あゆ[同性]


「わーっ、名雪さん、これ可愛いね」
「そう?ありがとう、あゆちゃん。こないだお店で見つけて、どうしても欲しくなっちゃったから…」
 あゆが目を輝かせて指さしているのは、ピンク色のカエルのぬいぐるみだった。大きさはけろぴーとほとんど同じ。そして、けろぴーと一緒に仲良くベッドの上で並んで寝ている。
「恋人同士なの?」
「うん、そうだよ。けろぴーの恋人だよ」
「名雪さん、優しいねっ。一人だけじゃ、寂しいもんね」
「だけど、まだ名前が決まっていないんだ…」
「そうなの?うーんと、けろぴーの恋人…だったら、けろっぴ?」
「それじゃ、けろけろけろっぴと同じだよ」
「けろけろけろっぴ?」
「あゆちゃん、知らない?」
「うん」
「えーと…」
 名雪は立ち上がり、机の引き出しを開けてごそごそと探る。
「ほら、こんなのだよ」
 ボールペン、消しゴム、筆箱、ポーチ。見方によってはブームの墓場なのだが、名雪は嬉しそうに自分のコレクションを披露した。
「わっ、かわいいっ!」
 そして、あゆは素直に反応する。
「そうだよね、可愛いよね」
「うん、ボクも欲しいよっ」
「でも、祐一はいつも文句言ってたけど…そんなにカエルばっかり集めてどうするんだ、って」
「祐一君?」
 あゆの表情が曇る。
「いいよ、祐一君の言った事なんて気にしなくて」
「そうだね」
「祐一君の事なんて、もう忘れちゃえばいいんだよ」
「私だと、イトコってのがあるから忘れるってわけにもいかないんだけど…」
「この街にまた来るなんてあり得ないよっ。もし来たら、みんなで無視だからね」
「そうだね、それがいいね」
 ひどい約束を二人で交わす。
「それよりも、けろぴーの恋人さんの名前だよっ」
「そうだ、何がいいのかな…」
「けろりん…ってお薬みたいだね。けろ…けろ…」
「けろ美とかけろ子とか、下にそういうのつけてもあんまり良い名前じゃないんだよね」
「なゆちゃん」
「え?」
「『なゆ』ちゃんってダメかな?」
「なゆ?私の名前の上二つってこと?」
「ううん。ボクの名前の下の一文字も入ってるよ」
「合わせて『な・ゆ』ね」
「うん。…ヘンかな?」
「可愛いと思うけど。でも、どうして私たちの名前を合わせて?」
「なんか、どうしてだろう…でも、何となく、そうしたくなったんだ」
「そうなの。うーん、でもあゆちゃんがつけてくれた名前だし、そうしようかな?」
「いいの、名雪さん?わーい」
「じゃあ…けろぴーとなゆは二人で仲良くお休みしててね」
 名雪が、ぬいぐるみ達に向かって言う。
 それを聞いて、あゆがにこっと微笑んだ。
「うん。お休みだよ。目を開けちゃダメだよ」
 二つのぬいぐるみの目は、最初から閉じられていた。寝かせると目が閉じるタイプのぬいぐるみだ。最近あまり見かけないものだが、絶滅したわけでもなかったらしい。
 こたつに座って向き合っていた二人は、もそもそと動き始めた。膝立ちになって、こたつの横へと移動する。
 その姿勢のまま、あゆと名雪はじっ…と見つめ合った。
 どきっ、どきっ、と二人の鼓動は高鳴っていく。聞こえるはずのない互いの鼓動が聞こえるように思えた。あるいは、それは自分の心臓と相手の心臓が共振しているという幻想だったのかも知れない。少なくとも、意識の上で共振が起こっているいるのは確かだ。
「なゆきさん…」
「あゆちゃん…」
 二つの声が重なった。
 近づいていったのは、名雪の方だ。膝立ちのまま、同じ膝立ちのあゆの方へ少しずつにじり寄っていく。あゆは動かずにそれを待つ。
 すぐに、二人の間の距離は50cmのところまで狭まっていった。
