ
 くりゅ、くりゅ…
「はぁぅっ…! ヒロ…あっ…ああーっ…!」
 浩之は速く動かず、慎重に腰の前後運動をさせながら激しくピンク色の突起をこすり始める。
「ん、んん…ああ…」
 くりゅ、くりゅ…
 痛みと快感の混ざり合いに、志保もだいぶ心地がついてきたようだった。緊張しきっていた筋肉も少しずつゆるみ、逆に快感で弛緩するほどになっていく。浩之のペニスをくわえこんだ部分だけは反射的な締め付けを抑えきれないようだったが、それでも痛み自体はだいぶ軽減されているようだ。
「志保…いいか?」
「わ、わかんない…痛いけど…気持ちいい…」
 子供のような甘え気味の声を出しながら、志保は答えた。普段の、特に私服の志保は化粧とファッションのせいか妙に大人びて見えるほどなのに、今の志保は完全に浩之に身を委ねてしまっていて弱々しい。
「初めてのクセに感じてるのか…」
「ヒロ…」
「動けよ、志保。もう大丈夫だろ?」
 ちゅぐっ、ちゅぐ…
「んう…でも…」
 くりゅ、くりゅ…
 浩之が多少乱暴気味に突き、秘核をこする動きを速めても志保は動こうとはしなかった。全身をうっすらと紅潮させながら、不安そうな目つきで浩之を見つめるばかりである。
「俺のことも、気持ちよくさせてくれよ」
「…あとで…してあげるから」
「ん?」
「な、なんでもない…ただ…今は、ヒロだけで動いて…」
「…そうか」
 ちゅぐ、ちゅぐ
 くりゅ…
「あ…ヒロ…」
「志保…」
 二人はぼんやりと呼び交わす。しかし特に意味があったわけではない。饒舌だった二人は、突然静かになっていた。
 ちゅぐ…
 くりゅ…くりゅ
「どうだ…志保、このままならイケそうか?」
「うん…もっと…さわって」
「ああ」
 くりゅ…くりゅ
「ん…んふぅ…」
 志保のカチカチになった部分を、浩之はスピーディな動作で愛でる。志保の中がひゅく、ひゅくっと収縮し始めたのがわかる。
 同時に、浩之の射精感も高まり始めていた。
「よし…志保、抜くぞ」
「あ、うん」
 ぢゅる…
 浩之はペニスを志保の中から引き抜き、興奮しきったその肉棒と志保のクリトリスを同時に勢い良くこする。
「は…あっ…!」
 志保が腰を浮かした瞬間、浩之はペニスを志保の下腹部に向けた。
 びゅっ、びゅっ、びゅびゅ…びゅっ!
 ビクンッ…ビク…ビクンッ…ビク…
「あ…ああ…」
 切なそうな顔をしながらエクスタシーに見舞われる志保の体に、浩之は大量の精液を吐き出していく。勢いよく飛びだしたそれは、志保の胸の辺りまでをべっとりと汚した。
「…はぁ…」
「ヒロの…熱い」
「すぐ気持ち悪いだけになるぞ。拭けよ」
「うん」
 ベッドから飛び降りてティッシュを取りに行く浩之を、志保は涙に濡れた目で見ていた。体に射出された事を微塵も気に掛けていない様子だ。
「ヒロ…あたし、最初の相手がヒロで良かったって思う」
「月並みな事言うなって」
 志保に背を向け、ゴシゴシと自分の肉棒の汚れを取りながら浩之は言った。
「行きすぎると、可愛くなくなるからな。覚えとけよ」
「…それってさ…」
 ティッシュの箱を持って近づいてくる浩之に、志保がつぶやく。
「ヒロ、あたしも可愛いって…」
「それ以上続けたら、二度とンな事言ってやらねーからな」
 浩之は指でピストルを作り、バンと志保の顔に向かって打つ。
