Daily-EROtic 逆レイプ(気味?)

12/24
(12/6の続き)
「佐藤先輩…」
「…!?」
 ぐったりと廊下の床に崩れ落ちそうになった雅史の耳に、聞き慣れた声が飛び込んでくる。
「こ、琴音ちゃんっ…」
 恐る恐るに顔を上げた雅史の視界にあったのは、果たして琴音の姿だった。浩之の部屋にいた時と全く変わっていない。一糸纏わぬ肢体も、その足の付け根から確実な勃起を見せている肉棒も…
 そして琴音は一人ではなかった。
「く、来栖川先輩もっ…?」
「姉さん…」
 じゅぷっ…
「あうっ」
 綾香が言いながら腰を引くと、雅史は不意の刺激に小さくうめく。
「こ、これは…どういう…」
 まだ物が挟まっているような秘部の感覚に眉をしかめながらも、雅史は芹香に問うた。リビングからちらっと見たときとは違い、裸の上にマントの状態である。
 ただし、芹香の裸体はごく普通の少女のままだった。幸いと言うべきか、この状況下ではもはやほとんど意味はないと言うべきか。平気で雅史の前に秘部を晒している事を考えると、まともな判断力を失っているという意味で綾香や琴音と同じと言えるかもしれない。
「…………」
「え? あの、もう少し大きな声で…」
「ごめんなさい、だって」
 綾香が通訳した。
「え、えっと、どうしてこうなったのか、どうやったら治るのか、状況を教えて欲しいんですけど…」
 返ってくる答えが怖かったが、雅史は訊く。
「魔力を集めるための実験だったそうです」
 応じたのは琴音だった。
「で、でも、なんでそのために僕が…こんな、身体になんなくちゃ…」
 雅史は言いながら顔が赤くなってくるのを感じる。しかしどうにも身の隠しようはなかった。綾香に突かれていた姿勢のまま、ぽつぽつと言葉を続ける。
「ほんとうは、こうなっちゃうはずじゃなかったらしいんですけれど…」
「…………………」
「琴音ちゃんが、佐藤君にもっと積極的に責めて欲しいから姉さんにお願いして…」
「そ、そういうわけじゃっ!」
 綾香の通訳を琴音が慌てて遮った。
「た、ただ、クリスマスに佐藤先輩と一緒になれたらうれしいなって…でも、みんながいるのにこのお家の中でするのって恥ずかしいですし…パーティに出ているみんなが、ちょっと酔っぱらっちゃったみたいな感じになったらいいなって…」
「きょ、今日は僕の家誰もいなかったのに…」
「え、えっ? そうだったんですか?」
「……うん」
 雅史は全身から力が抜けるような心地になりながら首を縦に振っていた。普通の状態の時に、雅史が自分の家に琴音を呼ぶ勇気があったかどうかはわからないが…初体験も、琴音の部屋だったのだから。
「で、それが魔力を集める実験にもなっていたから、一石二鳥って事だったわけね」
 こく。
 芹香がうなずく。
「ところが、集めなくちゃいけない魔力を大きく設定しすぎて、まだ全然足りてない…そんなとこかしら?」
 こくん。
「綾香さん、鋭いですね」
「伊達に長年妹やってないわよ」
「か…軽く言わないでくださいよ…僕は、どうしたら…」
「もっと佐藤君を気持ちよくさせたらいいんじゃないの?」
「あ、綾香さんっ!?」
 雅史の引きつった叫び。
「ええ、そうらしいです」
 それを軽く流し、琴音は芹香の方を見ながら答えた。
 …すると、ポッと芹香が顔を赤らめる。
「それが術を使った人と一緒になると、もっといいらしいですよ」
「じゃあ姉さんと佐藤君が一緒にイッちゃえば一番いいってこと?」
「正解です」
 琴音は芹香の横から抜け出して、綾香の方に歩いていった。
「ちょ、ちょっとっ…琴音ちゃんっ…! そ、そんなのっ…」
 自分の体の後ろに回り込もうとしている琴音に、雅史は必死に訴えかけた。だが琴音は全く意に介さず、綾香の横に並ぶ。
「綾香さんはさっき楽しんだんですから…私にさせてくださいね」
「琴音ちゃんだって、雅史君の中に入れたんでしょ? しかも初めての時に」
「佐藤先輩と私、恋人なんですよ? それなのに、綾香さん勝手にしちゃって…」
「…そうだけれどね」
「ふ、二人とも、そんな勝手にっ…あっ!」
 後ろを向いていた雅史。その視界の端が、すぅ…とかげった。
「く、来栖川先輩っ…」
 目の前に迫った秘裂から視線を上げていくと、芹香の身体が、そして欲情を映した芹香の瞳が雅史の目を奪う。琴音と同じくらいスレンダーでいて、豊満であるべき所は十分に発達している魅力的な肉体だ。芹香はそのどこをも隠さずに、雅史の目の前を支配していた。焦点のぼやけ気味の瞳は、あふれんばかりの性の欲望をふるふると雅史に訴えかけてきている。
「………」
 芹香が、雅史に聞き取れない何かをつぶやいた。
「いきますよ、佐藤先輩っ…」
 琴音の華奢な手が、がっしりと雅史の腰をつかんだ。
「あ…あっ…」
 雅史に出来た事は、判断停止のかすれた声だけで…
 …ぬちゅぷっ。
 ぐに…
「んんんっ…!!」
 ドロドロになった部分に固い物が侵入してくるのと、雅史の顔に柔らかな恥丘の膨らみが押しつけられたのは同時だった。
 ぬちゅるっ、ぬちゅっ、ぬちゅ…
「んっ…んーっ…」
「佐藤先輩の中、すっごいぬるぬるしてます…」
「んん…んん…」
 雅史はハイペースの琴音の抽送に、快感の曲線をぐんぐんと上げながら声を漏らす。雅史の柔壁は、もう固く熱い侵入物を悦んで受け入れられるようになってしまったようだった。綾香のモノよりは小さいが、小さいなりにあちこちをぐりぐりとこすり立ててくる。琴音の小柄な身体はネコのようにすばしこく動き、雅史の身体を蹂躙していた。
 ぐに…ぐにっ
「んふっ…んんう…」
 芹香はいつまで経っても責めてこない雅史に、腰をより強く押しつけて上下左右に動かす。
「ほらっ、佐藤君…姉さんもイカせてあげないと、何度イッても終わらないわよ」
「んっ…んうーっ…!」
 綾香は雅史の身体の横に回り込んで、胸の微細な乳頭部分を指でふにゅふにゅと転がしてきた。決して強い刺激ではないが、頭の先からつま先まで犯されているかのような感覚がじわーっと雅史を満たしていく。
「んっ…んふぅっ…!」
 ぬちゅ…
「………!」
 興奮が芽生えてきたのか、雅史が舌を芹香の秘裂の間に割り込ませる。芹香は一瞬顔をしかめてから唾をこくりと飲み込んでいた。
 ぬちゅ…ぬちゅ…ちゅく
「………っ………」
 芹香は口を半開きにして、腰を強く押しつけたまま腰をグラインドさせる。雅史はゆっくりと移動する芹香の秘部を追いながら、丁寧に舌で舐め上げていった。自分がさっき自慰をするときに発見してしまった敏感な突起を、集中的に舌の先で転がし続ける。
 じゅぷっ、じゅる…じゅぐじゅぐ
「ん…んんん…」
 雅史はそれを極力慎重な動きにしようとしていたが、琴音の激しいストロークの連続に段々コントロールできなくなってきたようだった。芹香の大切な部分に舌をべったりと当てて、べろべろと動物のように舐める動きになっていく。舌の真ん中に小粒の箇所が引っかかるのを感じながら、琴音の腰使いと同じくらいの勢いで芹香に口唇での奉仕を行う。
「……………!!」
 芹香が目を閉じて天井を仰いだ。
 ちゅぷ…
 雅史の舌の上に、酸味を帯びた液体があふれ出す。生まれて初めて味わうそのエキスを、今の自分も分泌しているはずのそのエキスを、雅史は従順に舐め取っていった。そうすればするほどに芹香の愛液は量を増し、雅史の舌が舐め取れないほどになっていく。
 ちゅる…ちゅく
 綾香の出した液体がそのままだから分からないものの、今の自分もそうなっているのだろうか?
 そう思うと、自分の体がじゅくっと熱い液体をにじませてしまったような気がした。
 じゅぐっ、じゅぐ…じゅぐ
「んふ…んっ、んっ」
 雅史はさらさらの前髪を芹香の下腹部に押しつけながら頭を左右に動かす。もう雅史の快感も爆発に近づいてきたようだ。
「…琴音ちゃん、ストップ!」
「え…?」
 綾香の鋭い声に、感極まったような顔で雅史に覆いかぶさっていた琴音が動きを止める。
「え…何、このロッド?」
「そんな…私、もうすぐだったんですよ…」
「そうしなきゃいけないって姉さんが言うんだったら、しょうがないでしょ。佐藤君の中で一回ずつしてあげたから、おあいこでいいじゃない」
「………」
 ぬぷ…
 琴音が肉棒を雅史の中から引き抜いた。相変わらず顔を芹香の秘部に覆われている雅史は、何が起こっているのかよくわからない。ロッドというのが何を指す単語なのか、雅史は記憶の中を探ったが正解は見あたらなかった。
「でも、私にさせてくださいよ」
「…ま、いいけれど。それより、琴音ちゃん、こうやって…」
「わぁ…なんだか、すっごくエッチですね」
 琴音がそう言い…
 …ぬぢゅぅぅ…
「っ!?」
 雅史の中に、巨大な何かが侵入してくる。
「んーっ! んんっ!」
 綾香のモノよりも、さらに大きくて固かった。そして、入ってきた部分の一番先だけが物凄く熱い。
 ぬぢゅっ、ぬぢゅぅぅ…
「んんー、んんっ! んっ!」
 雅史は悲鳴を上げそうになったが、芹香は雅史の頭を押さえ込んでクンニリングスを止めることを許そうとしなかった。
 ぬぢゅっ、ぬぢゅっ…
「んっ、んっ、んんっ!?」
 観念した雅史がまた舌の動きを再開すると、侵入してきた何かもまた前後の運動を始める。ところが中が裂けてしまいそうに大きいのに、熱い部分が雅史の中をこするとビリビリと痺れるほどの快感が生まれ始めた。
「んっ、んふぅぅ、んんーっ! んっ、んーっ、んーっ!」
 雅史は抗えない官能の連続に衝き動かされ、メチャクチャに舌を動かす。芹香はその雅史の奉仕に、かくんかくんと性交しているように腰を押しつけてきた。雅史の顔を強い圧迫が襲い、息苦しさが生まれる。雅史の顔は少女の欲望を溶かした液体でべとべとになっていた。
 ちゅる…べろっ…べろべろっ…ちゅく
 ぬぢゅっ、ぬぢゅっ、ぬぢゅうぅぅっ!
「んっ、んっ、んうううーっ!!?」
 雅史は芹香の身体にしがみつくようにして、全身を硬直させ…
 ビクンッ、ビクンッ、ビク…ビク、ビクッ!
 芹香と一緒に、少女の肉体を思い切りわななかせて絶頂に達してしまっていた。
 びゅびゅっ、びゅびゅびゅるるっ、びゅびゅ、びゅっびゅるる…
 どこからか自分の体になまあたたかい液体が大量に掛けられるのを感じつつ、雅史はまた意識を暗転させていた…


「うー…頭痛いわ…あんまバカして飲むんやなかったな」
「アタシも…こんなに遅くなっちゃったらDadに怒られちゃうヨ…」

「ふーっ…ビールやチューハイと違って、ワインってきっついのね…松原さんが30分で寝ちゃったのを見たときはまだまだアマイとか思ってたけど…これじゃあたしも人の事言えないわー…」
「ど、どうしよう…こんな時間になっちゃって、お母さんに怒られちゃいます」

「もうこんな時間! 良太達、心配してるだろうな…お酒なんて飲むの初めてだったから、こんなに眠くなっちゃうなんて思わなかったよ…」

「綾香さん、芹香先輩あっちにいましたよ」
「あ、ありがと琴音ちゃん。参ったなー…あのワイン、あんなに強いのだなんて思わなかったから…長瀬さん、目が三角じゃ済まないでしょーねー」

「あ、あれ…浩之ちゃん…?」
「えっ…おっ、おいっ!? あかり、これはどういう事だっ!?」
「ど、どういうって…わ、私も…ひ、浩之ちゃん、これはどういう…」
「俺はやってねーぞ! 知らねーっ!」
「私だってっ…知らないよぉっ…」
「た、確か、今日は12月24日だよな」
「う、うん…」
「俺ん家でパーティだったよな」
「うん…」
 あかりは周りをきょろきょろと見て、自分達が間違いない浩之の部屋にいる事を確認する。
「ワイン飲んで…それで…それで…覚えてないな…そしたら…」
「………そうしたら…それで、浩之ちゃんで…私が…」
 きゅ…
「うわっ! お、お前締めるなっ!」
「ご、ごめんっ…!」
「き、きついんだよっ…力抜けっ…」
 浩之が腰を後ろに引こうとする。
「で、でも…どうやったらいいのか…」
 きゅ、きゅぅ…
「あかり、お前かえって締めてるぞ!」
「ご、ごめんなさいっ!」

 雅史はたどりついた自分の部屋のベッドにがっくりと倒れ伏していた。
「………」
 体力的にはともかく、精神の方は部活で朝から晩までみっちりしごかれた時よりも疲れ果てている。家まで帰ってくる間に何度も転びそうになったほどだ。
 あの後、雅史が気を取り戻すと…藤田家にいる人間は全員気を失っていたのだ。芹香も綾香も琴音も、全員服を脱いだまま廊下に寝転がっていた。その身体はみんな普通の少女の物に戻っており、行為の痕跡を感じさせる体液のような物は綺麗さっぱり消えていた。
 雅史の身体も、ちゃんと元に戻っていた。
 そしてリビングにあった自分の服を身につけると、雅史は家中を回りながら裸で倒れ伏していた皆に服を着せていったのだ。浩之とあかりだけは例外だったが。
 いつ裸の女の子が目を覚ますかと恐怖しながら雅史はその難儀な作業を終え、逃げるようにして藤田家のドアを開けた。
 その時…芹香がちょうど目を覚ました。しどろもどろになる雅史に、芹香は全員記憶が飛んでいるはずだという事を告げた。
 それを聞いて、最低限の安堵を得てから雅史は誰もいない自分の家に帰ってきたのだ。
「はぁ…」
 雅史の前にある目覚まし時計が、24時を指そうとしている。
「メリー…クリスマス…」
 ほとんど自虐的にそうつぶやきながら、雅史はとんでもないクリスマス・イヴの幕を閉じていった…



12/16
「ふふふ…いい格好じゃない」
「待てっ! 七瀬、落ち着くんだっ! 話せばわかるっ!」
 浩平は上から見下ろしてきている留美に怒鳴り声を出す。
「積年の恨みを晴らそうと、わざわざ瑞佳をだますまでしたんだから…簡単には終わらないと思いなさいよ…」
「俺が何をしたっ!」
 ベッドに縛り付けられた体を暴れさせながら浩平は叫ぶ。気がついたら下半身裸にされてロープでぐるぐる巻にされていたのだ。いくら浩平がマイペースとは言え、これで驚かないわけがない。
「それとも今日は4月1日か?」
「あいにく、あたしが転校してきてからまだ3ヶ月も経ってないのよね」
「するとディッセンバーフールか!?」
「いい加減、アホな事ばっかり言って誤魔化そうとするの諦めた方がいいんじゃないの? 見苦しいわよ」
「俺はいつでも本気だ」
「そう。じゃあこうしてあげても本気なんだ」
 …ぎゅ
「待てっ! そこをどこだと思ってる!?」
「男の子の、大切な所?」
「わかっているんだったらもっと大事に扱えっ」
「こんな風に?」
 しゅっしゅっしゅっ…
「ち、違う、やめろぉぉっ…」
 リズミカルにペニスをしごく留美の顔は、不敵に笑っていた。
「折原のくせに、随分可愛い声出すじゃない」
「七瀬、正気を取り戻せっ」
「あたしも本気なんだけど」
 留美がしごく手を止めて、体をもっと前にずらしてくる。
「い、いつの間にっ…」
 既に、留美の下半身は浩平と同じように素っ裸になっていた…
「折原の初めて、もらっちゃうから」
「後生だっ! それだけは勘弁してくれっ…」
 …ずんっ。
「うあああああーっ…」
 腰に重い物が落っこちてくるような感触があったかと思うと、浩平と留美の体はつながっていた。
「折原の、ちっちゃい」
「うっ、ぐはっ…お、降りてくれ」
「だめ。あたしがイクまで、許してあげないから」
「な、七瀬ぇっ…」
 留美が腰を落としたと思った瞬間、ずぐんっという腰の奥底まで響いてくるような衝撃が加わってくる。浩平は息が詰まるような気すらした。しかもその衝撃は、ペニスの先っぽにも思い切り叩きつけられているのだ。浩平は抵抗の気力を失ってしまった。
「んっ…はぁ…ふぅ」
 そんな浩平の事を気にしているのかいないのか、留美は淡々と腰を振り続けている。結合部分の近くに、留美は指を当てているようだった。よくは見えないが、自慰しながら腰を動かしているらしい事は浩平にも理解できた。そこが女の感じる部分なのかどうか、浩平にはわからない。留美の秘部の構造を見るヒマすらもなく、挿入させられてしまったのだ。
 それでも、手慣れた指の動かし方を見ている限りでは、そこが何かの意味を持っている所であるようにしか思えない。七瀬もオナニーするのか…と、浩平は妙に納得顔で感心していた。
「七瀬は一日に何回するんだ?」
「んっ、ふっ、ふぅっ」
 浩平の声に対して、留美は全く反応せずに腰を動かしている。二本縛りの長い髪が大きく揺れていた。
 その先が、ピシピシと浩平の頬に当たって痛い。一度や二度ならともかく、なぜか何回も何回も当たってくるのだ。留美が動く先をコントロールしているように思えるほどだった。浩平の質問に答えたくないのを、浩平の頬を叩いて誤魔化しているみたいにも見える。
「な、七瀬、お前は妖怪だったのか…?」
「折原…イクっ」
 …ビクンッ、ビクンッ、ビクンッ…
 留美はぐっと浩平の腹に手をつくと、一方的に宣言して、身を震わせた。何かと争っているかのような険しい表情で、身を小刻みに跳ねさせている。快感をむさぼっていた…という感じはあまりしなかった。
「ん…はぁ…折原、へたくそ」
「な、中に何も入っていないよな…」
 浩平が留美の髪の先を手で触って確かめる。
 ひたすらに噛み合わない会話の中、浩平の意識はふぅっ…と薄れていった。

「うっ…うう…うー」
「瑞佳、折原何か悪いもんでも食べたの?」
「そ、そうじゃないと思うけど…うなされてるね」
 瑞佳は机に突っ伏している浩平を見つめながら、自作らしい弁当箱の中身をつつく。
「あなた、朝からあいつ見てたんでしょ?」
「う、うん…起きたときは…元気そうだったんだけど…うん、元気そうだったんだけど」
 そう言うと、瑞佳はぼっと顔を赤らめてしまった。
「毎朝起こしに行ってあげているばっかじゃ、折原も成長しないわよ。少しは突き放してやんないと」
 瑞佳の顔の変化に気づいているのかいないのか、留美は第三者的な声質で言う。
「う、うん、明日から少しは…浩平一人で起きるようにしてもらおうかな…」
「…何かあったの? 今朝」
「う、うんっ、何もないよっ!? 全然、何もなかったから」
「…瑞佳」
「な、なに? 七瀬さん」
「あんた、いい性格してるわ」
「ど…どういうこと?」
「別に…たぶん、そのまんまの意味」
 瑞佳の事を見ないで言う。そして留美は未だうなされつつある浩平をちらっと見ながら、こちらも自作らしい弁当箱の中身をつついた。