 ふわっとあゆが両腕を広げる。名雪は、そこにぱたんと身体を預けていく。二つの身体が重なると、まずあゆの腕が、そして名雪の腕が、お互いを固く抱きしめる。
 吐息が直接かかるほどの距離で二人はしばし見つめ合い、それから自然と口づけた。どちらからともない、極めてナチュラルな動き。すうっと吸い付くようにして、名雪とあゆの唇が密着する。
 唇が触れた瞬間、どちらも舌を出してより深いキッスを求めた。まずは、舌先を合わせるだけの微かな動き。それに我慢できなくなると、舌先をお互いの口腔の中に差し込む、より大胆な動き。
 二人の舌は、まるで生き物のようによく動いた。上あご、歯、歯ぐき。そんな部分を、器用に優しく愛撫する。直前に食べていたキャンディの甘い味が、二人をますます酔わせていった。ちゅるちゅるっと唾液の絡む音がする度、ぞくぞくっとした想いが背筋をかけ昇る。
『ぷはっ』
 名雪とあゆが離れ、二人の吐息が重なる。銀色という表現が相応しい、煌めきの糸がつつっと唇をつないだ。
 唇を拭いながら、お互いの次の動きをうかがう。乳房の先端で膨らみ始めた突起は、自分が快感で乱れたいという想いの萌芽。少し潤んだ瞳は、相手を快感で乱れさせたいという想いの萌芽。
 動いたのは、あゆの方が早かった。
 名雪に一歩近寄ると、服の上から名雪の乳房に両手をそっと添える。トレーナーの上からだったが、名雪はその刺激を敏感に感じ取った。「行為が始まった」という緊張感が、感覚を鋭くさせたのかもしれない。
 あゆは、そのままふわふわとした愛撫を始めた。揉む動きではあったが、あまり強くはない。あくまで、これから服が脱がされようとしている事を名雪に実感させるための愛撫なのだ。
「名雪さん、脱いで…」
 だから、二・三回刺激した後、すぐにあゆはそう言う。
「…うん…」
 わずかに恥じらいを残しながらも、名雪は素直に応じた。
 濃紺のトレーナーを脱ぐ。髪が長い名雪にとって、結構大変な作業だ。思い切り腕を上げて、勢い良くトレーナーを抜き取る。
 後に残ったのは、ブラウスとシャツだ。それも、自分で脱ぐ。ブラウスのボタンを一番上から一つずつ外し、段々と肌を露わにしていく。全部ボタンを外し、はらりとブラウスを床に落とすと、今度はシャツだ。さっきのトレーナーと同じように–––生地が薄い分、少しは楽そうだが–––長い髪を全部通さなくてはならないから、名雪は少し手間取る。
 あゆは、名雪が脱いでいく様をじっと見つめていた。お互いの恥ずかしい仕草を見つめる事も、二人の関係を構成するとても大切な要素なのだ。
「スカートは…」
「スカートも脱いで」
 あゆが言う。命令口調という事はないのだが、名雪は何か特殊な力を持った言葉であるかのようにそれに従った。
 ちょっとだけ躊躇しつつも、名雪はスカートをゆっくりと足首まで下ろしきった。そして、二つに畳んでこたつの上に置く。後に残ったのは、スポーツタイプのブラジャーと、同じくらいシンプルなショーツだけだ。
 もちろん、部屋には十分に暖房を入れてある。準備はしっかりと整えられているのだ。
「名雪さん、下着も」
「…え」
「下着も、自分で脱いで」
 名雪がとまどいの表情を浮かべる。
 あゆは、じぃっと名雪の事を見た。身長差があるから、見上げると言った方がいいかもしれない。
「う、うん」
 普段と少し違うプロセス。驚くほどの内容ではないのだが、名雪はやはり躊躇した。背中のホックに手を動かしていくのも、のろのろした動作になる。
「はやくっ」
 あゆが急かす。名雪はびっくりしたような表情を浮かべつつも、手探りでホックを外した。名雪の乳房を包み込んでいた布地が、するりと剥がれ落ちていく。