「…はぁ…なんか…あたし、もうダメ…」
「頭がもうダメか?」
「ううん…体がふにゃふにゃしちゃって…なんか、笑いたいのよね…」
「笑えよ」
「あははは…」
「もっとイヤな笑いだ。そうじゃなきゃお前には似合わねー」
「何よそれ」
「そうそう。そういう低くて憎らしい声だ」
 浩之は志保の体の上にティッシュを何枚も押しつけて、乱暴に拭き始めた。
「ヒロ…」
「なんだ」
「なんでもない」
「ああ」



8/10
「な、なんなのよっ、これって」
「見たまんま」
「アンタ…いい加減にしなさいよっ」
 志保はがしがしとベッドを揺らしながら抗議するが、両手を縛めている黒いゴムのバンドは取れそうになかった。
「大体、人がぼーっとしているスキをついて勝手にこんな事するなんて…」
「そりゃ、志保が感じまくるのが悪いんだろ」
「うっ…うっさいわねぇ、ムードに浸りたい時は浸りたいのよっ」
「ほほー」
 浩之は志保に近づいていく。
「ちょっと…これどうする気よ」
「そのまんま」
「はぁっ!?ほんとにいい加減にしないと怒るわよ?」
「しらねーよっ…」
「ちょ、ちょっ…ヒロっ」
 ばたっ。
 浩之が飛びかかるように志保の上に覆いかぶさると、バランスの取れない志保はそのままベッドに倒れ込む。
「いった〜い…」
 がっ。
 浩之は志保の腰をつかんで、自分の肉棒を志保の脚の間から目的の場所に定めていく。
「あ、あのねぇっ、今本気で手をひねりかけたのよっ」
「怪我しなくてよかったな」
「あたしを何だと思ってるのよぉ」
「志保」
「バカーっ…」
 そうこうしている間にも、浩之の肉棒は志保の秘裂に到達し、そこから入り口の部分を探り出していた。
「濡れまくりじゃんか」
「…さっきヒロがいじったんでしょ」
「で、お前は濡れたと」
「わざわざ当たり前の事言わないでよっ…ああ〜っ!」
 ずぷ、ずぷ。
「人の話も聞かないでっ…」
 じゅぷ…
 志保が言い終わる頃には、浩之は一番奥深くまで突き刺していた。
「バカヒロっ」
「口答えする割に、普通に入ったよな」
「それとこれはかんけーないでしょぉっ!?それより、あんま動かないでよね…手が痛くなるから」
「はいよ」
 じゅぷ、じゅぷ…
 慣れた動きのストロークが始まる。志保はぶすっとした顔をしつつも、それに合わせて腰を揺らし始めた。
「動いてるな」
「アンタもこっちの方がいいんでしょ…文句言われる筋合いはないわよ」
「だって一番の目的は自分が気持ちよくなりたいからだろ?」
 浩之は片手を志保の身体から離して、志保の敏感な部分をまさぐり始める。
「何よぉ…」
「志保もこっちの方がいいんだろ?」
「さっき十分いじくられたからいいわよ…」
「でもこっちの方がいいんだよな」
 そう言って、肉棒を中に入れたまま撫で続けた。
 しばらくの間はポーカーフェイスだった志保も、数分すると頬を赤らめて、眉をしかめた辛そうな表情になってくる。
「ほら」
「ア、アンタが、しつっこすぎんのっ…」
「やっぱここが一番か?」
「言う義務ないっ」
「そうだな。見りゃわかるもんな」
 そう言って浩之は結合部分をしげしげと見つめた。確かに、合わさった部分の隙間からはじゅくじゅくと透明な液体があふれて止まらなくなっている。
 くりゅくりゅくりゅ…!
