Daily-EROtic ノーマル

12/31
「………」
 静かな口づけだった。
 浩之と志保の唇は、滑らかに合わさってそのまま動かなかった。それだけの緩いキスだ。しかし近くまで寄り添った二人の顔は、同じように満足を映している。志保は目を閉じ、浩之は開けたままという違いはあるが、そこには控えめな満足が共有されていた。
 ちゅ…
 そして志保がかすかに唇を開き、舌をほんの少しだけ差し出す。
 ちゅるっ。
 浩之はその先をさらうような一瞬のタッチで志保の舌を奪い、すっと身を後ろに引いた。
「…ヒロ…」
 長身の浩之の腕の中に抱かれたまま、志保はゆっくり目を開ける。濃密ではない流れるようなキスの後に、志保の言葉はかえって熱っぽく響いた。
「寝ろよ…志保」
「…うん」
 浩之が背中を撫でるようにしながら腕を解くと、志保は浩之のベッドに下着姿の身を移していく。フローリングの上のしっとりした室温から、熱を予感させるソフトなタオルケットの上へと…さらけ出した肌の触れる場を移動させていく。
「ん…」
 枕の上に栗色のショートヘアが乗った瞬間、志保は息を漏らしていた。落ちつかなさそうな素振りで、前髪を何度もかき上げる。
 身につけられたオレンジの下着の明快なトーンから、志保自身が浮いてしまっているようにすら感じられる。志保が自ら服を脱いだ時には見えなかった微細な不安が、浩之にも確実に聞こえ始めていた。
 …どんっ…
「よっ…と…」
 浩之は軽くジャンプしてベッドに上がる。安物のベッドが動いてしまいそうな勢いだった。
「………」
 しかし、その物理的衝撃も志保の表情を和らげるには至らない。志保は相変わらず焦点の合わない目で、トランクスだけしか身につけていない浩之の方をぼんやり見つめていた。
「志保、シャキっとしろよ」
「…だって」
「志保らしくねーぞ。お前の方からリードしてくれるって思ってたくらいだ」
「初めてなんだから、緊張したって仕方ないでしょ」
「俺だっておんなじだって…さっきまではハイテンションしてたくせに」
「…そう…だね…」
「しおれた声出すなよ…調子狂う」
 浩之はざっと前髪を後ろに上げてから、志保をまたぐようにして覆いかぶさる。
「ブラ取ってくれよ。外し方わかんねー」
「教えるほど難しくないわよ」
「背中の後ろにあって見えないんだって」
「…もう」
 志保はやや躊躇を見せたが、自分の背中に手を回してカチカチと金具の音を立て始めた。
 カチ…カチッ
 そして浩之の予想したよりもだいぶ長い時間が経ってから、やっと志保が手を背中から出す。
 ぱさ…
 浩之がその生地をつまんで引っ張ると、抵抗無くブラジャーは持ち上がって志保の胸が露わになった。腰のラインから続く自然な膨らみは、見ているだけでも十分なほどに魅力的だ。
 くにゅっ…
「…んんっ!」
「なにビビッてるんだよ…普通に触っただけだろ」
「手…冷たいわよ…」
「文句言うなって…」
 くにゅ…くにゅっ…
 浩之は下から持ち上げるような手つきで志保の胸を揉み続ける。志保は少し唇を噛んだ不満そうな顔をしてそれを見つめていたが、見る見るうちに顔を真っ赤にしていった。
「冷たいんじゃなかったのか?」
「…んっ…! やめてよ…ヒロっ」
 志保の頬に浩之が手を当てると、志保が片目を閉じて鬱陶しそうな顔をする。しかしそのまま浩之が片方の手で胸を揉み続けると、志保はますます顔の紅を濃くしていった。
「はぁ…」
 少し潤んだ目で、志保が息を吐き出す。
 むにゅー…
「んっ…やだ…やめなさいよっ」
 それを見計らって浩之が志保の頬を引っ張ると、志保はさすがに嫌そうな声を出した。
 むにゅー…ぽんっ
 浩之は胸を揉んでいた方の手まで参加させて志保の頬を左右に引っ張り、そして離す。
「何すんのよっ!」
「志保、すこーし落ち着け」
「そんな事言ったって…今あたし達何してんのかわかってる?」
「H」
「ヒロ、絶対あんたわかってない」
「志保もわかってない」
「………」
 むにゅー…
 ぽんっ。
 浩之がもう一度志保の頬を引っ張ってから離した。
「ヒロ…」
 志保が目を何度かしばたたかせる。瞳に浮かんだ潤みがはっきりしてくる。
 ずるっ!
「あっ! ちょっと! いきなり何すんのよっ!?」
「スキありだ」
 浩之は志保のショーツを思い切り下の方まで引っ張っていく。
「あっ…あっ!」
 志保が脚をばたつかせようとした瞬間、オレンジ色のショーツは志保のつま先から抜き取られていた。
「やだ…」
「だめだって」
 おずおずと秘部に手を動かそうとする志保を、浩之は制止する。
「やだ…やだって言ってるでしょっ…」
 浩之がさらりとしたヘアの合間を指で探ると、志保はその上から手を覆い被せて目をそらした。
 だが浩之はそのまま恥丘の中央の合わせ目の中へと指を入り込ませていく。
「あうっ」
 ねちっ…とした感触が生まれる。志保はピクンと体を跳ねさせてからぎゅうっと手で押さえつける力を強め、浩之はそこで指をじわじわと動かし始める。
「だめ…だめ…ヒロ、だめぇっ…!」
「なんだよ、お前自分で触るの慣れてるって言ってただろ?」
「そ、それは…だからって…」
「手、どかせよ。そんで、お前どうするのが好きなのか教えてくれよ」
「イヤよっ! そんなの…」
「ほら、実演して見せてくれ」
 しゅる、と志保の手の下から浩之の手が抜け出る。
「そんなの…あっ!」
 一生懸命自分の秘裂を押さえている体勢に気づいたのか、志保は慌てて手の力をゆるめた。
「見ててやるから…志保」
「………」
 浩之の声に、志保は沈黙する。
「志保」
 そう言いながら、今度は志保の手の上に自分の手を乗せてぐいぐい押しつける。そうしていると、志保の手が予想以上に華奢なのがよくわかった。こういう関係に至るまでになってもまだ手を繋いだ事もない志保の手は、浩之にとって新鮮だった。
「あかりもね」
「ん?」
「あかりもね…知ってるんだ」
「何をだ?」
「女同士で結構人数いて、なんだったか忘れたけどそーいう話題になって…初体験と…それから…アレをしてるかしてないか」
「オナニーか?」
「露骨に言わないでよっ…」
 志保が恥じらいと抗議を半々にして言う。
「で、あかりはしてないって? それがどうした?」
「そうじゃなくて…!」
「なんだ? あいつもしてたって? 意外だ」
「そうじゃなくてっ! それで、昨日あかりに会って聞いたのよ…」
「しているかどうか?」
「ちょっと聞いてよっ!!」
「…落ち着けよ」
「……ヒロと…してもいいかって…あかりに…!」
「………」
「だって…やっぱりそうでしょ」
「何がそうなのかはよくわかんないけどな…」
「それとこれと、また別でしょ」
「そうなのか…?」
「ヒロとしたいから…あかりから取っちゃったみたいなのは…そうあかりに思われてるかもしれないってだけで…平気じゃいられなくなっちゃうから…」
「バカか。んな事あいつが思ってるわけねーだろ。それに、あかりから取ったって…」
「あんたは鈍感だって事だけ、もう少し自覚しなさいね」
「…ひどい言われようだな」
「いいの」
「…で、何か? 俺としますってあかりに報告してきて…それがお前のオナニーとどう関係するんだよ」
「話がずれてるわよっ…だから、あたしはヒロとするためだけにヒロと付き合うようになったんじゃないって事をはっきり言っておきたかったからっ…!」
「…よくわかんないやつだな」
「それで、あかりは…」
「変な顔してただろ」
「………あたしの気持ちが分かるって言ってくれたわよ」
「あいつも、お前に愛想使わなきゃいけないなんて大変だな」
「違うわよっ! そんなんじゃ…」
「あかりに気を使ってるフリして、お前が一番気を使ってもらってるって事わかれよ」
「……あたしは……」
「反省として、しばらく黙ってろよ」
 浩之は志保の手を秘裂の上からどかしながら言った。
「ただし、どこがお前の感じる場所なのか俺に教えてからな」
「…教えないわよっ! そんなのっ!」
 志保は一声叫んでから、手の平で目じりをぐいとこすった。
「じゃあ俺が探す」
 浩之は無防備になった志保の秘裂を広げて、指をとある一点に密着させる。
「………!」
 不意の一撃に、志保はびくんっと体を震わせて反応してしまっていた。
 くりゅ、くりゅっ…
「あ、あんたっ…」
 指の腹で優しく転がす動きは、多少ぎごちなさもあったが確実に一点を刺激し、興奮させている。ほどなくそこはピンク色に充血し始めて、自身の存在と状態をはっきりと浩之に知らしめるようになってしまった。
「し、知っていたクセに変なこと聞いてっ…!」
「ん? 何をだ?」
「…知らないっ!」
 ぐりっ…
「あっ…」
 いきなりの強烈な刺激で、志保の体はするっと弛緩してしまう。
 ちゅぷっ!
「!」
 その瞬間、志保にも聞こえるほどの露骨な音を立てて浩之の指を透明な液体が濡らした。
 くりゅ、くりゅ…
「あ…ふぁっ…」
 志保は真っ赤になりながら自分の体を制御しようとするが、一度弛緩してしまった体はもう元に戻らない。あたたかな体温を帯びたいやらしい液体は、量を増すことすらあれ減ることは一向になかった。
 くちゅくちゅ…くちゅくちゅ
「………」
 浩之は肥大した秘芯から指を離し、志保の濡れそぼった部分を指でかき回す。志保はようやく収まった激しい官能に胸を撫で下ろしていたが、派手に響く愛液の音は志保の心を羞恥心で満たしていった。志保の動揺は全く収まりそうにない。
「もう、十分だろ…」
「う…」
 ちゅぱっ…ちゅぱ…
 濡れた指先を浩之が舐める。志保は全身がくすぐられるような心地になりながらそれを見つめていた。
「ふぅ………」
 それをすっかり浩之が舐め終わって息をついた瞬間、志保はどきりとする。次に浩之が吐く言葉が怖かった。
 しかしいくら待っても、浩之が感想を述べる事はなかった。
 するっ。
 浩之は実にあっけない仕草で、己の下着を脱いでいた。志保の視界の隅に、黒さを帯びた肉の棒が現れる。
「入るの…?」
「何、言ってるんだよ」
「お、大きいから言ってるんじゃない」
「お前は濡れやすいみたいだから、大丈夫だろ」
 浩之は志保のヘアの辺りを指で押さえ、そのまま上下左右にゆすってちゅくちゅくという音を立てさせる。ぴたりと柔らかい部分に包まれた粘膜は、先程よりもいっそう淫らな音を立てていた。
「いくぞ」
「…うん」
 志保がうなずくと浩之は指で秘裂を広げ、一気にペニスの先端を濡れた部分に密着させる。
「力、抜けよ…」
 ぐぐぐっ…
 そして浩之は少しずつ体重を掛けて、志保の中への侵入を試み始めた。
「ん…う…」
 志保のつぶやくような小さなうめきがあって、
 ずっ…!
 プツンと何かがはじけ飛んだような感触と共に、浩之のペニスは志保の中へと入っていく。
「くぅっ…」
「志保…ガマンしてろよ」
 ずっ、ずずっ、ずっ!
「あっ…ああっ!」
 何段階かに分けての、強い押し込み。それを三回行った後には、肉棒は完全に入り込んでいた。
「あ…は…入ったの」
「入ってる。わかるだろ?」
「う…うん…ヒロの…大きい…」
「普通だ。動くぞ」
「優しく…してね」
「ああ」
 ずちゅっ…ずぐ…
「んっ…ううー…ヒロぉっ…!」
 たっぷりの潤滑液の間に、志保の失った処女の血が混じる。膣壁に加わる摩擦は随分と軽減されているようだが、やはり今は痛みの方が先行してしまっているようだった。
 ずちゅ…ずぐ
 くりゅ、くりゅ…
「はぁぅっ…! ヒロ…あっ…ああーっ…!」
 浩之は速く動かず、慎重に腰の前後運動をさせながら激しくピンク色の突起をこすり始める。
「ん、んん…ああ…」
 くりゅ、くりゅ…
 痛みと快感の混ざり合いに、志保もだいぶ心地がついてきたようだった。緊張しきっていた筋肉も少しずつゆるみ、逆に快感で弛緩するほどになっていく。浩之のペニスをくわえこんだ部分だけは反射的な締め付けを抑えきれないようだったが、それでも痛み自体はだいぶ軽減されているようだ。
「志保…いいか?」
「わ、わかんない…痛いけど…気持ちいい…」
 子供のような甘え気味の声を出しながら、志保は答えた。普段の、特に私服の志保は化粧とファッションのせいか妙に大人びて見えるほどなのに、今の志保は完全に浩之に身を委ねてしまっていて弱々しい。
「初めてのクセに感じてるのか…」
「ヒロ…」
「動けよ、志保。もう大丈夫だろ?」
 ちゅぐっ、ちゅぐ…
「んう…でも…」
 くりゅ、くりゅ…
 浩之が多少乱暴気味に突き、秘核をこする動きを速めても志保は動こうとはしなかった。全身をうっすらと紅潮させながら、不安そうな目つきで浩之を見つめるばかりである。
「俺のことも、気持ちよくさせてくれよ」
「…あとで…してあげるから」
「ん?」
「な、なんでもない…ただ…今は、ヒロだけで動いて…」
「…そうか」
 ちゅぐ、ちゅぐ
 くりゅ…
「あ…ヒロ…」
「志保…」
 二人はぼんやりと呼び交わす。しかし特に意味があったわけではない。饒舌だった二人は、突然静かになっていた。
 ちゅぐ…
 くりゅ…くりゅ
「どうだ…志保、このままならイケそうか?」
「うん…もっと…さわって」
「ああ」
 くりゅ…くりゅ
「ん…んふぅ…」
 志保のカチカチになった部分を、浩之はスピーディな動作で愛でる。志保の中がひゅく、ひゅくっと収縮し始めたのがわかる。
 同時に、浩之の射精感も高まり始めていた。
「よし…志保、抜くぞ」
「あ、うん」
 ぢゅる…
 浩之はペニスを志保の中から引き抜き、興奮しきったその肉棒と志保のクリトリスを同時に勢い良くこする。
「は…あっ…!」
 志保が腰を浮かした瞬間、浩之はペニスを志保の下腹部に向けた。
 びゅっ、びゅっ、びゅびゅ…びゅっ!
 ビクンッ…ビク…ビクンッ…ビク…
「あ…ああ…」
 切なそうな顔をしながらエクスタシーに見舞われる志保の体に、浩之は大量の精液を吐き出していく。勢いよく飛びだしたそれは、志保の胸の辺りまでをべっとりと汚した。
「…はぁ…」
「ヒロの…熱い」
「すぐ気持ち悪いだけになるぞ。拭けよ」
「うん」
 ベッドから飛び降りてティッシュを取りに行く浩之を、志保は涙に濡れた目で見ていた。体に射出された事を微塵も気に掛けていない様子だ。
「ヒロ…あたし、最初の相手がヒロで良かったって思う」
「月並みな事言うなって」
 志保に背を向け、ゴシゴシと自分の肉棒の汚れを取りながら浩之は言った。
「行きすぎると、可愛くなくなるからな。覚えとけよ」
「…それってさ…」
 ティッシュの箱を持って近づいてくる浩之に、志保がつぶやく。
「ヒロ、あたしも可愛いって…」
「それ以上続けたら、二度とンな事言ってやらねーからな」
 浩之は指でピストルを作り、バンと志保の顔に向かって打つ。
「…はぁ…なんか…あたし、もうダメ…」
「頭がもうダメか?」
「ううん…体がふにゃふにゃしちゃって…なんか、笑いたいのよね…」
「笑えよ」
「あははは…」
「もっとイヤな笑いだ。そうじゃなきゃお前には似合わねー」
「何よそれ」
「そうそう。そういう低くて憎らしい声だ」
 浩之は志保の体の上にティッシュを何枚も押しつけて、乱暴に拭き始めた。
「ヒロ…」
「なんだ」
「なんでもない」
「ああ」



