Daily-EROtic 弥生

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「ふぅ…」
 かちゃかちゃとティースプーンを触りながらのため息。
「結局、全部才能なのね」
「随分と安易な言葉で片付けること」
 弥生がぴたりと瞼(まぶた)を閉じて、笑む。少し淡めのルージュの色彩から白い歯がのぞいた。
「今となって思えば、弥生が抜けていったのも全部才能だったって気がしない?」
「私に聞かれても」
「弥生と一緒に抜けていれば良かったのかな」
「あら? 4年前には呆れるほどヒステリックにわめき散らしていたのに、随分と意見を変えたものね」
「…もういいでしょ? 皮肉は1時間たっぷり聞かせてもらったわよ。あの時の事は若気の至りだと思って、こっちの愚痴も一つや二つ言わせてくれたっていいじゃない」
「私も、1時間と2分だけきっかり聞かせて頂きましたから」
 弥生がリストウォッチのコンパクトな文字盤をさりげなく示して、他人行儀に言う。
「弥生が呼びつけたんでしょ。しかも用事まで言いつけて。愚痴の言い合いでトントンじゃ割が合わないわよ」
「そうね、美菜子の力をお借りさせて頂いたんだからもう少し私も謙虚になるべきかしら」
 それでも余裕の笑みは崩さず、弥生はティーカップのハーブティを口にした。
「悪党」
「あなたも立派な共犯よ」
「はぁ…そうね」
 美菜子はレイヤーボブの髪をかき上げながら、ティーカップの中に入った赤みがかったブラウンの液体を舐めるように飲む。
「全く、塩酸入ってても気づかなさそうな物を飲ませてくれるわね」
「体にいいのよ」
「お茶で病気が治ればクスリ屋は要らないわよ」
「大学にいた頃は、あなたももう少しナイーブに東洋医学を受け入れていたんじゃなかったかしら」
「へぇ、ハーブが東洋医学? それはそれは、初耳ね」
「言葉のあやよ」
「篠塚弥生様らしくないいい加減さで」
 カチン、とティースプーンでソーサーを叩く。
「…もう帰ろうかしら」
「ご自由に」
「じゃあご自由にさせて頂くわ」
 美菜子は横の椅子に置いてあったハンドバッグをつかむと、立ち上がる。
 大して人も来ない16畳のリビングと6人掛けのテーブルは、そのままならがらんとした印象を与えてもおかしくないはずだ。なのに、美菜子が立ち上がっても不思議と部屋の空気の密度は変化していなかった。弥生によって計算され配置されたインテリアと、弥生自身の存在感だけでこの部屋は生き物のようなダイナミズムを感じさせた。弥生の象徴はむしろスタティックなものであるはずだが、そのスタティックが完璧につなぎ合わされるとそこにはダイナミズムがあった。
「辟易するほど、立派なお屋敷ね」
 美菜子はリビングを今一度見渡してからそう評価をつけ加えた。
「私は行くわ。せいぜい完全犯罪を目指して頂戴」
「送るわよ」
「…意外ね」
「旧友が来てくれたのだから、当然でしょう」
 弥生は数式がはじき出せそうな曲線動作で椅子から立ち上がる。
「確かに、これが今生の別れになるかもしれないわね」
 美菜子は横目で弥生を見ながら言った。
「人の縁はそう簡単に切れる物じゃないと思うわよ」
「あなたが言うと、それほど胡散臭く聞こえる言葉もないと思うけれど?」
「本心よ」
 弥生はテーブルを回り込んで、美菜子の所まで歩み寄る。
「…そうね。とっくの昔に切れて月と地球くらい離れているかと思った糸が繋がってる事もあるんだから」
「そういうこと」
 言いながら弥生はすっと手を伸ばし…美菜子の胸を触った。
「な」
 ふにゅっ…くい、くいっ…
 両手で胸をすっぽりと包み込み、グレイのジャケットの上から遠慮無しに揉む。
「ちょ…弥生っ! そういうつもりで言ったわけじゃないわよ!」
 顔色を変えた美菜子が、ぱっと弥生から飛び下がる。
「弥生がそこまで往生際の悪い女…だなんて…お…おもっ…おもっ…て…てっ…」