「い、いやぁ…」
 浩之が急にピッチを上げて、思い切りこすり立て始めると志保は弱々しい声を上げる。
「志保、どうかしたか?」
「自分の胸に聞きなさいよぉっ…」
 その台詞を終えると、志保はぐいんと大きく背を反らした。そして、力つきたようにばたっとベッドに落ちる。
「い…痛いぃ…」
「イッたな」
「思いっきり手ぶっつけたわよ…」
 志保は小刻みに身体を震わせながら、涙目で訴える。
 じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷ…
「あくぅぅっ…ヒロぉ…」
 だが何も答えずに浩之が大きくストロークを再開すると、志保はあえぎの声を上げるしかなかった。

「ねぇ」
「なんだよ」
「アンタ、あたしとエッチすんの、当たり前のことみたいに思ってきてない?」
「…どーいう意味だ」
「アソビよ?ア・ソ・ビ!彼氏じゃないって、何回も言ったわよね?」
「んなこたわかってる」
「じゃあ。なんで月に2回もやったり、SMまがいの事したりすんのよ…」
 志保は憂鬱そうな目で浩之をにらむ。
「別に…回数とか関係ないんじゃねーか?いろんなもん使うのも、それこそアソビみたいなもんだし」
「………」
 不愉快そうに志保は表情を歪めた。
「なんか…違うのよ、なんか」
「最初誘ったのはお前じゃねーか?」
「最初したからって最後まで責任とんなきゃいけないわけじゃないわよ」
「お前、俺が言うと二つ返事でOKするじゃねーか」
「それは…いろいろあんのよ」
「中途半端なヤツだな」
「…いいわよ、もう…あたし、帰る」
 がちゃ。
 志保は玄関のドアを開けて、振り返りもせずに夜の空気の中に出ていった。
 …バタン。
 やる気のない音を立てて、ドアは閉まる。
 はぁ、と空に点々と瞬く星を見上げてみた。
 もう、あかりとヒロの事なんか考えてると、かえってあかりの事傷つけるのかもしんないな…
 …ヒロ…ほんっっとうにバカ…
 がくん、と首を折って、正面に視線を戻す。
「…あ」
 藤田家の向かいの家の前に、三毛猫が一匹座っていた。
「アンタ、平和そうね…」
 志保が自嘲めいた表情を浮かべながら近寄っていくと、猫は家の庭の方に駆けていってしまう。
 それを見送りながら、志保はさらに深いため息をついていた。


7/27
「あっ」
 あかりが前のめりに倒れそうになる。
「ちょ、ちょっと」
 抱きつかれていた志保も一緒に倒れそうになって、慌ててバランスを取る。あかりも、志保につかまるようにして何とか踏みとどまった。
「…あかり、ぼーっとしてちゃだめでしょ」
 志保は口元をぬぐいながら言う。
「う、うん、ごめん…それで志保、今みたいのでいいのかな…」
「そうねぇ…ドーテイ相手なら、上々なんじゃないの」
「よかった」
「それはいいんだけど、あかり、そろそろ手、離してくれない?」
 あかりは、志保に一方的に抱きついているような姿勢だった。二人の乳房が押しつけられて、密着の感を高めている。
「あっ…うん」
「子供じゃないんだから、そんなにぐいぐい抱きつかなくてもいいでしょ」
「でも、しているうちに不安になってきちゃって…」
「…ま、男の前ならその方がウケるかもしれないわね」
 志保はそう言って、あかりの身体をながめる。
「そうしたら、どうすればいいのかな」
 両手で身体をそっと隠しながら、あかりは訊く。
「えーっと…普通は、男が触る番よね…」
 志保は一歩あかりに近づいて、乳房の上に添えられているあかりの手に触れる。
「どかして」
「…うん」
 あかりはゆっくりと手を下ろした。その手をどこに動かすか迷った結果、両手で秘部を覆い隠す体勢になる。
「なんか、謝られてるみたいね」