12/26
「ん……」
 はるかの額に手を当てながら、冬弥は身を低くして口づける。
 ………
「熱、移っちゃった…」
「大丈夫だろ、これくらい」
「移っちゃった」
 はるかは布団の中から手を出して、口元を指二本でつぅっとぬぐった。
 それを見つめながら、冬弥は自分の額に逆の手を当てる。
「…平熱だ」
「私、平熱低いから」
「3分や5分違うからってそうそう変わらないだろ」
「変わるよ…」
 はるかは額に当てられた冬弥の手の上にぴったり手を重ねて、それからずずずっと横にずらそうとしていく。
「…冬弥、痛い」
 しかしその手は動かない。
 はるかは、しっかりと額を押さえつけている冬弥の手をわざわざ無理な力まで入れて動かそうとはしなかった。
 …むにゅ
 冬弥はそのままはるかの頬に手を移動させて、頬を指でつまむ。
「………」
 むにゅー…
 両手を使って、頬を左右に伸ばしていく。
「病人なのに」
「あんまり関係ないって」
 言いつつも、さすがに冬弥はバカらしくなったのか手を離した。
「腫れちゃった…」
 はるかは自分の片方の頬だけに手を添えてさする。
「それで、冬弥ガマンできないの」
「…なんでお前は突然ストレートに言うんだ」
「私、いつも通りだけど…」
「じゃあ、いつも通りしたくないってことか?」
「んー…」
 はるかは頬をさする手を止めて考え込む。
「別に、普段もそんな風には思ってないけど…」
「…そーか」
「冬弥、結構気にしていたんだ」
「そうじゃないかって思うんなら、気を使えよ…」
「ふぅん…演技した方が良かったのかな」
 顔色一つ変えずにはるかは言ってのけた。
「……俺が悪かった」
「あはは…私も少し悪かったかも」
 はるかは顔の端に笑みを浮かべながら、冬弥の髪をひとふさつまんでいじくる。
「………」
 冬弥は少しだけ満足そうな顔をしながら、同じようにはるかの髪をつまんでいじくった。
「ねぇ、冬弥」
「ん」
「風邪移っても、お見舞い行ってあげないからね」
「俺は来てやったのに…」
「冬弥の責任だし」
「…ま、いいけどな」
 二人は同時に互いの髪から手を離す。

 熱っぽい体温に満たされた布団の中で、冬弥とはるかは最低限に服を脱いだ。パーカーすら脱がなかった冬弥とパジャマ姿のはるかでは着ている服の量が違いすぎたが、それでも交わるのに必要なだけ着衣をずらしていた。
「いくぞ」
 冬弥ははるかの柔らかな熱に覆われた部分へと、ゴムに覆われたペニスをあてがう。
「うん」
 はるかは発熱のぼんやりとした瞳に戻って、そう言った。
 くちゅ…
「あ」
「どうしたの?」
「はるか、今日は濡れてる…」
「良かったね」
「お前そんな、人ごとみたいに」
「嬉しくない?」
「嬉しい…けど」
 くちゅりっ…
 冬弥はいつもよりもずっと滑らかなはるかの部分に、戸惑いつつも己の分身を挿入していく。
「んっ…ふ」
 はるかはパチンと目を大きめに広げて、口元を少し開いた。
「う…」
 ずちゅぅ…という濡れた感触と共に、冬弥のモノははるかの奥にまでたどりつく。
「どう?」
「な、なんだか…いつもよりいい」
「そう…」
 はるかは実にナチュラルに、自分の前髪をさらりと横に流して、その流した方向へと目をそらした。
「動くからな」
 ずちゅっ…ずちゅ
 抜き差しする動きも、いつもよりも相当にラクだった。
 ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ
 冬弥は次第にリズミカルな動きではるかの身体の深部を突き始める。はるかの身体は薄青いシーツの上で少しずつ移動していたが、身体が動きすぎると元の位置にまで身体を戻していた。
「んっ…はるか」
「…冬弥」
 ぬるぬるとしたはるかの柔い膣壁が、普段とは段違いの優しいタッチでペニスを締め上げてくる。冬弥は心地よさと同時に不安感すら覚えてしまい、はるかの手をぎゅっと握りしめた。
 ぎゅ、ぎゅ…と握りしめる間に、はるかも冬弥の手を握り返してくる。冬弥はそうしている間に安心感が高まってくるのを感じた。パーカーを着たままの重い身体のせいか、はるかと普段と同じように接しているような気すらしてきた。
「………」
 反対に、はるかの方は少しずつ顔に不安そうな色を強くしてきている。
 初めの内は冬弥の手をより強く握り返す事でその不安感を解消しようとしていたようだったが、段々とその握りしめる力は弱くなっていった。
 そうすればそうするほどに、自分の吐息が上がっていってしまうことに気づいたのだ。
「はるか…やっぱり、いつもと違うな」
「…冬弥」
 はるかは改めて冬弥から目をそらす。
 上気した頬は、発熱のためだけでは決してないようだ。はるかの身体は、確実に冬弥の動きに反応をし始めている。公園でじゃれている時のように普段着ないつものSEXとは、確実に何かが違っていた。
 ずちゅっ、ずちゅ…ずちゅっ!
「う…は、はるか…」
「………」
 冬弥がはるかの中を勢い良く突き続けると、はるかはそれから逃げるように身をよじらせた。しかし冬弥ははるかの腰をつかんで、何度も何度も強い打ち込みを行い続ける。
「…はるかっ!」
 …びゅっ!
 冬弥はゴムの中に欲望を吐き出した。
 びゅっ…びゅっ…びゅっ
「………!」
 それと時をほぼ同じくして、はるかは切なそうに目を閉じていく。
 びゅ…びゅ
「え…はるか…?」
 唇を濡らして表情を宙に泳がせるはるかの顔は、冬弥の見たことがない繊細なものだった…



12/18
「………」
 太田さんの着ている、緑色のパーカーのチャックを下げていく…
 サイズが少し大きめなせいか、子供っぽい印象が強かった。制服を着ている時の太田さんのイメージから考えると、ちょっと離れている気もする。
 …カチッ。
 そんな事を考えながらも、僕はチャックを一番下まで降ろした。パーカーの前が開いた状態になる。その下には少し落ち着いた感じの赤茶っぽいブラウス。
 それは色の上でもパーカーとコントラストを示していたが、やはりそれ以上に身体のラインがはっきり見えてくるという違いが大きかった。パーカーの厚めの生地の中でよくわからなかった太田さんの胸の膨らみが、ブラウス越しによく分かるようになる。
「触っても…いいかな」
 僕は太田さんに訊いた。
 たっぷり5秒ほどもブランクを置いてから、太田さんはこくりとうなずく。どこか機械的にも思えてしまう、そのうなずき。
「………」
 僕は太田さんの頬に手を当てて、軽く撫でてみる。
 すべすべした綺麗な肌は、あの事件の時の包帯に巻かれた掻き傷を全く残していなかった。事件の前の時のままの、白くて張りのある太田さんの肌だ。特別に何か訴えかける顔立ちをしているというよりも、清潔に活動的に整っているという印象がある太田さんの顔。優等生でありながらさっぱりとした性格で、異性からも同性からも好かれる太田さんによく合った顔立ちなのだ。
 今はまだ、その活発な性格は戻ってきていないけれど…見た目の上では、太田さんは事件の前に戻りつつある。着ている服も、個性を感じさせない地味な物から段々とおしゃれを感じさせる物になってきているのが分かる。
 あとは、心が元通りになってくれるのを待つばかりだった。
 それが元通りになった時に、太田さんがやっぱり僕の所にいてくれるのかは分からないけれど…僕は太田さんが事件の前と同じような笑顔を取り戻してくれる事だけは真剣に願っている。
「長瀬くん」
「…何、太田さん?」
「しないの」
「…うん、するよ…」
 短い、感情を潰してしまったような太田さんの言葉を全て本心と信じてしまっていいのかはわからない。でも太田さんの言うことに矛盾はなかったし、意味不明な事を言ったりする事もなかった。学校にだってちゃんと来ているし、宿題もテストもみんなと同じ物をしている。
 だから、昨日学校から帰るときに人気のない細い路地で、太田さんが僕に言ってきた科白も信じていい…はずなのだ。
 最初はあの事件の時のような中毒がまたやってきたのかと思ってぎょっとしたけど、太田さんはあの時のような狂気を全然感じさせずに僕に言ってくれた。「長瀬くんに、してもらいたい」と。
 単純に狂った欲望が再来しているというのなら、そんな言葉は出てこないと思う。僕が太田さんの入院中、病院に足繁く通ってお見舞いをしていた事に対してお礼を言ってくれた、その直後に太田さんは「してもらいたい」と言ったのだ。しかも、「長瀬くんに」。
 …ぐっ。
 僕は太田さんの程良い胸の膨らみに両手を当てた。片方の手で片方の胸、おわんのような形をしたその膨らみに手を当ててみる。
 ブラウスとシャツ、ブラジャーの生地を通してではあったけれど、その柔らかそうな様子は十分感じられた。
 くっ…くいっ…
 何度か揉むような力を加えてみると、太田さんの胸が僕の手に弾力を返してくる。その、女の子としての存在を強く感じさせる感触に僕はすっかり魅了されてしまった。
 ………
 本当だったら、太田さんが元に戻るまで僕は待つべきなのかもしれないけれど…
 太田さんと早くひとつになりたいというわがままは抑えきれそうにない。
「これも、脱がしちゃうね」
 僕は太田さんの反応を一瞬だけ待ってから、ブラウスのボタンに手を掛けた。
 小さなボタンを、ひとつずつ丁寧に外していく。その外す作業が楽しくて仕方なかった。自分の服を脱ぐときのようにスムーズにはいかなくても、その厄介さがかえって嬉しかった。
 …ぷつっ
 そして、一番下までボタンを外してしまう。パーカーに続いてブラウスの前も開いて、あとは濃いグレーのシャツとブラジャーだけだ。
「身体、ちょっとだけ起こしてくれる?」
 そう言うと、太田さんはすぐに身体を浮かせてくれた。何か判断を要求するような言葉でない限り、太田さんはすぐに反応してくれる。
 …ぱさっ。
 僕は太田さんのパーカーとブラウスの袖の部分をまとめて脱がし、半分に折ってベッドの隅に置いた。さらに太田さんのシャツの裾をつかんで、上にどんどんめくり上げていく。
 途中で薄紫の色をしたブラジャーが見えても、そこを観察するのは後回しにして脱がしていく。
 …すぽんっ。
 割合にタイトだったシャツが、太田さんの頭から脱げた。
「ありがとう、降ろしていいよ」
 ばふっ。
 太田さんは僕が言うのとほぼ同時に、身体をベッドの上に落とす。僕は太田さんの乱れた髪を軽く手で整えてあげてから、裏返しになっていたシャツを表に直して上着の所に置いた。
「…こっちも、脱がすね」
 僕がスカートに手を当てると、太田さんはまた腰を少し浮かせてくれた。表情も変えず、素直に身体を動かしてくれている太田さんの姿は端から見れば可笑しく見えるのかもしれないが、太田さんの腰の部分に手を当てているとそんな余裕はまるでない。心臓がドキドキと早鐘を打ち始める。
 だけど、そうやって太田さんに無理な姿勢をずっとさせるわけにもいかず、僕はスカートについている大きなボタンを外した。そして、それを引っ張って下まで降ろしていく。本当はもう少し気を使った脱がせ方をしたかったけれど、そこまで考えていられなかった。とにかく太田さんのスカートを脱がすだけで精一杯だ。
 ヒップの部分を通り過ぎると、太田さんはすとんと腰をベッドの上に落とす。そこからは別に慌てて脱がそうとする必要はなかったのけど、僕は引きずり下ろすような勢いのままでスカートを脚の先まで脱がしてしまった。早く太田さんの身体を見たかったと言うよりは、動揺し過ぎていたからだと思う。
「………」
 …僕が顔を上げると、下着だけの姿になった太田さんがいた。
 薄紫色で、多少の装飾があしらわれたそろいの下着がスレンダーな身体にぴったり張りついている。感情を見せない透明な太田さんの瞳も、いつもよりすごく魅力的に見えていた。あの事件の前に太田さんがこんな目をしていても、不思議ではなかったんじゃないか…そう思わせるくらいに。
「太田さん…」
 僕は膝立ちになり、彼女の身体にまたがる状態で身体を上の方にずらしていく。
 そして、僕は太田さんの胸を覆う生地に手を伸ばす。上手くはずせるかどうか自信が無かったが、背中に伸びているひもの部分をたどって、そこにある金具を指でカチャカチャと動かす。
 幸い、それは闇雲に動かすだけでも簡単に外れてくれた。僕はひもをつかんでブラジャーを持ち上げ、二つ折りにして太田さんの服の上に重ねる。
 そこにある膨らみは、とても綺麗な形をしていた。僕は吸い寄せられるようにして手の平をふたつの膨らみにかぶせ、そっと揉んでみる。
 くにゅっ、くにゅという滑らかで心地よい弾力は、挑発するような猛々しい魅力とは違う、包み込むような優しい魅力を僕に感じさせた。その不思議な柔らかさを十分に堪能してから、僕はいよいよ太田さんの核心の部分へと手を伸ばす。
「…脱がすね」
 僕は太田さんの顔を見ずに、つぶやくようにして宣言すると、両手で太田さんの下着をめくっていった。
 陰毛に覆われた女の子の部分が目に入ってくると、頭がかーっと熱くなってくる。僕はほとんど何も考えられないままにショーツをずるずると下げていき、足の所から抜き取った。まだ温度の感じられるそれをやはり二つに畳んで、太田さんの服の上にまた重ねた。
「はぁっ…」
 自然と、息を大きく吐き出してしまう。
 太田さんが、完全に無防備な状態で僕の前にいた。3ヶ月前には想像もできなかったことだ。
 そこを触ろうとしているというだけで恐怖に近い不安感が生まれてきたが、僕はありったけの勇気をかき集めて太田さんの性器に手を触れさせた。
 ふわっとした叢(くさむら)をかき分けて、熱を帯びた陰裂を指で広げてみる…
 その鮮紅色の粘膜が見えている部分に、僕は自分の指を当てた。ちょっとぬめついた熱い感じ。女の子のナマの体温だ。
 僕はできるだけ太田さんの顔を見ないようにして、その繊細な部分を指でまさぐった。一番の目的、入り口がどの部分にあるのかという事を確かめると、あとはどこということもなく指を這わせていく。自分の心の準備をするという意味の方が強かった。
 くちっ…くち…
 しかし、太田さんの身体はぬるぬるした液体を分泌して僕の指の動きに応えてくれる。たぶん、同年代の普通の女の子に比べても太田さんの身体は性的に十分開発されてしまっているのだろう。あの事件の最中に、どれほど月島さんや女の子達と交わったのかは分からないけれど、短い期間にかなりの回数を体験したはずだ。
 僕はその事に感謝するべきなのかどうか迷ったが、しばらくの間その不安定な愛撫を続けていた。見ているだけでも、太田さんの身体から熱い液体がにじみ出してくる変化がはっきり感じられる。太田さんの漏らす吐息の音も、さっきに比べて大きくなってきたようだった。
 それに合わせて、僕自身の欲望もこらえきれないほど大きくなってくる。
「…太田さん。いい?」
 僕は太田さんの顔を見据える。太田さんの落ち着き払った顔を見ていると僕の方が真っ赤になってしまったが、必死になって目をそらさずに太田さんの事をじっと見つめる。
「…いいよ、長瀬くん」
 太田さんが答えてくれたのは、いつものように5秒ほどのブランクを置いてからのことだった。
 僕は、一度太田さんの身体から横にずれて、シャツとトランクスを脱ぎ捨てる。今日初めて履いたトランクスは、脱ぐときもなんだか不自然な気がした。履いた状態から脱いだ状態になったのか、脱いだ状態から履いた状態になったのか、どっちかよくわからない気がする。
 ただとりあえず確かな事は、勃起したペニスを太田さんの前で露わにしているという事だ…
 僕は身体を思い切り前傾させた状態で、太田さんの上に覆いかぶさっていった。太田さんの顔が目の前に来るというのも恥ずかしいが、思いっ切りペニスを見られてしまう方が恥ずかしい。
 …くちゅ
 体勢が整うと、僕は指を太田さんの秘裂に当てて少し開き、そこにペニスを押し当てていく。そしてぬるんとした粘膜にあてがったペニスの位置を、さっきの記憶を頼りに動かしていった。
 くちゅっ。くちゅっ。
 その場所で、ペニスを軽く押し出してみる。粘液の絡む音がして、何かをこじ開けるような感触がペニスに伝わってきた。ここで、間違いない。
「いくよ」
 僕は太田さんの目を見ながら言った。
「うん」
 太田さんはあくまで静かな、なだらかな声質で答える。その様子は僕に平静をもたらすと同時に動揺ももたらした。結局合わせて、元と同じくらいだ。
「はぁっ…」
 息を吐き出しながら、僕は腰を前に突き出す…
 ずちゅう…
 重くぬめった音がして、ペニスが太田さんの中に入っていく。
 抵抗はほとんどなかった。太田さんの中は熱い粘液に濡れていて、僕のペニスを入った所からぎゅっぎゅっと締め付けてくる。
「んっ…」
 生まれて初めて感じる女の子の中は、思わずうめいてしまうほどに気持ちよかった。
 ずちゅっ…ちゅ…
 ペニスが根元近くまで入ると、全体にぎゅうという締め付けが加わってくる。そのまま溶かされてしまいそうな気さえした。
「長瀬くん、動いて」
「えっ…う、うん」
 慌てて答えた僕は、きっと情けない顔をしていた事だろう。
 ずちゅっ…ちゅぐっ
 僕は斜め後ろに腰を引き上げてから、えぐり出すようにペニスを送り込んだ。
「んふぅ…」
 太田さんが初めて表情を変える。切れ長の目が潤んで半分閉じられ、いつもとは違う可愛らしい弱々しさを感じさせた。事件の直後の抜け殻になったような状態とも違う、最近の静やかな大人しさとも違う、事件の前の活発な様子とも違う。等身大の女の子という言葉がふさわしい、壊れてしまいそうな瞳だった。
 ずちゅっ、ちゅぐっ…ずちゅっ、ちゅぐ
「あ…ああっ…んんっ…」
 太田さんは僕が腰を突き出すたびに鼻に掛かった声を出す。何回か抽送を行う内に、太田さんは目も閉じてしまった。
 ぢゅぐっ、ぢゅぐっ
「あうっ、あう…」
 がつっと叩きつけるほどの強いストロークを入れると、太田さんはあられもない声を出して身をよじらせる。ぎゅぎゅ、という強い締め付けが返ってくる。
 ぢゅぐ、ぢゅぐ、ぢゅぐ…
 太田さんの中が滑らかで動きやすいせいか、僕は割と早く動き方のコツをつかむことができた。
「んっ…ふ…あ…」
 僕が気持ちいいように動いているだけでも、太田さんは身悶えしてくれる。天国にいるような気分だった。自分の好きなようにして自分も相手も気持ちよくなれる、これほどの幸福は滅多にない。
 ぢゅぐっ、ぢゅぐ…ぢゅぐぢゅぐぢゅぐっ…ぢゅぐっ
「う…はぁっ…」
 ありたけの力を使い、連続して太田さんの中を突いていると猛烈な勢いで射精感がせり上がってくる。
「はあっ、ああーっ…あっ、あっ、うあっ」
 メチャクチャに突かれて大きな喘ぎ声を出している太田さんの反応をギリギリまで見つめ…僕は腰をぐいっと引いた。
 びゅるっ、びゅぷ! びゅっ、びゅじゅっ…びゅ
「ん…はぁ…あ」
 ペニスを横に向けるヒマもない、僕の出した精液はそのまま太田さんの身体に掛かっていく。一番勢い良く飛んだのは、太田さんの頬まで到達していた。そこから陰毛の辺りまで、点々と白い液体が付着している。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
 肩を上下させながら呼吸している太田さんは、身体についた液体を気にもしていないようだった。今の太田さんなら、身体の上に出してしまっても文句を言うことはないと思ってしまった事に罪悪感を覚えつつ…それでも、僕はあこがれの人と交わってしまったという至福の感情に浸りきっていた。