12/6
(11/10の続きです)
「ん…」
 雅史はうっすらと目を開けた。
「あ…あれ…?」
 ベッドに寝ている感触。タオルケットに裸の身体が柔らかく撫でられる、少し不安を誘う感触。しかも視界に入ってくる天井の紋様は雅史が普段目にしている物と全く違う。妙にクラクラとしている頭の中が混乱で満ちていった。
「ええ…と…」
 雅史は目をこすりながらゆっくりと身体を起こし…
「あっ!」
 そして視界の中に入ってきた自分自身の肢体によって、一気に事態を思い出した。ここは浩之の部屋なのだ。
「………」
 男友達の部屋の中にいて一糸たりとも身につけていない状態というのも恥ずかしい事この上なかったが、やはり最大の問題は雅史の体の変化にあった。脚の付け根になくてはならない男根が失われ、代わりに小学生のような無毛の秘裂がひっそりと佇んでいる。
 悪い夢のように思えて仕方なかったが、夢であってもこれほど趣味の悪い状況になる事は滅多にないだろう。無意識の奥の奥まで探っても、ここまで倒錯した性癖は滅多に出てこないはずだ。
 …逆に言うと、それだけこの雅史の体の異常は現実性を帯びているということになる。
 キィ…
 雅史はベッドのスプリングのかすかな音を立てながら、ゆっくりと立ち上がった。
「琴音ちゃん…?」
 きょろきょろと周囲を見渡してつぶやく。だが、やはり琴音は姿を消していた。
 ただし、琴音がこの部屋にいた痕跡はまだ残っている。雅史の秘裂の中にあるぬるぬるとした感触として…
「…あ…!」
 そこに至って、雅史は自分の服が全て消えている事にやっと気づいた。
(帰れない…)
 雅史は顔を青ざめさせる。服は最悪浩之の物を無断で借りてしまう事もできるかもしれないが、ズボンのポケットに入っていた家のカギはどうしようもない。タイミングの悪いことに、今佐藤家には誰もいないのだ。両親は父親の知り合いの家のパーティに行っているし、姉の千絵美はもう出産を終えて佐藤家から嫁ぎ先に帰っている。
「………」
 雅史は憂鬱を顔中に映す。
 しかしそうしてばかりもいられないと思ったのか、ぎごちない足取りでベッドを降り、浩之の机の上に載っているティッシュボックスに向かって歩いていった…


 とんっ…とん…
 雅史はビクビクしながら階段を下りていく。
 浩之の部屋にいる時は気づかなかったが、1階の方からはどこからともなく妖しげな声が響いてきていた。それも一箇所からではない。少なく見積もっても三箇所、ひょっとしたらもっと多いかもしれない。
 そのどれも、あのパーティに出席していた人間の声だった。雅史が普段知っている彼女たちの声とはあまりに違っていたが、やはり声質自体が変わるわけではないし、誰が声を出しているのくらいかは分かる。
 すすり泣くような、甘えるような、苦しがっているような、悦んでいるような…そんな声だった。琴音のあの様子を見ていれば、何が起こっているか想像することはそう難しくない。そして、その声がいつ自分に近づいてきて、琴音の時と同じ目に遭わされるか分からないのだ。
 かと言って持ち去られた自分の服を取り返さなくては動くことは出来ない。この状況を見た後に、浩之の部屋に入って一晩中怯えている気にはとてもなれなかった。浩之の部屋にはカギもついていないし、この家の中でも誰かがやってくる危険性が高い場所であるように思える。
 もちろんどこが安全なのかはさっぱり分からなかったが…とにかく、雅史は琴音を見つけだして何としても服を返してもらう事だけを考えていた。今は浩之の洋服ダンスから持ってきたトランクスとパジャマを着ている。長身の浩之の服は雅史には少々大きすぎたが、この際贅沢は言っていられない。
 とん…
 雅史はやっと階段を下りきる。そうすると、家中から響いてくる妖艶な声の合唱はますます大きく聞こえてくるようになった。いつどこから正気を失った女の子に飛びかかられるか分かったものではない。雅史はよほど玄関から逃げてしまいたくなったが、12月の末にパジャマだけで一晩を過ごすわけにもいかないだろう。
 ほとんど決死の覚悟を決めて、雅史はそろそろと廊下を歩いていく。
 リビングに通ずるドアの向こうは、沈黙していた。これだけ声が反響しているとどこから聞こえてきているのかもわかりにくいが、少なくともドアを開けた向こうでいきなり…ということはなさそうだ。
 かちゃ…
 雅史はドアのノブをそっと引いて、部屋の中に入っていこうとする。
 ………ぷしゅーっ!!
「わっ!?」
 その瞬間、スプレーか何かを噴射するような音が突然響いてきた。雅史は慌てて顔を引っ込める。
「うっ…げほっ…けほぉっ…!」
 雅史は何回かせき込んでから、目に少し涙を浮かべつつドアの向こうをのぞきこんだ。息は止めている。
 すると、魚をちょっと焦がしてしまったかのような煙がリビングに立ちこめているのが見えた。だが目にはあまり染みなかったし、見ている間にどんどんその煙は薄れていってしまう。まるで霧のようにあっさりとした煙だった。
「…あっ!」
 そして視界がクリアになった瞬間、雅史は再び顔を引っ込めてドアを閉める。
 その向こうには芹香がいたのだ。ちらりと見えただけだから精神状態がどうなのかは判断できなかったが、琴音以外の女の子には少しでも会いたくないと言うのが雅史の気持ちだった。
 雅史はじっと耳をそばだてて芹香の反応をうかがうが、芹香は雅史の事を追ってくるような様子はなかった。ただ家中からの艶声が聞こえてくるばかりである。
「………」
 頭の中では芹香が相談相手になってくれるかもしれないという思考がちらりとかすめたが、雅史は普段の芹香の様子を思ってそれを断念する。普段から要領を得ない人間が非常時に突然テキパキと状況判断してくれるなどとはとても思えなかった。
 雅史はゆっくりと廊下を歩いていく。耳に聞こえてくる妖しい声達は、雅史が足を進めるごとに大きく聞こえるようになってきた。
「………?」
 そしてリビングへのドアから進んできて、洗面所の近くまで来たところで雅史が怪訝そうな顔をする。
「……あ…あれっ…?」
 その視線は洗面所のドアの方に向けられているわけでもなく、廊下の前や後ろに向けられているわけでもなく…雅史自身の身体に向いていた。
「んっ…んんっ…」
 雅史がぐっと唇を結んで、胸の辺りを押さえる。
「……んぅっ…んんっ………んんんっ…!?」
 だがその表情はどんどん弱々しい物になっていった。
 …ぺたんっ。
 雅史はその場で廊下にへたりこんでしまう。女の子座りの状態になってしまった雅史は…顔を真っ赤にしながら、自分の胸と股間を押さえていた。
「あっ…あっ…!」
 切なそうな声を上げながら雅史は目を閉じ、ぷるぷると身体を震わせていた。突然雅史の身を襲った変化は、衝動の高まりだ。どんな衝動か、それはこの家の状態を見れば一目瞭然である。
 何をきっかけとしたのか、それとも眠っていた物が目覚めただけか、雅史もまた家の中にいる少女達と同じような熱い感覚を身体の中にたぎらせ始めてしまったのだ…
「あ…ああっ…うううっ…」
 雅史は手を、特に股間を押さえている方の手を、動かしそうになっては必死にとどめている。雅史が何をしそうになっているのかは明白だった。しかし雅史はそれを廊下の真中で行うという事に激しく羞恥を覚え、理性の限りを尽くして抵抗する。
「ひっ…あっ…んはっ…」
 それは自分との戦いだったが、どうやら雅史にとってあまりに分が悪い戦いであるようだった。雅史はどんどん陥落に向かって攻め立てられていく。
「…あっ! 浩之ちゃんっ…!」
「…え…?」
 そこへ、間近から大きな声が響いてきた。
「あかり…ここすっげー濡れてるぜ…?」
「ひ、浩之ちゃんのが…浩之ちゃんのが欲しいからっ…だから…!」
「だから、オナニーしてたんだな」
「う、うんっ、そう…そうっ…」
 臆面もないあかりの声。
「よし…こっちに尻向けろよ…」
「うんっ…」
 洗面所の中だった。誰もいないように思われた洗面所の中に、実は浩之とあかりがいたようだ。なぜ声すら聞こえてこなかったかは…今の会話を聞けば大体想像がつく。
「うっ…あっ…はぁぁぁんっ…!! ひ、浩之ちゃんのっ…浩之ちゃんのが入ってくるぅっ…!」
「ぐちょぐちょだぞ…あかり」
「だ、だって…浩之ちゃんがっ」
「俺は何にもしてねーぞ。あかりが自分の指で濡れまくったんだろ」
 露骨な会話と…粘膜が絡み合って聞こえる、ぐぢゅっぐぢゅっという大きな水音。パシッパシッという、肌と肌が叩きつけあう音。洗面所のドアが閉まったままでも、そこに展開されている状況はありありと想像できた。
「うっ…うくぅっ…」
 その超近距離からの誘っているかのような行為に、雅史は自らの欲情も燃え上がらせてしまう。寸前まで追いつめられていた雅史は、もはや抵抗できなかった。
 …にちゅっ。
「んぅぅっ!」
 雅史がパジャマとトランクスの中に手を這い入れ、秘裂の中に指を入れる。
 にちゅっ、ぬちゅ…ぬちゅ…
「うっ、ふうっ…あっ…」
 本来ならペニスの根元となっているべき部分、今は性感を凝縮したような固い突起となっている部分を雅史は闇雲にこすり立てた。すでに分泌されていた愛液が絡み、はぜるような高い水音が立つ。たちまちの内に雅史は浩之のトランクスをぐっしょりと濡らしてしまったが、既に雅史はそんな事を気にしていられなかった。ただ、さっきまであかりが浩之に対して披露していたはずの自慰行為を追体験するかのように、ひたすら快感をむさぼり続けるだけである。だぶだぶのパジャマの袖から出した手で、少女の官能を好きなだけ引き出していくだけである。
「…佐藤君!」
「…!!?」
 ぐいっ…
 突然雅史の腰を何者かが後ろからつかんだ。雅史は跳ね上がりそうなほどにビクッと震え上がり、慌ててトランクスの中から手を出して後ろに顔を向ける。
「く…来栖川さん! こ、これはっ…これは違うんですっ…!」
「佐藤君…私も、もうガマンできなくなっているから…一緒に楽しみましょ…」
 雅史の言葉をまるで聞かずに綾香が熱っぽい声で言う。
「あっ…あっ!」
 そして綾香は雅史の体を前にぐぐっと押して、ムリヤリに四つん這いの姿勢にさせてしまった。それに続けて、ずりっとパジャマのズボンをトランクスと一緒に脱がせてしまう。
「佐藤君のココ…こんなに濡れて…」
「うっ…あっ…だ、だめですっ…触らないでくださいっ…!」
 綾香のすらりと長い指が脚の間から見える雅史の恥丘をまさぐる。それに合わせて、くちゅくちゅという水っぽい音がしていく。雅史は濡れているのを見られると言うのがこれほどに恥ずかしい物だと初めて知ったが、濡れている所を触られて感じるのはもっと恥ずかしい事だと同時に思い知らされていた。
「もう、こんなに濡れているんだったら十分よね…」
「…えっ?」
 雅史は綾香の言葉に不思議そうな顔をし…表情を凍り付かせる。
「はじめてじゃ、ないんでしょ…? 佐藤君」
「………く、来栖川さん…」
 雅史に後ろを振り向く勇気はなかった。綾香が着ている物を脱いでいく音を、身体を震わせながら聞いていることしかできなかった。
「…いくわよ」
「や、やめてくださいっ…!?」
 雅史はそう言ったが、ほぼ同時に何か熱くて固い物が太股の辺りに押し当てられるのがわかる。それはすぐに場所を移動して、雅史の割れ目の中にぬるっと侵入してきた。
「い、いやだぁぁっ…!?」
 子供のような叫びを雅史が上げた瞬間、にゅるんという感触と共に体の中へ肉の棒が挿入される。
「くっ…佐藤君の中…きついっ…」
「あっ…あああーっ!」
 雅史は廊下についてしまいそうなほど低く顔を下げ、ぶるぶると身体を震わせていた。綾香のそれは琴音のモノに比べてかなりサイズが大きい。入ってこられるだけで、身体が壊れてしまうのではないかという不安感を覚えるほどだった。
 ぬちゅるっ、にちゅ…ぬちゅっ、にちゅ…
「ああっ…佐藤君の中、締まるっ…」
「く、来栖川さん…もっと…優しく動いてください…!」
 綾香ががくがくと激しく腰を振り、雅史が辛そうな声を上げる。身体の形状だけでなく、行動のパターンや言葉までが逆転してしまったようだった。もっとも、それはほとんど違和感のないほどに二人にフィットしたものだったのだが…
 ぬちゅっ、にちゅ…にちゅうっ…ぐちゅぐちゅっ!
「い、いやああっ…雅史君、すごい…すごすぎるよ…私出ちゃうっ…!」
 綾香が顔をしかめて声をややかすれさせながら叫ぶ。しかし、雅史のヒップに叩きつけるようにしてズパンッ、ズパンッという激しい音を立てている腰の動きは止まっていなかった。
「あ…ああっ…来栖川…さん」
 雅史はか細い声を出して、わなわなと身体を痙攣させる。今まさに洗面所の中でもあかりが体験しているであろうこと、自慰の直後の背後位がどれほどに被虐的な快感を煽るかを雅史は存分に体験させされていた。
「うっ…うっ…あ…あっ…いやああっ!?」
 綾香がどこか悲痛にすら思える叫び声を上げて、雅史の中を思い切り深く突く。
「う…うううーっ…」
 びゅぐっ、びゅぐるっ…びゅっ、びゅっ…びゅぷっ…
 …ビクンッ…ビク、ビク…
「うっ…うあっ…」
 雅史は綾香が濃厚な液体を吐き出すのとほぼ同時に、絶頂に達してしまった。自分の膣が震えて、綾香の肉棒を思い切り締め付けているのが分かる。絶頂に達したというのに新たな刺激が生まれてきて、雅史は全く休まることができなかった。
「う…うう…佐藤君の…すごかった」
 綾香も目に涙を浮かべていた。身体の奥から大量の液体を吐き出すという感覚にまだ慣れていないのだろう。
「はぁっ…」
 雅史はがくりと力つきて廊下の床に顔を伏せてしまった。もう、どうすればいいのか雅史には何もわからなかったのだ。



11/23
(☆☆☆今日のお題はファンタジィ☆☆☆)
 キィッ…
「どうだ? 吐いたか?」
「んはっ…ううん…まだ…」
 あかりは浩之の方に振り向いて言う。そして、唾液でべとべとになっている口元をぬぐった。
 剥き出しの石に覆われた、暗い地下の空間。光源と言えば小さなロウソクだけである。浩之が鉄格子の扉を開けて入って来たことを考えても、地下牢以外の何物であるようにも見えない。
 その特有のかび臭い匂いの中に、熱気を感じさせる艶っぽい雰囲気が混ざり込んでいた。と言っても、それはあかりが直接に発しているものではない。白がベースの僧侶の正装に身を包んでいるあかりは、この地下にあってもそれなりの純潔性を感じさせた。
「うう…」
 原因は、むしろ壁に鉄鎖で拘束されている少年だ。元々は魔術師の格好であったはずだが、マントは外され、ローブはだらしなくめくり上げられて半裸同然にされてしまっている。そして勃起したペニスもしっかりと露わにされてしまっていた。
「雅史ぃ、いい加減吐けよ。あのわけのわかんない力を使う女はどこなんだよ」
「う、うるさいっ…」
 吐き捨てるように言う言葉は、力をだいぶ失っている。
「ほら、もうそんなだろ? このままされ続けていたら、本当に死ぬぞ」
「………うっ」
 浩之が言うと、あかりは口をぱっくりと開けて雅史のペニスをくわえる。そして舌を器用に操って口の中でぐちゅぐちゅとペニスを刺激する。
「も、もうやめ…」
「検索[サーチ]するまでもねーな。魔力はほとんど吸い取っただろ」
 ちゅぽ…
「うん…あと2回か3回出したら、魔力は空っぽになって死んじゃうね」
 あかりは笑みすら浮かべてそんな事を言いながら、唾液でぬめらせたペニスを手でしごく。浩之の方を向いて会話しながらの動きなのに、その手つきは極めてスムーズで素早く、雅史のペニスを確実に責め立てていた。
「も、もう…やめっ…」
「だから吐けよ。あいつがどこにいるのか教えれば、助けてやるよ」
「ウ、ウソだっ…! そう言って、僕も琴音ちゃんも魔力を吸い取るだけに決まってる…!」
「強情だな。本気で死ぬぞ? あかりのテクはもう十分わかってるんだろ?」
「何回イカせてあげたかな? 20回くらいはいってるよね」
「さすがだな…」
「えへへ…」
 あかりはいたずらっぽく笑いながらペニスをしごき続ける。
「うっ…ううっ…あっ!」
 …ぴゅっ…ぴゅ、ぴゅっ
「あっ!」
 その時、雅史が顔をしかめたかと思うとペニスの先から半透明の液体がほとばしった。あかりは驚きつつも、慌てて顔を近づけてペニスを口の中にくわえこむ。
「んんっ…」
 ちゅる、ちゅる…
「う…うっ…ううっ!」
 あかりはペニスの中に残ったわずかな精液まで搾り取るように口で締め付けてくる。雅史は絶頂で敏感になった部分を刺激され、たまらずに身をよじらせて悶えていた。鎖がカチャカチャという音を立てる。
 ちゅぽん。
「ん…ん…んふぅっ」
 そして、あかりは最初の射出で自分の顔に掛かったわずかな精液までぬぐいとると、口の中に運んで舐めた。最後のひとしずくまで実に愛おしそうに舐めてしまうと、やっとあかりは気が済んだようで浩之の方を振り向く。
「もう薄くなっちゃって、あんまりおいしくないね…」
「それでも一生懸命飲んでたじゃねーか?」
「だって、魔力だもの。ほんの少しでもムダにしちゃあだめだよ」
「ケチくせーな…ま、これで次に出させたら本気で死ぬかもな」
「浩之ちゃん、そこにいて見ててよ…すぐに出させちゃうから」
「や、やめっ…ああっ…!」
 あかりが、まだかすかに脈動しているペニスを再び口の中にくわえこむ。そして、頭を激しく振りながら口の粘膜でペニスをしごき始めた。舌でこねくり回す動きも濃厚で、雅史のペニスの先端を重点的に攻撃する。
「さぁて…吸われ死ぬか? 白状するか? 雅史、好きなほう選べよ」
「うっ…ううう…」
 雅史は僧の服装をした悪魔のような少女の強烈な責め立てに、ひくひく体を震わせて反応していた。目からは涙がぽろぽろとこぼれている。
「あかり、この仕事終わったら約束通り死ぬほど可愛がってやるからな。頑張れよ」
 ちゅぽちゅぽ、ちゅぽっ…
「あっ…ああっ…うあああっ…!」
 ますます激しさを増すあかりのフェラチオに、雅史は絶望の表情を浮かべて身をよじらせる。そして地獄に向かう射出の小さな火が、ついに雅史の体に中に灯り始めた。
「うーっ…うう…!」
 しかし雅史がどれほど逃げようと体を動かしても、あかりはそれを忠実に追って口唇での愛撫を続ける。もはや、このままでは雅史の絶頂は時間の問題だった…