「え、…そ、そう…だね」
 どこか間抜けな自分の体勢に気づいたらしかったが、それ以上に体勢を変える事はできないようだった。
「別にいいけど」
 志保はあかりの乳房を両手でつかむと、くっくっ、と速いペースで揉み始める。
「あ…」
「男は加減がわからないだろうから、強すぎたり弱すぎたりするだろうけど…そしたらきちんと言わなきゃだめよ」
 そんな事を言いながら、志保はマッサージ師のような慣れた手つきであかりの胸を揉んでいった。時々突起に指を引っかけるようにしていくと、たちまち先端が紅色に染まって、膨らみ始める。
「気持ちいいでしょ?」
「うん…」
「あと」
 志保はおもむろに片方の乳房に口を近づけ、突起をぷるぷると唇と舌でなぶり始めた。
「ん…志保…」
 あかりの頬が、ぽうっと熱に染まり始める。身体の前に手を合わせた直立不動のまま、熱に浮かされていく様子は少々可笑しかったが、志保もあかりもそんな事は気にしていない。
「もう…こうなっちゃうと、胸だけでも結構…」
 志保は顔を上げると、自分の唾液でぬめらせた部分を指先で強めに刺激する。
「あっ…うん…」
 あかりも肯定した。頬の上気も、段々と高まってきている。
「下、いくわよ」
「え…」
 志保がするっと体勢を低くした瞬間、あかりが戸惑いの表情を浮かべた。そして隠している自分の両手をじっと見つめる。
「このままじゃできないでしょ」
「だけど…」
 と、言葉での抵抗は見せたが、あかりは徐々に左右に手をどけていった。
 志保は自分の口に三、四本の指を左右の手で交互に突っ込んでべたべたにしてしまう。そして、ためらいもなくあかりの秘裂をぴろっと広げてしまった。
「は、恥ずかしいよ…」
「すごいキレイね…あかりのココ」
 志保はあかりの言う事になど耳を貸さず、濡れた指であかりの秘裂の中を確かめ始める。襞(ひだ)の間まで撫でるような細かさだったが、それはもちろん同時にあかりに対する愛撫でもある。
「最初っから、結構気持ちいいんじゃない?」
「す、すこし…」
 あかりは困惑した表情を浮かべながら言う。だが、うっすらと汗すら浮かべているあかりの様子を見れば、あかりの言っている事が間違いではないこと、恐らく実際にはそれよりも感じてしまっている事は明らかだ。
「それで、こっちの方にいくと?」
「ふぅんっ…志保、そっちは…」
「やっぱり…もうあかり、わかるんじゃない」
 志保はじりじりと指を動かしながら意地悪な笑みを浮かべる。
「だって…志保が上手すぎるからっ…」
「ほら、もうここまで来たわよ?」
「だ、だめだよ…志保っ…」
 そうあかりが言った瞬間、志保はぐいと指を進めて突起の上に指を移動させる。
「んんぅ…」
「ここ、一番すごいとこだから…こうするだけでビリビリきちゃうでしょ?」
 志保が優しく突起を押し込む。
「あ、あ…か、からだが…」
「大丈夫?立ってはいられるわよね?」
「な、なんとかだけど…」
 志保はその台詞を聞くと、徐々に指の動きを強くしていった。
「だ、だめぇ…志保…強すぎるよぅ…」
「でも、メチャクチャ気持ちいいでしょ?」
「でも…でもっ」
 あかりは、両手を腰の後ろで合わせて、背中をピンを張らせた体勢で耐えていた。何かの仕置きを受けているような体勢だったが、あかりの表情にはとろけそうな甘さが見え隠れしている。
「ほら…ほらっ」
 志保はもう遠慮する必要はないと見て取ったのか、指の腹を突起に押しつけて、上下に思い切りこすり立てていく。
「私…わたしっ」
 かくん…
「…あかり?」
 突如、あかりが膝を折った。そのまま、ぺたんと床に腰を落としてしまう。
「…来た?」
「なんだか…いきなり、何もわからなくなって…」