12/11
「………」
 俺はレミィの唇の柔らかな感触に半分以上意識を奪われながらも、レミィの言葉の意味を反芻していた。
 「忘れられなくして」…という言葉と、バスタオルも床に落としてしまったレミィの裸の姿。どう考えても、レミィの意志を取り違えようがない。俺の体に押しつけられるレミィの迫力ある胸の感触が、鼻の辺りに触れてくるつやのあるブロンドヘアが―――ブリーチなんかで痛んじゃいない、本物のツヤのあるブロンドだ―――その意志をますます俺に伝えようとしてくる。
 もちろん、俺も勃起していた。レミィがベッドに倒れ込んでくるような感じで来た物だから、それを隠しようがない。レミィが腹に当たる固いモノの事をどう思っているのかは分からないが、拒んでいるという事だけは絶対に無さそうだ。
「………」
「ン…」
 俺の方から少しずつ唇を離すと、レミィはいつもの巻き舌な声のイメージを残した吐息を漏らした。青い瞳がかすかに震えながら、それでもしっかりと俺の事を見つめている。レミィは時折日本人とは違う目の色だという印象を強く見せる事があるが、今のレミィはそんな疎遠感のような物を微塵たりとも感じさせなかった。無論俺は感じたいとも思わない。ただ、土壇場の所になって、レミィとの間にあるわずかな違いを意識してしまうのが怖かっただけだ。
 でも、全然そんな事はない。レミィは俺の近くにいて、体温を感じさせている。レミィがどういう感情を感じているのか、俺にはよくわかる。俺に身を任せようとしているのがひしひしと伝わってくる。
「…ヒロユキ…」
 レミィがつぶやくような声を漏らす。そこに若干の不安が交じっているように聞こえるのは、俺がなかなか動こうとしなかったからかもしれない。
「レミィ」
 俺は、レミィの背中に回していた腕の力を強める。
「本当に…いいんだな?」
「…アタシ…ヒロユキを…感じたい」
 レミィの声は語尾までしっかりと言い切られていた。
「かえって辛くなるだけかもしれないんだぜ?」
「でもッ…でもぉッ…!」
 レミィも、俺の背中に回した腕に入れる力を強くしてくる。
「確かに俺も、レミィとしたい」
「いいヨ…ヒロユキの好きにして」
「だけど、レミィ…」
「…ヒロユキっ!」
 レミィが俺の声を押しとどめるかのように、ぐっと手を伸ばしてくる。ただしその手が向かった先は俺の口ではなく、俺のズボンを押し上げている部分だった。
「レミィ…」
「ヒロユキ…アタシに、ヒロユキを気持ちよくさせて」
「おい…それって」
「う、うまくできるかどうかわからないケド…お願い…」
 レミィは言いながらベッドの下に降りて、ひざまづくような姿勢になる。そこから身を乗り出して、また手をズボンのジッパーの所に伸ばしてきた。
「………」
 俺はレミィの必死な表情に反応することができなかった。頭の中で脳ミソを絞って考えようとしていた事が、あっという間に崩れ落ちてしまう。
 カチッ…チッ…
 レミィが不器用にチャックを探り、それを降ろそうとしている。金具のじれったそうな音が何度も響いたかと思うと、
 ジィィ…
 コソコソした音を立てて俺のズボンの前が開いた。俺はさりげなく手を伸ばして、自分のズボンのホックを外しておく。今の様子だと、それを外すのはレミィがもっと苦労しそうだった。
 レミィははっきりモノの形が浮き出ているトランクスを見て、また顔を赤くしている。行為が進むほどにレミィの顔がどんどん赤くなっていくのがよくわかった。
 …ぎゅ
 そして、レミィがすらっとした指で俺のトランクスの裾をつかむ。それを両方の手で、ずるっと引き下ろしていく。
 ……すとんっ
 俺は腰を少し浮かせてレミィの動きを助けてやった。学生ズボンとトランクスが一緒に脱げて、ベッドの下に落ちていく。ポケットに入れていたサイフが床にぶつかる音が、妙に大きく聞こえた。
「こ、これがヒロユキの…」
 レミィはこわばった手つきで俺のペニスをつかんでくる。そうしていると、レミィの指はいつもよりももっと白く見えた。
「…レミィ…」
 俺はその不安げな様子を見て、少し時間が掛かりそうだなと思った。それでも、レミィを動揺させないように落ち着いて見守っていようと思っていたが…
「…ンッ!」
「うぉっ…」
 ちゅぷぅぅ…
 幹をくわえこんだレミィの唇が、ねっとりとした音を立ててペニスの根元の方に滑っていく…俺の予想に反して、レミィはいきなり身を乗り出して大きくペニスをくわえこんできたのだ。
 ちゅぷる…
 一番深くまでくわえこむと、今度は来た方向に戻っていく。唇はしっかりとペニスの幹を締め付けていて、その動きがペニスの表面を柔らかく刺激していた。
「レ、レミィ…上手いな…」
「……ンッ…ンッ、ンッ…ンッ…!」
 ちゅぷっ、ちゅぷっ…ちゅぷっ!
 俺の言葉にレミィは顔を真っ赤にしてしまったが、すぐに口を勢い良く動かし始めた。俺が感じているのを知って、自信を持ったらしい。目は恥ずかしさのためか閉じられてしまっていたが、その表情はレミィの一途さを際だたせていた。
「ま…待て、レミィ、いったんベッドの上に来いよ」
「………ン……えッ?」
 レミィがペニスから口を離して、不思議そうな顔をする。
「いいから…上がって来いって」
 俺はベッドに座った姿勢から一気に立ち上がり、ベッドの上に立った。その時に足に引っかかっていたズボンとトランクスを振り払い、靴下も脱いでおく。
「もっと、ヒロユキが気持ちよくなってからでもイイのに…」
 レミィは顔を真っ赤にしたまま、恥ずかしさを殺さずに言っていた。
「もっと気持ちよくしてもらうって…レミィ、来いよ」
 俺はレミィに呼びかけながら、Yシャツとその下のTシャツを脱いで放り投げる。俺もまた、レミィと同じ裸の状態になった。
「…ウン」
 レミィがうなずく。
 俺は、レミィが前を隠しながらベッドに上がってくるのを見つつ、ベッドに身を横たえた。ちゃんと枕の上に頭を乗せている。
「続き…してくれるよな」
「い、いいケド、なんでそんなに右に来てるノ?」
 そう、俺は枕の位置をいつも寝ている時の場所から数十センチも爪先の方へ動かしていた。その状態で頭を枕に乗せているのだから、足の先はベッドの端から少しはみ出してしまっている。
「レミィ…俺の体の上に乗ってくれ」
「ド…ドコ?」
「口で俺のをしながら…あそこを俺の顔の上に来るように…」
「!」
「ほら…来いよ、レミィ」
「え…ヒ、ヒロユキ…」
「俺ばっかりしてもらうんじゃな…」
「………」
 レミィはしばらくベッドの上に膝立ちで呆然としていたが、やがておずおずと体を動かし始めた。俺の寝ているのとは逆の方向に頭を向けて四つん這いになり、そのまま並行移動で俺に近づいてくる。顔は俺のアレの位置に、腰は俺の顔の位置に寄っていく…
「…ほら、来いって」
「……ウン…」
 俺の体の真横に来て、あそこを手で押さえているレミィ。一瞬レミィの目に涙がじわっとにじんだように見えたが、それを確かめる間もなくレミィは俺を身体全体でまたいできた。
 …ちゅぽっ。
 レミィは間断なくペニスをくわえこんできた。俺に見られているという恥ずかしさを少しでも消したがっているのかもしれない。俺は生まれて初めて間近で見るあそこの形状にドキドキした物を覚えつつも、観察ばかりせずレミィにお返しを始めることにした。
 色素の薄いヘアの間に見える割れ目に、舌を近づけていく。枕で頭が上がっているので、それほど苦労はしない。
 …ちゅ
「ンッ…!」
 俺が舌をつけた瞬間、レミィが全身を震わせた。
 じゅるぅ…
 俺は唾液の音を立てながら、ぐりっとレミィの割れ目の間に舌をねじこんでいく。ぬめった温かい感触が舌に伝わってきた。
 じゅる…じゅっ
「ン…ンッ…ンー…」
 とりあえず、舌を大きく動かして中をまんべんなく刺激していくようにする。シャワー上がりのレミィの体からはほのかな石鹸の香りがして、嫌悪感は生じなかった。
 ちゅぽ、ちゅぽ、ちゅぽ…
 レミィは俺の舌が動く度に、身体をよじらせて反応してくる。その瞬間、アレの方に加わる刺激が止まるのが少し面白かった。
 と言っても、こちらはどうしていいものかさっぱり見当がついていない状況なのだから、舌を闇雲に動かしていくしかない。レミィが気持ちよくなっているのかどうかは全くわからなかった。そして俺のペニスの方はレミィの舌でどんどん気持ちよくなってしまっている。
「…レミィ…そろそろ、いいか…?」
 ちゅぷっ…
「…ウ、ウン」
 俺の声に応えて、レミィが身体を上げる。斜め下から見上げるレミィの体は、ボリュームあるラインをしているのに妙にもろさを感じさせた。
 レミィが髪を全部下ろしてしまっているからかもしれない。俺はその状態でレミィが泣くのを何度か見てしまったから…。少し変な角度から見たせいか、その記憶がふと沸き上がってきてしまったからかもしれない。
 レミィと同じくらい大胆になって、二人でやらしい事をしていれば少しはそういう気分も消え失せるかと思っていたが…そうもいかないようだった。
「…ヒロユキ」
 身体を持ち上げた俺に代わって、レミィがベッドに身を横たえる。
 俺はレミィの足の方に回り込んで、その身体を上から見下ろした。
「………」
 うっすらと上気した肌、口元が少し濡れていて、真っ赤になってしまった顔。大きいのに形が整っているバスト。さっきまで俺が口づけていた微細な部分…
「…あッ」
 俺はその割れ目に指を二本差し入れて、そこを広げてみた。
 鮮紅色の粘膜の中から、俺はレミィの体の入り口を探る。知識の上では位置を知っていても、実際に探すとなると一苦労だった。それでも、数十秒の後には何とかレミィの中に入っていくための肉孔を探り当てる。指を押し当ててみると、中に少し入りそうになるのがわかった。
「ここだよな…?」
「………」
 レミィは俺と目を合わせずにうなずく。
 俺は指をそこから抜いて、腰を少しずつ前に出していった。同時にレミィの腰の辺りをつかんで、少しずつ持ち上げていく。あっという間にレミィのあそこに急接近したアレを、ぐりっとレミィの割れ目の中に突っ込む…
「痛いかもしれねーぜ?」
「ううン、そんなのは分かっているから大丈夫ヨ…」
「…ああ」
 俺はペニスを、さっき指で確かめた位置に移動させた。このまま圧力を加えれば、レミィの中に入って行くはずだ。
「それよりも、ヒロユキは私とこうなっても後悔しないノ…?」
「しない。もう大丈夫だ。俺のことは心配しなくても絶対に大丈夫だ」
 結局、俺が色々と考えたのはレミィに要らない心配と不安を与えることくらいにしかならなかった。俺にできるのは、間違いなくレミィとつながって…
「…レミィ…いくぞっ」
 …ぐぐぐっ
「…う…うふぅんッ…!」
 ぐぐっ…ぐっ…ぐぐっ…
「…くっ…ううッ…あ…」
「…レミィ、痛いんだろ…?」
「だ、大丈夫…ヒロユキのだったら…アタシ、すっごくウレシイからっ…すごくウレシイからっ…!」
「…レミィっ…」
 …ぐぐぐっ!
「んっ…ふぅんッ!」
「レミィ…レミィッ!」
「あ…ヒロユキっ…ヒロユキっ!」
 ぐぐ…ずぅっ
「あぅッ…」
「お、奥まで入ったみてーだな…」
「うん…ヒロユキのが、アタシの中にいっぱい入ってル…」
「レミィの中、すっげー気持ちいいぞ」
「本当?」
「ああ。最高だ」
「ヒロユキ…もっと好きな風に動いても、イイヨ」
「レミィが痛くなるだろ?」
「いいの…ヒロユキが気持ちよくなれるんだったら、アタシはどうなってもすごくウレシイから」
「レミィ…ごめんな…」
「ン…ヒロユキ、くすぐったいヨ」
「うん…何となく、な」
 ずっ…
「ふゥ…」
「ガマン…しててな…」
 ずずっ…ずっ…ずずっ…ずっ…
「ん…ふぅっ…はァ…」
 レミィの顔は、苦しんでいると言うよりも悦んでいるという感じだった。
 ずっ…ずず…ずぐっ、ずぐっ…
「くっ…レミィの中、すげー締まってくる…気持ちいい」
「ヒロユキのも、固くておおっきくて熱いヨ」
「それだけ痛くなるだろ?」
「いいの、ヒロユキがいっぱい感じられル」
 ずずっ…ずっ…ずずっ…ずっ…
「あ…ヒロユキ…ヒロユキ…アタシ、ヒロユキの事が大スキ…」
「俺も、レミィの事が大好きだ。絶対に離さねー…」
 ず、ずぐ、ずっ、ずずっ
「大丈夫…ほら、ヒロユキ」
「ああ」
 俺はレミィの差し出した手を強く握り返した。そして、きついレミィの中をありったけの力で動き回った。
「レミィ…レミィっ…!」
「ヒロユキ…ヒロユキっ!」
 ずっ、ずっ、ずっ…ずぅっ!
「くっ…出るっ!」
 ずっ!
 俺は激しくペニスを締め付ける膣内からムリヤリに脱出する。
 びゅっ、びゅ…びゅ、びゅる…
「はぁっ…ヒロユキのが…あったかい」
「レミィ…悪ぃ…」
 俺はどこに逃がす事も出来ず、レミィの腹から胸まで飛び出させるを得なかった精液を見ながら謝った。
「いいの、ヒロユキの物なら全部…スキ」
 レミィは俺の出した白濁の液をひとすくい指で取って、口に運んでいく。
「…レミィ」
「うん…オイシイよ、ヒロユキ…」
 少し憂鬱気味な笑みを浮かべるレミィに、俺はもう多くをしゃべろうとしなかった。それがウソでも本当でもいい、ただレミィの笑いを少しでも多く見ていたいだけだった…