11/20
「ん…」
 私は鼻に掛かった息を吐き出しながら、相田君のペニスを軽く握る。
「あっ」
 それだけで、彼はぴくんと体を跳ね上げていた。私はくすりと微笑んで彼の驚いた顔を見つめる。
「あ、天沢さん」
「これくらいで驚いていちゃだめだよ…」
「え…あっ」
 ペニスの表面を私が指で撫でると、相田君がまた声を出して反応した。その初々しい様子に、私は思わず指での刺激を続けてしまう。
「う…うっ…天沢…さん」
 ひとなでする度に押し殺した声を出す相田君に、私は本格的に手淫を始めてしまいそうになった。だけど、それをとどめる。それだけじゃ、彼が自分でしているだろう行為とあまり変わらない。
「ねぇ、相田君もオナニーするの?」
 しかし、私は次の行為に移らず、そんな質問をしていた。子供の前でプレゼントを出し惜しみしている大人のような気分だ。
「え…」
「恥ずかしがらずに、答えて…」
「………う…うん」
「やっぱり、相田君でもするんだよね…」
 私はそう言いながら、相田君のペニスの先の方を握ってぐにぐにと動かす。
「う、うんっ…」
 少し強くなった刺激に、相田君はビクッと体を震わせながら反応した。
「相田君、私ってオナニーしていると思う?」
「……え……」
「どう思う?」
 私は微妙な笑みを浮かべて相田君を見やる。
「……あ、天沢さんは…していないんじゃないかな…」
「…ううん、してるの…」
 すこし視線を彼からずらして、私は告白する。
「こんな女の子、キライ?」
「う、ううんっ…そんなこと…ないよ…」
「ありがとう…」
 私のことを気遣った返答をしてくれる相田君は、やっぱり優しい。
「私、相田君が好きだから」
「…僕もだよ」
 彼の言った意味は、彼がナルシストであるという意味ではないはず。そんな勘ぐりを入れてしまう私は、性格が悪い。
「相田君が、好きだから…エッチなこと、するね」
 …はむっ。
「あ…!」
 私が相田君のペニスをくわえると、彼はまたビクッと体を震わせた。当然、さっきよりもその反応は大きい。
 ちゅぽ、ちゅぽ
「あっ…だめ…天沢さん、そんなところ…」
 ちゅぽっ。
「ううん、相田君のすごくおいしいっ…」
 私はぺろっと舌を出したまま、子供っぽく作った声で言う。
 …ちゅぽ、ちゅぽ…っ
「あっ…あ、天沢さんっ!」
 先の方を唇でしゃぶるようにしながら、舌を使って尿道口の近くを舐める。手も使って、根元の方をしゅっしゅっとしごいたりフクロの所を撫でてあげたりする。
「あ…あっ」
 彼も、私の動きに満足してきたようだった。いたずらっぽく彼を見上げている私のことをやや不安そうな目で見つつも、おとなしく私の行為に従っている。
「だ、だめっ! 天沢さん、僕もうっ!」
 そこへ、唐突に相田君が言った。
 ずいぶん早い。まだ私は男の子をメロメロにしてやったという達成感を、半分も満たしていなかった。私が口でしてあげる時の、ひとつの楽しみなのに。
 最初から慌てている男のコ、最初は平気な顔をしている男のコ、そのどちらも私がして上げている内にどんどん弱気になっていって、ついに耐えきれなくなって出してしまう。そのプロセスを、私はとても気に入っているのだ。
 ちゅぽ、ちゅぽ
 でも、おち○ちんを触っただけであれだけ反応してくれたり、変なことを答えてくれたりしたし、そんなに悪くもないかもしれない。
「だめ、だめっ…で、出ちゃうよ!?」
 そんなのは最初っから決まっていたこと。
「あっ、あっ…だ、だめっ! 天沢さんっ!」
 じゅる…
「あ!」
 相田君が、無理矢理な動きで私の口から逃げる。…タイミング的に…!
 びゅぐっ、びゅぐっ、びゅぐぅっ!
「っ!!」
 反射的に目を閉じた私の顔に、熱い白濁液が飛びかかる。
「ご、ごめん、ごめんっ! 天沢さん…!」
「う……」
 私は目の近くに飛んできた精液だけをこそげ取って、目を開く。最初の何回かのあとは彼が手で押さえたのか、私の顔に掛かる事はなかった。それでも、かなり溜まっていたらしい相田君の精液は、最初の数回分だけでも私の顔のあちこちにたっぷりとついている。
「…すごい出したね」
「………」
「ひどいよっ。こんなに、顔にいっぱい…」
「ご、ごめんっ…」
「ふふ…怒ってないよ。でも、お返しに…」
「え」
「私のも舐めてっ」
 下から、誘惑するような目で見上げて私は言った。
「…うん」
 うなずいた彼の目は、私の身体への興味を隠して静かに燃え盛り始めているようだった。

…これがあなたの認識?
「………」
…随分とまた、都合の良い記憶の改竄をしているものね。
…あなたは、真実より清楚…彼は、真実より淫乱…
「あ…相田君は…相田君は」
…そうね、あなたは真実を知っていて、その上に妄想を上塗りしているだけ。
…自分でも逃げていると知りながら、思い出す度にそこに妄想を貼り付けているのよね?
「だ、だけど…」
…なら、回顧してみればいい。
…あなたは、あの日のあなたになる。
…でも運命は変えられない。
…同じことを繰り返してくればいい。
…それで知ればいい。
「やめてっ…」
 私の意識が、混濁していく。逃れようとあがいても、ムダだった。



11/19
「…本当にやるのか?」
「やる」
「どうなっても知らないぞ…」
「美坂の味がどうなのか知りたいって言ったのは相沢だっ」
「言葉のアヤだった…はずなんだがな…」
 祐一も少々語気を弱くする。
「美坂と水瀬が日直になるチャンスなんて、もう二度とないぞ」
「あと20日後には回ってくるじゃないか」
「せ、席替えがあるかもしれないだろっ! それに…」
 北川が懐から怪しげな物を取り出す。
「これを買った以上、もう後には引けないっ!」
「いくらしたんだ…それ」
 祐一は北川の手にした黒いバイブレータを見て、半ば呆れ口調で訊く。
「俺の給料の一ヶ月分だ」
「お前バイトしてないだろ、きた…が……わ…」
「いくぞ、相沢っ」
 北川が教室のドアに手を掛ける。
 ぽん。
「え?」
 その時、北川の肩に手が置かれた。
「どうしたんだ、あいざ……わ」
 怪訝そうな声は途中で止まる。振り向いた所にいた人間は、祐一ではなかった。
「現行犯で逮捕するわ」
 そこにいたのは、香里。祐一はその横で表情を凍り付かせていた。
「みみみみ美坂っ!? なんでここに…」
「教室の中から出てきたからよ」
「ど、どこから」
「あっちからよ」
 香里がもう一つの方の教室のドアを指さす。
「しょ、職員室はこっちの方なのに…」
「だからってこっちから出てこなくちゃなんないってわけでもないでしょ」
「そ、そんな…」
 がっくりと落ちこむ北川の肩を、香里はぐぐぐと力をこめてつかむ。
「ま、話は署の方でゆっくり訊かせてもらうわ。ね、名雪?」
「え? 署?」
 香里の体に隠れるような位置にいた名雪が聞き返した。
「そうよ」
「か、勘弁してくれ…」
 逃げようとする北川を、香里はずるずると引っ張って歩いていく。
『………』
 残された祐一と名雪は一度顔を見合わせて、互いに少し気まずそうな表情になる。それから名雪がちょっと怒った顔で祐一の事をにらんだ。
「…お、俺は…」
 祐一はもごもごと言って、香里と北川の後を追う。名雪は多少膨れた顔をしつつも、祐一の横について香里と北川の後を追いかけ始めた。

「………なるほどね」
「ち、違う…相沢も、計画に乗り気だったじゃないか…」
「言い訳は無用」
 腕組みした香里が、一言の下に切り捨てる。
「あ、相沢の裏切り者…」
 うらめしそうに言う北川は既に服を全部脱がされて、素っ裸の状態で正座させられていた。そのやや横で正座している祐一は、トランクスだけは履いたままで許してもらっている。
 そして名雪は、自分のベッドに腰掛けてその様子を見守っていた。「取り調べ」の場所が名雪の部屋だと香里に聞かされた時、名雪はだいぶ不満そうな顔をしていたが、今もあまり興味はなさそうにぼんやりと裸に剥かれた二人を見つめている。
「さて、罰として何をあげるのがいいかしら?」
 香里は足元の床に転がしていた、押収済みのバイブを手に取る。
「これで女の子の気分を味あわせてあげるってのも…」
「そ、それって…」
「安心しなさい、何かで濡らして滑るようにしてあげるから」
「や、やめてくれーっ…!」
 北川が大声で叫ぶ。祐一の方も、顔を引きつらせて北川の体からずりずりと離れていく。
「………ま、それは冗談として」
「…本当に冗談だったのか…?」
「して欲しいの?」
「ち、ちがうちがうっ…!」
「…じゃあ…そうね…」
 香里が不敵な笑いを浮かべながら考え出す。
「…名雪、浮気しようとしていた相沢君に何かしたい罰はないの?」
「え…」
「なんでもいいわよ」
「突然言われても…………あ」
「何かあった?」
「………ええと…」
 名雪が少し顔を赤らめる。
「祐一、私には口でしろって言うのに、祐一の方はしてくれないんだよ…」
「へぇ…それは許せないわね」
 香里が祐一の正面に立って、じいっと見下ろす。祐一は名雪と香里のことをちらちらとうかがいながら、下を向いてうつむいてしまった。
「あ…じゃあ、それでいきましょ。名雪、服脱いで」
「う、うん…」
 名雪は割と素直にうなずいて、制服をゆっくりと脱ぎ始める。どうやら、それなりのレベルまで体の中に欲求不満を溜め込んでいたようだった。祐一が香里の味を知りたがっていると言い出したという北川の発言を信じるならば、祐一は名雪に口でしてあげるどころか普通の性生活すらもおざなりに済ませていたという可能性もある。
「北川君は、これ」
「………?」
 香里がポケットから取り出したものを見て、北川は不思議そうな顔をした。
 濃紺の色をした、髪留め用のゴムだ。飾りなどはついておらず、ただゴムの部分があるだけのシンプルな構造である。香里はそれを手に、北川の体の前にしゃがみこんだ。
「………うぇっ!?」
「動かないで」
 香里が、北川の正座した脚の間からぴょこんと飛び出ているペニスをつかむ。さすがに北川も香里の目的を察したようで、狼狽しきった表情を露わにした。
 ぐっ、ぐぐっ…
「や、やめてくれ…」
 そのペニスの幹の真ん中あたりに、香里はゴムをぐるぐると巻いていく。
 ぐるん…ぐるっ
 そしてほとんど余裕がないほどにゴムを伸ばしきった状態にして、ペニスをきつく縛り付けてしまった。北川のペニスが真ん中でくびれて、不自然な形になっている。
「い、痛い…」
「取っちゃダメよ。それから、自分で触るのもだめ。したら、今度こそあれを本当に突っ込むわよ」
「う…ううっ」
 北川は情けない声を上げる。しかし非道な仕打ちを受けているにも拘わらず、香里の細く冷たい指につかまれていたペニスは固く勃起し始めていた。そうなると、北川のペニスはますますきつく縛られている状態になってしまう。
「……さて、名雪」
「うん…」
 名雪は、もう服を全て脱ぎ終わって全裸の状態になっていた。香里が言うと、そのまま正座した祐一に向かって歩いていく。
「祐一…」
「な、名雪…うぷ」
 名雪は歩く動きの延長線上のような感じで、祐一の顔に自分の秘部を押しつけていた。
「相沢君、舐めなさい」
「んっ…んうっ」
 祐一は苦しそうな声を上げる。さらに名雪が祐一の頭を腕で抱えて強く腰を前に出すと、さすがに呼吸が苦しくなりすぎたのか、舌を出して名雪の秘裂の中に差し入れた。
「あ…祐一」
 名雪は少し腰を引いて、祐一の呼吸を助けてやる。
「んはぁっ……はぁっ…はぁっ…」
 祐一はしばし呼吸を整えていたが、そうしてばかりいるとまた呼吸困難に追い込まれると思ったのか、名雪の秘部の中に入れた舌を動かし始めた。
 …ちゅ…ぬちゅ…
「んんっ…祐一…」
 名雪が気持ちよさそうな顔で名前を呼び、祐一の頭をいとおしそうに撫でる。
 ちゅ、ちゅ…
 祐一は黙々と舌を動かし続けていた。あまり慣れていない様子だったが、名雪は子供と遊んでいるかのようにそれを優しい目で見つめ、自ら腰を動かすことで刺激を強める。次第に名雪の性器の中に、酸味を帯びた液体がにじみ出してきたようだった。
 ぬちゅ、じゅぅ…
「そ、そう…祐一っ」
 祐一がそのジュースを舌で舐め取ると、名雪は悦びの声を出して腰を震わせる。
「みっ、美坂…助けてくれ…」
「ダメよ…お仕置きなんだから」
 その様子を視界の端にうかがっていた北川が、また情けない声を出した。至近距離で繰り広げられる濃厚な情景に、北川のペニスは激しく高ぶってきている。しかしそうすればそうするほど、ゴムで締め付けられるのも強くなって苦しくなる。
「と、取ってくれ…!」
「ダメ」
 そう言って、香里は祐一と名雪の方に近寄る。
「………!?」
 名雪の中を舐める動きに次第に慣れてきていたように見えた祐一が、突然体をよじらせた。
 しゅくっ、しゅく…
「相沢君、私からもお仕置きしてあげるわ…」
 しゅっ、しゅる、しゅるっ
 香里は妖艶な声で言うと、祐一のトランクスの中に突っ込んだ手を巧みに動かし始める。下着の中で激しく勃起しているはずのペニスをしごいているのは間違いない。
「か、香里…!」
「いいでしょ、これくらい」
「…うー…」
 名雪は多少の不満を残した顔だった。が、香里の責めに急き立てられたのか、祐一の舌を動きが激しくなってくるとそれも消え、柔らかに名雪の粘膜をなめずる生暖かい感触に身を委ねていく。突起の部分を舌が通過すると、名雪はピクンと腰を震わせて反応していた。かなり快感が蓄積されてきているようだ。
 しゅっ、しゅっ、しゅっ…
 速いペースで香里の責め立てを受けている祐一も、相当なペースで高まってきていることだろう。香里の細くて長い、キラリとした冷ややかさを感じさせる指が本気になってペニスをしごいているのだ。
「………」
 名雪の秘部にうずめた顔が少し離れるたび、垣間見える祐一の目はもはや力を失ってきていた。そして名雪の方も、生まれて初めての口唇愛撫に相当感じている様子である。
「祐一…気持ちいいよ…」
「名雪、イケそう?」
「うん…私…もう、イッちゃう…」
「ふぅん…」
 しゅこ、しゅこっ、しゅくっ
 香里は会話しながらも、まるでペースをゆるめずに祐一のペニスをしごき立てている。
「…うっ…!」
 祐一は名雪の秘部に口をつけたままうめくと、ビクンと腰を跳ねさせた。
 びゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅびゅうっ!
「う…ああ…あ…」
 香里の手の中に、白濁液が大量に放出される。そこからあふれ出た液体が、トランクスをべとべとにしていく。
「あ…私…私…!」
 …びくっ…
 その絶頂の直後、名雪が切なそうな声を上げると、秘部を祐一の顔に思い切り押しつけて全身を痙攣させた。
 びくっ、びくっ、びく…
「………ふたりとも、イッちゃった」
 香里は妙にさっぱりとした声と表情で言う。
「………ゆ、許してくれ…美坂…もう…しないから…こ、これじゃあ…もう…」
 未だペニスを拘束されたままの北川は、悲鳴に近い声で訴えながら顔面を蒼白にしていた。ペニスの先端から、ほんのわずかに透明な液体がにじみ出てきているのが苦しそうである。
「どうしようかしら…」
「な、なんでもしますっ、本当にっ…」
「そうねぇ」
 香里は北川の太股の辺りをつつきながら、悪魔的な笑みを浮かべて北川の顔をのぞきこんでいた。
「ゆ、祐一…」
「…名雪」
 そしてこちらの恋人同士は、普段と違う立場で行われた性行為に戸惑いを表しつつも、さらなる交歓を求めているのか互いにじっと見つめ合っている。名雪の目は、普段のぼうっとした様子からは想像できないほどに欲情に満ちてきていた。