 はぁはぁと、かなり上がった息のままあかりは言う。視線も、焦点が合っていなかった。
「上出来、かしらね…」
「これで…大丈夫なのかな」
「まあね…あとは、女がやらなきゃいけないのって…あ」
 志保がぽん、と手を打つ。
「Fしてあげれば?」
「えふ?」
「フェラ。アレを舐めてあげたら、男は大喜びするわよ」
「え…舐めるの?」
「そ」
 志保はウィンクしてみせた。一方のあかりは、意外にもあまり動揺していないようだ。
「で、でも、どうやって練習するの?」
「そ、それは…実際に舌の使い方を訓練しなきゃいけないわよね…」
「うん…」
「それで、単に舐めるだけじゃなくて、気持ちよくさせているのがわかんなきゃいけないわけだし…」
 ちら、と志保があかりの方をうかがった。
「じゃあ、本番じゃないと無理かな…」
「え、えっとさ、あかり」
「なに?」
「気持ちよくなっているのがわかればいいわけよね?」
「うん」
「だ、だったら、相手が男でも女でもそんなに差はないとか、あかり、そう思わない?男相手に練習するわけにはいかないわけだし、気持ちよくなるのがわかるのは人間だけだし…実際、舌の使い方とか、そんなに複雑なわけじゃないし…要は、実際にアソコをぺろぺろ舐められるかって問題でしょ?それだったら…そ、そう、あたしが最初にしてあげるのでもいいし、なんだったらロクキューみたいにして一緒にしてみるのでもいいし…」


6/24
「はぁっ…」
 投げやりな声が、部屋の中に響く。
 壁を覆い尽くすように貼られたポスターはほとんどがミュージシャンのもの、アイドルからロックバンドまで、男だろうが女だろうが関係なく貼られている。共通性があるとすれば、今売れているミュージシャンに限られているという事だろうか。
 カラーボックスの中には雑誌が所狭しと並べられている。それから、手帳が何冊も並べられていた。色彩で言えばひたすらに暖色系、ピンクやらオレンジやら赤やら、そんな色ばかりだ。
 志保が机の上に広げているのは、その中の雑誌のひとつであるようだった。表紙だけ見れば某女性アイドルグループの写真が載っているし、表紙に書かれている記事のタイトルを見ても、芸能界の話と思しきものがほとんどである。しかし実際の雑誌の中身は、ほとんどが性の話で占められていた。読者の体験やら初体験の注意やら、要するに女子高生、女子中学生を主なターゲットとしたセックスの雑誌である。
 志保はそこにある投稿記事のひとつをながめながら、指をうごめかせていた。ジーンズのチャックだけ開けて、ショーツの中に無理矢理右手の指をねじ込んでいるという感じである。
「はぁ…」
 また大きく息をつきながら、志保はページをめくる。
『カレの指がぎごちなく私のアソコに』
 必要以上にカナ書きを多用している文体も、むしろ志保にとっては情景をリアルに描写するものらしい。動作自体は投げやりだったが、志保の頭は妄想に冒され始めているようだった。
 志保は指を動かしている内に、段々と身体の高まりが押さえられなくなってくるのを感じる。しばらくはそのまま我慢していたが、ついに志保はジーンズとショーツを大きく脱いで、剥き出しのヒップを椅子に直接乗せる状態にしてしまった。
 我慢したぶんを取り返すように激しく指を動かすと、すぐラブ・ジュースがあふれ出してくる。服を濡らす心配が無くなった志保は、それに構わず秘裂の中をかき回した。液体のはぜる音がぴちゃぴちゃと立てられる。
『クリちゃんを触られた時、ズーンって』
 ぐりっ。
「あ…ヒロ」
 志保は夢想した声を上げながら、陶酔した顔で良く発達した性器官をまさぐり続ける。
『カレが、「いいか」って耳の近くで』
