Daily-EROtic 未夜子

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「…あ…!」
 お母さんの指が、ゆっくりと私の性器の上に当てられる。
 滑らかと言うよりも、しっとりと馴染んでくるような感触だった。お母さんはその指先を、私の性器のラインに沿って動かしていく。
「んん…んん…!」
 それだけなのに、私の体からはどんどん力が抜けていった。小さい頃から好きだった、台所の水気に満ちた匂いがお母さんの指先から入り込んできてしまうみたいな感じだ。いつもは、性器の刺激で気持ちよくなってしまう時はものすごく「今の自分」が近く感じられるのに…お母さんの指は、私を性的に興奮させながら懐かしさへと導いていく。
「お…お母さん…」
「郁未、座りなさい」
「うん…」
 お母さんの優しい言葉と同時に、私はぺたんと台所のフローリングに腰をついてしまっていた。お母さんはエプロンの端で指先を少しぬぐってから、私の身体の横に回り込んできて座る。
 ちゅ…
「…!」
 そして私の耳たぶにお母さんは唇を寄せて、舌で舐めてきた。
 ちゅ…ぺろ…
「あ…ああ…」
 普段でも、お母さんの吐息をそんなに近くで感じた事なんてない。お母さんの髪が触れるあたたかな感触も、包み込まれてしまうような柔らかい吐息も、赤ん坊の頃くらいしか感じる事ができなかったんだ。
 でも、今は…
 くちゅり…
「あ…あ…あ…!」
 お母さんは耳を舐めながら、私の性器に再び触れてくる。耳を舌が這い回っている間に、すっかり私の身体は興奮してしまっていた。浅く触れるだけで粘っこい音が立ってしまい、内側まで入ってきてクリトリスに触られると激しい快感が生まれてくる。
 くちゅ、くちゅ…くちゅ
「んっ…んっ…!」
 お母さんの指は私の突起を優しく転がしていた。ほんの少しも間を開けて休ませてくれたりしない、少し厳しさすら感じる責め立てだ。でも私はお母さんにそうしてもらう間に、ますますお母さんに依存したいという欲望を膨れ上がらせてしまった。
 くちゅ…くちゅ…
 体の奥からだらしなく愛液をあふれさせてしまうのが、とても心地よかった。フローリングの上に水たまりができていくのも分かったけれど、全然気にならなくて、むしろ興奮した。いつもなら、後になって自分で拭き取るときに空しさしか残らないけれど…今は後の事なんて気にならなかった。
「郁未…こんなに濡らして…」
「ご、ごめんなさい…」
 優しい叱りの声が、耳元から響いてくる。
「仕方ない子ね…」
「お母さん…おかあさんっ…」
 私は闇雲に手を伸ばして、お母さんのエプロンの下に手を入れる。少しでもお母さんに何かしてあげたかった。
「郁未、落ち着きなさい」
 お母さんはそう言って、私の手を押さえてくれる。そしてやんわりとした動きで、お母さんの足の付け根の部分へと私の手を導いてくれる。
 くちゅ、くちゅ…
 くちゅっ、くちゅっ。
 スカートの下に、お母さんは何も履いておらず…そこは、私と同じように濡れていた。お母さんが私と同じ物を持っているというだけで不思議でしょうがなかったけれど…私は指をかくんかくんと動かしてお母さんが気持ちよくなってくれるように努力した。
「上手よ、郁未」
「お母さん…私…」
 私の身体の中から、生まれて初めて経験するような大きな波がやってきている。
「怖くないのよ」
「お母さん…お母さんっ…」
「私は、ここにいるから…」
「うん…行かないで…お願い…だからっ…」
 ぶるっ…と私の体が震える。
 ビクンッ…! ビクンッ…ビクン、ビクンッ…! ビクンッ…!
「んーっ、んんーっ…んん…!」
 私はお母さんの匂いの中で…絶頂に達した…


「……何をしているの、あなたは」
(………!)
 聞きたくない…
 頭がグラグラする、空間も時間も姿勢も何もかも飛び越えさせられてしまったような不安定な状態。そんな中で、最初に頭に浮かんできたのがそれだった。なんだかわからないけど、聞きたくない。直感的、本能的にそう思っていた。聞きたくない。
「すごい事をしている物ね…」
「……あ……」
 私はむしろ静かな憂鬱さのような物を感じながら自分の状態を確認した。
(…やっちゃったんだ…私…)
 一度目ではない。
 私でない私に起こされるのも、私がこうなってしまうことも。
 蔑んだ瞳で、見つめられることも…
 一度目ではない。
 二度? 三度? もっと? 私には、そのどれかという事しか分からない。
 でも。
 いいんだ。もう終わるんだから…
(………)
 ぷち…ぷち…ぷち…
 私は、自分をつないでいたコードを切った。本当にコードがあったのかもしれないし、私がそう思いこんだだけかもしれない。それは分からない。だけど私は赤、白、黒の三本のコードを切った。暗闇の中でどうして黒のコードが見えたのかわからないけれど、コードを切った。
 ぶぅ…ん…
 そして私は闇より深い所に落ちていくのを感じた。