11/12
(7/1の続きです)
「うぉっ…」
「んふぅぅ…」
 のしかかってきた詩子の顔が、眼前に迫る。
「やめろ、やめ、やめ、お前はやめろ」
「なんでぇ?」
「まずい、お前はまずいっ」
「なんで澪ちゃんがよくてあたしはだめなのよぅ」
「お前は、お前はシャレにならんっ」
 浩平は詩子に簡単に押し倒されてしまうほど鈍い動きしかしない体を、必死によじらせる。今にもキスされてしまいそうな詩子の顔から、何とかして顔をそむけようとする。
「なんでぇっ?」
「うーっ…ううう」
 唇が至近距離にまで迫って、アルコールを帯びた詩子の吐息が直接口の中に入り込んでくるほど近くに感じられる。何をしでかすかわからない不安定な瞳が浩平をじぃっと見つめる。
「お前はどう考えてもアウトだっ、あとあと冗談じゃ済まされない…」
「なんでよぉ」
「だめだっ、だめだっ、だめだめだめっ」
「…けちぃ」
 詩子が、顔を上げる。
「…そ、そうだ、こんな事やめろ」
 意外と素直な反応に、浩平は胸を撫で下ろす。
「よいしょ…」
 詩子はそのまま、浩平に背中を向けて胸の辺りにまたがる姿勢になった。
「く、苦しいぞ…お前、早くどけ」
「澪ちゃぁん?」
 浩平の言葉を聞いているのか聞いていないのか、詩子は間延びした声で澪を呼んだ。
 とてとて…
 少し離れた所で顔を拭いていた澪がやってくる。まだ白い液体が顔のところどころに残っていたが、べとべとというほどではなくなっていた。テーブルの上には、拭き取るのに使ったティッシュの巨大なボールが出来ている。
「澪ちゃん、こっちおいでっ」
『わかったの』
 まだ酔いは全然醒めていないようで、平仮名だというのに読みとりにくい事この上ない。
「スカートとパンツ、脱いでぇ」
「おい!?」
『わかったの』
 さっき書いたスケッチブックのページを、また澪が見せる。
 しゅるる…
 そして澪は、子供が服を脱ぐときの仕草そのままでスカートとショーツを一緒にずり下ろしてしまった。
「み、澪、こいつの言うことを聞くなっ!」
 浩平の位置からは詩子が邪魔になってよく見えないが、澪が本気で脱いでしまったのはわかる。澪の状態を見れば、詩子の言葉と好奇心だけで何をしでかすかわからないのは一目瞭然だ。
「そうっ、そしたらぁ、私の前に来て」
『わかったの』
 またスケッチブックを見せる。今の澪には、そのページくらいしか用はないようだった。
 とてとて…
 また澪が危なっかしい足取りで歩いている音が聞こえる。
「柚木っ! どけっ! 離せっ!」
「離さないもぅん」
「こっ…あっ…み、澪…」
 詩子とやりあっている間にも、澪は詩子の体の真っ正面の位置に来ていた。浩平の腰の辺りをまたぐ状態で立っている。詩子の体があるから、浩平に見えるのはリボンをつけた澪の頭と、全然焦点が定まっていない瞳くらいだが…
 もし詩子の体が邪魔していなければ、澪の素っ裸の下半身が見えてしまうはずだった。
「………」
 浩平は自分の言うことを聞かずにムクムクと頭をもたげてくるペニスを悟られないよう、出来る限りの平然を装う。あろうことか、そのペニスは澪の体の直下にあるのだ。今の状態で詩子が気づいたなら、何をされるかわかったものではない。
「澪ちゃぁん…」
 しかし詩子はそれについて何も言わず、澪の体に抱きついていく。詩子の方は座っているから、澪の腰の辺りに抱きついていく感じだが…
「!!」
 澪が、体を一瞬飛び跳ねさせる。
「ゆっ…ゆずき…」
 浩平は思わずうめくような声を漏らしてしまった。
「ん…んんっ」
 詩子は顔を正面から澪の体に押しつけていた。顔を横に向けて頬ずりしたりしているわけではなく、鼻先をぐりぐりと押しつけるような状態だ。
 ちゅ…ちゅっ
「!!!」
 澪が切なそうに目をぎゅっと閉じて、詩子の頭をぐいぐいと押さえ込む。詩子の頭がいくぶん前に行ったため、澪の上半身は浩平にもだいぶ見えるようになっていた。もちろん、肝心の部分は詩子の頭に隠れてしまって全く見えない。しかし、
 ちゅっ…ちゅぅ…ちゅく、ちゅく…
 ねっとりした水音と、詩子の頭の動き方と、息を荒くしながら詩子の頭を押さえ込んで悶える澪の反応を見ていれば、何をしているのかは明らかだ。
「んふぅ…澪ちゃんっ、気持ちいぃ?」
「………」
 かくかくと澪が首を縦に振る。
「ここはぁ?」
 ぺろ…
「!!」
 澪が舐め始めの時のように、大きく体を跳ねさせた。
 ぺろっ。ちゅく、ちゅく…
「……!!」
 詩子の頭を押さえていた手を、澪は片方口元に持っていた。そして舐めずる音がする度に、ピクンピクンと小刻みに体を震わせる。澪の顔はもう真っ赤だった。
「もう…こんなになってるぅ…澪ちゃん、びんかん…」
 じゅる、じゅる…
 舐める時に立つ音が、最初よりも相当派手になってきている。
 じゅっ。じゅううう…
 …ぽたっ。
 浩平のペニスに、温かい液体がしたたり落ちてきた。
(うっ………)
 ぽた。ぽた…
 また落ちてくる。恐らく、澪の中からあふれてきた液体なのは間違いない…
 じゅ…じゅる。
「んぅ…澪ちゃん、もうびしょびしょだぁ…」
 詩子の声が、それをさらに確信に近づける。浩平は、ペニスがいきり立ってくるのをどうしても鎮められなかった。
「澪ちゃん、しゃがんでっ…」
 こくっ。
「え!? お、おい! 柚木!?」
 思わず雰囲気に飲まれ掛けていた浩平が、一瞬で我に返る。だがその時にはもう澪は身を沈めていて、浩平の視界から消えていた。
「そうっ…そう、そうするのぉ…澪ちゃん…わかってるぅ」
 ぬち…
「うっ」
 ペニスの先に、熱くぬらぬらとした感触が生まれる。詩子が言う前に、澪が自分で腰を落としてきたようだった。
「動かないようにお○んちん手で持ってぇ、それでゆーっくり入れていってねぇ」
「待て、柚木…待て…」
 ぎゅっ。
 澪の小さな指が、ペニスの剛直を不器用につかむ。
「だ、だめだって…澪」
 ぬち…ぬぢっ…
 だいぶ弱々しい浩平の制止と同時に、浩平のペニスが濡れた柔らかい肉壁の中へと少しずつ埋まり始めた。
「そうっ…頑張って、澪ちゃんっ…」
 ぴち…ぴぢっ…
 ある程度まで入った所で突然澪の中から返ってくる抵抗が大きくなる。それでも澪が腰を落としてくると、何かを無理に剥がしているような感触と共にペニスがめり込んでいく。
 痛々しい感触だ。だが浩平にとっては、熟れたリンゴの皮に爪を立てるような甘美で新鮮な感覚だった。
 …じゅぐっ。
「うん…澪ちゃん、よく頑張ったね」
 澪がはぁ…はぁ…と少し苦しそうに息をしているのが聞こえる。
 アルコールが抜けていない浩平にとって、すっぽりとペニスが媚肉にくるまれる感触はひどく遠い所にあるような、あるいはものすごく近くにあるような、むしろ全身を柔らかな物でくるまれているような、不思議な感触だった。
「でも、もう少し頑張ろうね」
 詩子が言うと、澪が腰をずずっ…と上げる。
 …ずっちゅっ!
「ううっ…」
 そして、一気に落ちてくる。浩平のペニスは、狭いながらもそれなりに潤滑の液をたくわえた澪の膣壁の刺激をたっぷりと感じてしまう。
「うん…そう」
 ずず…ずちゅっ! ず…ずちゅ!
「澪ちゃん、キスしようっ…」
 詩子が言い、
「んっ…ふぅ…ん」
「………」
 ちゅ…ちゅる…ちゅる…
 ずず…ぢゅくんっ! ずずず…ぢゅっ!
 少女同士の唾液が絡む音と、澪が腰を上げては落とす音がただただ響き続ける。
「んっはっ…澪ちゃん…」
「!」
「痛いけれど、ここを触るとやっぱり気持ちいいでしょっ?」
「…! …!!」
「あははっ、澪ちゃんのココ、ピンピンになってるぅ」
 浩平のペニスに、詩子の指がぶつかる感触がある。詩子は澪の感じるところを刺激して、痛みを中和してやっているようだった。
 ずじゅっ…じゅぐぐっ!
 澪の中が、ますますぬるぬるした液体でいっぱいになってくる。狭くてきついのに、かなりスムーズに澪の腰を上げ下ろしが行われるようになる。
「う…うっ」
 もちろん、浩平はそのぶん快感を味合わされてしまう。
「もっと…もっと、もっと、澪ちゃん…もっとっ」
 ずじゅ…じゅぐっ! ず…じゅぐっ!
 詩子が急き立てるように言うと、澪の動きがさらに速まった。浩平の腰の奥から、きゅうぅぅっと熱い物が急激な勢いでせり上がってくる。
「だ…だめだっ! 澪、柚木、どいてくれっ!」
 浩平は慌てて叫ぶが、体はのろのろとしか動かなかった。詩子と澪の体重にしっかりと押さえつけられ、動けないままに浩平の限界の瞬間が刻一刻と近づいていく。
「ほら、澪ちゃん…澪ちゃんっ」
「!!」
 詩子が浩平のペニスに何度もぶつけながら指を小刻みに震わせ始めた。
「くぅぅ…」
 …びゅっ! …びゅっ! …びゅっ!
「あ…折原君、出した」
「う…」
 びゅびゅびゅ…びゅ、びゅ、びゅっ、びゅっ…
 詩子に宣言されてしまうと、タガが外れたように精液が澪の中に噴き出していく。
「気持ちよかった?」
「お、おい、柚木………お前、本当に酔ってるか?」
「え? 何言ってるのぉ? あたひ、酔ってなんかいないよぉっ?」
 詩子がふらっ、と今にも倒れそうな勢いで浩平の方を振り向く。
「あ…なんだか、あたひも眠くなってきちゃったぁっ、茜と一緒に寝てくるねぇっ」
 おぼつかない足取りで、詩子が浩平の上から起き上がる。
「お前…」
 千鳥足のくせにいやに速いスピードでリビングから出ていこうとする詩子を、浩平は何か言いたそうな目で見送った。
 つんつん。
「あ…」
 その時、浩平の胸を澪がつつく。
『もっときもちよくなりたいの』
 片手で、スケッチブックを示しながら…
「おい、澪っ…」
『ここをさわってほしいの』
 恥ずかしそうに目を細めた澪が、ヘアに全く覆われていない自らの秘裂を指で広げる。
 行為の間もずっと浩平の目に触れる事のなかったそこは、綺麗なピンク色をしていて、透明な雫によって驚くほど濡れていた。そこに浩平のペニスが突き立って、隙間から桜色の液体が流れだしている。
 澪の指さしたのは、割り広げた部分の上端近くにある、見逃してしまいそうな小さな突起だった。
「…澪…」
 浩平は、幼い性器と結合している事実に改めて唾を飲み込みつつも、吸い込まれるように指を澪の秘部に伸ばしていった。



11/10
(雅史登場率急上昇中)
「せんぱいっ…」
「こ…琴音ちゃんっ…」
 ばふっ…
 雅史の肩が、ベッドの布団の上に押しつけられる。
「佐藤先輩…もう…私…」
「お、落ち着いてよ、琴音ちゃん」
 ぐいぐいと体を密着させてくる琴音の体を、雅史は何とかして押しのけようとした。薄紫色の下着だけになった琴音の肢体が押しつけられているのに、そのまま放っておくわけにもいかない。
「あ、あれ…?」
 しかし、琴音の体は全く動かない。いくら上から体重を掛けられていると言っても、雅史と琴音の力の差は歴然としているはずなのに、雅史を押さえつけている琴音の体はびくともしなかった。
(あのお酒…)
 雅史は自分の体が変調をきたしていることを、ようやく自覚し始めた。
「んっ…んんっ」
 頬ずりしてくる琴音も、雅史自身も、頬がほんのりと赤く染まっている。それがアルコールによる物なのは間違いない。浩之の家でのクリスマス・パーティーということで、綾香がこっそり家から持ち出してきたという飲みかけの高い赤ワインをみんなで舐めるような量だけ飲んだのは確かだった。
 しかし、それは雅史でも飲むことに躊躇をしないほどのごく少ない量のはずだし、その後雅史はずっとジュースしか飲んでいなかったのだが…
「ちょ、ちょっと琴音ちゃんっ! ここ、浩之の部屋だよっ…ちょっとっ…」
「先輩…」
 琴音の手が、雅史のシャツのボタンをひとつずつ外していく。雅史は改めて琴音の体を押しのけようとするが、やはり琴音の体は動かない。雅史と同じ物を飲んだと言うのに、琴音の力は普段通り、あるいはそれ以上に強くなっているようだった。
 ベージュ色のシャツをすっかり脱がしてしまうと、今度は琴音の手がランニングにかかる。
「琴音ちゃんっ…琴音ちゃん!」
 雅史は何度も琴音に呼びかけたが、琴音は全く聞こえていない様子だった。
「…んんーっ」
 そして、ランニングがめくりあげられて両脇から脱がされそうになる。雅史は顔をすっぽりと綿の生地で覆われて苦しげな声を出したが、琴音は何も気にしていない様子で片方ずつ雅史の腕を上げさせ、ランニングも脱がせてしまった。
「ダメっ…ダメだよっ…」
 いくぶん雅史も小声になる。ここまで来ると、誰かに見とがめられた時の事が雅史も怖くなってきた。パーティでみんなが集まっていたリビングからは、ひとりまたひとりと人がいなくなっていったのだ。それが全員琴音のような状態になっていたとすれば、二階にある浩之の部屋に突然やってきたとしてもおかしくはない。
 ぺろっ…
「あ…」
 ぺろ…ぺろん…じゅうっ
「こ、琴音ちゃん、だめっ…だめだよっ…」
 雅史の小さな乳首を、琴音の舌が転がす。
 普段は意識もしないような場所なのに、いざ刺激されてみると意外なほどそこは敏感だった。そこを、琴音が少しだけ出した舌の先で幾度もつつき、転がしていく。雅史の体から、残っていた力が全て抜けていってしまうようだった。
「…はぁっ…」
 数分間も二つの小さな突起を刺激されている間に、雅史の意識はまた混濁してきた。リビングでふらついた時に、琴音が介抱してくれると言った所までは記憶がある。そこから、琴音に手を引かれて歩いている間、雅史の記憶はほとんど飛んでいた。気づくと浩之の部屋のベッドの上で、突然琴音がのしかかってきたのだ。
 かちゃ…かちゃ…
 ベルトを外され、ジーンズが下げられていく音がどこか遠く聞こえる。きちんと足の先まで下ろされ、脱がされていっても雅史はもはや抵抗しなかった。霞んだ目で浩之の部屋の天井を見つめているだけである。
 …ぐっ。
 琴音が、雅史のブリーフをつかむ。
 そして、ゴムが伸びそうな勢いでそれを下にずりずりと降ろしていった。それでも、やはり雅史は抵抗しない。ついにブリーフまで爪先から抜き取られ、靴下だけの姿になってしまっても天井をぼうっと見つめていた。
「…佐藤先輩…」
 琴音はブラジャーとショーツをやや興奮気味の手つきで脱ぎ、雅史の体に迫る。
 …ぬちゅ
「えっ…?」
 その時、脚の付け根に走った未知の濡れた感触に、雅史の意識が現実に引き戻される。
 ぬちゅ、ぬちゅ…ちゅく
「えっ…えっ!?」
 雅史は、ありえない場所を触られている事にパニックになって自分の下半身に目を向けた。琴音が指を使って愛撫している所…そこにあるはずの、男としての性器がない。
 ぬちゅっ、くちゅっ
 本来ならペニスの根元に当たる部分、そこを琴音の指が直接触っていた。閉じた唇を誰かの指で開かれているような感触が、股間に生まれている。そして、その中のぬちゅぬちゅとした部分を指で愛撫されているのがはっきりとわかる。
「な、なんで…こんな」
 雅史にも、それが女性器の形状であるという事はわかった。琴音と一度だけ性交した経験が雅史の中によみがえる。
 その代わり、裸になった琴音の脚の付け根の部分は、かつて見たような女性器の形状をしていなかった。多少色白な男性器があって、思い切り勃起している。まるで、生殖器官の部分だけ琴音と雅史で入れ替わってしまったようだった。
 ぐりゅっ…
「んうっ…!」
 琴音が雅史の性器の一点を押し込んでくる。
 ぐりゅ…くりゅっ、くりゅ…
「あっ…あああっ…」
 今までのぼんやりした快感とは違う、目の覚めるような鋭い快感が雅史を襲った。ペニスの先を刺激されているような、それを凝縮したような快感だ。しかし、体の外にはっきり飛び出た部分を刺激されるのと、体の中の方にある器官を刺激されるのでは気分が違う。体の中に何かが溜まっていくような、不思議な快感だった。
 ぬぢゅっ。
「んっ…くぅっ!」
 琴音が指を一本、雅史の中に入れてくる。
「あっ…あ…」
 雅史は、自分の中に何かが入ってくるという気持ちを、それを反射的に締め付けてしまうという気持ちを生まれて初めて思い知らされた。
 ぬぢゅ、ぬぢゅ
 その上に指を抜き差しされると、自分のそこが濡れているという事も自覚せざるを得ない。雅史は顔を真っ赤にしてしまった。こんな異常な状況下でも、恥ずかしさという感情を消し去る事はできなかったのだ。
 ちゅぽっ。
「先輩…いきますよ…」
「えっ…」
 指を抜いた琴音が言うと、雅史は小さく声を上げた。
 ぐいっ。
「あっ」
 琴音は、両腕で雅史の腰をつかむとやすやすと持ち上げてしまう。雅史の体は完全に弛緩しきっているのだから、持ち上げるには琴音自身の力しか使えないはずだ。それを簡単に持ち上げてしまうのだから、琴音の力が普段通りでない事は容易にわかる。
 ぢゅる…
 濡れた部分に、熱くて固い物が押しつけられた。
「せんぱいっ…」
 ぐぐ…
「あっ…」
 ぐぐっ…ぐぐぐ…
「うっ…あっ…琴音ちゃんっ…!!」
 それは指とは比較にならないほど、大きくて熱を帯びていた。
「あっ…あああ…」
 濡れそぼった部分を、琴音の肉棒が押し広げていく。雅史は体の中に違う物が入ってきているという感覚をこの上ないほど思い知らされていた。息が詰まるような、不快と快をごちゃ混ぜにしたような、狂おしい感覚が雅史の全身を満たす。
 ずんっ。
「あうっ…」
「全部…入りました」
 雅史にもそれはわかった。体の奥が固い物で衝かれたのだ。
「あっ…」
 反射的に、雅史の体は目一杯に入ってきた肉棒を締め付けてしまう。痛みはなかったが、息苦しさに似た感覚はあった。
「動きます…ね」
 ぢゅぐっ…ずぢゅるっ!
「あっ!」
 琴音が一度腰を引いて、一気に突き出す。再び身体の奥が衝かれる。
 ぢゅぐっ…ずぢゅるっ! ぢゅっ、ずぐぅっ! ずぐぅっ、ずぐっ!
「あっ…あーっ…はぁっ…はああぁっ…琴音ちゃんっ…!」
「せ、先輩の中…あたたかくて、ぬるぬるしていて…きついです…」
「こ、琴音ちゃんっ…琴音ちゃんっ…」
 ずぐっ! ずっ!
 雅史はもう止めて欲しいというつもりで琴音の名を呼んだのだが、何度も奥底を衝かれている間に雅史の中からこみ上げるような快感が生まれてきて、止めてという言葉は喉の奥にはさまったままになる。
 ずぐっ、ずぐっ!
「あっ…ああーっ…琴音ちゃんーっ…!」
 さっき性器の一点を触られた時とも違う、全身を段々と溶かされているような甘い感覚。ごりごりと性器の中をこする肉棒の荒々しい感触にも拘わらず、それが一番深い所を激しく叩く度に果実がはじけるような快感が生まれた。
「う…うう…」
「せんぱい…私、もう出ちゃいそうです…」
 半泣きのような顔をしている雅史の顔を見つめながら、とろけきった顔で琴音が言う。
 ずっ、ずっ…
「あぅっ…あぅっ!」
 雅史は衝かれる度に、体が跳ね上げられる衝撃をそのまま感じさせるような声を出した。それでも、琴音は容赦なく動き続けてぐちょぐちょに濡れた雅史の中をえぐり続ける。
「先輩っ…でますっ!」
 ずんっ!!
「あっ!」
 雅史は一声叫んで、身を硬直させた。
 びゅっ、びゅっ、びゅっ…
「ああっ…先輩…先輩の中に…いっぱい…」
 びゅっ、びゅっ…
 熱い液体が内部に吐き出される。それに灼かれるように、雅史の快感がじわりじわりと全身を満たしていった。
「はぁっ…あ…あ…」
 琴音がゆっくりと腰を左右に振る。
 びゅ…ぴゅっ
 最後の一滴まで出そうな程の長い射出のあと、ようやく琴音は腰の動きを止めた。
「………」
 雅史の意識を、巨大な高波が満たしていく。それがひとたび通り過ぎると、雅史の頭は真っ白になって、感じられるのは快感だけになってしまった。
 ビクン、ビクン…
 膣の部分が痙攣している。それが琴音の肉棒を締め付ける快感、琴音に組み敷かれている快感、精液に膣内を満たされた快感、犯されたという快感…それが全てストレートに雅史の体を満たす。
 ビクッ…ビク…
「んぅぅんっ…んっ…先輩っ…良かったです…」
 琴音の声も、もう雅史の耳には聞こえない。
 そして、痙攣が鎮まった頃に雅史は完全に気絶してしまった。


 同じ頃、リビングでは一人になってしまった芹香がいた。
「………」
 ソファに小さく座りながら、困り顔でピーナツをつまんでいる。
 いつもの魔術師ルックは、どうやらパーティの余興のためだけの物でもないようだった。