 一瞬指の動きを止めた。しかし志保にとってそれは実行に移せない行為だった。結局突起を激しくこするだけで満足するしかない。
「ん…ヒロっ、ヒロっ」
 志保は雑誌を閉じて目を固くつぶり、自分の指を錯覚することを試みた。慣れた動作で上下左右に往復させるうちに、その幻覚は段々形を結び始める。
「い、いいっ、ヒロ、もっとっ」
 椅子に腰を押しつけ、喉を反らせる姿は本気で快感をむさぼっているという事をよく表すものだった。次第に志保は身体の中の熱が抑えきれなくなり、意識がかすれてくるのを感じ始める。
「も、もうダメっ…」
 志保はピクン…と身体を跳ね上げて、意識を飛ばした。
「んふぅ…」
 満足げな声を出し、志保は力つきたように椅子に腰を落とす。そして、薄く目を開けて机の上のティッシュに手を伸ばした。
 自ら秘裂を清めている動作の中で、志保は空しさと新たな性欲の高まりを同時に感じていく。
「ヒロ…あかり…」
 計画を実行に移すべきか、移さないべきか…普段から大胆な志保とは言え、容易には決断できないことだった。




6/11
「うっ…や、やめろって言ってるだろ」
 浩之は動けない体勢のまま抗議する。履いていたはずのトランクスはいつの間にか脱がされてしまっており、着ているのは黒いTシャツだけという状況だった。それにしても腹のところまでめくり上げられてしまっており、勃起したペニスをそのまま晒さざるを得ない状況になっている。
 自分のベッドの上で昼寝をして、起きたらそういう状態だったのだ。ご丁寧に、身体のあちこちに縄跳びやらタオルやらの拘束がされてしまっている。へたくそな縛り方とは言え、目に入るところ全てが動けないようにされているような状況で、簡単に脱出できるはずもない。
「いーの。あかり、やっちゃいなさい」
「う、うん…」
「志保、何考えてんだっ!あかりもやめろっ」
 昼寝をしている時に、あかりから枕元に置いておいた携帯に連絡が来たのは覚えている。寝ぼけ眼のまま、カギは開いているから勝手に入ってこいと言ってまた眠り始めたのだが…
「あかり、どうせすぐに言うこと変わってくるんだから、構わずやっちゃうのよ」
「うん…志保」
 その結果がこうだ。
 視界の隅にいるあかりの頭が、自分のペニスに向かって伏せられていくのがわかる。反射的に浩之は身体をばたつかせようとしたが、やはり動く事はできなかった。
 ぺろっ。
「や…やめろって!」
 ペニスの先端に、おずおずとした刺激が走る。その不確かでなま暖かい感触は恐ろしく魅力的だったが、浩之は理性を振り絞ってやめさせようとする。何の前触れもなく幼なじみに性器を刺激されるという事態、しかも隣で別の人間が見ているという事態を、何とか止めようとする。
 ぺろ…ぺろ
 しかし、あかりは黙々と舌を動かした。単純に舌をべろんと出して先端に這わせるだけの、文字通り「舐める」動きだったのだが、それでも十二分に卑猥な行為であるのは間違いない。
「い…異常だぞ!こんなの」
 その行為に溺れそうになる自分を、叫び声で押しとどめる。
「あら、ヒロはこういうの嫌いなの?」
「嫌い…とかそういうんじゃなくて、明らかに正常じゃないだろ!」
 そういう間にも、あかりの行為は続いている。段々、膨れ上がってくる快感を無視できなくなってきた。行為自体が単調なだけに、上手く気をそらす事がかえって難しい。
「いいじゃない、あかりがヒロを好きだって言ったから、きっかけ作ってあげたのよ」
「だ、だったら別の方法がいくらでも…」
「だって、これほど効果的で、好きだってわかる方法ないでしょ?好きじゃない男にFなんて出来るわけないもん」
「………」