 しかし、一気にまくしたてようとした言葉は途中で途切れた。美菜子の瞳が焦点を失い、手にした黒い革のハンドバッグがぽとりと床に落ちる。
「自覚症状が無しに進行するというのは本当のようね」
「ど…どういう…それって…!!」
 美菜子は苦しそうに眉をしかめて、右の腕で自分の胸を抑え込んでいた。
「う…うっ…ああ…!」
 ほどなく左の手が動いて、タイトスカートの生地をぐぐ、と自ら押し込むように抑える。
「な、なんで」
「いきなり実地で使用するわけにもいかないでしょう? あなたアルコールが入ると、人体実験がどうしたこうしたと騒ぐのが得意だったじゃないかしら」
「あ、あれはお酒のせいで…くっ…はっ…はぁぁぁっ…!!」
 美菜子は頭を体に押しつけそうなほどに首を曲げて、全身をわななかせていた。
「情報を与えておいてあげるわね。ハーブティの中に1グラム入れさせてもらったわ。あなたはそれを9割以上飲んだ」
「い、い…1グラム」
 絶望的な声だ。美菜子はその意味する所を熟知しているようだった。
「次の段階に移るわよ」
 弥生は宣言すると、片膝を立てて美菜子の前に身を落とす。まるで銃でも構えているかのような隙のない姿勢で、弥生は美菜子のタイトスカートに手を伸ばした。
 ベルトを外し、スカートを脱がせ、パンティーストッキングをくるくると丸めるように脱がせる。美菜子がジャケットとラズベリーのショーツというアンバランスな格好にされるまで、30秒とかからなかった。美菜子の左の手も、弥生が作業をしている間にいつの間にか力無く下がってしまって、抵抗の役目をわずかたりとも果たさなかった。
「や…やめて」
 美菜子が弱々しく言うが、弥生は舟形にシミが出来たショーツを躊躇無く脱がせる。恥丘に生えたヘアの中央部分は、何かの液体でじっとりと濡れてしまっていた。
「4年前には嫌と言うほど見たわよ」
「それと…これとは…」
 喘ぎながら美菜子は拒絶を示す。緋色に塗られた爪の先がそこに忍びより、細い指で開かれてしまうと美菜子の喘ぎが大きくなった。
「変わっていないわね」
 弥生はそんな評価を加えながら、スーツのポケットを探る。まるで膨らんでいるように見えないそこから、弥生は二つの黒い球を取り出した。正確には完全な球ではなく、楕円形にやや伸びている。
「い…いやよ」
「しばらく味わっていなかったんじゃないかしら? それとも忘れられずに使っている?」
 弥生はその球のひとつを美菜子の秘裂の中、その肉の隙間にぬるりと押し込む。
「ああ…」
 しとどに濡れた美菜子の膣は、そのピンポン玉ほどの球体を軽く飲み込んだ。しかし、美菜子自身は軽く済ませるというわけにはいかないようだ。美菜子の体の震えが大きくなる。
 さらに弥生が球を取り出したポケットに手を入れて何事か操作すると、
 ヴィーン…
「くぅぅぅぅっ…」
 弥生の手に残った球と、美菜子の中に挿入された球が同時に高い振動音を立て始めた。
「16分45秒1番を挿入。50秒スイッチON」
 まさに機械的な言語を吐き出す。
 ヴィヴィヴィヴィヴィヴィ…
「あ、ああ、ああああーーっ!?」
「55秒クリトリスに2番を固定」
 弥生の手が、凶悪な振動を産み出すローターを美菜子の秘芯にあてがう。そして、敏感な肉真珠に、一定の力で圧迫を加えた。痛がらせるほどの無理な力ではない、しかしローターの振動が強烈にいたいけな秘芯を震わせ、不可避の絶頂へと導くには十分すぎるほどの圧迫だ。
「あっ、うあっ、ああ…!」
 その状態から、1ミリたりとも動かない。美菜子は悶えながら腰をしきりに揺らしていたが、弥生はそれを完全にトレースして相対位置を維持する。美菜子は体にわずかに残った力を振り絞って逃げようとしても、全く無意味だった。弥生の偏執的なまでのバイブレーション刺激によって、一直線に上昇する官能を感じる他ないのだ。
 ピク…ピク…!