11/3
 ぐにゅぐにゅ…
「あっ…お、太田さんっ…」
 赤ん坊のような、無邪気な指さばきが僕のペニスを揉むように撫でてくる。
 ぐにっ、ぐにっ、ぐに…
 太田さんの指先は、狂気を感じさせる包帯に覆われた顔や発情しきった瞳にそぐわないほど、ひんやりとしていて女の子を感じさせた。多少乱暴に扱われていても、太田さんのあのすらっと長そうな指が嬉しそうに僕のペニスに絡んでくると思うだけで背筋が震え上がるほど気持ちよくなってしまいそうだ。
 精神がどんな状態なのかとても想像はつかないが、太田さんの指はまだまだ教室でシャープペンをすらすらと滑らせている時の理知的で綺麗な指と同じように思えてしまうのだから…
「いい格好じゃないか」
 太田さんの後ろに立った月島さんが、僕を見下ろしながらからかうように言う。
「………」
 僕は目をそらしたかったが、体はぴくりとも動かなかった。
 ぐにぐにっ…
 太田さんは僕の太股の辺りを両脚まとめて持ち上げて、ペニスをいじっている。腰の部分も床につかず、背中だけを床につけさせられている状態だ。月島さんの目には、僕の脚の間が全て見られてしまっていることになる。太田さんに責められている勃起したペニスから、後ろまで…
「…そうだ、太田さん…」
 月島さんの目がいやな輝きを見せる。
「…ほら、太田さんの大好きなものだ」
 そう言って、月島さんは僕のペニスを爛々とした目で見ている太田さんの頬にピンク色をした玩具を押しつけた。呼びかけには全く応じていなかった太田さんが、ゆっくりとそれに目を向ける。
 ぱっ!
 そしてそれが何であるのか気づくと、月島さんの手から奪うようにしてピンク色のリモコン式ローターを受け取った。僕のペニスから完全に興味を失ったようだ。
 ヴィー…ヴィー…
「うあ…あああ」
 太田さんは僕の脚を抱えたまま、膝立ちになってそこから思い切り脚を開き、高い音を立てるローターをぐりぐり押しつけ始める。月島さんがスイッチを入れてやったようだ。
 ヴィ…ヴィー…
 一転して、僕は鑑賞者になる。視線の端に映る太田さんの自慰から、目をそらす事は僕には出来ない。
 もっとも、顔が自由に動いたとしても、そこからきちんと目をそらせていたかは少し疑わしいが…
 あの太田さんが、自慰をしている。あられもなく性器を見せつけながら、高速振動を自分の感じる所に押しつけている。ぐちゅっぐちゅっという音を立てながら、濡れた部分をかき回している。実際に見る女の子の自慰は、あまりにリアルでいやらしかった。
 ちり…ちり…
「うっ…!?」
 その時、頭の中に、またあのちりちりという感覚がやってくる…
「太田さん、ストップ」
「………」
 あれだけ自慰に夢中になっていた太田さんが、ぴたりと指を止めて月島さんの事を見上げていた。
「それがどれだけ気持ちいいのか、彼にも教えてやりなよ」
「えっ!?」
「彼も、お預けを食らってうずうずしているはずだからね」
 ヴィーヴィーヴィー…
「うあっ…!」
 濡れた振動が、僕の後ろの方を襲う。太田さんは月島さんの命令を何のためらいもなく実行しようとしていた。
「や、やめっ…太田さん…!」
 何かが口元にこみあげてくるような感触を覚えながら、僕は懸命に体を動かして逃げようとする。だがやはり体は動かない。太田さんに脚を持ち上げられて弱い部分を丸見えにしている状態から、ほんのわずかにも動かない。
 ヴィーヴィーヴィー…
「うっ、かはっ、ああぅっ」
 太田さんが圧力を段々強くしてきているのがわかる。苦しさも、それに比例して大きくなってくる。
 ちりっ…ちりちりちりっ…
「ああっ!?」
 僕は思わず叫んでいた。
 脳天を直撃するような激しい電波が叩きつけられたのだ。
「もうちょっとゆるめてもらおうか」
「あっ…あぐ…」
 全身が弛緩していく。電車が減速して止まるような感じで、僕の体が弛緩してゆるゆるになっていく。
「太田さん…」
 ぐぐ…ぐぐぐ…
「あっ、あーっ…!?」
 だめだっ…
 もう入りそうになっている。それが、自分でもよくわかった。震える部分が外側だけじゃなくて、内側にまで触れてきているのが感じられる。
「女の子がどういう風に感じるのか、キミもよく勉強するんだね」
 月島さんは、最初に太田さんにローターを手渡した時と同じ瞳で僕を見つめていた。頭のいい人間がバカらしいことを考えついた時に、こういう瞳をするのだ。僕は妙な納得を感じていた。
 ぐ…ぐぐ…
「あっ、ぐぅ…」
 しかし、今はそれどころではない。太田さんの愛液のぬるっとした潤滑も加わり、ローターは今にも…
 ぐ…ぐぐぐ…
「ああっ…うああああぁ…」
 入れられて、しまった…!
「あっ…くぁ…」
 灼熱の物体が入っているような、重苦しい感触だった。それにくわえて、えぐるような痛みが僕の腸内を襲ってくる。激しく貶められている、そんな事を感じずにはいられない痛みだった。
「どうだい? 初めてを失った気分は」
「と、止め…」
「なかなか苦しいもんだろう? そこから永遠に抜け出せないんじゃないかって、そういう事を思わせる苦しさだろう? 僕は、直接には経験したことがないからわからないけれどね」
 ヴヴヴヴヴ…
 月島さんが言う間にも、中はえぐられ続ける。
「しかし」
 ちりっ…ちりちりちりっ…
「うあっ!?」
 脳にまた電撃が走る。そのパルスは、あっという間に体を駆け抜けて僕の腸内を包み込んだ。
 ちゅぼっ!
「あっ…ああっ…」
 その時、太田さんが僕の両脚を離して、吸い込むように僕のペニスをくわえこむ。ずっと放っておかれたペニスは、後ろで感じている苦痛とあいまって甘すぎる快感を僕に与えた。
 ちゅぱ、ちゅぱ…ちゅぷるっ
「うっ…はぁ」
 積極的に舌を使う太田さんのフェラチオ。それを感じている間に、ねずみのようにせわしなく走るパルスが、腸内の感覚とペニスの感覚を結んでいく…
「んっ…あっ、あっ…あ…」
 なにか、痺れるような感覚が生まれてきていた。
 さっきまでえぐられていた部分が、麻痺したようになって痛みを感じなくなってきている。代わりに、どんよりとした異物感だけが僕の中に生まれている。
 ちゅぷ、ちゅぷ。ちゅる…
 それに、太田さんの絶妙な舌の動きが気持ちいい…
 こ、これって…?
「苦しさを感じるよりも、快感に思ってしまった方がもっと抜け出せない無限地獄のようになることもあるのさ」
「か、快感なんか…!」
 ちり…ちりちりちり…
「あっ…!」
 全身が一瞬ビクゥッ、と収縮しそうな気がした。
 ヴヴヴヴヴ…
「うっ…あっ、あああああああぁっ…」
 だ、だめだ…
 痺れていた部分が、一気に快感を感じる部分として開花したような感覚だった。痛みを感じていた部分というのがウソのように、内面からのくぐもった快感が僕を襲ってくる。
 ちゅぽん。
 太田さんが、僕のペニスから舌を離した…
「さあ太田さん、彼がこのまま出してしまう所を見届けるとしよう」
「そんな…バカなことは…」
 僕は精一杯に強がって見せたが、うねるような射精感はもう腰の奥底にドクドクと溜まりだしていた。しかも、太田さんが口を離したというのに止まらない…ローターの鈍い振動が、どんどん僕の快感を引き出してくるのを誤魔化すことは出来ない…
「うっ…はぁっ、はぁっ…」
 呼吸を乱しながら、僕は必死で括約筋を締め付ける。だが、それはローターをよりきつく感じてしまう結果を生む事に他ならなかった。
 ヴヴヴヴ…
「くぅぅぅっ…」
 かと言って…このままゆるめていたら…
「限界だね」
「う…ううっ、ううっ、ううううーっ…」
 ぷちゅっ、と半透明の液体がペニスの先からほとばしりでた。
「くっ、くっ、くふぅぅっ…」
 慌てて、ありたけの力でバルブを締め付けようとした結果…僕は、ローターの振動を最強に近いまでに受け止めてしまうことになり…
「っ!」
 びゅっびゅびゅっ!
「あっ…」
 …びゅっびゅっびゅっ……びゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅっ…
 一度放出が始まってしまうと、止めることはもう不可能だった。僕は床の上に自分の精液が、信じられないほどの量吐き出されていくのを呆然と見つめる。
「無様だね」
「………」
「でも、奪われているばかりじゃキミのような奴は被害者面をし始める。次はキミが奪う番だ」
「………?」
 未だローターの振動は止まっておらず、僕は月島さんの話を霞がかった状態で聞いていた。
 …がちゃり。
「ユ…ユウくん!?」
「ご苦労様。その子をこっちに連れてきてくれるかな」
 そして僕の耳に入ってきたのは、怯えきった新城さんの声だった…



10/10
 ぱたん。
「ここって…」
「姉さんのとこの部室よ」
 綾香が雅史に向き直る。着ているのはいつも通りの寺女の制服だ。
「……」
 雅史がドアの方を振り向くと、後ろ手で戸を閉めた芹香がこくりとうなずいた。
「そう…なんですか」
 部屋は薄暗かった。学校の中だというのに、証明は燭台に灯(とも)されたロウソクだけだ。入り口のドアも、ただの学校の引き戸とは思えないほどにぴったりと閉まって廊下からの光を遮断している。何か細工をしてあるのかもしれない。
 ぱたっ、ぱたっ…
「あの…」
 小さく声を出す雅史に、前後から二人が近づいてくる。上履きが木の床を叩く乾いた音が、妙に雅史の不安感を煽った。
「そ、それで、僕に何の用事なんですか? 浩之のことですか?」
 雅史は問う。
 本来なら、もっと前にしておくべき質問だったのかもしれない。しかし、浩之を通じて多少知っているといった程度の関係の芹香と綾香に校庭で話しかけられてしまった時、雅史はすっかり面食らってしまっていた。しかも、他校の制服を着ている綾香が雅史の制止も聞かずに校舎の中に入っていって閉まった。堂々と校内を歩き回ろうとする綾香を放っておくこともできず、雅史は二人が歩くままについてきてしまったのだ。
 だから、人目につく事を恐れて、廊下を歩く間は何も会話をしていない。
「そうねぇ…」
 綾香が、口元に楽しそうな笑いを浮かべていった。思わず雅史が芹香の方を振り向くと、こちらは全くの無表情だ。どちらの表情も、この状況では雅史の不安を煽ることしかしない。
「え、えっと」
 雅史は綾香の方に一歩後ずさり、それからまた芹香の方に一歩踏み出した。動くことが出来ない。何とも言えないプレッシャーが雅史の動きを押さえつけてくる。
 すたっ…
「!?」
 軽やかなステップの音がしたかと思うと、雅史の背中が強く抱きすくめられる。
「え、えっ…!」
 雅史がびくっと顔を後ろに向けると、綾香の顔が眼前に迫って雅史の顔をのぞきこんでいた。つり目がちな綾香の瞳が、誘惑の色を帯びて光っている。
 慌てて綾香から顔をそらし、視線を前に向けると芹香は懐から何かを取りだそうとしていた。
「こ、これは…」
 雅史の頬を、汗がつたう。
 その雅史の細いあごを、ぱし、と綾香の手がつかんだ。そのまま、ゆっくりと綾香の方を向かせる。
「しばらくの間、私たちに付き合ってもらえるかしら?」
「つ、つきあうって、何をするんですか…?」
 あごを支える手の力はあくまで弱いものだったが、雅史は綾香の吸い込むような視線に顔を動かせなくなってしまう。既に少し震え始めた声で、問い返すのがやっとだった。
「い・い・こ・と」
 明らかに作り声とわかる言葉でも、綾香の大人びたトーンが耳元でささやかれると雅史の緊張は一気に高まってしまう。それに加えて、綾香の手が雅史のYシャツのボタンの辺りに絡んできた。
 ぷつっ…
「あっ」
 最初から外されていた第一ボタンを素通りし、二番目のボタンが外される。下からランニングのシャツがのぞく。
 きゅぽ…
 その時何かを引っこ抜くような音がした。見ると、芹香の手に透明な色をした液体の入った小瓶がある。今のは、その栓を抜く音だったようだ。
「な、なんでこんなことを」
 ぷつっ。
 三番目のボタンも外される。芹香が小瓶を持って、綾香の方に近づいていく。どんどん進展していく状況に、雅史も落ち着いてはいられなくなってきた。
「ん」
 ちゃぽちゃぽ…
 綾香が口を開け、芹香がそこに小瓶の中身を注ぎ込む。量はそれほど多くない。栄養ドリンクの瓶の半分もないかもしれない。だが、綾香はそれが口の中に注ぎ込まれても飲み込もうとはしていないようだった。口の中に、注ぎ込まれた液体を溜め込んでいるように見える。
 一体どうすればいいのかわからず、雅史は途方に暮れていた。しかし、その途方に暮れる時間すら長くは続かない。綾香の手が再度雅史のあごに掛かり、綾香の方を向かせる。
 雅史はそれに大人しく従ったが、綾香の指が雅史の唇に触れると驚きの表情を深めた。
 くちゅっ…
「!!」
 そして、綾香の唇が自分の半開きになった口に押しつけられると、声にならない言葉が漏れる。反射的に顔をそらしそうになったが、綾香に背中を押さえられているために逃げ切れなかった。覆いかぶさるような口づけが雅史の薄桃の唇を襲う。
 ちゅる…ちゅるっ
「ふんっ…んんーっ!」
 生まれて初めてのキッスに、雅史は目を白黒させるしかなかった。しかも、口に含んだ液体を綾香がどんどん送り込んでくる。アルコールのような匂いのする液体が、雅史の口腔の中を満たしていく。
 ちゅるん…れろっ…れろっ…
 すっかり液体を雅史の中に流し込んでしまうと、綾香は舌を差し込んで雅史の舌をくすぐった。完全に未知の感覚に、抵抗力のない雅史は耐えきれず筋肉を弛緩させてしまう。倒れ込みそうになる雅史を、芹香が前から支えた。前後から少女の柔い肉体に挟まれた雅史は、それ以上に弱々しい表情を浮かべて綾香のキッスに身を委ねてしまっていた。
 こく…こくん
 初めは液体を飲み込むことを拒んでいた雅史も、やがて綾香の唾液と混ざったそれを少しずつ嚥下していく。既に潤み始めていた雅史の目が、じわっと揺れた。それでも綾香は雅史の胸をまさぐるような動きを加えながら情熱的に雅史の唇をついばみ続ける。
 芹香も、ただ雅史の体を支えているだけではなかった。積極的な動きこそしないものの、さりげなく内股に回した手で微妙なところを撫でる。薄い学生ズボンの生地を通して、細長い芹香の指が楽器を奏でるように雅史を触った。それに加えて、下腹部をゆるゆると雅史に押しつける。あまり身長の高くない雅史は、芹香とも綾香とも身長差が少ない。芹香の敏感な部分は、そのまま雅史の敏感な部分に密着した。
「………」
 芹香は、既に雅史の股間の固いものを感じている。この状況下で、健康な少年が勃起しないわけがない。しかし、初(うぶ)な雅史にとっては縮み上がるほど恥ずかしい経験だった。
 そうする内に、雅史は全身が熱くなってくるのを感じる。顔とペニスだけではない。ちょっとした料理屋に行った時に飲まされたワインのように、喉から熱さが広がって、それがとどめようもないほどに広がっていった。アルコールの比ではない、すさまじいスピードで全身に熱さが広がっていく。頭のてっぺんから指の先まで、熱っぽい血流が巡っているような気分だった。
 ちゅぷんっ。
「ふむんっ…はぁ…もういいかしらね」
「…はあぁぁ…はあぁっ…」
 綾香がようやく雅史の唇を解放すると、雅史は震えた声で泣いているような息をしながら呼吸を整え始めた。単に呼吸が苦しかったとか、興奮したとかいうだけでは済まない。明らかに体が変調を起こしていた。
 その中でも一番おかしくなっているのが…自分の先輩のスカートに押しつけてしまっている、固い肉棒だ。もちろん、雅史も勃起するのが初めてということはない。だが、これほどまでに熱く大きく固くなった状態が継続するというのは経験したことがなかった。何か熱い心棒でも通されたように肉棒が勃起しっぱなしになって、抑えようがないのだ。
「姉さん、どいて」
 こく。
 綾香が言うと、芹香が雅史から少しずつ体を離していった。綾香は雅史の体を両手でしっかりと抱え込んで、崩れ落ちそうになる雅史を支える。
「あら? 佐藤君、これは何かしら?」
 また耳元に口を近づけて、綾香が言う。学生ズボンを激しく突き上げている隆起を指摘されているのは明らかだ。
「ううっ!」
 それを強調するかのように、身を離した芹香が指先だけを雅史の股間に近づけて頂点の部分をなぞった。雅史の体に、電流にも近い快感が走る。
「姉さんの指、どんな気分?」
「や、やめてくださいっ…そこは…」
 芹香の愛撫は地面に絵でも描いているような単調で軽いタッチのものだったが、雅史は弛緩しきった体を必死に動かそうとして悶える。間接的な刺激なのに、恐ろしいほどの快感が生まれていた。
「気持ちいいでしょ?」
「い、いやっ、そんなっ…だ、だめですっ! 来栖川先輩っ、やめてください! も、もう…!!」
「えっ」
 綾香が意外そうな顔をした瞬間、雅史は弛緩していたはずの体を激しく痙攣させた。
 びゅくん、びゅくん、びゅくん…!
「うっ…あ…ああっ…」
 雅史がうなだれて、屈辱にまみれたうめき声を上げる。そして、一定の間隔で体を震わせる。
 芹香も多少の驚きの表情を見せていた。止まった指の先には、確かな肉棒の振動と、何かが叩きつけられるような感触が感じられる。そして、さっきまでと比べて、明らかに温かくなっている。
「ひっ…や、やめて…くだ…」
 芹香が確かめるように指をぐいぐいと押し込むと、ズボン越しにもぬるんとした感触が返ってきた。雅史はようやく絶頂が収まり始めたばかりの所に敏感な部分を刺激され、悲痛な声を漏らす。
「佐藤君、早すぎるわよ? いつもちゃんと自分でしてる?」
「そ、そんな、こと」
「ふふふ…ちゃんと自分でもできるようにお勉強しなくちゃね。それから、学校でお漏らししちゃったお仕置き…」
「え、えっ」
 綾香は、雅史を支えていた手をするっと引き抜く。
「あっ…」
 既に全身の力を失っていた雅史は、膝からがくっと床に倒れ込んだ。そのまま、仰向けになって床に転がってしまう。
 そこに、芹香と綾香は獲物を捕らえる肉食獣のように飛びついた。芹香が上半身、綾香が上半身。
「………」
 抵抗できない雅史は、自分の服が剥かれていくのをただ見ているだけしかできなかった。きちんとズボンの中に入れていたYシャツの裾が芹香の手で引っぱり出され、ボタンが全部外される。綾香が、黒いベルトを機械でも扱うように事務的かつ効果的な手つきで外す。そして学生ズボンのホックとジッパーを素早く取ると、一気にぐいっと膝の辺りまで脱がせてしまう。
「こんなに出したんだ」
 白い綿のランニングとブリーフの雅史。そのブリーフはべっとりと濡れて、隙間から半透明の白濁液がこぼれてきていた。雅史はついに目を閉じてしまう。まぶたから、涙の雫があふれた。
 綾香は雅史の体の左に回り込み、右に位置している芹香と一緒に雅史のランニングをつかむ。そして、子供にするような手つきでずるずるとランニングを脱がしていく。
「よっ」
 最後に雅史の髪をばさっと揺らしながら、二人は雅史のランニングを完全にはぎ取ってしまった。髪の毛が乱れた雅史は、ますます憔悴したように見える。それなりに筋肉はついているが、どこか華奢なイメージを隠しきれない肉体が露わになっていた。
 残っているのは汚れたブリーフだけという、惨めな格好を二人の少女の前に晒している。雅史は何も考えないようにしたが、涙ぐんでしまうのを止めることはできなかった。
 ちゅく。
「!?」
 だが、突然胸に濡れた感覚が走ると雅史は再び体を跳ね上げそうになる。
 ちゅく…ちゅくっ。
「んっ…んん」
 両方の胸の、ごく小さな突起のある部分が舐められている。綾香と芹香、それぞれが舌を出して雅史の乳頭をくすぐっているのだ。じらしの全くない、突起の部分だけを執拗に舐める動きである。初めはくすぐったさが先に立ったが、じきに背を這い上がるような快感が生まれてきてしまった。決して小さくないが、どこか間接的な刺激が雅史の体を再び熱くしていく。
「はぁ、はぁ、はぁっ…」
 そんな所を刺激されるとは思っていなかった雅史も、すぐに呼吸を熱くしてしまった。肉棒を触られていたときよりもずっと被制圧感の強い愛撫に、雅史は無意識のうちに虜になってしまったようだった。
「佐藤君、男の子もここ感じるの知らなかったでしょ?」
「………」
 雅史は少し顔を芹香寄りに向けながら、無言だった。
「でも、一番好きなのはやっぱりこっちね」
 綾香が言うと、雅史はまた体を震え上がらせてしまう。そして、雅史にとってはかなりの長い沈黙を挟んだ後、ブリーフをつかまれたのが感じられた。
 芹香と綾香は、ランニングの時と全く同じようにブリーフをつかみ、ゆっくりと下ろしていく。べっとりとしたブリーフが下ろされて、粘液のついた肉棒が外気に晒されるのがわかった。さっき放出したばかりなのにもう固さを取り戻している肉棒を屹立させながら、雅史はブリーフが下ろされ、途中でズボンと合流し、最後に上履きと一緒に脱がされるのを固唾を飲んで待つ。
 ぱさっ…ぱたっ。
 そして、雅史は靴下しか身につけていない状態にされた。
「ふぅん…早いけれど…結構大きいのね」
 にちゃっ。
「くぅ…」
 指が肉棒に絡むと、さきほどの愛撫を彷彿とさせる快感がびしっと雅史を突き抜けた。
「姉さん、来て」
 目を閉じている雅史には、無言で行動する芹香が何をしようとしているのかはさっぱりわからない。ただ、次の刺激がどこに生まれるのかだけは明白だった。そう思うだけで、その部分が異様に敏感になってきてしまう。
 ぺろん…
「あっ…うあっ!」
 ぺろ…つぅぅっ…
 次の瞬間、雅史は大声を上げていた。
 舌だ。綾香と芹香が、両脇から同時に雅史の肉棒に舌を這わせたのだ。放出された白濁液を舐め取るように、二人で半分ずつを丁寧に舐め上げる。
 ちゅるん。
「ふぅ…どう? 気持ちいいでしょ?」
 雅史はぴくぴくと体を震わせることしかできなかった。液体を舐め取るためだけの目的だったのか、それほど長い時間の舌戯ではなかったが、雅史にショックと背徳感を与えるには十分すぎる行為だ。
「じゃ、今度は私たちの番ね」
「…?」
 雅史は意味を取りかねたが、いきなり肉棒の先にぬめついたひだひだの感触が感じられると、さすがに狼狽する。雅史は、芹香も綾香もまだ服を着ていると思っていたのだ。だが、突然生まれた指でも口でもない特殊な感触は、綾香の秘めた部分なのだと本能的に雅史に伝える。
「あ、あ」
 …じゅるんっ!
「あああああっ!?」
 一瞬にして、雅史は童貞を失っていた。
 じゅぷ、じゅぷ…
「うんっ…はぁ、なかなか…いいわよ…こんな可愛い顔した男の子を私の物にしたって聞いたら…怒る子、きっと多いんでしょうね…」
 肉棒全体が、ジューシィな感触の柔らかい媚肉に包まれている。そこが生き物のようにうごめき、上下に動いて雅史の肉棒をしごくように刺激する。
 初経験のぬめった膣内と、綾香のきつい締め付け。雅史は目がくらむような快感を感じながら、うっすらと目を開けようとした。
「…!?」
 目の前が真っ暗になっていた。そう思ったが、違う。
 ぬちゅ…
「う…ううんっ…うっ」
 雅史の口は、何か温かなもので覆われていた。そして口腔の中に、酸っぱい液体が流れ込んでくる。酸味に交じって、ふんわりとした甘めの香りも交じっていた。秘部の味と香りなのだと、雅史は再び本能的に理解していた。
 じゅぷ、じゅぷ…
「ふぅ…んん」
 雅史の肉棒は、未だ綾香の膣内でねんごろな摩擦を受けている。つまり、今雅史の口に押しつけられているのは芹香の性器ということになる。
 ぺろ。ぺろ…
 全身の興奮と淫乱な少女達の空気に飲まれ、雅史は舌を動かしていた。何もわからないが、とにかく舌を上下左右に動かす。口の中に流れ込んできた酸っぱい液体は、舐め取って飲み込む。
 ぺろ、ぺろ。
 雅史は同じ箇所をただ舐め続けた。そうすると、芹香は自ら腰を動かして望む位置に雅史の舌を誘導する。
 ぺろ、ぺろ…
 舌の先に、固い粒が引っかかるようになった。雅史は同じ舌の動きを続ける。芹香は腰の位置を微調整して、雅史の舌の先がぴったりと粒に当たるようにした。
「姉さん、佐藤君の舌、どう…?」
 雅史には、芹香が綾香にどう反応を返したのかわからない。ただ、口の中に流れ込む液体の量がそれとわかるほどに多くなってきているし、芹香の腰が時折震えるようになってきたのもわかった。雅史は忠実に同じ位置で舌を動かし続ける。
「う、うん…私も…すごく、いい…」
 綾香の声が、随分と切羽詰まったものになってきていた。しかし腰を振る動きはますます激しくなってきている。雅史の肉棒は、早くも二回目の放出に近づきつつあった。
「さ、佐藤君も動きなさいっ! こ、腰を上げて…そ、そうっ!」
 雅史は綾香の命令に従い、あるだけの力で腰を跳ね上げる。綾香はそれに合わせて、全体重を叩き落とすように腰を下ろした。強い衝撃に、綾香の中がぎゅううっと強烈に締まる。
 芹香も官能を高めているようだった。腰のグラインドを強めて、雅史の舌の位置よりも強く突起を雅史の舌に押しつけることを重視した動きになっている。痙攣も、より頻繁に起こるようになってきたようだった。
「うっ…イ、イク…」
 綾香が絶句して、雅史の肉棒を搾り取るように膣が収縮する。
 ビクッ…ビク、ビク、ビクっ…!
 びゅ…びゅくっ、びゅくん、びゅく…
 完全に絶頂は合一し、雅史は極みを迎えた綾香の膣内に激しく放出した。
 同時に、芹香の腰もぶるぶると震えて雅史の顔にありたけの力で押しつけられる。芹香も、雅史の舌だけで絶頂してしまったようだ。
「は…はぁっ…サイコー…」
 綾香がそう言い放った。
「姉さん…ん…んんっ」
 そして、二人の姉妹は雅史の上にまたがりながら口づけを始める。
 雅史は二度目の絶頂に放心しながら、一週間ばかり学校を休んでいる浩之がどうしたのかをぼんやりと考えていた。