11/21
☆☆☆注意:こみパじゃないです(笑)☆☆☆
「迷ってる?」
「な…」
「南君、思いっきり迷ってる顔してるよ」
「…柚木さん…」
「そりゃあそうだよね」
「う…」
 けろりとした顔で言われても、俺はそう簡単にうなずくことなどできない。
「私だって、そりゃあ迷うよ」
「……えっと…」
「あ、南君ショック受けた」
「うう…」
 俺は頭を掻きむしった。
 どうして柚木さんがここまであっけらかんとしていられるのかさっぱりわからない。俺と柚木さんは裸だ。しかも俺がアレを出した状態で、柚木さんの体の上に覆いかぶさっている体勢。いつ挿入が始まってもおかしくない。
「私だって初めては茜にあげようと思っていたのに…折原君に取られちゃったんだもん」
「あげる、って…」
「冗談言っているように見える?」
「いや。わかんないからいい」
 ふぅぅ、と俺はため息をつく。
「里村も、折原みたいなののどこがいいんだか…」
「悪趣味だよねー」
「机を何段積み上げられるかに挑戦して、ひっくり返したときに俺の机にヘコミ作ったり…もう馬鹿かと思ったよ」
「すごいね」
「本当にアホかと思ったよ。4段だよ、4段」
「南君の愚痴また始まったね」
「あ……」
 俺は調子に乗って喋りだしていた事にやっと気づく。どうも里村と折原の話になると、俺は前後を見失ってしまうようだった。柚木さんにとっても共通の話だから、ちょっとしたきっかけでするすると話が伸びていってしまう。
「気が済んだ?」
 柚木さんがにこにこしながら言う。元から薄れていたムードは、ますます台無しになってしまったようだった。
「…ごめん」
「縮んだ?」
「…ないない」
 柚木さんに言われると、本気で縮んでしまいそうな気すらしてきてしまう。妙に得意げな顔をしてそんなことを言えるのは彼女くらいのものだろうが…
「じゃ、入れてもいいですか?」
「なんでですます調なの?」
「…なんとなく」
 多少空気が変わるかと思って勿体ぶった口調にしたのも、柚木さんにはまるで効果がなかった。
「………」
 もう俺は諦めて、柚木さんの体に自分の分身を何も言わずに近づけていく。
「固いっ」
「…そう」
 あそこの上にそれを押しつけた瞬間、柚木さんが驚いた声で言った。俺はもう諦めて、それには反応せずに柚木さんのソコを指で広げる。
「………」
 多少は動揺してくれることを期待していたのだが、その桃色の部分が見られても柚木さんは平気な顔をしていた。俺は本当に柚木さんがしたいのかと問いたかったが、ここまで来てそうするだけの踏ん切りの良さを俺は持ち合わせていなかった。
 …ひょっとすると、折原ならそれくらいやらかすかもしれないが。
「熱い〜」
 柚木さんがパタパタと足を動かす。
「………」
 俺は位置を微調整して柚木さんの入り口の所にまで動かしていたアレを、思い切り押し込んだ。
 ぐぐぐ…
 ちゃんと入るのか心配だったが、それは大丈夫だった。柚木さんの中は激しい抵抗を返してきていたが、俺が押し込もうとする動きで何とか進んでいけるくらいのものだ。
 ぐぐっ…ぐぐ
 あれだけ平気な顔をしている柚木さんの中がこれだけ必死な感じの抵抗を返してくるというのは、随分アンバランスな感じだ。柚木さんは俺が入れていってもやっぱり平気な顔を…
「あは、あはは…入ってくるね」
 している…のか?
 笑っている声はまぁ入れる前と同じと言っていいかも知れないが、表情にはさっきほどの余裕があるようには思えない。というか、明らかにちょっと引きつってきている。
「柚木…さん? 大丈夫?」
「え? 何言ってるの?」
「辛そう…」
「そんなことないよ、南君のおっきいけど」
「………」
 ぐぐっ…ぐぐ
 ぷち、ぷちと切れていくような感触が伝わってくる。とても痛そうだ。
「…ウソついてる」
「そんなことないよー」
 柚木さんが手をひらひらと振る。
「………」
 ぐぐ…ぐっ
 俺は心配に思いつつも、結局最後までアレを入れてしまった。
「入ったね」
「うん…」
 笑っている様子を見ていると、やはり柚木さんの処女を奪ってしまったという実感は湧いてこない。
「動かないの?」
「動いて良いの」
「とーぜんだよ」
「…わかった」
 罪悪感もあったが、これからどうするにしても一度ペニスは引かなくてはならないのだ。俺はやっと入ったと思ったペニスを抜いていく。そこでまた、ぷちぷちと切れていくような感触が伝わってくる。どうにも痛々しかった。
 でも気持ちがいいのは紛れもない事実だ。
 里村のような美人タイプとは違って、割とありふれたタイプの顔だけど、胸も小さいけれど、柚木さんは誰の目から見てもかなり魅力的だ。その中に俺が入っているというのは結構すごい事だと思う。そういう見た目の働きがどれくらいあるのかはわからないけど、メチャクチャ気持ちいいのは確かだった。
「中途半端なとこで止まって、何考えてるのかなっ」
「…柚木さんのコト」
「なまいきー」
「………」
 ぐぐぐっ…
 俺は半分照れ隠しもあって、柚木さんの中にペニスをまた押し込んでしまう。
「あ」
 柚木さんが、また表情を少し苦しそうにした。もちろん、彼女はそれを何としてでも隠そうとしているみたいだったが…
 俺は何か出来ないものか考える。
 ないことはなかった。
「………何するの?」
「ちょっと…」
 そう言いながら、俺は柚木さんと繋がっている部分の近くに指を伸ばした。割れ目の中の、ある部分。自分の知識に従って、そこをちょこちょこと触ってみる。
「何してるの?」
「ここ、どう?」
「なに? ひょっとして、えっちなこと考えてるの?」
「えっちなことって…」
 今さらそんな言葉を言われるとは思わなかった。俺は半ば呆れつつも指を動かし続ける。
 柚木さんはぷくっと頬を膨らませたまま俺をにらんでいた。そしてそのまま何も言わなくなる。ちょっと意外だった。
 静かになった空気を久々に楽しみながら、俺は指を動かす。柚木さんの前でお互い何も言わずにいることなんて、会ってから初めてのような気がした。
 黙っていると、いつもとは違った可愛さがあるように思える。そもそも裸なのだから、いつもと違ったものを感じるのは当たり前なのかもしれないが…いつもと同じようにやり取りしていたせいで、そういう普段と違ったものを感じさせることすらなかったのだ。
「え、えっちっ…」
「え?」
「南君、えっち」
 突然柚木さんが言い出す。俺は何を言っているのかよくわからなかった。
「どういうこと?」
 俺はそのまま指を動かし続ける。
「えっちぃ…」
「だから、どういう…」
 その時、俺はペニスをくるんでいる感触がさっきよりもずっと熱くなっているのに気づく。ほんの少し前まで、そんなに熱さを感じさせる風ではなかったのに…
「もういいよ…普通に動いてよう」
「ん…でも」
 俺は言いながら、軽く腰を揺すった。
 ちゅくっ…
「あれ?」
「もう、大丈夫だよ、きっと」
 ちゅく、ちゅく…
「これって…」
「…ぶぅ」
 柚木さんがまた頬を膨らませる。
 俺は慎重に腰を引いてみたが、さっきよりも柚木さんの中はずっと滑らかになっていた。さすがに、俺も何が起こっているのか理解する。
「感じてたんだ…」
「えっちっ」
「柚木さんの方がえっちだよ」
「南君の方がえっち」
 なんだか、柚木さんの目が潤んでいる。そんな物を見るのは初めてだ。
「柚木さんの方だよ」
 ちゅくっ、ちゅくっ。
 俺はさっきよりも格段に動かしやすくなった柚木さんの中で、アレを動かしていく。柚木さんのねばねばしたあそこの中に擦られていると、ずっと柚木さんの中に入りっぱなしだった俺のアレはたちまち限界まで追いやられてしまった。
「………でるっ!」
 …ちゅぽっ。
 俺は一気に柚木さんの中からアレを引き抜く。
 びゅ、びゅ、びゅっ…
「うわ」
 びゅ、びゅ…びゅる
「……はぁ…」
 柚木さんの下腹部から胸辺りに掛けて精液を出し尽くしてしまうと、俺は脱力した声を出した。動いている時間は少なかったのに入っている時間が長かったせいか、妙に疲れた気分だ。
「いっぱい出たね…」
「うん…」
「南君、えっちだね」
「それとこれとはあんまり…」
「南君、えっちだね」
 柚木さんは言い続ける。
「…柚木さんもね」
「今度4人で甘い物屋さん行きたいね」
「そんなとこ、普段行ったこと無いな」
 脈絡のない柚木さんの台詞にも、俺は自然に答えていた。
「でも、行こうよ。4人でね」
「…うん」
 互いの初体験を終えた後のやり取りとしては、あまりに変だったかもしれない。
 でも、俺のアレやシーツにちょっと血が飛んでいて、本当に柚木さんは初めてなんだということをしっかり示している。
「………」
「ぼーぜん…」
 柚木さんは自分でそんなことを言いながら、体に飛んだ精液も拭かずに目を閉じてしまった。



10/22
 ちゅぷ。
「ゆ、祐一君そんなに見ないでよっ」
 祐一のペニスがあゆの秘部に侵入しようとした直前、あゆが動きを止める。
「なんでだ? いつも見ているんだからいいだろ」
「だ、だって、これじゃ丸見えだよ」
 あゆは結合しようとしている部分を隠そうとしていたが、片方の手が祐一のペニスを固定していて、もう片方の手が秘裂を割り広げているという状況では隠しようがない。中途半端に腰を浮かしたまま、体を少しひねるのが関の山だ。
「別にいいじゃないか」
「うぐぅ…良くない」
「じゃあさっさと入れたらどうだ? その方が少しは見えにくいぞ」
「…うん…」
 ぬちゅ…
 あゆは、ねっとりとした自分の媚肉の中に祐一のペニスの先端を導き入れる。そのまま、手で固定したペニスの上に体重を落としていく。
 ぬぢゅっ…ぢゅ
「んーっ…はぁ…」
 一番奥まですっぽりと飲み込むと、あゆは祐一の腹の上に手をついてため息のような吐息を漏らす。
「や、やっぱり少しは見えちゃうよっ…」
「仕方ないだろ」
「…恥ずかしいよ」
 隠すべき陰毛がない、つるつるとしたあゆの秘裂である。ちょうど祐一のペニスの太さの分だけ広がって、結合部分の上下に隙間が出来ていた。そこから、あゆのピンク色をした粘膜がきらきらと光っているのがはっきりと分かってしまう。
「あゆ、動いてくれ」
「…やだ」
「それじゃ進まないだろ」
「だって…ボク、もっと見えちゃうよっ…」
「あゆが生えてなくて濡れてるのがいけないんだろ」
「う、うぐぅ…そんな言い方ひどいよぅ…」
 あゆは言いつつも、それなりに真実であることを認めざるを得なかった。情けない顔で、腰を持ち上げる。そして、落とす。
「んんーっ…」
 祐一のペニスがヴァギナの中をこする感触に、あゆは顔を後ろに反らした。カチューシャをつけたままの髪の毛が、前髪だけを残してさらりと後ろに流れる。あゆは切なそうに目を閉じて、そのままはぁはぁと熱い呼吸をしていた。
「こら、あゆ、それだけで休むなよ」
「ボク、そんなに急に動けないもん…」
「あゆがエロいのがいけないんだぞ。俺がこうしてしてやってるのに、ひとりエッチまで隠れてしてるから感じすぎる体になるんだ」
「しっ! してないよぉっ! そんなことっ!」
「じゃあ腰を振れよ」
「…うぐ…」
 ぬぢゅっ。
 あゆは少し不安そうな顔で腰を上げ、また下に落とした。
「………」
「休んでたら意味ない」
「わ、わかってるよっ」
 ぬぢゅっ…くぢゅっ、ぬぢゅっ…くぢゅっ
「…………」
 あゆは顔を少ししかめながら、腰の上下運動を開始した。怪訝そうに何かを見つめているような表情にも見える。
 ぬぢゅっ…ぬぢゅっ、ぬぢゅっ
 すぅー…
 しかし、何回か腰を振って、あゆが鼻腔から大きく息を吐き出した辺りから表情がゆるんでくる。祐一のペニスを口でしてあげている時のように、少し上を見つめながら怒っているような、困っているような表情をする。目がどんどん潤んで、はっきりと涙目になってくる。
「…んんーっ…んーっ…んー」
 やがて、あゆは頬を膨らませた、すねているような表情になる。完全に祐一から目をそらして、天井から覗いている誰かと目を合わせているような位置に視線を向けていた。その瞳は潤みきって、今にも謝りだしそうに弱々しい。それでも、あゆは行動の上では同じペースで腰を振り続け、弱音を吐くことはしなかった。
 だが、体の器官の反応を隠しきる事はできない。
「ぐちょぐちょだぞ、あゆの中」
 それも、相手と直接合わさっている部分となれば。
「い、いやだっ! そんなことないよっ」
 ぐぢゅぐぢゅっ…ぢゅぷっ。
「ほら。聞こえるだろ?」
 祐一が寝転がったまま、小刻みに腰を突き上げる。
「い、いやいやっ、いやだぁっ! 祐一君、やめてよぉっ…!」
 あゆの呼吸がどんどん速くなって、ビクッ…! ビクッ…! と震え始める。
「なんだ、イッちゃうのか…あゆ、早過ぎるぞ」
「だっ…だってっ…」
「俺はまだ満足してないってのに…あゆ、罰として普段どんな風にひとりエッチしているのか、このままの姿勢で見せてくれよ」
「ボ、ボク、そんなのしてないもんっ…そんなの、やり方、知らないよっ…」
 あゆは官能に埋もれそうな顔に、必死になって怒っている表情をにじませた。
「じゃあ、俺が代わりにしてやるよ」
 祐一は結合部分と秘裂の上半分によって出来た三角地帯に指を差し込む。
「ひっ」
 あゆが、短く声を漏らした。
 …ビク、ビク、ビクンッ! ビクビクッ…ビクン!
「うっ…うっ…うぐっ…うう…」
「な、なんだ…もう少し我慢してもいいじゃないか」
 指の先が真珠の鞘に触れただけで、あゆは快感を爆発させてしまっていた。結合の前に祐一の舌で濃厚に愛撫されていたとは言え、少々敏感すぎる。あゆは、ウィークポイントを祐一に再確認された形になってしまった。
「毛も生えてないのに、こんなにでっかいクリってどういうことなんだろうな」
 くりゅっ…
「あっ…祐一君、やめてぇっ!」
 ビクン、ビクン、ビクン…
 またあゆの体が痙攣する。あゆの目から涙がぽろぽろとこぼれた。
「…あゆがイッてる時って、すごい締まるんだよな…」
 くりゅん。
「いやっ!」
 ビクッ…ビクッ…!
「うっ…いい」
「う、うぐぅ…祐一君、もうやめて…ボク、おかしくなっちゃうぅ…」
「もう少しだけいいだろ」
 くり、くりっ…
 ビクン、ビクン、ビクン!
「っ、ひはっ…ああああ…」
 あゆは力無く叫ぶと、糸の切れた人形のように祐一の上に崩れ落ちていった。