 露わになった名雪の乳房に、あゆは顔を近づけていった。そしていたずらっぽい表情で、先端の部分に舌を這わせる。
「あ…」
 いきなりの刺激にも、名雪の身体は痛みを感じる事は無かった。あゆは、極めてソフトタッチな愛撫をしたからだ。
 そのままちろちろとした刺激を加える。舌先の柔らかい部分を突起の部分に這わせているだけなのだが、たちまち名雪の乳房の先端は桜色に膨らみ始めた。敏感な部分への、直接的な優しい刺激。お互いの身体を知り尽くしているからこそできる舌戯だった。
「ねぇ名雪さん、下の方も脱がなきゃだめだよ…」
 舌を乳房に添えたまま、上目遣いにあゆは言う。
「えっ…あ、うん…」
 行為を見つめながら、あゆの髪の毛をさわさわと撫でていた名雪が我に返る。
 名雪は、出来るだけ身体が動かないようにして、自分のショーツに手をかけた。しかし、脱ごうとすれば身体を屈(かが)めないわけにはいかない。仕方なく、名雪はほんの少しだけ身体を動かし、ショーツをなんとか太股の所までずり下ろした。
 あゆは一向に舌先の動きをやめない。
「あゆちゃん、全部脱いじゃうから…」
 名雪は行為の中断を求めた。
「ううん、名雪さん…このままがいいよ」
「な、なんで?」
「なんか、この方が、えっち…」
 あゆは言いながら、ちゅっちゅっと先端を吸い立てる。
 さっきまでとは違う、じんじんとした強い性感が名雪を襲った。
「はっ…あっ、あゆちゃん」
 名雪はあゆの頭を抱え込むようにして、快感に耐える。それがあゆの興奮を誘い、あゆは唇でくわえた先端をきゅぅーっと強く吸い上げる。右手は、名雪の左胸をぐにぐにと揉みしだく。
「いいよっ、あゆちゃん、気持ちいいよっ」
 ぎゅっと目を閉じ、あゆの頭を思い切り抱きしめながら、名雪は嬌声を上げる。始まってからまだ2,3分しか経っていないのに、名雪の身体は十分に高ぶっていた。
 名雪の上げた声を聞き、あゆは一端口を乳房から離す。名雪は、こくっと唾を飲み込んだ。
 あゆは、両手の指を使って名雪の横腹を撫でながら、少しずつ刺激する部分を下にずらしていく。それと同時に、身体全体を屈めていく。やがて、あゆは名雪の前に跪(ひざまづ)くような格好になった。指先は、名雪の陰毛がうっすらと生え始めているあたり、へそのかなり下のあたりをやわやわと撫でている。
「あゆちゃん…」
 名雪は、自分の眼下にいる少女のことを惚(ほう)けた瞳で見下ろした。上から下への視線であるにも拘わらず、そこには威圧や支配といった色はカケラも見えない。ただ、無防備な部分をさらけ出している事の不安と期待があるだけだ。
 逆に、あゆが時折上目遣いで名雪を見つめる視線には、服従や奉仕といった色が見えない。胸を責めていた時と同じ、どこかいたずらな、好奇心に満ち満ちた瞳。名雪が反応を返す度、あゆは嬉しそうな、いじわるそうな表情を浮かべる。そんな子供っぽい表情は、あどけないあゆの顔立ちに合っているのかもしれないし、行為の淫靡さに比してアンバランスすぎたかもしれない。
 あゆが指先を名雪の肌に密着させたまま、くるくると螺旋を描くようにして秘裂に近づけていく。陰毛をかき分ける微妙な刺激は、名雪の下半身の感覚を少しずつ研ぎ澄ませていった。
「あっ」
 しかし、すぐには核心の部分に向かわない。あゆは、秘裂から遠く離れたルートを通って太股の方に指を動かしていく。
「まだまだ、だめだよ」
 あゆはそう言って、名雪の太股をずるっと無遠慮に舐め上げた。
「ん…はっ」