10/5
「ぐっ…」
 脇腹の辺りに、鈍い衝撃が来る。
 反射的に身をひねっていたから良かったものの、何もしていなければみぞおちに重い衝撃が直撃してただでは済まなかっただろう。俺はありったけの力で木刀を振り下ろす。狙いをつけているヒマなんかなかった。
 がずっ!
 何かにかするような軽い感触、それから床に木刀を叩きつけてしまった大きな音。
「祐一っ…」
「!」
 舞が剣を振りかぶりながら、俺に向かって突っ込んでくる。俺は慌てて背中から床に転がった。
 だっ…ばしゅぅぅぅぅっ!!
 床を蹴り、天井を突き刺すように舞が剣をなぎ払うと空気が爆発するような音がする。非常扉の緑色の表示が火花でも散らしそうな重い音を立てて明滅する。俺にも、舞の剣が何かを斬ったのが見えたような気がした。
「…とっ…わっ…!」
 だが感慨に浸っている場合ではない。舞の身体が思い切り俺に向かって落下してくる。とっさの事の上に、脇腹のダメージが思ったよりも大きくて俺は動けなかった。
 …どすんっ!
「…っつぅ〜」
「…祐一、大丈夫?」
 痛い。
 剣で刺されるとか、肘落としを食らうとか、膝が股間を直撃するとかいう最悪の事態にはならなかったが、舞の身体は綺麗に俺に直撃していた。女にしては長身の舞が思い切りジャンプしてきた後に落っこちてきたのだから、ぶつかっただけでも相当痛い。いや非常に痛い。脚から着地して少しは体重をそらしてくれたようだが、やっぱり痛かった。
「はぁ…何とか…な」
「そう」
「で、やったのか?」
「やった」
 舞は俺の身体の上に乗っかったまま、短く答える。
「そっか…」
 俺はため息をつくような声で答えて、しばしぼうっと目の前にある舞の顔を見つめていた。
「祐一、よく頑張った」
「ん…」
 なんだか師匠と弟子みたいな会話だな、などと思っていると舞と顔を至近距離で合わせているのが妙に気恥ずかしくなってきた。そもそもこんな近くで舞の顔を見た事なんか一度もない。
 そうすると、舞の身体が俺に触れている部分全部が気になり始めてしまった。考えてみればかなりヤバイ体勢だ。舞の剥き出しの脚が俺に脚に絡んでいるみたいな感じになっているし、股と股はかなり近い位置でくっついているし…それにこの、舞の胸が…思っていた以上に大きい…
「俺は、何を考えているんだ…」
「え?」
「あ…いや、なんでもない」
 思わず口をついて出た言葉を誤魔化す。こんな言葉を無意識に吐いている時点でかなり動揺している…
「祐一」
「な、なんだよ」
 意味があるのかないのか、舞が俺の名前を呼ぶ。ますます俺は意識を「そっち」に集中させてしまった。一度意識してしまうと、元には戻らない。
『………』
 どうしようもない沈黙の中で、俺の股間が膨らんで舞のスカートを圧迫していった。
「……祐一」
「………」
 今度の呼びかけには、俺も答える事すらできない。
 かさ…
 服と服のこすれる小さな音を立てて、舞が立ち上がった。正確には、俺の脚にまたがって俺を見下ろす姿勢になっている。
 ズボンの上からでもはっきりわかるほどに勃起していた俺のペニスは、舞の目によってしげしげと見つめられていた…
「興奮したの?」
「い、いや、これは、なんだな、その、あれだ」
 問うてくる舞の声は、変に落ち着いていた。表情も、妙に余裕があった。少し笑いを浮かべているようにすら見える。俺はそれを見てますます取り乱してしまった。
「………」
 かしゃん…
「な、何するんだっ…」
 舞は剣を廊下に置くと、手で俺の隆起の一番てっぺんを触り始める。手の平で回されるように刺激されていると、じわじわと快感が腰まで流れ込んできた。
「こうすると気持ちいい?」
「や、やめれくれ、舞。落ち着け」
 舌を噛みそうになりながら俺は言う。平静を努めていても、汗が伝ってきそうだった。
 かち…じーっ…
「お、おい…!」
 何の前触れもなく、舞は俺のズボンを下ろさせてトランクスの中に手を入れてくる。逃げようもなく、俺のペニスはキーンと冷え切った夜の校舎の空気の中に引きずり出されてしまった。そこに、舞はまた指を触れさせてくる。
 しゅこっ、しゅこっ…
「う…うあっ…」
「祐一の、熱くなっている」
 驚くほど手際のよい指さばきで、舞は俺のペニスをしごいた。冷たくて細い、舞の指がペニスにぴたりと吸い付いてリズミカルに動いている。
 しかも、舞は恥ずかしがる様子もなかった。いつもは先輩なんて意識を持っていなかった舞の顔が、異常なほど大人びて見えてしまう。この夜の校舎にいる時は舞も普段よりも大人びて見えるが、今の舞は昼と夜の差では済まされないほどに年上の顔をしていた。
 俺は、何も言えなくなってしまった。
 しゅこっ、しゅこっ、しゅこっ。
 すぐに俺のペニスからは透明な液体がこぼれて、こすられる音の他ににちゃにちゃという水っぽい音も混じり始める。しかし舞はかまわずスナップを利かせてペニスを上下にしごいていた。悪いことをしているようにも後ろめたいことをしているようにも見えない。透明な瞳で俺のペニスを見つめながら、機械的に、でも効果的に舞の手は動いていた。
「もう、出そう?」
 採血する看護婦のような、優しい事務的な声で舞が訊いてくる。
「…」
 俺はぎごちなく首を縦に振った。
 しゅこっ、しゅこっ。
 舞は変わらぬペースでペニスをしごきながら、もう片方の手もペニスに近づけてくる。そして、手の平でペニスの先をそっと押さえつけた。
「うっ…ううっ…」
 ぬるぬるになった俺のペニスの先っぽが、しごかれる事で舞の手の平に小刻みに擦りつけられる。少し痛みを伴った快感は、俺の我慢を崩壊させた。
「………」
 どくっ…どくっ、どくっ…どくっ…
 俺は、舞の手で柔らかくふさがれたペニスから精液をほとばしらせる。舞の手の平がそれを押さえつけた。白い粘液が舞の両手にあふれて、どろどろになっていく。
 解放感と、背徳感がペニスの周りでわだかまっているような気がした。
「…ご褒美」
「え…」
「よく頑張った」
 舞は一年先輩の顔のまま、俺に妖しく微笑んだ。



9/8
「…なんでこうなるんだよ」
 一文字一文字を区切るようなこわばった声だった。全ての文字に一つずつ濁点が増えているように聞こえる。
「面白いんじゃないかと思ったのよ」
「北川さん、結構似合ってますよ」
「…栞ちゃん、それ全然フォローになっていない」
 にこにこしながら言う栞に、北川は涙を流しながら抗議する。
「今の、フォローだったの?」
「あんまり、そうじゃないつもりだよ」
「…むごい」
 同じ笑みを浮かべたまま栞が香里に告げた言葉を聞いて、北川の落ち込みがさらに深まる。
「だ、大体、なんで制服?」
「それが一番わかりやすいからよ」
「何が…?」
「みじめさが」
「……自分のいつも着ている制服だろ」
「北川君が着ているときと私が着ている時じゃ意味合いが違うでしょ?」
「…そりゃ」
 ハイソックスを履かされてスカートの丈を長めにしている状態である。割と生地自体はゆったりしているため、顔立ちをのぞくとあまり性別の区別がつかなくなる制服とも言える。それでもデザインには、どう考えても少女趣味が混じっていると言えるだろう。
 つまり、女の子が着ると女の子らしく見え、男が着ると少し女の子らしく見える。
「じゃあ、なんで外…?」
 夕方の校舎裏。夏休みなので人はいなかった。
「うちにはずっとお母さんがいるのよ」
「ホテルは…」
「見つかったらどうするつもり?」
「俺の家は…」
「ダメに決まっているでしょう」
 理由すら言わずに却下された。
「じゃ、じゃあ、栞ちゃんがいるのは…?」
「祐一さん、しばらく東京に行っちゃっていますから」
「それとこれと何の関係が」
「お相伴させてもらえるそうです」
「…おしょうばん?」
「だから変な気を起こしてもらわないためにもその服なのよ。その状態で栞に覆いかぶさっても間抜けなだけでしょ」
「ま、待てぃっ!相沢がそんなことOKすると思ってるのか!?」
「祐一さんは寛容な人ですから」
「寛容と言ってもだな…」
「もう半分は好奇心です」
「………栞ちゃん」
「さらに言えば、その服は口止めの効果も十分にあるわけよ」
「…なるほど」
 何が何やらだが、納得するしかなかった。こんな格好をした事を吹聴されたたら、北川は流氷に向かって身を投げかねない。もっともこの季節では生還してしまう危険性が大だが。
「説明はもういいですよね?」
「そうね」
「…う」
 姉妹そろって、ずいと一歩寄ってくる。
 香里と比べても北川の方が身長は高いが、北川の今の格好ではどう考えても力関係的に劣っていた。北川は両手を身体の前で合わせて二人の動きをうかがう。
「じゃ…」
「うん」
 香里が北川のスカートに手を掛ける。
「………」
 どうにも反応のしようがない。北川は硬直して、香里の次の行動を待つしかなかった。
 ごそっ。
「…うっ」
 香里はスカートの中に手を入れると、慣れた手つきで北川の肉棒を引っぱり出した。ショーツは面倒くさいという理由で回避され、トランクスを履いたままでいることは許してもらえなかったのだ。
「なにこれ…こんなんじゃダメじゃないの」
「そ、そんな事言っても…」
 北川のペニスは十分な勃起を見せていなかった。
「仕方ないわね」
 香里はスカートの中でぐにぐにとペニスをこねくり回す。
「う…うう…」
 パンの生地でもこねているような無感情な扱い方だったが、狭苦しい空間での手淫は段々と北川の興奮を高めていった。スカートの下からペニスに向かって風が吹き込んでくるのも、不思議な刺激となってくる。
 まるで電車の中で痴女にいたずらをされているような、内に向かう快感だった。
「ん…北川さん…きちんと大きくならなくちゃ…だめですよ…」
「栞ちゃん…」
 ふと栞を見ると、自らスカートの中に手を入れて自慰を行っている。逆の手はTシャツの上から小さな胸を転がしていた。服の上からではもぞもぞと動いているようにしか見えなかったが、もう息が荒くなっているところを見るとかなり激しく指を動かしている様子である。
 それが決定撃となって、北川のペニスは完全に勃起した。香里の手の中で、スカートを思い切り突き上げるほどに固くなっている。
「ちょっと触っただけでこんなにして…北川君っていやらしいわね」
「か、香里が触ったんだろ…」
「口答えする気?」
 ぎっ…
「あぐっ!や、やめてくれっ…俺が悪かった」
「全く…」
 香里は肉棒に突き立てていた爪に入れた力をゆるめた。中指一本だけだが、容赦のない力の入れ方だ。長くすれば、痕がついてしまいそうである。
 ところが、情けない事に北川はそれによってさらに勃起を激しくしてしまった。もう充血しきった亀頭が痛いほどだ。
 …しゅるっ。
「…栞ちゃん」
 その様子を見て、栞はスカートを穿いたまま白いショーツを脱いだ。靴を履いた足の先からそれを抜き取り、折り畳んで自分の持ってきたバッグの上に重ねる。
「少し、濡らしちゃいました」
「先に脱げばよかったじゃない」
「ゆ、祐一さんとずっとしていなかったから、思ってたより早く我慢できなくなっちゃって…」
 栞は頬を染めてうつむく。
「あれだけひとりエッチしといて何言ってるの」
「み、見てたの!?」
「見てなくてもわかるわよ、それくらい」
「…で、でも、ひとりでするのと祐一さんにしてもらうのはやっぱり…っ」
 栞が足と足をすり寄せる。
「どうしたの?」
「お、思い出したら…ますます」
 内股の歩きにくそうな体勢のまま、北川と香里の方に栞が近寄ってくる。
「寝て」
「え?あ…」
 香里がペニスを握りしめる手を離した。北川はアスファルトの上に身を横たえる。陰なのでひんやりとした感触が感じられたが、それはかえって全身の熱さを際だたせ、状況の異常さを深く認識させた。しかも、スカートの裾が足に触れる、生まれて始めての感覚も加わってくる。外で昼寝をする時の感覚とは、何もかもが違いすぎた。
「北川さん…」
「し、栞ちゃん」
 改めて、こんなところでこんなことをしていいのかという思いが生まれてくる。だが栞は性欲に火がついてしまっているようだし、止める事はもう不可能のようだ。
 何より、もう既に栞は腰をかがめて北川の上に乗ってきてしまっている。足を大きく開いた奥は逆光になってよく見えなかったが、光さえあれば高ぶった栞の秘裂が丸見えになっているはずだ。
 スカートのゴムとお腹の間に挟まれていたペニスを、栞がぎゅっとつかむ。
「くぅっ…」
 先の方を持たれたため、痛みも走った。だが、香里に比べても細く華奢な指先に自分のペニスが包まれているのを感じると、興奮せざるをえない。
 栞はスカートのゴムの部分をまくりあげるようにして、ペニスを空に向かって直立させる。そしてそこに、自分の秘裂をあてがっていった。
 欲望にたぎった瞳は、栞が小柄で幼く見えるだけに一層ぎらぎらと光って見える。普段おとなしそうにしている少女が、ここまで性欲を高鳴らせるものなのか…と北川は心の中で驚いていた。
 …ぬちゅる。
「んっ」
 先端が栞の性器に触れた。それだけで粘っこい水音が聞こえてくる。
 ぬちゅぅ…ぷじゅっ、じゅるっ…
「はぁっ…」
「くぅぅ…」
 あとは、一番奥まで飲み込まれていくだけだった。
「お、奥に当たってます」
 栞は北川の腹の辺りに手を当てて、呆然とした目で虚空を見つめている。一見すると、少女と少女が服を着たまま交わっているように見えた。栞のスカートは結合部分を中心としてふわりと広がり、二人がどのようにつながっているのかをまるで見せていない。
 じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ。
 狭いながらも豊富な愛液で潤滑している栞の中と、北川のペニスがこすれ合う。
「はうっ…あああっ…」
「う…」
 栞が前にスライドさせるようにして腰を振る。その度に、くぐもった水音が響いた。外からではスカートに隠されてまるで濡れた様子が見えないのに、実際には結合した部分が熱い粘液をぬめらせているという奇妙な状態。
 じゅぶじゅぶっ。ぬちゅっ。
 腰を振られる度に、北川の身体は揺すられて後頭部や背中がアスファルトにこすられる。香里との性交で騎乗位には慣れている北川も、柔らかいベッドの上ではない場所でするとなるとまた違った気持ちになってくる。最近は感じなくなってきた、犯されているという感覚が生まれてきてしまう。
「はぁっ…はああっ…」
 栞は北川の事など構わずに、ショートカットを振り乱しながら思い切り腰を振っていた。ややもすると、北川の頭ががんがんとアスファルトに打ち付けられそうになる。脳が揺すぶられるような感覚だったが、北川はいつの間にかその感覚に身を委ねてしまっていた。
「もうそろそろなんじゃないの?」
 香里が冷静に言う。
「そ、そうだな」
 北川はふと理性を取り戻した。このまま中に放出するわけにはいかない。
「ん…んっ…」
 それでも動きを一向に緩めない栞のピストン運動と締め付けによって、あっという間に射精感はせり上がりペニスの根元まで達する。
「で、出るっ…栞ちゃんっ…」
「…っ!」
 栞がどんと北川の腹を押すようにして、身を跳ね上げた。
「ぐ…」
 その衝撃もかなりのものだったが、止まらない。
 びゅっ、びゅっ、びゅ…
「あ…う…」
 何もなくなった空間へ、精液が放出される。それは勢いを失って、力無く北川のスカートの周りに付着していった。身をぴったりと包む制服と、放出感とのアンバランスさが変な充溢感を北川に与える。
「汚したわね」
「え、うぇっ…だ、だったら最初からそう言ってくれれば」
「常識で考えればわかるでしょ?」
「そ、そんな…うぷぅっ!」
 ちゅぐっ。
「あっ…そこ、そこですっ!」
「ん…うぷぅっ」
 北川の顔に、突然栞の秘部が押しつけられた。息苦しさに北川が暴れて、愛液でべとべとになった敏感な突起に猛烈な刺激が加えられる。
「まずはその子をイカせてからね」
「はっ…はぁ」
「うぷっ…」
 栞のスカートの中の暗闇で、北川は涙を流していた。