 決して性に暗くない25歳の女体が、少女のように翻弄されて最後の崖端から突き落とされる。
「いやああ…!」
 ビクンッ! ビクン!
 童顔気味の美菜子の顔が悲痛に歪んで、裸足の爪先からグレイのジャケットに包まれた上半身、そして肩にかかった髪までを同時に勢い良く痙攣させた。さらに膣孔から、体の収縮に合わせて豊富な愛液がにじみ出てくる。この上ない絶頂の表象だ。
「17分22秒、オルガスムスに到達」
「っ……うっ……うっ」
 弥生がクリトリスに当てたローターを離したことで、美菜子はようやく官能の半分から解放された。それでも、膣に挿入されたローターは未だに強い振動を膣壁に与え続けている。
「いい仕事をするわね、美菜子」
「ぬ…抜いて…あそこの…中の…」
「ちょうどいいから、次のオルガスムスを計測させてもらうわ。4年ぶりの味なんだから、もっと楽しみなさい」
 ヴィヴィ…
「いやああああっ…!!?」
 充血して膨れ上がった美菜子のクリトリスに、再び黒い球が押しつけられた。



7/9
「あ、あ…ご主人様、すごくお綺麗です」
「別の呼び方にしてください…そう、『弥生さん』で構いません」
「弥生さん…それでよろしいんですか?」
「ええ」
 長い髪を軽くかき上げながら、弥生は言った。広々とした寝室に、落とし気味の照明。むしろ挑発的な色彩の下着を纏っていた方が、弥生の姿が映えるかもしれない。
 しかしそれは既に脱ぎ払われて、弥生は張りのある肌を露わにしていた。つやのあるロングヘアーが、滑らかなヴェイルのように一部を覆っているだけである。
 その豊満なボディに比べれば、マルチはまるでどこからか迷い込んだ少女のようにしか見えない。もちろん、持ち主が服を身につけていないのにメイドロボットが身につけているという道理もなく、マルチも恥ずかしげに小柄な体躯を示していた。
「あ、あの、そしたら」
「そうですね」
 マルチの声に応じて、二人は大きなダブルベッドに上がる。
「わっ、はわわっ」
 スプリングの利いたベッドに転げそうになりながらも、マルチは何とか直立した。一方の弥生は、極めて平静にマルチの事をじっと見つめている。
「え、ええっと、弥生さんは横になってください」
「わかりました」
 弥生はゆっくりと身体を屈折させて、ちょうど枕に頭が乗るような形で身をシーツの上に横たえる。マルチもそれに従うように身を屈めて、弥生の脚の間に割って入っていった。
「あの、ご奉仕させて頂きます」
「あなたも…」
「えっ?」
 マルチは一度下げかけた顔を上げる。
「こう…脚を、私の方に向ける形で乗ってみてください」
「え…でも、そうしたら」
「いいですから…やってみてください」
「は、はい」
 マルチはぎごちなく体勢を変えて、弥生の身体に逆向きに覆いかぶさるような形を作った。
「重くないですか?」
「大丈夫です…もうちょっと、身体を私の方に近づけてください」
「で、でも」
「いいですから」
「は……はい…」
 マルチはずりずりと弥生の顔の方にずれていく。その状態になれば、弥生の眼前に恥ずかしい部分がさらけ出されてしまうのは避けられない。
「あんまり見ないでくださ…ぁっ!?」
 がしっ、と脚が掴まれたと思った瞬間、秘部に生暖かい感触が走った。
「そ…そんな!それは、私の仕事ですぅっ…ひうぅっ」
 弥生の舌が割れ目の間に侵入してくる。マルチは顔をぶんぶんと振って、髪を振り乱しながら叫んだ。しかし、無理矢理に弥生から逃れたりする事はできない。主人の行為を甘んじて受け入れるのは鉄則なのだ。