 もどかしい感覚。あゆは内股を指でさすりながら、太股の正面部分をぺろぺろと舐め始めた。決して敏感な場所ではないのだが、肝心の部分に近いというだけで、くぐもった快感が生まれていく。胸を舐められていた時とは全く違う、間接の性感が名雪を悶えさせる。
 あゆが内股に這わせた指を少しずつ上げていくと、名雪は期待に目を潤ませた。だが、ぎりぎりの所まで近づけておいて、あゆは指を下げてしまう。そして、べろべろっと強く太股を舐め立てる。
「ちがう…の…やだっ…」
 求めた刺激とは違う、強い刺激。全く性感とかけ離れているわけではない。だが、それはされればされるほど、満たされない欲望がむくむくと膨れ上がってくるような刺激なのだ。
 たまらず、名雪は自らの指を秘裂に向かって伸ばそうとした。
「だめだよっ」
 あゆの鋭い声が飛ぶ。
「あ…」
「それは、まだまだだよ。ガマンしなきゃだめだよっ」
 名雪は途中まで下げてしまった指をどうする事もできずに、おろおろとあゆの顔を見つめる。思い直して胸の方に指を動かそうとした名雪を、またあゆがじろっとにらむ。
「だめっ」
「あゆちゃん…もう、私、だめだよ…」
 名雪の懇願も聞き入れず、あゆはまた微妙な位置での愛撫を始める。今度は、秘裂の脇の部分だった。より核心に近づいているとはいえ、到底直接的な刺激とは言い難い。右側を舌でくすぐり、左側を指で撫でる。しかしその間の中心部分、陰毛に隠された密やかな一筋には、あゆは全く触れようとしなかった。
 と言っても、左右の動きが全くないわけではない。ちょっとずつ、刺激する部分が中心に近づいていく。名雪の秘裂まで、あと2cmのところまで迫る。いよいよかと、名雪は決定的な刺激を待ちかまえる。
 だが、あゆは次の瞬間舌と指をすっと元の位置に戻した。名雪の目が、絶望的な色を見せる。
「あゆちゃん…ヘンに、なっちゃうよ…」
 無反応。あゆは一心不乱に細かい刺激を加え続けた。
 その後、同じ様な焦らしを三回もやったのだから名雪はたまらない。これ以上ないほどに膨れ上がった欲望を、どうすることも出来ずにふるふると腰を震わせる。瞳からは涙が滲(にじ)み出ていた。名雪は両腕で自分自身の身体をしっかりと抱きかかえ、必死に耐えていた。
 そして。
 ぷちゅ…
「あっ」
「んはぁっ…」
 名雪の秘裂の間から、愛液があふれ出していた。
「な、中とかいじってないのに…」
 あゆは、どこか感動すらしているような目で、自分の引き出した名雪の身体の反応を見つめた。
「やだ…恥ずかしいよ…」
 名雪は上気していた頬を、さらに紅く染める。
「ガマン、出来なかったんだ」
「だって、だって…」
 いやいやをするように、名雪は頭を左右に振る。
 ぐちゅ。
「んんーっ!?」
「うわっ、すごいっ…」
 あゆは名雪の秘裂を二本の指で割り開いた。そこには、今まで内側に秘められていた名雪のラヴ・ジュースが溢れている。あゆの鼻腔を、これまでとは比べ物にならないほど強い「女の子」の香りが満たした。つぅっと秘裂から垂れた愛液が、未だ下ろされていなかった名雪のショーツに受け止められる。
「こんなになっているの、ボク初めて見たよ」
「やだ…あゆちゃんがいじわるだからだよ…」
「名雪さんがえっちだからだよっ」
 嬉しそうに言って、あゆはおもむろに秘裂の内側へ口づけた。
「あ、ああーっ…」
 待ちに待った刺激が訪れた瞬間の名雪は、愉悦というよりむしろ放心といった感じだった。だらしなく口を半開きにして虚空に目をやりながら、激しい快感を押し寄せるままに受け止める。
 秘裂の中の粘膜を一通り刺激してから、あゆは躊躇無く名雪のクリトリスを舐め上げた。
 びくっっ!!