10/15
「浩之ちゃん…ちょっとまぶしいよ」
「そうか」
 浩之はうなずいたが、それ以上何もせずに目を細めているあかりの事をじっと見つめていた。
 隙間、と言うよりはもう少し大きめに開けられたカーテン。そこから朝の光が、カーテンが開けられているのと正確に同じ幅だけを持って差し込んできている。その角張った領域に立ちこめた微細な埃が節度を持った輝きを示していた。
 そして光に照らされたあかりの髪は、より鮮明な形で輝きを放っている。
「浩之ちゃん、カーテン閉めて」
「いや…」
 寝起きの子供っぽいあかりの表情に、小市民的な幻想風景がよく合っていた。
「まぶしいよ…」
 そう言うあかりを、浩之は言葉ではなくパジャマの裾をめくり上げる事で制止する。ふわりとした感触のお腹を何度か撫でてから、浩之はさらにパジャマをめくり上げ、ホワイトのブラジャーに包まれた胸のところまで外に出させる。
 しゅるん…
 浩之はブラジャーを上にずらして、あかりの乳房を視界の中に入れた。
 ふにゅ…ふにゅ
 あかりが目を細めたままに見つめる中、浩之は軽い手つきであかりの乳房を揉み上げる。弾力のある膨らみが少し変形しては元の形に戻り、浩之の手の中で滑らかに震えた。
「…ん」
 浩之が胸の先端に口づけると、あかりが鼻にかかった息を漏らす。
 ちゅる…ちゅっ…ちゅっ
 桜色に染まり始めた先端だけを浩之は舌で丁寧に味わった。朝という空間からしても、浩之の舐めている部分の直接的意義からしても、それはミルクの匂いに象徴されるものだ。母性的で柔らかな甘い芳香を浩之は存分に味わい、あかりの胸の先を唾液ですっかりべとべとにしてしまう。
「浩之ちゃん、時間…」
「ああ」
 ベッドの脇の目覚まし時計を見ながら、あかりが言うと浩之も時計の示す時間に気づいたようだ。あかりのパジャマのズボンをさっと脱がしてしまう。そしてブラジャーとそろいのショーツの上から、三本の指で4回だけ膨らんだ部分をタッチする。
 するっ。
「どこまで…なの…?」
 浩之がショーツを脱がすと、あかりが頬を赤くしながら問うた。
「最後まで」
「大丈夫かな」
「シャワー浴びてる時間くらいあるだろ」
「二人なんだから、二倍時間がかかるんだよ」
「俺はいいって」
「だめだよ…」
 光に差されたままの目が、浩之を諭すように見つめる。
「わかったよ…速くするから大丈夫だ」
「うん」
 浩之は綺麗に整った淡いヘアの中に指を侵入させ、秘裂を左右に広げた。そこに、胸への口づけで濡れたままの唇を押しつける。
「んぅっ…」
 あかりが、わずかに腰を浮かした。浩之は舌を使って全体を刺激してから、ぴちっとした肉の結び目を乳頭と同じようなタッチでくすぐる。
 ぴちゅ…
「…こういう時、あかりだと便利だよな」
「浩之ちゃんが舐めるからだよ…」
 たちどころに透明な液体を含み始めた膣孔を浩之がつつくと、あかりはかくんと腰を落としながらつぶやいた。
 浩之はずるっ、と自分のパジャマとトランクスを下ろす。生理的反応とあかりのかもし出す魅力的な匂いが、すっかり浩之のペニスを高ぶらせていた。
 がし、とあかりの体を押さえつけるようにのしかかり、あかりの腰を再び自分の腕で持ち上げてペニスを押しつける。シーツの上をあかりの体が滑って、朝陽の光からあかりが抜け出してしまった。
「ふぅっ…」
 ぱち、ぱちとあかりが何度か目をしばたたかせる。
 じゅぷん。
 急にあかりの体温を強く感じながら、浩之はペニスを奥深くまで挿入した。
「…あぁっ」
 吐息のような声と共に、あかりが浩之のペニスを締め付ける。またあかりの体温が強くなる。ミルクの香りはいつの間にか変化を起こして、純粋に興奮を誘うエロティックな香りになってきていた。それが結合部分からも零れだしているあかりの体液に象徴されているのは間違いない。
 じゅぷ、じゅぷ…
「う…ああ…浩之ちゃん…」
 それから、こういうあかりの声。締め付け。水っぽい挿入の音。あちこちを好き勝手に向いている、起きたてのままのあかりの髪の毛。そういうものだ。それが、仕組まれていたかのように体液の甘酸っぱい香りと絶妙にミックスされる。
 じゅぷっ…ぐちゅぐちゅ。
 それがあかりなのだから、当然と言えば当然だ。
「あっ…ああっ…あっあっ」
 浩之が強めに腰を打ち付け、膣壁の下腹部に近い方をこするとあかりが快感を訴えて声を高くした。さっき中身を半分のぞかせておいた陰核への刺激も加わっている。あかりは次第次第に浩之のモノを締め付ける力を強くして、腰も高く浮かせ始めた。さらに、浩之の抽送に合わせてぐっぐっと腰をグラインドさせ始める。
 じゅちゅ、じゅちゅ。
 絶頂は近い。そう確信した浩之は、さらに強くあかりの中を突いた。比例して、浩之自身の快感も高まってくる。
「はぁ…浩之ちゃあんっ…もう…私」
「俺もだ…あかり」
 睡眠の直後のペニスは、パッケージから出したばかりのボールペンのように素直だった。浩之のペニスを、極めてシンプルに心地よい脈動が走り抜けていく。
 じゅくっ…
 びゅっ、びゅっ…びゅるっ。
「あ…」
 直前で引き抜かれたペニスから、熱い精液が飛んで半裸のあかりに降りかかっていった。最初の一撃はあかりの顔の真ん中まで飛んで、紅色に染まった頬を伝っていく。
 ひゅくひゅく、と全身にかすかな痙攣を見せながら、あかりはそれを甘んじて受け止めていた。
「はぁっ…学校…はぁっ…行く…はぁ…前なのに…」
 隠し事をしているような小さな声で、あかりは困った顔を見せる。
「洗濯してシャワー浴びるんだからいいだろ。お前さっさと入ってこいよ」
「うん…」
 あかりは体についた精液を拭き取ろうともせずにベッドの上に立ち上がった。そして、危なっかしい足取りで床に下りる。
「バカ、ティッシュで拭いてけよ…」
「あ…うっ、うんっ」
 ぽたっ。
「あ…」
「バカ…拭いておくから、さっさと体だけ拭いておけよ」
「ご、ごめんね、今日帰ってきたら掃除するから」
「なんかここがお前の家みたいだな」
「え…で、でも」
「あーだからいいって。時間ないって言ったのはお前だろ。早くしろ」
 浩之はあかりに向かって乱暴にティッシュの箱を投げた。
 ぽたっ。
 それを受け止めようとして、あかりはまた顔についた精液を床に垂らした。