 あかりは何も言わず、舌を動かしていた。浩之からは見えなかったが、その頬は真っ赤に染まっている。感じずにはいられない恥ずかしさを埋めるかのように、あかりは行為に没頭していた。何をするにも真面目で一生懸命でセオリー通りというあかりのやり方がこういう行為に持ち込まれると、初めてこういう事をするとは思えないほどにねちっこいフェラチオになる。
「や…やめてくれ、あかり、こんなのおかしいだろ?な?」
 浩之の声にも余裕が無くなってきた。
「しつっこいわねぇ」
 志保はそう言うと、ベッドの上に自らも上がり始める。
「な…なんだよ志保!お前は関係ないだろ」
「特別大サービスだからね」
 そう言って、志保はあかりの横に肩を寄せていく。あかりは舌を出したまま志保の事を横目で見ると、少し左に寄って志保が入ってくるスペースを作った。
「んじゃあヒロ、もう観念しなさいよ〜」
「なっ…!?」
 志保が頭を浩之の股間に埋めていく…あかりと同時に。
 べろん、ぺろっ。
「うあ…あっ」
 浩之は思わず声を漏らしてしまった。二箇所に渡る舌での刺激。しかも、二人とも昔からよく知っている少女なのだ。理性にヒビが入る。
 志保のべろべろという舌でこねくり回すような刺激と、あかりの不慣れな優しい刺激は絶妙のコントラストだった。しかも志保はあかりと違って先端からふくろの部分まで動き回って責め立ててくるので、腰の奥底まで性の感覚が響きわたってくる。
「あ…」
「ね、あかり、ヒロも感じてるのがバレバレでしょ」
 浩之のペニスの先端から、唾液とは違う透明な液体が垂れてきていた。
「う…」
 指の腹で先端をくすぐられる感覚に、浩之はただうめくしかない。
「こうなったら、少しくらい乱暴にしても大丈夫だから、あかり一人でやってやるのよ」
「うん」
 志保は口元をぬぐってベッドから下りた。
 あかりは大きく口を開けて、浩之のペニスをくわえにいく。はむっ、という唇での柔らかいくわえこみの後、舌が触れるねっとりした感触が戻ってきた。
 そのまま舌をペニスの先端に当てて、あふれてきた液体をすくい取る。
「激しくね、激しく」
 ちろちろ、ちろちろ。
 志保の指示に応えて、その動きが速くなった。ペニスの先端をなで回すような強い刺激が幾度も繰り返される。あかりは無我夢中だった。
「あ…あかりっ、ちょい強すぎ…」
「いいのよあかり!ちょっと歯でも立ててやるといいと思うわ」
 ふにっ。
「あっ」
 ほんのわずかにあかりの歯が立てられた瞬間、浩之がらしからぬ声を上げる。
「ヒロ〜、めろめろじゃないの」
「ちっ…違うっ」
「んはっ…浩之ちゃん、なんだか今の可愛かった」
 一度ペニスから口を離して、あかりが言う。
「ばっ、バカ事言ってるんじゃ…な」
 ぺろっ。ぺろぺろっ。ふにっ。
 しかし、それは束の間の中断だった。すぐにあかりは行為を再開する。今度は歯での刺激もサイクルの中に交えた上に、こすり取るような強い刺激を、最も敏感な先端に加えていく。
「う…うわ…やばい、やめてくれ、アレが壊れちまうっ」
「そんなに簡単に壊れやしないわよ。女の初めての方が痛いんだから」
「そ…そういう問題じゃっ…あぐっ」
 かりっ、と音が立つほどに強い歯での刺激。血が滲んでいるかもしれない。
「た、頼む、あかり」
 だが、顔面を蒼白にして懇願しながらも、浩之の性感もまた限界に達しようとしていた。痛みが走る度に波は多少静まるのだが、その後に来るのはさらに強くなった性感の高まりである。必死で押さえ込もうとしても、無理だ。
「や、やめ」
「…!?」
 びゅっ!
「…う」
「ひ…浩之ちゃん」
 あかりは浩之のペニスから口を離すと、口を半開きにして、突然吐き出された少しの精液を舌の上に乗せたまま困惑した表情を浮かべる。
 びゅびゅびゅっ!びゅびゅびゅびゅっ!