8/19
「そこで正座です」
「…はい」
 少年はちょこん、とフローリングの上に正座した。すねから下にはひやりとしたフローリングの感触が広がってくる。熱を帯びた身体にはそれが心地よく感じられたが、そんな事を考える余裕もないほど少年は緊張していた。
 もっともその緊張が転化されたのか、正座した脚の間からはさっき出したばかりのペニスがぴんと飛び出している。まだ白い液体がぬぐい取られていない、べとべとの状態だ。
 その浅ましくみじめな性器を、茜はじぃっと見つめていた。少年は気恥ずかしさに手で隠したくなったが、とてもそれを許してもらえるとは思えない。さらに悪いことに、そういう事を考えているだけでペニスはどんどん力を取り戻して固く固くなってしまうのだ。
「あ、あの…」
 いつまで経っても動こうとしない茜に少年は声をかけた。
 すると、バスローブを羽織った茜が正座した少年の前で身体をかがめていく。しかし少年の顔を見下ろす位置関係は維持したままの、膝立ちのような体勢だった。
「あなたの一番悪いのは…」
 茜が手を伸ばす。
「あぅぅっ」
 そして、人差し指でぴしっと少年のペニスを弾いた。
「この、おち○ちんです」
 まがりなりにも服をまとった、興奮も収まっているように見える茜から漏れた言葉。その幼児語は、少年の全身をくすぐり立てるような卑猥な響きを持っていた。
「こんなに汚くして、お仕置きの時にまで大きくなって…」
「ごめんなさい…」
 茜の声には、不思議とナチュラルな厳しさが感じられた。少年の口からも、素直な言葉が出てしまう。
 そこにはいたずらな笑みを浮かべていたり、どこか手加減をしていたりといった様子がないのだ。ドレスを着せられた時に比べると、茜はこの状況により深く熱中しはじめているようだった。
「そんな事を言っても許しません…きちんと身体で覚えさせてあげます」
 茜はちょうど身体の横に来ていたバッグの中に両手を入れて探りはじめる。そして、そこから何かを取り出してきた。手の平の中に収められたそれは、少年の目には何なのかわからない。
「これを使います」
「え…えっ!」
 茜の右手から出てきたのは、ピンク色をした100円ライターだった。
 しゅぼっ。しゅぼっ。
 何度か火をつけて、少年の顔の前に提示する。みるみる間に少年の顔が青ざめていった。
「だ、だめですっ…本当にやけどしちゃいますよっ…」
「これくらいしても大丈夫です」
 茜はすっとライターを動かし、少年のペニスに近づける。そして着火点を亀頭の間近に置いて、スイッチの所に手をかけた。
「今ここで火をつけたら、どうなるかわかりますね?」
「や、やめてくださいっ!本当に…だめですっ!」
 さすがに少年は本気で怖がっているようだ。しかし、茜は据わった目でライターのスイッチの一点を見つめている。
 く…
「だ、だめですっ!」
 茜がスイッチにかけた指に少しずつ力を加えていった。段々スイッチ部分が沈み込んで、着火に近づいていく。少年は身体をこわばらせ、恐怖の目でそれを見つめていた。
 …ぴと。
「あ…」
 だが、点けない。
 しゅぼっ。
 ライターの胴の部分を少年の亀頭部分にくっつけて、そこで火を点ける。炎は少年の身体には触れていない。
「あ、あついっ…」
 それでも放射される熱だけで、少年は熱さを感じているようだった。顔をしかめ、腰を引きそうになる。だが茜の鋭い目がそれを押しとどめた。
「このまま燃やしちゃうのはちょっと可哀想ですね」
 しばらくすると茜はライターの火を消し、少年の身体から離していく。少年は安堵の表情を浮かべるが、代わりに提示されるのが何なのか固唾を飲んで待っていた。
「だから、こうします」
「…?」
 茜が左の手を開いた。そこには何もないように見える。
 から…
「??」
 その手を傾けると、フローリングの上に何かが転がるような、ごくごく小さな音が聞こえてくる。そして茜はフローリングから何かをつまみ上げた。
「…あっ」
 その瞬間、茜の指の先に何かきらめく物体がつままれているのが少年にも見えた。近くにいてもあるのに気づかないような細い物体など、一つしかあり得ない。それは裁縫用の針だったのだ。
 …しゅぼっ。
「…あっ…あ!?」
 その針に茜がライターを近づけ、点火する。その細い金属は、たちまちの内に炎によって熱されていった。見た目に変化はないが、それが高熱の状態になっているのはすぐわかる。
「じゃあ、いきますよ」
「ちょ、ちょっ…そ、それもっ!」
「我慢するんです」
 ペニスに向かって、その針が近づけられていく。茜は針を逆に持っているようであり、先端を突き刺されるという事はなさそうだ。だが、時折銀色にきらめくその針が近づいてくると少年の背筋を恐怖が這い上がってくる。
 その動揺を知ってか知らずか、茜はためらいもなく針を近づけていった。
「反省するんです」
「や、やめてくださっ…ぐっ!」
 高熱の状態になった針が、ペニスの幹にぐいと押しつけられる。少年は苦悶の声を上げて、全身を硬直させた。突き刺すような鋭い痛みが生まれ、それは麻痺に似た不快感につながっていく。しかし、針がすぐ近くにあるという事を考えれば下手に身体を動かすことはできなかった。
「あ、あつい…」
 だが、針の体積の小ささのせいか、その高温はそれほど長くは持たない。鋭い痛みは消えないものの、熱による刺激はすぐに収まっていく。残滓(ざんし)のような熱がぼんやりと感じられていた。
「ひ、ひどいです…あっ…?」
 うっすらと涙をにじませながら言おうとした少年を、極めて甘美な感覚が襲う。
 ちゅぷちゅぷ。
「はぁぁっ…茜…さんっ…」
 針を離すやいなや、茜は思い切り少年のペニスを口でくわえたのだ。精液が残っているそこを、舌で丁寧になめ回す。特に針を接触させた部分は、動物が傷を癒そうとしているかのように優しい舐め方をしていた。
 苦痛の後だけに、その快感は少年の心と体を包み込むようにとろかしていった。
 ぬぷ…
 ひとしきり舐めた後に、茜は口を離す。手を添えず、顔だけを突き出してのフェラチオは普段よりも淫靡に感じられた。
 しゅぼ…
 すぐ、茜は無表情に右手のライターを左手で持った針に近づけ、念入りにあぶり始める。
「え…ま、また…」
 少年は言ったが、それ以上の抵抗はしなかった。
 そして、再び熱せられた針がペニスに近づいていく。
「あっ…くああああっ!」
 灼かれる感触に、少年は叫び声を上げた。だが、最初に比べるとその叫びにも色が生まれてきている。
 ちゅぷちゅぷ。
「あっ、あっ…ふああぁ…」
 その直後に来る、とろけるような感触を期待できるからだ。熱心な茜のフェラチオに、少年は高い声を上げながら悶えた。その繰り返しによって、少年は次第に服従しているという観念を育てていった。
 そうなると、激しい苦痛でしかない熱針責めも、服従の証のようにすら思えてくるのだ。その服従感が、少年に意識を背後からかき回されるような快楽を与えていった。
「もう…だめ…です…」
 何回目かの針責めが終わった瞬間、少年がうわずった声を出す。
 ちゅぷ。
 ビクビクっ!ビクビクっ!
 茜の唇がペニスの一点に触れた瞬間、少年は激しく射精した。茜は深く深く少年のペニスをくわえこんで、その白濁の液体を一滴残らず受け止める。そして、こくこくと躊躇もなく飲み込んでいく。
 少年を、強烈な満足感が満たしていく。何かを求めるような真剣な茜の吸い込み方と飲み込み方が、変則的なフェラチオの後では純粋に心地よかったのだ。
 ちゅうぅ…
 尿道に残った精液すら吸い出して、ようやく茜は少年のペニスを解放した。
「はぁ…」
「すこし…ご褒美の方が多すぎましたかね…」
「で、でも気持ちよかったです」
「今度、もっと厳しいお仕置きを考えておきましょう」
「か、勘弁してくださいよ」
「どうしましょう…」
 茜の顔には、少し冗談めかしたものが戻ってきたようだ。
「そ、そしたら茜さんがしてくださったののお礼に、僕もしてあげます」
「…あなたが?」
「え、ええと、茜さんに奉仕して差し上げるんです…それで、ご褒美とお仕置きの量がとんとんということで…」
 無意識の内に、少年は奉仕という言葉を使ってしまっていた。
「…そうですか」
 茜はふぅ、と息を吐き出す。しかし、その瞳にはどこか嬉しげなものも映っているようだった。


8/3
「…鏡で見てみますか?」
「や、やめてください…」
 少年は目を伏せながら答えた。
 白い手袋に包まれた手を、どこにやるべきか決められずにおろおろする。肘まで純白に包まれた自分の手はまるで他人の物のようによそよそしく、どうすればいいのか全くわからない。
 もちろん、それ以上に扱い方がわからない物は、全身を包んでいる黒いドレスだが…
 どこをどう隠そうとしても、ドレスはドレスである。誤魔化すことはできない。ところが、ドレス自体は身体にぴったりと合っていた。なで肩気味の肩のラインも、ちょうど茜と同じだったようである。
 つまり、不思議なほどに違和感がない。
「あっ…」
 すっと寄ってきた茜が、胸元から手を入れてきた。さすがにその部分は余り気味だったため、茜は難なく服の隙間に手を侵入させる事に成功する。
「茜さんっ…」
「なんですか?」
「う…な、なんでもないです…」
 眼前に迫った余裕たっぷりの茜の顔に、少年は言葉を無くす。ごくごく自然に振る舞う茜の姿が、少年にはよく理解できなかった。
 まさか茜さん、最初からこれを狙ってドレス買うのOKしたんじゃ…
「あ…ぅ…」
 思考は、茜の指先による愛撫で中断される。
 先端を小刻みにはじくような刺激。ぞくぞくと、普段とは全く違う神経が高ぶってくる。
「あ…だめです…茜さんっ…」
 そこを刺激されたのは初めてではなかったが、服を着たままされたのは初めてだった。背中を抱き寄せられて延々とそこをなぶられていると、拘束感にも似た快感が沸き起こってくる。茜に刺激されている方とは逆の乳首がドレスの生地にこすられる乾いた感覚も、イレギュラーに少年を責め立てる。
「はぁ…はぁ…」
 少年は段々息を荒げていった。彼はそこを刺激されることで激しく勃起していたし、全身も熱を帯びてきていたが、それだけで完全に満たされる事はあり得ない。さらなる刺激が欲しかったが、茜はそれを見透かしたかのように同じ部分しか刺激しない。
「あ、茜さん…もっと…」
「もっと…なんですか?」
「も、もっと気持ちよくさせてください…」
 少年は気恥ずかしさを覚えながら言った。茜に責められた経験も多いとは言え、さすがにこんな言葉を吐いた事はなかった。あるいは、衣装によって気も弱くなっていたのかも知れない。
「そうですね…いいですけれど」
「…けれど…?」
 少年は不安そうに問い返す。
 茜は少年の背に回した手を解いてから、身を屈めていった。そしてドレスの長い裾を少しまくり上げる。
「あなたは今女の子なんですから、絶対に出しちゃだめです」
「…えっ!?」
「出しちゃったら、お仕置きします」
「そ、そんな」
 少年は十数年間生きてきて、お仕置きなどという言葉を聞いた事がなかった。それは少年の環境のせいか、現代においては当然のことか。
 ぱさっ…
「あっ…ちょっと、茜さんっ…あのっ…」
 茜がドレスの中に頭を入れてくる。少年は慌てて問いを続けようとしたが、茜はするするとあっという間にドレスの中を上がっていった。
「あ…うわぁっ…」
 少年が腰を引く。だが、ドレスで動きにくい上に、茜を巻き添えにして転んでしまう危険もあったため、大胆な動きは出来なかった。
 ちゅぷちゅぷ、ちゅぷるっ…
「はぁっ…あぅぅっ…」
 そして舌と口唇をリズミカルに動かす、茜のフェラチオが始まる。既に焦らされて十二分に固くなっていたペニスは、茜の舌戯を敏感に感じてしまっていた。
「だ、だめ…うっ、ううっ!」
 少年は思わず両手を身体の前でクロスさせて、ぎゅっと身体を抱え込む。大きな動きが出来ない以上、耐えるにはそれしかなかったのだ。
 ちゅぼっ。…ちゅぼちゅぼっ、ちゅぼっ!
 だが、弱いところを知り尽くした茜の前で、少年はあまりに無防備だった。瞬時にして少年は崖の縁まで追いつめられ、昇天のギリギリ一歩手前で踏みとどまっている状態になる。
「ゆっ…許してくださいぃっ…」
 声が裏返った。顔を伏せて全身をふるふると震わせる様子を見ていると、とても少年がペニスを持っているとは思えない。
「で、出ちゃいますぅっ…」
 少年が切なそうに眉をしかめて、ぎゅっと身体を硬直させた。
 すると、茜が舌の動きをぴたりと止める。
「あっ、あっ……だめぇっ!」
 …びゅびゅっ!びゅ…びゅっ!
 だが直前まで高まった身体は後戻りできなかった。最後のバルブがはじけ、茜の口の中になまあたたかい液体が放出される。
 涙をにじませながらぴくぴくと身体を震わせる様は、少女の絶頂に他ならなかった。
「ご、ごめんなさいっ…」
 恐ろしいほどの背徳感を感じて、少年は泣きそうな声で謝った。はじめて茜と交わった時とも違う、津波のように押し寄せてくる背徳の感情。それは未知の体験だった。
 ごそごそ、と茜がドレスの中から這い出てくる。
「…あれだけ、出しちゃだめと言ったのに、出しましたね?」
 髪の毛をさらりとかき上げながら、茜が厳しい声で言う。
「あ、茜さんが…」
「出しましたね?」
「…は…はい…」
 茜に怖い目でにらみつけられながらそう言われると、認めざるを得なかった。同時に身体から力が抜けて、床にへたりこんでしまう。
「約束通り、ですよ」
 きっぱりと茜が言い放った。


7/23
「う…」
「あははーっ、祐一さん、気分はどうですか?」
「と、止めてくれ…死にそうだ…」
「でも、こっちは嫌そうにしていませんよ」
 佐祐理が無造作にペニスをつかんで、思い切りしめつける。少女の力とは言え、全力で締め付けられれば痛くないはずがない。
「う、うっ…や、やめてくれ、佐祐理さん…」
「だったら、なんで縛られる時に嫌だって言わなかったんですかーっ?」
「そ、それは…舞が」
「ひとのせいにする悪い子はおしおきですよっ」
 バチン!
「あぐっ!」
 バチン!
 佐祐理が平手でペニスをはたく。決して弱い力ではない。
「ゆ、許してくれっ…佐祐理さん、俺が悪かった…だから、後ろのを…止めて…くれ…」
 ペニスは叩かれる度に左右へ大きく振れたが、その度に力を増しているようにも見えた。
 ヴヴ…という音を立てて祐一の身体の中で蠢いているのは、細長い形状をしたバイブだ。ローションが塗りたくられていたとは言え、生まれてはじめて異物を挿入されたのである。挿入の瞬間は、子供のような悲鳴を上げていた。
「でも、最初に比べれば随分慣れてきたみたいですよーっ」
「そ、そんなことない…もう限界だ…だから」
「女の子のはじめてはもっと痛いんですよ。ね、舞?」
「さ、佐祐理…」
 佐祐理の向いた方には、舞の姿があった。二人の様子をじっと見つめながら、片手は乳房に、もう片方の手は秘部に当てている。そして、全身を大きく動かしながらの自慰行為に耽っていた。
 くちゅくちゅくちゅ、とひっきりなしの水音が響く。床は漏らした愛液が水たまりのようになってしまっていた。物欲しそうに二人の行為を見つめながら、二箇所の敏感な突起をいじくる。だが、ピンク色の大きな真珠のような陰核への刺激では、舞は完全に満たされることはない。舞の瞳は、とても満足しているとは言えなかった。
「さ、佐祐理、もう…祐一のが、欲しい…」
「だめですよ。舞も、もっとお預けです」
「ゆ、許して…頭が、変になる…」
「ちゃんと、祐一さんが変態さんなのを見て、何回もイカないと許してあげませんよ」
「佐祐理っ…」
「さてとっ…祐一さん、お尻の穴だけでも、もう出ちゃいそうでしょう?」
「そ、そんなはずないっ…」
「じゃあ、佐祐理の前で証明してくださいねーっ」
 佐祐理がさっきしたように、祐一のペニスをぐぐっと握る。
「う…ううっ」
「佐祐理は握っているだけですよ?全然、動かしたりしてませんからねっ」
 そうして十秒もすると、祐一が腰をよじらせ始める。
「あれ、どうしたんですか?祐一さんっ」
「な、なんでも…くっ」
「舞、祐一さんがイッちゃいそうだって言ってますから、よく見ていないとダメですよ」
 佐祐理がペニスをつかんだまま、ぐっと祐一の腹に近づけるようにする。
「さ、佐祐理」
「佐祐理さん…ゆ、許してくれっ」
「なんでですか?祐一さん、なんでもないって今言ったばかりじゃないですか」
 佐祐理がじわりと力を強くする。
「そ、それは…うっ…うっ、うーっ!」
 どびゅっ!
「うっ…」
 どびゅっ!びゅっ!どびゅっ!
 祐一の激しい放出は、佐祐理の指で向きをコントロールされて彼自身の顔に掛かった。
 びゅっ…びゅ
 やがて勢いを失ってくると、祐一の腹に力無く白い液体が落ちる。
「あははーっ、祐一さん、やっぱりお尻の穴だけでイッちゃいましたね」
「うっ…ううっ…」
 屈辱と、未だ中で蠢いているバイブの感触に、祐一は力無くうなだれつつ身体を震わせる。
「嘘つきさんにはお仕置きですよっ」
 バチン!
「うう!」
 再び佐祐理が平手で叩く。だが、その瞬間ペニスはむくりと頭をもたげた。
「祐一さん、叩かれて気持ちいいんですねっ」
「ち…ちが…」
 だが、みるみる間にペニスは勢いを取り戻してしまった。
「自分で出したのを全部舐めなくちゃダメですよっ。それまで、これです」
 佐祐理がポケットから何かを取りだした。
「や…!?やめてくれっ!」
「口答えすると、ふたつにしますよ」
「た…たの…」
 祐一の声の末尾がかすれて消えていく。
 ぐっ、と佐祐理が指でそれを開いて、ペニスにつけてから離す。
「ぐぅぅっ…!」
 洗濯バサミだ。
「はい、舐めてくださいねっ」
「……」
 ついに祐一は口答えすらせずに、口の周りに付いた自分の体液を一心不乱に舐め取り始めた。
「舞、ほら、祐一さん、こんなに変態さんなんですよ」
「………」
 だが、舞は全身から力を抜けさせて、ぐったりとしていた。どうやら、オナニーで達してしまったらしい。
「あははーっ、舞、一回だけじゃダメですよ。早く佐祐理を満足させないと、祐一さんのこれが立たなくなっちゃいますよ」
「う…佐祐理、ひどい…」
 舞は力無くつぶやきつつも、再び自分の秘裂に指を這わせ始めた。