9/30
「ちょっ…」
「美坂…」
「み、みさか…じゃなくて、北川君っ…ダメよ」
「なんでだ?」
 ころん…
 北川が力をゆるめた瞬間、香里は身を転がして北川の手から逃れる。
「もう…」
 香里は北川に引き出されたブラウスをスカートの中に戻しながら、ため息をついた。
「彼女の部屋に二人きりで、して悪いことはないんじゃないのか」
「あ、あのねっ…いま、家に私たちだけってわけじゃないんだから」
 乱れた髪を手ぐしで整えながら、香里は壁の方に視線を移す。
「別にいいだろ」
「良くないわよっ…」
 香里はぶんぶんと首を振りながら否定した。そして、座っていたベッドから立ち上がる。
「栞ちゃんだって、もう高2なんだし」
「高2でも小2でも、見せるようなものじゃないわよっ…!」
「まさか見には来ないと思うけどなぁ…」
「みっ、見るのでも聞くのでも、問題だって事には全然変わりないでしょ!」
「美坂の声の方が聞こえていると思うんだが…」
「…う」
 香里は黙りこむ。
「それに、俺が来たときからずっと部屋にいるのって俺達に気を使っているからじゃないのか?」
「き、気を使うって言ってもこんなことのために気を使っているってわけじゃ…ちょっとっ…」
 香里の両手を無造作につかんできた北川に、香里は弱った顔になりながら抗議する。
「それくらいは想像すると思うけどなぁ」
「し、栞はそんな子じゃないわよ」
「なんだ、祐一との話知らないのか?」
「…え゛」
「だから、栞ちゃんも理解してくれているんだって」
「ま、待ってっ…相沢君と栞がどうしたって言うのよ」
「美坂、本気で言ってるのか?」
「…あっ…相沢君に限って…そんなことは」
「随分とあいつも信頼されたもんだな」
 北川は香里がしまったブラウスの裾をまたスカートの中から引っぱり出す。
「ダ、ダメって言ってるでしょっ!人の話を聞きなさいよ…」
「聞いた」
 そう言って、北川は香里のブラウスをたくし上げてしまう。
「ダメっ!本当にダメよ!」
 香里はそれを下ろそうとする。すると北川は逆の手を香里のスカートの中に入れてしまった。
「あっ」
「なんか熱いぞ?美坂のここ」
「う、嘘言わないで…!」
 香里も自分のスカートの中に手を入れて、ショーツの上から秘部をさすり始めた北川の手を止めようとする。だが脱がすのをやめさせるのと違って、撫でられている動きを止めるのは至難のわざだった。一本指をはがしたと思っても、また別の指が性器を撫で始める。
「ちょっとぉ…」
 いつまで経っても指を止めない北川に、香里がいらいら気味の声を出す。しかし北川は構わず指を動かした。それどころか、その隙をついてショーツの中に直接指を入れる。
「あっ…何してるのよぉっ!」
「何って…」
 北川はヘアの間を縫って、香里の秘所に指を進めた。
「い、いい加減にして」
「ここまで来て嫌がることもないだろ」
「なし崩しで進めないでよ…もうやめてっ」
「このまま壁の近くですると、結構音が隣にはっきり聞こえそうだよな」
「しなければ聞こえないわよっ…」
「じゃあ、このままする」
「なんでそうなるのよ…あっ、あーっ!」
 ばさっ…
 北川が前のめりに倒れ込み、そのまま体重を掛けて香里をベッドに押し倒す。
「い、いやだって言ってるのに…」
 香里はずりずりと身体を動かして逃げようとするが、体重を掛けて押さえつけられているためにうまくいかない。しかも、逃げようとするとどうしても壁に、栞の部屋の方に近づいてしまう。
「やだ…やめてよっ…」
 ついに香里は逃れようとする動きを止めてしまった。北川は体重を掛けたまま、素早く指を自分の口の中で濡らして本格的に香里の秘所をまさぐり始める。
「あああ…」
 執拗な北川の愛撫に、香里も自分の中に熱が生まれてきたのを否定できなくなってしまった。
「…わ…わかったわ…わかったから、できるだけ栞の部屋と離れた方で…」
「そうか」
 北川は当然のように答える。それから数秒間香里の秘所を愛撫してから、掛ける体重を段々小さくしていった。
 どんっ。
「………」
 そして北川が身体をどけてベッドの下に飛び降りると、鼻に掛かった吐息を漏らしながら香里がベッドの上に身を起こす。そして気怠そうな様子で床に下り、すこし憂鬱さを感じさせる目で北川の歩いていく先を追った。熱っぽい沈黙が部屋の中に満ちる。
 …きぃ…
「え?」
 北川は、香里の机に向かって座っていた。椅子の背もたれがきしむ音がする。
「美坂、来いよ」
「来いよ…って言われても…」
 香里はそう言いつつも、机に向かって歩いていった。北川は椅子をくるりと回転させて、香里の方に向き直る。
「どうする気なの?」
「こうする」
 北川はハーフパンツに手を掛けて、少しだけ椅子から腰を上げるとそれを脱いでしまった。
「あ…」
 勉強をする時に座っている椅子に、恋人の裸が座っているのは何とも不自然なものだ。キャスターがついているとは言え、この椅子を別の場所に動かしたことがほとんどなかったので、香里はこの椅子には勉強机のイメージしか持っていない。
 そして勃起しているペニスの肉体的なイメージと、参考書と教科書が綺麗に並んでいる机のイメージはどうにもそぐわなかった。
「ほら、来いって」
「だ…だから来いって」
「この上に乗るの」
「…え…」
「床に寝っ転がるよりいいだろ?早く脱げよ」
「で、でも…」
「じゃあベッドで壁にくっつきながらやるか?」
「……はぁ……わかったわよ…」
 香里は既に疲れ気味の表情で、裾の出されたブラウスのボタンをひとつずつ外していった。それから、シャツ、スカート、それから二枚の下着と脱いでいく。かすかな衣ずれの音は、いかにも悪いことをしているようなこっそりとした響きを持っていた。
「よーし」
「………」
 自分の部屋で全裸になるというのも、普段はない経験だ。香里は自分の部屋の中を妙によそよそしく感じていた。一方の北川は余裕の様子。二人の態度を見ている限りでは、まるでここが北川の部屋のようにも見えてしまう。
「北川君、絶対大きな声出さないでよっ…?」
「美坂もな」
 そう言って、北川は椅子に深く座り直した。
 香里は目を少し細める。全身から「なんでこんなこと…」というメッセージを放っていた。
「じゃあ…乗るわよ」
「おう」
 北川が言うと、香里は北川に背を向けて椅子に座ろうとする。首を回して北川の方を見ながら、慎重に北川の膝の上にヒップを下ろしていく。
 からら…
「おっと」
 そして体重を北川に預けた瞬間、椅子のキャスターが少しながら動く。
「きゃ…こ、この椅子で本当に大丈夫なのかしら」
「たぶん大丈夫じゃないか?」
「もうっ…」
 香里は顔をしかめながらヒップを少しずつ後ろにずらしていった。膝の上から太股の上に移動し、さらに北川のペニスに身体を寄せていく。
「い…いくわよ」
「俺はいつでもOKだ」
 から…からら…
 何度か香里が腰を持ち上げようとするたびに、キャスターが動く。
「もっと思い切っていけ」
「わかってるわよっ…」
 からららっ…!
 香里はバランスを崩すのを覚悟で、肘掛けに手をついて大きく腰を跳ね上がらせる。そして、そのまま北川のペニスの上に腰を落下させた。
「うぉっ…」
「…きゃっ…ちょっ…これ…」
「い…いてぇ」
「仕方ないでしょっ…もう」
 キャスターが大きく動いたこともあって狙いは外れ、北川のペニスは見事に香里のヒップに押しつぶされた形になっていた。北川自身の脚の間に、ペニスが押し下げられたような形になってしまっている。
「少し腰上げてくれ…」
「こ、こんな面倒なことするくらいなら今日はしなくてもいいじゃない…」
「もう遅いって」
 北川が言うと、香里はしぶしぶながらまた肘掛けに手をついて身体を浮かせる。そうしてできた隙間を利用し、北川は手で香里の秘所に向かってペニスを直立させた。
 キャスターがまた動いて背もたれが机にぶつかるが、二人は何とかバランスを維持する。
「そのまま、ゆっくり腰落としてくれ。そのまま…」
「………」
 香里は言われた通りに腰を落とし始める。本人は慎重に動いているつもりのようだが、支えの部分が不安定すぎるためにあまり細かい動作はできないようだった。
 それでも北川のペニスは香里の秘所にめりこんで、さらに深く刺さっていく。北川が少し腰を揺らして位置を調整すると、先端がずっぽりと香里の中に入った。
「うう…」
「あとはそのまま落とせ」
 ず…ず…ずるっ。
「はぁっ…!」
 香里がため息のようなかすれた声を上げる。手で身体を支えるのに限界が来ていたのか、一気に腰を最後まで落としてしまったのだ。ずんっ、と北川のペニスに子宮口を叩かれる衝撃はかなりのものだった。
「動くぞ」
 きこきこきこ…
「あっ…ああ…」
 香里が熱気のこもった息を吐き出す。突かれるだけで、じんわりとした心地よさが生まれてきているようだった。香里は全身を北川にあずけて、心地よい結合感を味わう。
 きこきこきこ…
「椅子の上なんだから…そんなに動いたら、あの子に聞こえちゃうわよ…」
「気持ちよくなっているくせに、何言ってるんだ」
「か、関係ないでしょ…こんな音、変だってすぐ気づかれちゃう…」
 きこきこきこ…
 リズミカルに生まれるきしんだ音は、静かな部屋の中で滲(にじ)むようないやらしさを放っていた。腰の振動を直接音響化したような響きだ。水音でも身体のぶつかり合う音でもないのに、男と女の交わりを不思議なほどに予感させる音だった。
 きこっきこっきこっ…
「あぁ…!ダメ…もっと静かにして…!」
「いいだろ?奥まで来て」
「で、でもダメ…栞が…栞がぁ…」
 香里の声も、次第に締まりがなくなってきている。もしここが北川の部屋だったなら、だいぶ乱れ始めている頃合いだ。栞の存在という一点が、香里の理性に歯止めを掛けているようだった。
 きこっきこっ…
「あっ!」
 香里がびくんと身体を震わせて、はっきりとした大声を出す。
 ちろ…ちろちろ…
 背中に、ねっとりした感触が生まれていた。北川が波打つ長い髪の中をかき分け、香里の背中に舌を這わせているのだ。
 きこっきこっ…
 ちろちろ…
「うぅ…ダメっ…そんなとこ…舐めないで…」
 香里はささやく声に戻るが、今の叫びでだいぶ吹っ切れてしまったようだった。自分でも腰を震えるように動かして、北川の抽送に応える。膣内の愛液も、最初は必要最小限なだけといった感じだったのにだいぶ量が増えてきたようだった。
 その弛緩した感覚は理知的な香里にとっては恥じらいたくなるものだ。ゆるみきった所を他人に感じられていると感じただけで、顔がかあっと熱くなってしまう。しかしいくら我慢しようとしても、一度火のついた身体は全く収まることがなかった。
 っちゅくっ…ちゅくちゅく…
 きこ…きこきこ…
「ああああ…北川君…」
 淫靡な音の重なり合いに、香里は理性を溶かされていく。
「確か、今日はいい日だよな…」
「うん、大丈夫…」
 香里はだいぶ感じてきたようだった。感じると香里は素直になる。香里のプライドと性感は、綺麗に反比例していた。一度ボーダーを越えてしまうと、あとはどんどん乱れていく。
 きこ…きこっ
「い、いい…北川君の…」
「栞ちゃんも見てるぞ?」
「えっ!?」
 香里は反射的にドアと窓に目をやってしまう。
「へ、変な事言わないでっ…」
「信じるなよ」
 北川は笑いながら言って、さらにペニスで香里の中を突き上げた。
「うううぅっ…」
 冗談だと分かっても、香里の頭からは栞の視線が消えなかった。何と言っても、栞の部屋の方を向いてセックスしているのだ。壁に隔てられているとは言え、もし壁がなかったなら北川とつながっている部分が丸見えである。それを見せつけているような姿勢と言っていい。
「…すごい締まるぞ、美坂っ…」
「やだっ…そんなことない…」
「誤魔化しても仕方ないだろっ…」
 ずんっ…ずぶずぶっ…ずぐっ…
 北川はここぞとばかりに香里の中を突きまくる。椅子が本当に壊れてしまいそうなほどに激しく腰を振り、香里の強烈な締め付けの中を往復する。
「ああっ…ああ」
「美坂…出すぞっ!」
 香里の豊かな髪の中に顔を伏せ、香里の腰を抱きしめながら北川は叫んだ。
 どくんっ!
 北川のペニスが脈動した。
「あ…あ…ああ」
 どく、どく…
 香里の中に大量の精液が飛び出し、結合部分の隙間からこぼれて椅子の上にこぼれていく。香里の性器も、精液まみれで白く汚れてしまった。鮮紅色に充血した粘膜の上に精液がかかっているのは、正面から見られれば隠しようのない状態だった。
 どくっ…どぷ…
 未だに脈動している北川のペニスを受け入れたまま、香里はさざ波のようなエクスタシーを感じる。薄くなった意識の中には、栞の幻想が出てきた。ベッドに座って、興味津々の目つきで二人のエクスタシーを見つめている。
「見ないで…」
 幻想の中の栞は、小悪魔的に笑いながら淫らな姉の姿を見ていた…



9/22
「…長瀬ちゃん」
 不安そうな声だった。
 良くも悪くもマイペースな瑠璃子さんが落ち着きをなくす時というのは、相場が決まっている。僕が何か新しい事をしようとした時だ。もちろん、それが新しい趣味を始めるだとか一緒に行った事のない場所に行くとかいう事なら瑠璃子さんはいつも通りの笑みを浮かべて見守っていてくれるだろう。
 ぱさっ。
「本当に…ここでするの」
「そうだよ」
「………」
 僕は瑠璃子さんのブラジャーを、草むらの上に投げておいたTシャツの上に放った。若草色のTシャツは日に照らされた草の上にうまい具合に溶け込んでいたし、自然な感じの白さを持っているブラジャーがその上にのっかってもあまり違和感がない。
 だけど、事情を知らない人間がそれを見たならば驚くだろう。見た目にフィットしているとか、そういう問題じゃない。どう見たって、女の子が服を脱いだあとにしか見えないんだから。
 そしてその服の持ち主は、僕の視界の中だけにある。上半身だけ裸になった瑠璃子さんは、胸を隠して僕の方を向いていた。下半身は、いつもとちょっと違ってジーンズ。少し活動的に見える。と言ってもシャツとブラジャーを脱いでしまうと、それはとてもアンバランスなエロチックを産み出す服になってくる。
 さぁぁぁ…
 その時風が吹いた。瑠璃子さんの髪がさらさらと揺れる。
 肌に空気が撫で付けられる事で、瑠璃子さんは外にいるんだという事をますます強く感じているはずだ。実際、瑠璃子さんは自分の身体に回した手に込める力を少し強めたみたいだった。
「ちょっと寒いよ…」
 5月の陽光から分断されたような、日陰になった橋の下。コンクリートを背景にした瑠璃子さんの姿は、確かに寒そうに見えた。
「すぐあったかくなるよ」
 僕はそう言って、瑠璃子さんの手をさりげなくどかす。そして胸を両手で包み込んだ。
「あ…」
「あったかい?」
「…うん…長瀬ちゃんの手、あたたかい」
 瑠璃子さんは顔をほのかに染めながら、辺りをうかがっていた。
 人に見つかる心配はない。川はちょうど曲がっていて川下からも川上からも見えにくくなっているし、橋げたと川の流れまでの間には高い草がぼうぼうとしげっていた。
 ただ、時折橋の上を車が通っていく音がすることもある。その時はやっぱり緊張する。しかし見つからない限りは、不安感はちょうどいい演出にしかならないのだ。
「んん」
 揉んでいると、瑠璃子さんの胸はすぐに反応してぴんと尖ってきた。
 ちゅぱっ。ちゅぱっ。
 口をつけて、吸ったり唇でしごいたりする。
 いつもなら瑠璃子さんはここで声を出し始めるのに、今日はふんっ、とかんんっ、とかいう息を漏らすような音しか出していなかった。声を出すのを我慢しているのかもしれない。
 ちゅぱちゅぱ…
「んっ…うん…」
 面白くなって、ねちねちとしつこく瑠璃子さんの乳首を舐めていると、段々瑠璃子さんが耐えられなくなってくるのがよくわかった。視線を上げてみると、瑠璃子さんの透明感のある瞳がだいぶうるんできているのも見える。
 僕は口を瑠璃子さんの胸につけたまま、ジーンズの上から瑠璃子さんの恥丘を撫でる。
「あ…」
 女の子用のジーンズだから、そこの部分もぴったりとした感触になっている。つまり、そこに指をつけると…
「…ふぁっ…」
 かなり、直接に近い感じで触っていることになる。
 すりすり…
 ジーンズの固い生地を通しているから、触りやすかった。複雑な構造を考えずに指を上下に激しくこすり立てても、とりあえずは大丈夫だ。生で触っている時にこんな触り方をしたら、皮膚がすれて痛くなっちゃうかもしれない。
「あ…ああ…」
 瑠璃子さんは自分の手を背中の方に回して、息を漏らしていた。
 服を着たままの部分が段々ゆるんでくるのは、結構不安になるんだと思う。服を着たまま失禁をしそうになっているのと似た感覚があるはずだ。瑠璃子さんは失禁はしないだろうけど、こうしているうちにどんどんあそこがゆるんで来ているに違いない。
「なっ…長瀬ちゃん」
「………」
 頃合いと思った辺りで、瑠璃子さんが声を掛けてくる。僕は何も言わずに、同じ刺激を加え続けていた。
「服が…汚れちゃうよ…」
 僕はそれを聞いて、口だけを離した。指の方は全く動きをゆるめず、ジーンズの上から瑠璃子さんのあそこをこすり続ける。
「なんで?」
「でちゃう…から」
「なにが?」
「おみず…」
「ただの、水じゃないよね?」
「…あったかくて…ぬるぬるしたおみず」
 瑠璃子さんは顔を赤くして、腰を震わせていた。
「じゃあ、瑠璃子さん自分で脱いでよ」
「………うん…」
 うなずくのを見て、やっと僕は指の動きを止めた。
 瑠璃子さんは背中に回っていた手をジーンズのホックにかけて、それを外すとチャックを下げる。そして、最近見なくなったような恥ずかしそうな顔で白いショーツと一緒にジーンズを脱いでいった。
「あ、全部は脱いじゃダメ」
「え…」
「そこまででいいよ」
 僕は瑠璃子さんが反応をする前に指を剥き出しにされた秘裂に近づけ、ぐにぐにと撫でる。ヘアの薄い瑠璃子さんの性器は、割れ目がくっきりと見えるのだ。
「んぅ…」
 その中に指を入れると、瑠璃子さんの力は抜けてしまった。ジーンズをつかんでいた手が離れる。ジーンズは瑠璃子さんの膝と足首の間辺りで止まった。
 つん、つん、つん。
「はぁっ…あ、ああ…」
 とろっ…
 割れ目の中に隠れていた瑠璃子さんのクリトリスを、三回つついた所で瑠璃子さんの中からあふれるように愛液がこぼれてきた。まさに、漏らす直前だったという感じだ。これだけの量を出したなら、ショーツはぐしょぐしょになってしまっていただろう。
「今度は僕の番…」
 僕は瑠璃子さんの中から指を抜き、ぺろんと舐めてから自分のズボンを下ろした。ちょうど瑠璃子さんのジーンズと同じような位置で止まる。
「うん…」
 瑠璃子さんは自分のあそこを押さえながら僕の前にひざまづくようにして座った。
 ちゅく…
「いいよ…」
 柔らかい瑠璃子さんの口の中に、僕のペニスはくるまれる。
 ぐちゅぐちゅ。
 瑠璃子さんが口を動かすと、外気に当たったり瑠璃子さんの口の中に入ったりの繰り返しがよくわかった。気分は、部屋の中とはかなり違う。征服欲のようなものが、かなり刺激された。
「そこまで。瑠璃子さん」
「……っ」
 ちゅぽ…
「はぁ…はぁ」
 瑠璃子さんは口を離すと、地面を向いて呼吸を整える。
「立って」
「………」
 言うと、少しふらついた感じで瑠璃子さんが立ち上がる。だいぶくらくら来ているみたいだった。マイペースで、電波の強さは人一倍でも瑠璃子さんの体力はあんまりない。屋外というロケーションによって、普段より神経を使っている可能性もある。
 でも、僕が入れるぶんには問題ないだろう。
「……よっ」
 僕は瑠璃子さんに身体を密着させて、やや身体を沈める。そして慣れ親しんだ位置にめがけて、自分のペニスを突き上げた。
 ずちゅっ…ぢゅくん
「…ああっ」
 狙いは見事に当たって、スムーズに瑠璃子さんの中にペニスが飲み込まれていく。瑠璃子さんは顔をふらっ…とそらせていた。突き上げた勢いをそのまま受けている感じだ。
 ぢゅく、ぢゅく。
 僕は瑠璃子さんを抱きかかえながら、腰を何回か突き上げてみる。それほど自由には動けなかったが、基本的な出し入れをするには問題がないようだった。身体を二本の足で支え続けなくてはならないぶん疲れるが、密着感はとても高い。僕と瑠璃子さんの身長差があまりないのが、今日ばかりは役立ったみたいだ。
「長瀬ちゃん…」
 瑠璃子さんは弱々しい力で僕の背中に手を回してきた。しかし、熱っぽいぬるぬる感でいっぱいの瑠璃子さんの中が締め付けてくる力はけっこう強い。僕のペニスをしっかりとくわえこんで、突き上げると同時にぎゅううと締めてくるのだ。ぬるぬるとした愛液も、とても気持ちいい。
「うん…気持ちいいよ、瑠璃子さん」
 さぁぁぁ…
 また風が吹く。皮膚の露出した部分が風にさらされる。粘液に触れた部分に、ひやっとした感触がある。興奮で熱くなっている部分との差が生まれて、いい感じだった。
 きゅっ。
 そして、瑠璃子さんの中も締まる。屋外という事を思い知らされて、また興奮を深めてしまったらしい。
 セックスはやっぱり女の子の方が恥ずかしいものだろう。感じているなら、なおさらだ。だったら…
 ちりちりちり…
「ふあああっ!」
 瑠璃子さんのクリトリス…に、電波を…送る。
 ちりちりちり…
「あうっ…長瀬ちゃん…やめて…」
 実際には、身体の細かい部位に電波を直接送ることなどできない。ただ、瑠璃子さんのクリトリスをいじくるイメージを送り込んでいるだけだ。それでも、膨らんだ突起が電波を受信しているイメージはとても想像しやすかった。壊れてしまうほどに電波を送り込まれて、充血しきってしまうクリトリス…瑠璃子さんの、敏感なアンテナ…
「あああああ」
 じゅぷっ、じゅぷっ。
 明らかに瑠璃子さんの中にあふれる愛液の量が増えていた。締め付けも、思い切り強いものがひっきりなしに訪れるようになってくる。瑠璃子さんの表情は、快感に満たされている事を示していた。わずかに残った恥じらいを、快感が押し出してしまいそうな勢い。
 じゅぷじゅぷっ。
 瑠璃子さんは突き立てるたびに激しくよがった。立っている位置も段々ずれて、瑠璃子さんの背中が橋桁のコンクリートにくっつきそうな所まで来ている。
「瑠璃子さん…」
「…長瀬ちゃんっ…」
 ぴったり、合う。瑠璃子さんの快感のボルテージと、僕の快感のボルテージはぴったり来ていた。
 ちりっ…ちり…
 クリトリスに送り込む電波を微調整しながら、僕は全力で瑠璃子さんの中を突いた。
「うううううぅぅ…」
「瑠璃子さん、好きなだけ気持ちよくなっていいよ」
 ちりちりちりちりちり…
「あああああーっ!!」
 射精の直前に、これでもかというほどの電波をいちどきに送り込む。瑠璃子さんは目を大きく見開いて、全身をぐーっと伸ばした。
「瑠璃子さん…!」
 どくんっ…どくん…
「っ………!」
 そして僕が射精すると同時に、瑠璃子さんは一気に力を失って僕に向かって倒れ込んできた。
 どく…どく…
「ふぁ…ああぁ…」
「気持ちよかったでしょ?瑠璃子さん」
 …ビク…ビク…と全身を小刻みに震わせている瑠璃子さんは、僕の言葉が聞こえているのかいないのか、うわごとのような言葉ばかり言っていた。
 ずる…
「あ」
 そして瑠璃子さんがかくんと膝を折った瞬間、僕も一緒にバランスを崩す。
「うわ…」
 どさっ。
 僕と瑠璃子さんは、草むらの中に倒れ込んでしまう。
「いたた…」
 脚の辺りは冷たい土に触れていて、上半身は草むらの中。頭は日差しの中で、そこから下は日陰。僕が下になったせいで、瑠璃子さんが裸の上半身を傷つけることはなかった。
「瑠璃子さん、可愛かったよ」
 まぶしすぎる太陽の光を感じながら、僕はまだ痙攣している瑠璃子さんの中の感触を楽しんでいた。