 名雪が、思わず身体を打ち震わせる。先程からの刺激で、そこは十分に勃起し、愛撫への準備を整えてしまっていたのだ。鋭すぎる刺激に、名雪の蜜壷はどっと液体を吐き出す。
 その新しい愛液を指にたっぷりと垂らし、あゆは名雪のクリトリスの包皮をつるんと剥いた。快感の核を守るものは、もはや何もない。名雪は瞳を閉じ、不安そうな面持ちでとどめの一撃を待つ。
 だが、いつまで経ってもあゆは動かなかった。
「あゆちゃん…?」
 うっすらと名雪が目を開けると、あゆは立ち上がってセーターを脱いでいるところだった。
「え…あゆちゃん」
「名雪さんばっかり、ずるいよ」
「で、でも」
「ボクにも、して…」
 あゆも名雪と同じくらい髪が長いから、セーターを脱ぐのにはそれなりの手間がかかる。しかも、その下は長袖のTシャツと半袖のTシャツだったから、名雪よりもさらに大変だ。それでも、脱ぎ方をあまり気にしていない分、名雪よりも速い。
 名雪はあゆがぱっぱっと服を脱いでいくのを、呆然とした顔で見ていた。上気した身体、そしてその最も敏感な部分が激しく疼(うず)いていたのだ。「ね、ねぇ、私、もう少しだから…」
「だめだよ。ボクも一緒じゃないと不公平だもん」
「じゃ、じゃあ、舐めっこしようよ」
「そしたら、名雪さんすぐイッちゃうよ」
 否定は出来ない。
「今度は名雪さんがボクを気持ちよくするんだよ…」
 あゆは、落ち着かない名雪をなだめるかのように蠱惑的な甘い声で言った。そして、ショーツだけはゆっくりと、ゆっくりと脱いでいく。名雪の前に、自分の秘裂をさらけ出す動作を強調する。
「ボクも、ずっとガマンしてたんだよ…」
 あゆは、ほとんど無毛の自分の秘裂を両手で覆った。
「………」
 名雪が、ふらっと倒れ込むようにしてあゆの下に屈む。隠された部分に惹かれたわけでもないだろうが、名雪は何かに動かされているかのように奉仕の体勢を取った。
 秘裂を覆うあゆの手を、片方ずつゆっくりと剥がしていく。あゆはもちろん抵抗などせず、名雪のなすがままに従った。後に見えているのは、ほとんど一本の筋がくっきりと見えている、幼い秘裂である。
「いくよ…」
 名雪はあゆのような焦らしを全くせず、いきなり舌を秘裂の間にこじ入れた。
「ん…」
 あゆは小さく声を漏らす。痛みを感じているわけではなさそうだ。
 名雪は乱暴にならないように注意しつつも、最初からハイペースで舌をぐにゅっぐにゅっと動かす。舌先だけではなく、舌全体を使ってこねくり回す動きだ。
「うん…いいよ、気持ちいいよ…」
 しかしあゆは快感を口にした。嘘を言っているようには見えない。
 名雪は、早い段階からクリトリスの周囲に刺激を加えていく。あゆのクリトリスは、性器の外側の幼さにも拘わらず、かなり発達した大きなものだった。
 周囲からの間接的な刺激にもその突起は敏感に反応し、だんだんと赤みを強めてぷっくりと膨らんでくる。名雪は口に唾液をためて、たらたらとクリトリスの上に垂らしていく。
「ねぇ…あゆちゃん、もうクリちゃん触っても大丈夫?」
「いいけど…あんまり急いじゃやだよ、名雪さん…」
「だって…」
 名雪は、自分の火照る身体を早く何とかしたいという思いで一杯だったのだ。肯定の返事を受けるや否や、名雪はつんつんとクリトリスを舌先でノックする。
「はんっ…あ、あっ」
 舌を這わせる程度の弱い刺激を続けて様子見をしてから、名雪はもう少し強い刺激に切り替えた。唇でくわえて、ぷるぷると震わせる。舌全体で、転がすように舐め立てる。舌先を使い、速いピッチで何度も何度もこねくり回す。