7/10
 何が原因だったか…
 祐一が秋子の前で、「背伸び」した事があったようだ。取り立てて大きな理由があったわけでもない、子供扱いされた事に対するちょっとした反発。この叔母の前でいつもいい子にしていた祐一が、少しすねた程度の事だ。年齢から見て、反抗期の萌芽であったと見てもいいかもしれない。
 実の母ではなく、叔母にそういう感情を見せつける辺りには、仕事であちらこちらを飛び回っている両親という背景もあったのかもしれないが…。母親を心の奥底で求める少年は、常にいるわけではない実の母親の前で悪い子になりきれなかったのかもしれない。
「こ、これでいいんですか」
 まだ声変わりすらしていない声が震えていた。
「いいわよ」
 それに対する声は、落ち着き払って優しい。普段と全く同じ調子の秋子の声だ。
 ふにっ。
「あっ……!秋子さんっ!?」
「じっとしていてね、ゆういち君」
「で、でもっ」
 祐一が戸惑いの声を上げる中にも、秋子の指は優しく撫で上げる。祐一のまだまだ小さい、未成長の袋の部分を。
「痛くはないでしょう?」
「いたくはないですけど、なんか、なんか変です…っ」
 祐一は自分のペニスが変化を見せつつあるのを、体内感覚からも視覚からも認知しつつあった。柔らかかった部分が、段々と熱を持ち、さらには膨らみを見せ始める。そして、ぐぐっ、ぐぐっと、少しずつ上向きに伸び始めていた。
「な、なんで、こんな」
「ゆういち君くらいの年になれば、こうなれるのよ」
 秋子は袋から指を離すと、ペニスの幹の部分を二本の指でつまんだ。その滑らかな動作は、祐一の不安感を煽ったり鎮めたり、不安定にさせる。任せておいて大丈夫という気持ちと、このままじゃという気持ちが入り乱れるのだ。
 くいくい、と秋子は軽やかなタッチで刺激し、また別の場所に移って同じように指でペニスをわずかに押し込む。みるみる間に、それは秋子の指使いに強い弾力を以て応えるほどに成長していった。
「立派ね」
「あ…」
 祐一は顔を真っ赤にした。自分のペニスが、臆面もなく上を向いてそそり立ち、秋子の前に姿を見せている。自分がこの上無く浅ましく感じられると同時に、妙なドキドキ感も祐一の中に膨らんできた。
 そして秋子はじっくりと鑑賞するように祐一のペニスを眺めてから、さっきよりも強い力でつかんだ。指先でつまむだけではない、しっかりと持って固定しているような感じである。
「ゆういち君、こうしているとどんな気分?」
「な、なんだか、じんじんします」
「こうすると、どう?」
 秋子はペニスの上でしゅるっと指を滑らせた。そして、同じように滑らせて指を元の位置に戻す。しごき立ての一回分だ。
「いいみたいね」
 答えを聞くまでもなかった。秋子が指を動かしている間、祐一はあからさまに腰を引いて、かすれた悲鳴を上げたのだ。もちろん、秋子はそれでもペニスを逃すことなく、一定のペースで指を動かしたが。
「あ…秋子さんっ…!」
「ゆういち君、女の子みたいな声だったわよ」
「そ、それは」
 実際、この年の少年が少女の声に聞こえたとしても全く不思議ではないのだが、祐一は露骨に恥ずかしそうな表情をした。自分でも、意識してしまったらしい。
「じっとしていてね…」
「………!!」
 しゅっしゅっと秋子が速いペースでのしごき立てを開始した。祐一は顔をしかめ、息を荒げながらその行為に必死で耐えていた。秋子の滑らかな指は軽やかに表面を刺激し、しかし決して祐一のペニスを離さない。虜になった、というのが祐一の気分だった。秋子の指と、ペニスを中心としてじわじわと広がってくる、とろけるような感覚からどうしても逃げられないのだ。
「気持ちいいでしょう?」
「……そんな」
 秋子がはっきりとその形容詞を述べた瞬間、祐一はその感覚を快感として捉えざるを得なくなった。そうなると、もうだめだ。安堵感と押し寄せる快感が相まって、祐一を未知の体験へと運んでいく。
「あ…あ、あっ、秋子さん、もうやめてください…」
「いいのよ…そのままで」
「あっ、でも、このままじゃ僕、変になっちゃいますっ!」
 秋子の前では一人称が揺れる祐一だったが、ここで選んだのはより弱い方であった。
 逃げそうになる祐一の両脚を、秋子は腕を回すようにして押さえる。そして、これまでよりもさらに速い上下運動を行った。
「だ、だっ、駄目ですっっ!」
 祐一がべそをかきそうな声を出す。
「あっ!」
 かん高い声が上がった瞬間、びくっとペニスが脈動した。
 ぷちゅっ、とごく少量の透明に近い液体がほとばしる。それは宙を飛んで、秋子の口元の辺りに付着した。
「っはぁ…はぁ…はぁ…ごめん…なさいっ…」
 祐一は呼吸で途切れ途切れになる声のままで、言った。最初に秋子に口答えした時とは比較にならないほど大人しい。
 ぺろり、と秋子は唇の周りを舐めるようにして、出された液体を舌の上に乗せてしまった。そして、こくんと音を立てて飲む。
「き、きたな…」
「大丈夫よ、これはおしっこじゃないから」
「そうなん…ですか…」
 祐一は不安げながらも納得する。
「でも、これがもっとたくさん出て、ミルクみたいに真っ白にならないと、おとなじゃないのよ」
「………」
 祐一はうなだれる。
「それから、今日した事はゆういち君と私の秘密よ?他の人に言っちゃ、だめよ」
 おもむろに秋子は柔らかくなりかけた祐一のペニスをつかんだ。そして、その先端に軽く口づける。
「!!」
 祐一は飛び上がりそうな感覚を覚えた。ペニスもそれを反映したかのように一気に固くなり、直立する。
「ふふ、元気ね…ゆういち君が誰にも言わずにいい子にしていたら、今度はお口でくちゅくちゅってしてあげますからね」
「く、口で…」
 祐一は呆然とした声を上げる。
「それじゃあ、ゆういち君、おやすみなさい」
「おやすみなさい…」
 そう言いながら、祐一は悪いことでもしていたかのように慌ててパジャマのズボンを上げた。慌てすぎて上がらなかったブリーフは、秋子が部屋を出て行ってからこっそり戻しておいた。
 その後、約束が守られたか否かはわからない。ある事件によって、他の記憶と一緒に、秋子との出来事は祐一の心の闇の奥深くに葬られたのだから…
 しかし、それが目覚める日が無いとは限らないだろう。


6/11
「うっ…や、やめろって言ってるだろ」
 浩之は動けない体勢のまま抗議する。履いていたはずのトランクスはいつの間にか脱がされてしまっており、着ているのは黒いTシャツだけという状況だった。それにしても腹のところまでめくり上げられてしまっており、勃起したペニスをそのまま晒さざるを得ない状況になっている。
 自分のベッドの上で昼寝をして、起きたらそういう状態だったのだ。ご丁寧に、身体のあちこちに縄跳びやらタオルやらの拘束がされてしまっている。へたくそな縛り方とは言え、目に入るところ全てが動けないようにされているような状況で、簡単に脱出できるはずもない。
「いーの。あかり、やっちゃいなさい」
「う、うん…」
「志保、何考えてんだっ!あかりもやめろっ」
 昼寝をしている時に、あかりから枕元に置いておいた携帯に連絡が来たのは覚えている。寝ぼけ眼のまま、カギは開いているから勝手に入ってこいと言ってまた眠り始めたのだが…
「あかり、どうせすぐに言うこと変わってくるんだから、構わずやっちゃうのよ」
「うん…志保」
 その結果がこうだ。
 視界の隅にいるあかりの頭が、自分のペニスに向かって伏せられていくのがわかる。反射的に浩之は身体をばたつかせようとしたが、やはり動く事はできなかった。
 ぺろっ。
「や…やめろって!」
 ペニスの先端に、おずおずとした刺激が走る。その不確かでなま暖かい感触は恐ろしく魅力的だったが、浩之は理性を振り絞ってやめさせようとする。何の前触れもなく幼なじみに性器を刺激されるという事態、しかも隣で別の人間が見ているという事態を、何とか止めようとする。
 ぺろ…ぺろ
 しかし、あかりは黙々と舌を動かした。単純に舌をべろんと出して先端に這わせるだけの、文字通り「舐める」動きだったのだが、それでも十二分に卑猥な行為であるのは間違いない。
「い…異常だぞ!こんなの」
 その行為に溺れそうになる自分を、叫び声で押しとどめる。
「あら、ヒロはこういうの嫌いなの?」
「嫌い…とかそういうんじゃなくて、明らかに正常じゃないだろ!」
 そういう間にも、あかりの行為は続いている。段々、膨れ上がってくる快感を無視できなくなってきた。行為自体が単調なだけに、上手く気をそらす事がかえって難しい。
「いいじゃない、あかりがヒロを好きだって言ったから、きっかけ作ってあげたのよ」
「だ、だったら別の方法がいくらでも…」
「だって、これほど効果的で、好きだってわかる方法ないでしょ?好きじゃない男にFなんて出来るわけないもん」
「………」
 あかりは何も言わず、舌を動かしていた。浩之からは見えなかったが、その頬は真っ赤に染まっている。感じずにはいられない恥ずかしさを埋めるかのように、あかりは行為に没頭していた。何をするにも真面目で一生懸命でセオリー通りというあかりのやり方がこういう行為に持ち込まれると、初めてこういう事をするとは思えないほどにねちっこいフェラチオになる。
「や…やめてくれ、あかり、こんなのおかしいだろ?な?」
 浩之の声にも余裕が無くなってきた。
「しつっこいわねぇ」
 志保はそう言うと、ベッドの上に自らも上がり始める。
「な…なんだよ志保!お前は関係ないだろ」
「特別大サービスだからね」
 そう言って、志保はあかりの横に肩を寄せていく。あかりは舌を出したまま志保の事を横目で見ると、少し左に寄って志保が入ってくるスペースを作った。
「んじゃあヒロ、もう観念しなさいよ〜」
「なっ…!?」
 志保が頭を浩之の股間に埋めていく…あかりと同時に。
 べろん、ぺろっ。
「うあ…あっ」
 浩之は思わず声を漏らしてしまった。二箇所に渡る舌での刺激。しかも、二人とも昔からよく知っている少女なのだ。理性にヒビが入る。
 志保のべろべろという舌でこねくり回すような刺激と、あかりの不慣れな優しい刺激は絶妙のコントラストだった。しかも志保はあかりと違って先端からふくろの部分まで動き回って責め立ててくるので、腰の奥底まで性の感覚が響きわたってくる。
「あ…」
「ね、あかり、ヒロも感じてるのがバレバレでしょ」
 浩之のペニスの先端から、唾液とは違う透明な液体が垂れてきていた。
「う…」
 指の腹で先端をくすぐられる感覚に、浩之はただうめくしかない。
「こうなったら、少しくらい乱暴にしても大丈夫だから、あかり一人でやってやるのよ」
「うん」
 志保は口元をぬぐってベッドから下りた。
 あかりは大きく口を開けて、浩之のペニスをくわえにいく。はむっ、という唇での柔らかいくわえこみの後、舌が触れるねっとりした感触が戻ってきた。
 そのまま舌をペニスの先端に当てて、あふれてきた液体をすくい取る。
「激しくね、激しく」
 ちろちろ、ちろちろ。
 志保の指示に応えて、その動きが速くなった。ペニスの先端をなで回すような強い刺激が幾度も繰り返される。あかりは無我夢中だった。
「あ…あかりっ、ちょい強すぎ…」
「いいのよあかり!ちょっと歯でも立ててやるといいと思うわ」
 ふにっ。
「あっ」
 ほんのわずかにあかりの歯が立てられた瞬間、浩之がらしからぬ声を上げる。
「ヒロ〜、めろめろじゃないの」
「ちっ…違うっ」
「んはっ…浩之ちゃん、なんだか今の可愛かった」
 一度ペニスから口を離して、あかりが言う。
「ばっ、バカ事言ってるんじゃ…な」
 ぺろっ。ぺろぺろっ。ふにっ。
 しかし、それは束の間の中断だった。すぐにあかりは行為を再開する。今度は歯での刺激もサイクルの中に交えた上に、こすり取るような強い刺激を、最も敏感な先端に加えていく。
「う…うわ…やばい、やめてくれ、アレが壊れちまうっ」
「そんなに簡単に壊れやしないわよ。女の初めての方が痛いんだから」
「そ…そういう問題じゃっ…あぐっ」
 かりっ、と音が立つほどに強い歯での刺激。血が滲んでいるかもしれない。
「た、頼む、あかり」
 だが、顔面を蒼白にして懇願しながらも、浩之の性感もまた限界に達しようとしていた。痛みが走る度に波は多少静まるのだが、その後に来るのはさらに強くなった性感の高まりである。必死で押さえ込もうとしても、無理だ。
「や、やめ」
「…!?」
 びゅっ!
「…う」
「ひ…浩之ちゃん」
 あかりは浩之のペニスから口を離すと、口を半開きにして、突然吐き出された少しの精液を舌の上に乗せたまま困惑した表情を浮かべる。
 びゅびゅびゅっ!びゅびゅびゅびゅっ!
「きゃっ!」
 一瞬遅れて、大量の精液が放出された。それは至近距離にいたあかりの顔に勢い良く飛び、口元から髪の毛までべとべとに汚していく。あかりは呆然とした顔をして、その放出を無抵抗で受け止めていた。
「あーあ、かっこ悪ぅっ。出す時は出すって言いなさいよ、しかも変な出し方したし」
 ぴゅっ…
 また遅れた精液が力無く飛んで、あかりの頬に飛ぶ。
「あかり、一度指でしごいて全部出してやんなさいよ」
 言いながら、志保はボックスティッシュをあかりに渡す。
「………」
 そのティッシュで口元の精液をぬぐってから、
「うん」
 とあかりは答えた。
 口の中の精液は、こくんと音を立てて飲んでしまった。そして顔にかけられた精液を、5枚重ねのティッシュで一通りふき取っていく。
 無論それだけで全部取れるはずもないのだが、あかりはまた新しいティッシュを取ると、浩之のペニスの上にかぶせた。水分を吸って、ティッシュがペニスにくっつく。それに構わず、あかりは二本の指で浩之のペニスをしごき上げ始める。
「い…いいって」
「でも…全部出しちゃった方がいいよ」
 出したばかりのペニスへの刺激は、それだけで痛みに似る。しかしそんな事を知らないあかりは、真剣な目で浩之のペニスを刺激していった。
 2分もしないうちに、浩之は再び絶頂を迎える事になる…
 そして、
「うぷっ」
「だ、大丈夫?浩之ちゃん」
 浩之の精液の後始末が終わってしばらく経った頃、あかりは浩之の顔の上に下着を脱いでまたがっていた。
「いいのよあかり。あれだけヤッてやったんだから、満足させてもらうまで許しちゃだめよ」
「うん」
 その答えに、最初よりも躊躇の色が薄くなったのは気のせいだろうか…?
 マヒした頭で考えながら、浩之は舌を動かし始めた。




6/4
「ん…んっ」
 くぐもった声が漏れる。
 反射的に逃げようとしたが、背中に回された腕はしっかりと雅史の事を抱きしめており、容易には動くことが出来ない。本気で振り払うなら、相手を突き倒すぐらいしかないだろう。それはためらわれた。
 しかしその一瞬の判断の内に、雅史の唇を割って滑り込んできた舌はうねるような動きで雅史の口腔の中を刺激していく。全く未知な感覚は最初のうち戸惑いしか生まなかったが、次第に痺れるような感覚へと変化していく。段々と力を入れることが出来なくなっていった。
「っは…」
 そして、たっぷり60秒間のキスの後、解放される。
「ねぇ、こういうの嫌い?」
 綾香は口元から落ちた唾液をぬぐいながら言う。
「嫌いって…いうか、僕、綾香さんと知り合って、まだそんなに経っていないのに」
「タメなんだから、敬語じゃなくていいって言ってるじゃない…ま、それはいいけど、佐藤君は私に抱かれるのが嫌かどうか、それだけ聞かせてくれる?」
「ひ、ひとが…」
「さっきカギ掛けてきたから大丈夫」
 綾香はロッカールームの入り口をちらっと見やりながら言った。
「それに、こんな時間に人来ないわよ…ね?」
「………」
 下を向いて黙り込んだのを肯定と取って、綾香は無造作にスカートを脱ぎ始めた。
「あ…」
 雅史は顔を赤らめて目をそらす。
 キスの途中から高鳴り始めた胸が、それとはっきりわかるほど鼓動を伝えてくる。全く見たくないわけではない、でも見てはいけない。そういうギリギリの感覚が、雅史を硬直させる。
 ばさっ、とスカートが床に落とされた音の後に、もっと秘めやかな衣擦れの音が聞こえてくる。そして、ぱさっと軽い音を立てて床に何かが落ちる音がする…。
 雅史は、少し目を上げさえすれば広がっているはずの光景は、あまりに扇情的なものだった。段々生理的な反応を抑えきれなくなってくる。
「佐藤君?」
「は…はいっ」
 思わず、サッカーの練習途中のような声を出してしまう。
 綾香はしーっ、と言って声をひそめるよう促した。
「床に、寝転がってくれるかな」
「………!」
 そうすれば、必然的に…
 雅史は起こってしまう事態を想像してしまい、ますます頬を熱くしながら下を向いていた。
 でも、これは綾香さんが僕に命令したこと…
 そう、命令したことだ…
 雅史は、そうやって思考の一回路を閉ざした。
「………」
 一度床に座り、それから足を伸ばして背中を床につける。ロッカールームの床は埃っぽかったが、上履きで入る場所なので耐えられないほどではない。
 その間横にずらしていた視線を正面に向けると…
「!」
 果たして、雅史をまたぐ形で仁王立ちになっている綾香の姿が目に入ってきた。ブラウスの裾に隠れつつも、何にも覆われない足の付け根の部分がくっきりと目に入ってくる。秘裂自体はほとんどヘアに包まれてしまっていたのだが、雅史はその部分に釘付けになってしまった。
 すぐに綾香は身体を沈めた。そして、雅史のズボンに手をかける。シンプルなベルトを外すと、ホックを外し、チャックをするっと下ろす。
 その間、顔を少し上げた雅史の目には、体勢の関係で左右に少し割り広げられている綾香の秘裂の中が映っていた。細部などまるでわからない、ただ生々しい鮮紅色の肉の色が見えただけだが、雅史はいよいよ核心が近づきつつあることを知り、固唾を飲んで次の動きを待つ。
「腰、ちょっと上げて」
「はい…!」
 うわずった声で雅史は従った。
 綾香は、学生服のズボンとブリーフを一気に膝の辺りまで下ろしてしまう。そこには、精一杯に勃起したペニスがあった。綾香がそれをぴとっ、とつかむと、ひやりとしたタッチが電撃のように雅史の感覚神経をかけずり回る。
 その部分に、綾香は性器を合わせていった。
 さっきに比べても、はっきりわかるほど大きく広げられた秘裂。雅史のペニスのすぐ近くまで来ると、綾香は二本の指で自らそこを広げた。綾香が身体を低くし過ぎているためにかえって見づらくはなったが、秘めた部分を無造作に広げるその動作はひどくエロティックだった。
 そして、ついに雅史のペニスの先端にぬめった感触が生まれる。その位置で、綾香は腰を上げ下げしていた。雅史は焦らされているのかと思ったが、実際には綾香は自らのクリトリスをいじくりながら準備をしていたのだった。まだ愛液の量が足りなかったらしい。
 その体勢が数十秒も続き、雅史がいい加減焦燥感を感じ始めた頃、綾香はぬぷっと一気に腰を落とした。
 雅史のペニスは、ぬめる温かな粘膜にすっぽり包まれている。雅史は、感動にも似たくすぐったい感情を感じ、それ以上に快感を感じていた。
 やがて、綾香が上下運動を始める。それほど激しい動きではない。ぬぷ、ぬぷ、とゆるやかなペースでの運動である。しかし締め付けが強いな事もあって、雅史は十分すぎるほどの快感を感じていた。
「さ…佐藤君」
「はい…」
「気持ちいい?」
「はい…気持ちいいです」
「どんな風に気持ちいい?」
「あ、綾香さんのがすごく温かくって…ぬるぬるしてて…それできつくって」
「そう…」
 綾香は、単調な動きの埋め合わせをするように自らクリトリスをいじくっていた。
「ごめんね…こんな事につき合わせて」
「い、いえ…」
「佐藤君が好きなのは間違いないから…これで嫌いにならないで」
「いえ、そんなこと」
 雅史は言いながらも腰をよじった。もう、腰の奥底から熱いものが沸き上がってしまっている。
「あ、綾香さん、僕もう」
「大丈夫よ…出しても」
「い、いいんですか」
「いいわよ…」
 綾香は、ややピッチを上げて上下の運動を続ける。
「く…うっ」
「佐藤君の…ちょうだい」
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
 尿道を何かが駆け抜ける感触。そして、雅史は激しく綾香の中に放出していた…。