9/21
 がしっ。
「こ、こーへーっ、だめだよっ…」
「誰も来ない。大丈夫だ」
「浩平…?」
 瑞佳はいつもと同じように浩平をたしなめようとしたが、浩平が出した低い声に戸惑いの表情を浮かべる。
「だ、だめだよ」
「いや…」
 浩平はつかんだ瑞佳の手首を離そうとしない。加えられている力も、冗談とは思えないほどに強かった。何より、目が普段とは違う。元々浩平はどんな時でも飄々(ひょうひょう)と物事に対処するタイプだが、今の浩平は瑞佳が見たことがないほど真剣で焦った目つきをしていた。
「わ、わかったよ…いいけど、浩平のお家でね?今から行けばいいよ」
 瑞佳は浩平の目を見つめながら、微笑みを浮かべる。そして手首をつかんでいる浩平の手の上に、自分の手の平をそっと重ねた。しっとりとした体温を伝えるような触れ方だ。
「ほらっ…浩平、動物じゃないんだからする時と場所はきちんと考えようよ?」
 そうしてから、いつものようなたしなめの口調に戻る。
「前風邪引いた時も、浩平無茶したし…男の子ってみんなこんな風なのかな」
 瑞佳はそんな事を言いながら、するっと浩平の手の中から逃れようとする。
 ぐいぐい。
「…浩平」
 浩平は手を離そうとしなかった。
「長森」
「な、なに?」
 瑞佳はさらに二・三度浩平の手を引っ張ったが、浩平はやはり離そうとしなかった。瑞佳は困惑した表情を浮かべながら、浩平に向き直る。
「ここで、今じゃないとダメなんだ」
「なっ…なんで?私、逃げたりしないよっ」
「説明している時間も惜しいくらいなんだ…今は俺の言うことを聞いてくれ」
「わ、私だって事情を聞く権利くらいあるもん…浩平の事だったら」
 瑞佳は懸命に普段のペースを保とうと努力していた。
 長いつきあいだ。浩平がどういう行動パターンを持っているかくらいは理解している。今の浩平がそこから逸脱しているのは、いちいち確かめなくてもよく分かった。前、風邪引き中に無理矢理交わろうとした時すら、瑞佳は「浩平だから」と思うこともできたのだ。
「ちゃんと、家につくまで我慢したら好きなだけしていいよっ…ちょ、ちょっとくらい変なことしても怒らないから」
「………」
 瑞佳が無理矢理笑みを浮かべても、浩平はにこりともしなかった。無言で瑞佳の事を食い入るように見ている。瑞佳の笑みも段々と力を失い、視線は少しずつ下を向いていった。
「…どうしても、ここがいいの?」
「ここがいいんじゃない。ここじゃなきゃだめなんだ。そうしかできないんだ」
「なんで…なの?」
「説明に時間がかかりすぎる…瑞佳、頼むからスカートと下着を脱いでくれ」
「そ、そんなぁ」
 瑞佳はあまりに直接的な要求に、思わず不満そうな表情をする。
「できないなら、俺がする」
「えっ…きゃ!」
 ずるる。
 浩平は瑞佳の手を離してふらっと倒れ込んだかと思うと、その落下の勢いを使って瑞佳のスカートを脱がしていた。よほど力を入れていたのか、ショーツまで一緒に足首の所まで下げられてしまう。
 スカートめくりではなくてパンツ下ろし…小学生の時に浩平が瑞佳にしていた事もある凶悪なイタズラの一つだったが、今となっては全く意味が違う行為だ。
「や、やだよっ、人来るよっ」
 ぢゅっ。
「だっ…だめぇっ」
 浩平は瑞佳の脚の間を這いのぼるようにして伝い、顔面をぎゅっと瑞佳の秘部に押しつけた。そして舌を秘裂の間に突っ込んで、中を激しく舐め立てる。獣のような激しい舌使いだった。
「あ…ああ…」
 瑞佳は浩平の頭を押さえながら、きょろきょろと周囲を心配そうに見回す。セックス経験がまだ乏しい瑞佳は、同じくセックス経験に乏しい浩平の舌戯だけで取り乱すことはなかった。確かに、ぐにぐにと柔らかな粘質の物体が自分の身体の中に侵入してきているのは恥ずかしい。しかし既に一度浩平にされた事であるし、何より瑞佳は行為を見とがめられる事を心配していた。
「ほ、本当に来るかもしれないよ…そしたら私たち退学」
 ぬちゅ。ねちゅる…
 瑞佳の言葉に浩平は全く構う素振りを見せず、瑞佳の肉孔の中に舌を差し込んだ。
「ん…ほ、本当にそしたら大変だよ…生徒でも、噂になっちゃうかもしれないし…そしたら恥ずかしくて学校に来れなくなるよ…」
 ぬちゅ。
 浩平が舌を抜いて、立ち上がる。
「あ…そ、そうだよ、家に…あっ」
 かちゃ…すとん。
 瑞佳が一瞬の安心を見せたのも束の間、浩平はベルトを解いてトランクスごとズボンを脱いでいた。そして、革靴と一緒に脱ぎ捨てる。服が汚れるとか、あとで履きやすいようにとか、そういう事を完全に無視したやり方だ。
「ちょ、ちょっとっ…浩平」
「長森…いくぞ」
「わっ、わ」
 浩平は瑞佳の身体をがしっと抱えると、窓の方を向かせる。そしてブラウスの掛かっているヒップにペニスを押しつけながら、瑞佳の身体を窓に向かって倒した。
 靴を履いて、足首の辺りにスカートとショーツを引っかけたままの瑞佳はその場にとどまれず、バランスを崩して倒れそうになる。
 どん。
 瑞佳は窓の枠に手をついて、何とかバランスを取った。しかし、それはどう見ても浩平に向かって求めているような格好だ。瑞佳が頬を赤くする。もっとも、瑞佳の羞恥の原因は姿勢だけではないようだった。
「ひ、ひと、いるよ…たくさん」
 瑞佳は、後ろを向いて浩平に訴える。確かに、窓の下には運動をしている生徒達が数多く見えていた。ちょうど部活動の時間だ。
 ずぶっ。
「ああーっ、浩平…」
 だが浩平は全く耳を貸さず、無遠慮にペニスを瑞佳の中に突き刺した。腰を押しつけたと思ったら二秒後には中まで突っ込んでいるという、思いやりのカケラも感じられない入れ方である。瑞佳は眉をしかめていた。まだ瑞佳にとってセックスは二回目なのだ。唾液で潤滑させられているとは言え、抵抗感が消えるわけがない。
「い、いやだよ…こんなの」
 顔を窓の外に向けてしまっているため、瑞佳は殊更に表情を大きく変化させる事はできなかった。出来るだけ平然を装う。
 外からは上半身しか見えていないのだし、ここは4階だ。下から見ている人間がいたとしても、部活動を瑞佳が普通に見ているようにしか思えないだろう。瑞佳が相当表情を動かしても、バックで犯されているなどという想像力を働かせる人間はいないはずだ。
 ぱんっ…ぱんっ。
 浩平は自分の腰を打ち据えるような力で瑞佳を突き上げていた。瑞佳の脚に浩平の脚がぶつかり、リズミカルな音が立つ。袋の部分が揺れて、瑞佳のヒップにぴたぴたとくっついたりもしていた。姿勢の上でも、激しさの上でも獣的だ。
「ああー…浩平…」
 何回浩平が突き上げたろうか。ようやく、瑞佳の中にも瑞佳自身の潤いが生まれてきた。ぬるんとした感触を使って、浩平はさらに激しいストロークを行う。割と濡れやすい瑞佳の体質が幸いしたようだった。経験の浅い少女がヴァギナの中を無茶苦茶に突かれただけでは、なかなか濡れないはずなのだ。
「ん…んん」
 瑞佳は少しだけ甘さを帯びた声を出した。性感にはまだ疎い瑞佳だったが、浩平にされていると思うだけでも気分は違う。ふわっと包み込まれるような気持ちがする。
「んっ、んっ…ん」
 …あ。
 瑞佳がふと意識を留めた。
 …やだ…
 いつの間にか腰を振っていた自分に瑞佳は赤面する。
 している場所は常軌を逸していたが、浩平が入れていると思っている内にあまり気にならなくなってしまっていたのだ。さすがに興奮を高鳴らせるという事まではなかったが、瑞佳はこの状況に順応してしまったようだ。どこかの猥談で聞いたような状態になってしまっている事に、瑞佳はますます顔を赤くする。
「あ…うぁ」
 ところが、口から漏れるはしたない声は止まらなかった。浩平がじっくりと取り組んでやれば、瑞佳はそれなりにエッチな少女になるのかもしれない。
 しかし…
「長森…!」
「えっ」
 ぎゅっ。
 どくん、どくんっ…どくっ…
「こ、浩平っ…あーっ…」
 突然奥深くにペニスが突き刺さったかと思うと、その先端から灼熱の液体がほとばしって瑞佳の中を叩いた。浩平は本当に獣になったような荒い息を立てながら、瑞佳の背中に顔を押しつけてくる。
 …どくっ………どくっ
「も、もうっ…だ、出すときはちゃんと言ってよっ…私が大丈夫な日じゃなかったら、大変なことになるんだよ」
「長森ぃっ…」
「本当に…だからね」
「長森…長森」
「もう…浩平」
 何度も名前を呼ぶ浩平が可笑しくなって、瑞佳は微笑んでしまった。
「長森…」
「はいはいっ。ここにいるよ、浩平。すぐに出しちゃう浩平」
「そうか…そうなのか…」
 瑞佳は性感の面ではそれほど満足できなかったが、不思議と幸福な感情になっていた。愛のあるセックスというのは、やり方ではなくて気持ちの問題なのかもしれない…などという事まで思い始める。
 浩平の精液でいっぱいになったヴァギナで、瑞佳はやわやわと浩平のペニスを締め付けていた。そうやってつながったまま、二人は夕日が射し込んでくるまでずっと廊下の隅の陰にいた。