「なっ、名雪さん、気持ちよすぎちゃうよっ」
 名雪はあゆの声を聞いて、ますます動きを激しくした。歯を立てる事は避けたものの、それ以外のあらゆる口唇の部分を使ってあゆのクリトリスだけを責め立てる。いつの間にか、包皮は剥けてしまっていた。無我夢中で、名雪はあゆの最も敏感なところを責め立てていく。
「だめっ、ストップ、名雪さんっ」
 あゆが腰を引く。思考能力が低下していた名雪はそれに反応できず、無様に転びそうになる。
「わわっ」
 それを、何とかあゆは受け止めた。
「あゆちゃん…」
 責め、責められ、性感の虜になった名雪がぼうっとした声を上げる。
「このままじゃ、ボクもイッちゃうから…」
「…あ…」
 名雪の目に、光が戻る。それは、これまでないほど端的に彼女の性欲を表している妖しい光だったが。
 あゆが、名雪から少し離れてぺたんと腰を床につく。片膝をついていた名雪も、後ろに身体を倒して腰を床につける。二人は、足を少し広げた体育座りのような姿勢で向き合った。
「いい?」
「うん…」
 二人は、同時に指先を自らの秘裂に当てた。
 お互いのその仕草を確認すると、どちらからともなく指が動き始める。最初は、少し相手の目を気にしたぎごちない動作。秘裂の表面を撫でているだけの動きだ。
「なゆきさん」
「…あゆちゃん」
 二人は呼び交わす。そして、お互いの目を見つめる。
 その間も、自分の秘裂をいじくる動きは止まらない。いや、むしろ呼び掛け合っている時の方が指の動きが大きく、大胆になっていた。
「すごい…えっちに見える…」
「ボクも…名雪さんの、あそこが見えるよ…」
 そうやって、二人は淫猥なフレーズを投げ合いながらお互いの性感を高めていった。少しずつ指先の動きが速くなり、行為をしやすいように足も開いていく。ぱっくりと割れた秘裂が、お互いの目に露わになる。
 名雪の秘裂からは、とろとろとした液体が床に伝うほどに溢れ返っていた。あゆの秘裂はそれほど潤いを湛えていなかったが、隠すためのヘアーがないため、ちょっと動きを激しくするだけで綺麗なピンク色の粘膜が露骨に見えてしまう。
「はんっ…んっ、名雪さん、感じすぎだよ…」
「あ、あゆちゃんこそ…恥ずかしくないの…っ、んはぁっ!」
 辱めの言葉。隠しきれない喘ぎ声。聴覚によって訴え掛けられるメッセージが、互いの感覚を赤裸々に伝え合う。温度が感じられなくても、相手を限りなく近くに感じていく。
 名雪は、人差し指を一本ヴァギナに挿入した状態で、クリトリスを優しく撫でる動きをしていた。あゆの方は、両手の指をクリトリスのところに当てて、子供の遊びのような仕草でくりゅくりゅといじり立てる。
 その差は、名雪は処女を失っていたがあゆはそうでは無い事にあった。必然的に、名雪があゆを愛する時はクリトリスを責め立てるしかなかったのだ。胸もあまり発達していないあゆは、もっぱらクリトリス・オルガスムスに自らの性感の頂点を見出していたのだ。もっとも、それは名雪もあまり変わらないのだが。
 だから、二人がお互いの顔を見つめながら絶頂を迎えるには双視オナニーしか無かったのだ。名雪もあゆもシックスナインは好きだったが、最後の絶頂はお互いの顔を確認できる状態で無くては不安だという了解があったのだ。
「ボ、ボク、もうそろそろ」
「私も、私も来る…」
 名雪とあゆは、お互いの熱く潤んだ瞳を見つめながら、自分のクリトリスをありたけの力で刺激する。