「あ、そこわ、そこわっ…だめぇ…ですっ!ひぃっ、そこは、一番…」
 マルチは身体をぶるぶる震わせながら行為の産み出す快感に耐えていた。そして透明な雫がマルチの身体の奥からあふれ出た瞬間、マルチは呆けた表情になったが、
「あっ…わ、私、すいませんっ!自分の仕事もせずにっ…」
 それがきっかけで我に返り、慌てて弥生の秘裂に唇を押しつける。
 意外と繊細な構造を維持しているその部分を、マルチは優しいタッチで舐め上げていった。弥生の強烈な舌の動かし方につられてしまいそうになりながらも、あくまで大切に快感を膨らませていくような丁寧なタッチを心がける。
「………!」
 弥生は舌を動かしたまま、声無き声を上げた。それほどの快感では無かったはずだが、弥生はぴくぴくと脚を震わせて敏感に反応する。
「あ…弥生さんも、気持ちよくなられていますか?私、嬉しいです…」
「…気持ちいいですから…しばらく、何も言わずに続けてもらえますか…」
「は、はい、すいませんっ、無駄な事を言ってばかりでっ…!」
 マルチは再び行為を開始する。ぺちゅ、ぺちゅという水音が次々に生まれた。やや焦りが生じたためか、繊細さは少々失われているかもしれない。だが、弥生はどんどん頬を紅く火照らせ、全身にうっすらとした汗を浮かばせていく。
 じゅわ…
 液体があふれるのも、あっという間だった。時間で言えばマルチよりも早かったかもしれない。そして、マルチとは違って半透明で酸味の強いそれを、マルチは愛おしそうに舐め上げた。
「あ、ありがとうございます…私…」
「そ…」
 マルチは思わず返事しそうになったが、さっきの弥生の台詞を思い出して黙り込む。
「ここ、とろとろになっちゃっていますね…」
 弥生は言葉を続けて、マルチの液体のあふれ出てくる部分を指先でくすぐった。夢見るような視線が、無垢ながらもぐっしょりと濡れそぼった秘裂に向けられている。
「気持ちいいですか…私の指…」
 マルチは腰をくねらせてそれに応える。そうしながら、弥生の粘膜を強く吸い上げた。
「はぁっ…上手…ですね」
 弥生が感極まったような顔になる。それをマルチが見る事はできなかったが、満足している様子は感じ取り、同じ行為をひたすらに続けた。その吸い立てる位置も段々と動かしていき、ついには膨らみきった突起に照準が向けられる。
 つんっ…
『!』
 弥生がマルチのそこを指先でつついたのと、マルチが舌先でつついたのは同時だった。一瞬、互いの身体が強烈に反応し合う。
「一緒に…なりましょう」
 つぶやく。そして、再び弥生もクンニリングスを再開した。ねっとりと濃厚な口唇の愛撫に負けそうになりながらも、マルチも必死で突起を重点に置いた舐め上げを繰り返す。やがて二人の性感はぎりぎりまで高められていった。
 マルチの秘部は既にひゅくひゅくという小さな痙攣を開始しており、状態を余すことなく弥生に知らしめていた。弥生も、もはや身体の中心に集まった欲望の結晶が融解するのを押しとどめられなくなったのを自覚している。
 ぐちゅっ。ぐちゅ、ぐちゅっ!
 弥生が愛液をかき回すような強い舌の動きを加えた。マルチもそれに応えて、がむしゃらな舌戯を行う。二人とも、五秒と持たなかった。
「…さんっ!」
 ビクッッ!
 そして二人の絶頂が合一した。
 びくん…びく、びくん
 痙攣の余韻を感じつつ、弥生はしっかりとマルチの脚をつかんで離さなかった。目は閉じられている。知性のゆるみの間に、弥生の幸せそうな、あるいは口惜しそうな表情が浮かんだ。