「きゃっ!」
 一瞬遅れて、大量の精液が放出された。それは至近距離にいたあかりの顔に勢い良く飛び、口元から髪の毛までべとべとに汚していく。あかりは呆然とした顔をして、その放出を無抵抗で受け止めていた。
「あーあ、かっこ悪ぅっ。出す時は出すって言いなさいよ、しかも変な出し方したし」
 ぴゅっ…
 また遅れた精液が力無く飛んで、あかりの頬に飛ぶ。
「あかり、一度指でしごいて全部出してやんなさいよ」
 言いながら、志保はボックスティッシュをあかりに渡す。
「………」
 そのティッシュで口元の精液をぬぐってから、
「うん」
 とあかりは答えた。
 口の中の精液は、こくんと音を立てて飲んでしまった。そして顔にかけられた精液を、5枚重ねのティッシュで一通りふき取っていく。
 無論それだけで全部取れるはずもないのだが、あかりはまた新しいティッシュを取ると、浩之のペニスの上にかぶせた。水分を吸って、ティッシュがペニスにくっつく。それに構わず、あかりは二本の指で浩之のペニスをしごき上げ始める。
「い…いいって」
「でも…全部出しちゃった方がいいよ」
 出したばかりのペニスへの刺激は、それだけで痛みに似る。しかしそんな事を知らないあかりは、真剣な目で浩之のペニスを刺激していった。
 2分もしないうちに、浩之は再び絶頂を迎える事になる…
 そして、
「うぷっ」
「だ、大丈夫?浩之ちゃん」
 浩之の精液の後始末が終わってしばらく経った頃、あかりは浩之の顔の上に下着を脱いでまたがっていた。
「いいのよあかり。あれだけヤッてやったんだから、満足させてもらうまで許しちゃだめよ」
「うん」
 その答えに、最初よりも躊躇の色が薄くなったのは気のせいだろうか…?
 マヒした頭で考えながら、浩之は舌を動かし始めた。




6/2
「ちょ…ちょっと!イヤよ…こんなとこで」
 抗議の声が上がり、肩に当てられた手を振り払おうとする。
「や…やだって言ってるでしょ!?ヒロっ!」
 肩に掛けられた紐を滑らせると、重ね着されていたキャミソールは簡単に地面へ滑り落ちた。
「やだって…」
 ふっと軽い息が志保の耳元に吹きかかる。
「そ…そんなので気分変わらないってば」
 浩之は志保の耳元に唇を近づけたまま、手探りで器用に志保のブラジャーを外してしまう。そして形良く整った乳房に、指で探りを加えていった。
「だめって…言ってるでしょ…」
 だが、しつこく乳房をタッチされているうちに、段々と先端は尖りを見せてくる。そうなってくれば、指先での刺激に甘い官能を感じずにはいられない。
 2週間もの間「お預け」を食らっていた志保にしてみれば、待ち望んでいた刺激という事になるのだが…
「も、もうやめてよ、ヒロ。きちんと部屋でした方がいいわよ」
 二人は…橋の欄干の下にいた。日はもうとっぷりと暮れており、はるか遠くから街灯や車の灯りが漏れてくるのが頼りだ。
 くりっ、くりっと両の乳首をつままれて転がされる。
「はぅ…ぅ」
 志保の吐息がひときわ熱くなった。そこは志保のウィークポイントなのだ。それは浩之も既に熟知している。ほとんど腫れ上がりそうになるまで、その愛撫は続けられた。
 既に、ジーンズとショーツに隠された部分からは温かい液があふれ出しているはずだった。放っておけば、びしょびしょになってしまうだろう。かと言って、自分から積極的に行為を言い出す気にはなれなかった。いくら人に見えないだろうからと言って、そんな簡単に野外で行為をする気にはなれない。
 しかし…
「う…んはっ」
 浩之は全く行為をやめず、志保の下着はどんどん汚れていく。明るいところで見れば、ジーンズにも浸みだしているのが見えてしまうかもしれない。
「だ…だめ…ヒロ…もう限界…」
 とうとう志保は観念した。
「でも…口でいいでしょ…?ここで寝ると痛いし…」
 確かに、志保達の足元には短い草が生い茂っている。
 浩之の無言を肯定と判断した志保は、身体を反転させて浩之の足元にひざまづく。そして浩之の股間を手で触った。
「こんなにしてるくせに…」
 そして、志保は浩之のジーンズに手を掛けた。