「んあっ!」
「ああーっ…」
 そして、絶頂が訪れた。二人は必要以上のオーバーアクションで、自らが昇り詰めた事を表現する。嬌声も、その一つだ。今となっては、自らの身体が勝手に行っているかのように、オルガスムスの声や痙攣を産み出す事が出来るようになっていた。
 はぁはぁという荒い息を立てながら、お互いの目を見つめ合う。見つめながら、性器の周囲をやわやわと刺激する。静かで熱っぽい、アイ・コンタクトだ。
「気持ち、よかったよ」
「ボクも…」
 身体の熱がやや収まると、二人は裸のまま抱き合い、柔らかく落ち着いたキッスを求めた。


「名雪さんの大学決まったの、おめでとうございます」
「ありがとう。あゆちゃんも名雪をずっと助けてくれていたし、私からもお礼を言わないといけないわね」
 秋子が、微笑みながらあゆに答える。
「ううん、ボクなんか名雪さんの勉強の邪魔してたみたいで…」
「そんなことないよ。あゆちゃんと遊ぶ事考えてるだけで、勉強もやる気が出てきたし」
「そう?名雪さん、ありがとう」
 あゆは顔を喜びでいっぱいにして名雪に抱きつく。
「二人とも、座ったら?」
「あ、はーい」
 あゆと名雪は、紅茶とケーキの並べられたテーブルについた。
「いただきますっ」
「まだ残っているから、食べたかったら言ってね」
「はいっ!」
 元気良く答えると、あゆはクリームのたっぷり使われたケーキにフォークを伸ばしていく。
「やっぱりおいしいっ!秋子さん、本当にすごいよっ」
「あゆちゃん、クリームついてるよ」
「あれ?」
 あゆの口の下には、真っ白のクリームがべったりとついていた。
「あらあら…」
 秋子が紙ナプキンを渡すと、あゆは残念そうにそれを拭く。
「うぐぅ…もったいないよ…」
「まだまだ、あるから大丈夫よ」
「でも、あゆちゃんって甘い物そんなに好きなのに、太らないよね」
「名雪さんもそうでしょ?」
「うん…そうかも」
「だったら、遠慮せずに食べてね」
「うん、ボクは自分でおいしいお菓子をたくさん作れるようになって、お店開くのが夢なんだよ」
「いいわね」
 子供っぽい発想にも、秋子は優しい声を掛ける。
「だから、今お母さんに教わっているとこなの」
「あゆちゃんのお母さんも、料理上手なんだ?」
「うん。秋子さんとどっちが上手かわからないけど、お母さんも料理上手だよ」
「そうね、あの子は調理師の免許取っているし…」
「え、あゆちゃんのおばさん、そうなの?」
「そうよ。ちなみに私は我流です」
 目を閉じて、秋子が言う。
「すごいよっ、すごいよっ」
 あゆは素直に賞賛する。
「じゃあ、あゆちゃんは学校行かないで、ケーキ屋さんとかで働くの?」
「うん、そうだよ。『寝てた』間の勉強、全部やるの大変すぎるもん…。たい焼き屋さんは…ちょっと恥ずかしいし…和菓子屋さんもいいんだけど、やっぱりケーキ屋さんの方が可愛いよね」
「やっぱりそうだね」
「そうしたら、その後でいい旦那さんが見つかるといいわね」
「うーん。どうしようかな…」
 あゆが、少しだけつまらなさそうな顔を見せた。
「それは、もっと後で考えればいいよ」
 名雪が言う。
「そうだね、そうだよねっ」
 秋子は二人を見つめながら、少し困ったような素振りを見せていた。
「秋子さん、どうかしたの?」
「…いえ、ちょっと昔の傷が」
「事故の時の?お母さん、大丈夫?」
「大丈夫よ。いつもの事だから」
「秋子さん、身体は大事にしなくちゃだめだよ〜」
「ありがとう、あゆちゃん」