9/14
「…あ」
 顔をベッドにうずめたまま、琴音がこもり気味の声を漏らす。
「前、向いてくれよ」
「でも」
 琴音は枕の上に顔を乗せた状態で、うつぶせになっていた。長い髪が背中に流れて、幾筋かはベッドの上にこぼれている。
 その横に座っていた浩之は、ベッドと身体の隙間から琴音の胸に手を差し入れた。
「ああ…」
 琴音がまた声を漏らす。ベッドの上に押しつけられていても、乳房のサイズが決して小さくはない事はわかった。琴音の身長を考えれば、むしろ大きめと言えるかもしれない。
 そこを、浩之の手が探るようにまさぐる。もちろん大胆な動きはできなかったが、悪戯するような触れたり離したりのバランスと真っ暗な視界が琴音の興奮を少しずつ煽る。それは、枕に吸い込まれていく琴音の吐息が段々と大きくなってくる様子を見れば明らかだった。
「なんでだ?前は見せてくれたのに」
「あの時は、緊張していたせいでかえって何も考えられませんでしたから…」
 琴音がつぶやくように言う。
「そうなのか?琴音ちゃん、最初から積極的だったから全然緊張してないのかと思ったぜ」
「そ、そんな風に見えましたか?」
「うん。俺もちょっとびっくりした」
「………」
 琴音はぎゅぅと顔を枕に押しつけてしまった。というより、身体全体をベッドに押しつけているように見える。
「いや、別にそんなに気にしないでいいって」
 浩之は、琴音の胸とシーツの間に挟み込まれた手を抜きながら苦笑した。
「わ、私、そんなエッチとかじゃないんです」
「別にそんな事思ってないから、気にしないでいいんだよ」
「でも。…でも」
 琴音が頭だけを少し動かし、わずかに振り向いて浩之を見る。
「このままじゃなんもできないだろ?」
「それは…」
 少しだけ琴音の力がゆるんだ。その隙に、浩之は再び手を胸の下に滑り込ませる。
「起こすぜ」
「藤田先輩…」
 琴音は手をこぶしに握って身を縮めたが、ゆっくりと身体を仰向けに戻される動きに抵抗する事はなかった。
 ベッドの上にさらけ出した身体を、一瞬隠そうとして、しかし手が止まる。琴音は動きかけた手をおずおずと身体の両側に持って行った。そして両脚を固く閉じたまま、浩之の事を焦点のぼやけた目で見る。
「ほら、綺麗だから大丈夫」
「………」
 その言葉に琴音は瞳をわずかに揺らすが、それ以上の反応を見せる事はなかった。
「落ち着いてくれよ」
 浩之はそう言いながら、固く密着している琴音の内股の部分に指を伸ばす。
 はっきりとわかるほどに琴音は身を緊張させたが、浩之はゆるゆると脚の合わさったラインに沿って上下に指を動かした。初めの内こそ無反応だったものの、ずっとやっている間に琴音の脚に入っていた力が抜けてくる。指が脚と脚の間に入りそうになってきたのを見計らって、浩之は指を動かす位置を段々上に動かしていった。
「っ」
 秘裂の下端に触れた瞬間は琴音もぴくりと身体を震わせたが、そこまでに十分愛撫をしていたせいか過剰な反応はしない。浩之はそのまま上下の移動のラインを琴音の秘裂に合わせていった。ヘアをかきわけるようにして、琴音の合わせ目をほぐすように撫でていく。
 やがて浩之が指を秘裂の中にうずめていっても、琴音は自然に受け入れていた。はぁはぁと息を荒くして、ぼんやり宙を見据えている。
 …ちゅぱっ。
 浩之が一度指を唾液で濡らす。そして粘膜の辺りまで指を達させても、琴音はそのまま受け入れた。
 指の向かった先は琴音の入り口の部分、まだ慣れていないはずの小さい肉孔だ。放射状に広げるような愛撫を展開させたり、指の先をほんの少しだけ入れてみたりする。決してムリはしていなかったが、それほど慎重な動きというわけでもなかった。
(…あ)
 そうして数十秒も経ったろうか。琴音の入り口から、透明なものがにじみ出てきた。初体験でショーツをぐしょぐしょにしてしまった琴音のことだから、驚くほどの事ではない。しかし、琴音が自分の身体の変化に気づいていないように見えるのはちょっとした不思議さがあった。
 浩之はあえて何も言わず、液体にあまり触れないような愛撫を繰り返しながら片手だけでトランクスを下ろす。だいぶ注意力が下がってきているのか、琴音はそれに気づいていないようだった。
 そしてトランクスを足の先から振り払ってしまうと、浩之は素早く自らの肉棒を琴音の秘裂に近づけていく。
「…あっ?」
 琴音が気づいて声を上げたときには、浩之の肉棒はぴたりと琴音の入り口にあてがわれていた。その瞬間、ちゅく、と小さな水音が立つ。
 …じゅく…ぐちゅ。
 それ以上の反応を返す前に、浩之は自分の腰を押し出していた。三回目の琴音の中はかなり柔軟に広がって浩之を受け入れていく。
「私…」
「琴音ちゃん」
 浩之はほんの少しだけ微笑気味の顔で言った。琴音がどう取るかはわからない。何となくそうしただけだ。
 ぐっ。
 浩之の肉棒が完全に埋まると、琴音が少しだけ顔をしかめた。まだまだ琴音の中には狭さもあるし、異物感への慣れも小さいのだろう。しかし、潤滑の液は既に十分で、琴音に不必要な刺激を与える事はほとんどなかった。
 ちゅく…ぢゅっ。ちゅく…ぢゅっ。
 浩之は多少余裕を持たせたペースで琴音の中に抽送を開始する。
「ああ…」
 琴音がため息のような声を出した。苦痛を感じさせる声ではない。もちろん乱れきった声というわけではにが、どことなく満足感を感じさせる声だった。
「琴音ちゃん、気持ちいいか?」
「その…」
「こんな事で嘘つかなくていいって。正直に言ってくれた方が俺も嬉しいし、感じているならもっと嬉しい」
「…その…気持ち…いいです」
 浩之の促しに、琴音が頬を染めながら言う。
「そっか。じゃあ、琴音ちゃんの方でも腰動かせる?」
「こ…こうですか?」
 ぎごちなくだが、琴音が腰を前後にスライドさせ始める。偶然か故意かそれはちょうど浩之の抽送の動きとタイミングが合っていて、浩之が腰を突き出すと同時に琴音も腰を突き出し、深々と琴音の奥に刺激を与える形になった。
「あ…あ」
 次第に琴音が上げる声の感覚が短くなり、腰の動かし方も積極的になってくる。それは浩之にも絶妙な刺激を与えていった。腰を動かし始めたせいか、中の締め付けのリズムも合ってきて、ぎゅっぎゅっと浩之の肉棒が中まで突き刺さった瞬間に最も強い刺激が返ってくる。
「こ…琴音ちゃん」
「藤田…せんぱいっ」
 琴音は浮かされたように言った。
「こ、こんな私でも嫌いにならないでくださいね…こんな…」
「そんなわけないだろ。俺はどうなっても琴音ちゃんが好きだ」
「う…嬉しいです」
 琴音が締め付けをひときわ強くする。同時に琴音の脚が伸びて、浩之の腰をしっかりと挟み込んでしまった。
 思わず可笑しくなりそうになりつつも、浩之は最後の瞬間に向けてストロークにスパートをかけていく。
「あっ…あっ、藤田…先輩!」
「琴音ちゃん…俺はそろそろだけど」
「わ。私も、私もっ…です!」
 琴音はばさっ、ばさっと髪を乱しながら叫んだ。腰も無我夢中で前後に動かして、結合部分の隙間から半透明の液体がにじんでしまっている。
「よし…琴音ちゃん」
 浩之は全力を込めて琴音の奥底を突き続ける。ひくっひくっと琴音の中が痙攣し始めるのがわかった。もう来ているのだ。
 じゅくっ…ぐぢゅっ!
「あ、あああーっ、あああああーっ!!」
 そして、琴音は絶叫に近い声を上げながら、あえなく絶頂してしまった。
 びゅっ…びゅく、びゅく。
 同時に浩之も達し、琴音の腰を抱きかかえながら激しく琴音の中に放出していった。

「お邪魔…しました」
 琴音がちょっと顔を伏せながら言う。
「ああ。また来てくれよ」
「ええ…あの」
「なに?」
「私…その…エッチですか?」
「どうだろーな。敏感なのは間違いないよな」
「そ、そういうのは…藤田先輩は」
「もちろん、大好きだぜ。琴音ちゃんだから、ってのが一番の理由だけどな」
 浩之は臆面もなく言い切った。
「先輩…」
 琴音は靴を履こうとしていた状態から振り向いて、両手を身体の前で合わせる。そして、そのまま目を閉じた。
「…ん」
 浩之は軽く琴音の腰を抱き寄せ、額にキスをする。それから琴音の頭を人差し指でこつんとこづいて、もう一度キスをした。


9/3
「だーっ、しつこいな。なんだってんだ」
「あ、あう…」
 祐一が勢い良く寝返りを打って真琴の方を向く。暗い部屋の中で、忍び足の真琴はばつの悪そうな顔を浮かべていた。
「俺は明日学校があるんだって言っただろ。お前もさっさと寝ろ」
「え、えっと…ぴろがずっと鳴いていて眠れないから」
「なんだよ…」
 さっきとは違う言い訳に、祐一がぼりぼりと頭をかいて上半身を起こす。
「んー…なんか、鳴いてるかもな」
 祐一は真琴の部屋の方を向いてから言った。
「ずーっとにゃーにゃー言ってるから」
「部屋の外に追い出して寝ろ」
「かわいそうだよぅ…それに鳴きながら真琴の足に頭をすりつけてくるから、外にぴろを出してもそのままドアを閉められないし」
「じゃあ、なんで今ぴろはお前の部屋で鳴いてるんだ」
「あ…あぅ」
 真琴が言葉に詰まる。
「こんな夜にお前と遊んでるヒマはない。寝ろ」
「祐一、意地悪…」
「意地悪もへったくれもないっての。子供はもう寝る時間だ」
「子供じゃないわよぅっ」
「うるさい。部屋に戻れ」
 祐一はまた布団をかぶると、真琴に背を向ける。
「………」
 しばらくの間は沈黙が下りていたが、
「…おい」
「………」
 ごそごそ…
「おい、真琴」
 ごそごそ。
「………な、なに?」
「『なに』じゃない…」
 すっぽりと布団の中に身体を入れてしまった真琴に、祐一が言う。
「これは俺の布団だ」
「う、うん」
 真琴は身体を祐一の背中に押しつけながら答えた。
「お前はお前の布団があるだろ」
「祐一、前は一緒に寝かせてくれたのに…」
「しおらしくしてもダメだ。前は前、今は今だ」
 背中に真琴の胸が触れる感触がある。祐一はそれから離れるように、布団を持って身体を動かした。
「わ、さむい…」
 真琴はそれにぴったりとくっついていく。祐一はさらに身体を動かして壁に身体が密着するところまで動いたが、真琴も同じように動いて祐一に身体を押しつけてきていた。
「…なんなんだ」
「だ、だって」
「『だって』じゃないだろ」
「あぅ…」
 もじもじと身体を真琴が動かしている。それに合わせて背中に触れている色々な部分も動く。
「何してんだ」
「祐一…」
 真琴がひときわ身体の押しつけを強くする。
「したくない?」
「したくない」
 祐一は一言で終わらせた。
「そ、そんなこと言わないでよぅ…」
「したくないものはしたくない」
「無理してるでしょ」
「してない」
 一週間に一回というのが、祐一の定めたペースだった。
 祐一の部屋は学校に行っている間に秋子に片付けられている。その状況と秋子の洞察力を合わせて考えれば、監視カメラが各所に設置されているに等しい。かと言って屋外で抱き合うほどに大胆ではない。
 結局祐一の17歳のプライドが選んだのは、たぶん正常値に見えると自分で思った状態にとどめておくというやり方だった。
「真琴はいいって言ってるのに」
「俺はいい」
「あ、いいの?」
「あほか」
「あう…」
「大体、いつもお前の方からなんて言ってこないだろ。何企んでいるんだ」
「な、なんにも考えていないわよぅ」
「嘘だ」
「………」
 真琴は黙り込んだ。
「図星か」
「そ、そうじゃないわよ…」
「じゃあなんだ」
「あ、あの」
 祐一が言うと、真琴はゆっくりと祐一の左手に手を伸ばしていく。
「なんだよ」
 それを、真琴の身体の方に引き寄せていった。祐一の手は、真琴と祐一の背中の間に割り込む形になる。
「んしょ…」
「無理に引っ張るなって。痛い」
 やがて、祐一の手は真琴のパジャマに触れた。
「?」
 しかしすぐに一度その布地から手が離される。そして次の瞬間祐一の指先が感じたのは別の感触だった。
「なんだこりゃ…あ?…おいっ」
 祐一が手を跳ね上げようとする。だが、真琴はその手をしっかり握って離さなかった。
「ゆ、祐一…」
「バ、バカっ、真琴、手離せ」
「やだ…」
 祐一は手を離そうと努力するが、いつの間にか両手でぎゅっと握られている手はなかなか動かなかった。そして、その指先には温かくぬめぬめした感触がある。
「あ…あぅ…」
 祐一の手が逃れようとして動く度に、真琴が熱い息を吐き出した。それに気づいた祐一は、手の動きをぴたりと止める。
「…真琴」
「なに…?」
「どうしたんだ、これ」
「ま…真琴もわかんない…」
「自分で、したのか?」
「な…なんだか…ぴろがずっと鳴いているの聞いていたら、頭が段々変になってきて…いつもはこんなことしないよぅ…」
「…はぁ…」
「祐一、助けてよぉ…」
「…わかったよ」
「ホ、ホント?」
「特別だからな。今日だけだぞ」
 真琴のショーツの状態を考えれば、しようがしまいが秋子に何か想像されるのは確実だった。
「うんっ…」
 真琴はいそいそと布団から抜け出していく。祐一も頭をかきながら、それを追った。

「…あうっ」
 真琴が頭を垂れて、はぁはぁと息を吐き出す。そしてヒップを高く突き上げて、侵入してくる物体の感触を受け止める。
 じゅぷ、じゅぷっ。じゅぷじゅぷ…
「っ…祐一…きもちいい…」
「真琴…」
 祐一が試すように腰を前後に動かしてみるだけで、真琴はあえいだ。普段とは比べ物にならない量の愛液に祐一のモノはすっぽりと包まれ、しかもひくひくと蠢(うごめ)いて締め付けてくる。
 じゅぷじゅぷ。
「あっ…あっ、あぅっ!」
 真琴が床すれすれまで顔を下げて、声を漏らした。頭を低くしたため、髪が背中の方から身体の横に垂れていく。祐一が腰を突き出すために髪は動いて、真琴の身体の左右にヴェールのように広がっていった。
 祐一は真琴の腰をしっかりとつかんで、力強く真琴の中を突いていく。普段はもっとゆっくりとした動きにするのだが、そんな事を気にせずに済むほどに真琴の中は潤滑液で豊富だったし、突く度に気持ちよさそうな声を真琴は上げていた。
 じゅぷ…ぬぷぬぷ、ぬぷっ。
 真琴は胸を床に押しつけてつぶすようにしながら、身体を前後に揺らしていた。時折身体を少し動かし、片手を乳房に当ててぐいぐいと揉む。そしてバランスを崩しそうになると、また乳房を押しつけてすりつける刺激を行っていた。もちろん、身体を動かすタイミングは祐一のストロークに合っており、奥をより強く突かれるようにしている。
「あぅーっ!」
 祐一が真琴のクリトリスをこねくり回してみると、鋭い声を上げて真琴が全身の力を抜いていった。
「そ、そこはもう…」
「しなくていいか?」
「う、うん…」
 真琴が身体を何とか持ち上げながら言う。
 普段はそこをいじくる事によって何とか真琴に快感を与えているようなものだ。祐一が触っていないのにクリトリスが既に固く尖っていた事を考えると、恐らく真琴が自分の指でいじった後だったのだろう。それにしても、真琴は敏感すぎるとも思えるほどの反応を返していた。
 じゅぷ、じゅぷ。
「はぁ…あぅぅ…」
 一定のペースで真琴の中を突いていくと、満足げな声が上がる。しかし同時に、その声は時間を追うごとに高く切羽詰まったものになっていった。祐一のモノを締め付ける力も強くなる。射精感も近づいてきた。
「真琴…俺も、そろそろ」
「う、うん…真琴も、もうダメだよぅ」
「もう少しだけガマンしろよ。もう少しだから」
「うん、頑張るっ…」
 真琴は床を両手の指でつかむようにして、身体を固くした。息を殺して、身体の動きも止める。
「…あぅ。…あぅぅ…あうぅぅ…」
「待て。もう少し」
「あうぅ…」
 じゅぷじゅぷっ!
 祐一が早くしようと思ってスピードを上げると、真琴の感じる快感も強くなってしまう。真琴は眉をしかめ、口元をぎゅっと引き締めて飛んでしまいそうな理性をつなぎ止めていた。
「よ、よし。いいな?真琴」
「う…あぅっ…はあああっ!?」
 ぎゅっ!
「あ、あっ、あっ…ああっ…あうーっ…」
 ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ。
 真琴は悲鳴のような声を上げながら、身体をビクビクと震わせていた。その痙攣に合わせて祐一のモノは強烈に締め付けられる。
「先にイッちゃったか…」
「あぅ…」
 目に涙をいっぱいにして、真琴がうめく。もういいという安心感で、一気にタガが外れてしまったのだ。
 …びゅっ、びゅっ、びゅっ!
「あ…」
 ようやく生まれた、熱い液体が奥を叩く感触。祐一は真琴のヒップに腰をぴったり押しつけて、絶頂感を味わっていた。
「…ふぅ」
「祐一…」
 真琴は後ろを向いて、少し申し訳なさそうな声になる。
「別にいいって」
「ご、ごめん…ガマンできないくらい気持ちよかったから…」
「だから、気にすんな…あ」
 射精を終えようとしていた祐一が、突然硬直する。
「…お、お前さ…今日って」
「…え?」
 未だぼうっとした声のまま、真琴は答える。
「だ、だめな方の日じゃねーか!?」
「え、え?あ…そうかも」
 きちんと交わる日をスケジュールに組み込んでいたために、その点をすっかり見落としてしまっていたのだ。
「ど、どうすんだっ…」
「どうしよう…」
 青くなる祐一、危機感の感じられない真琴。春の夜に、ぴろの鳴き声だけがずっと響いていた。


8/31
「…くぅっ!」
「大丈夫か?」
「へ…平気だと思うよ」
 詩子が顔をにこにこと笑みの形にする。
 それは滑稽でもあったが、目に涙が浮かべられてしまった以上無視するわけにもいかない。浩平はしばらく逡巡してから、シーツを掴みそうで掴んでいない詩子の手に自分の手を重ねた。
「な、なに?」
「お前、手震えてるだろ」
「か、感動してそうなるのかな」
「もう無理するなって。強がってても苦しいだけだろ」
「つ、強がりなんてしてないよっ」
 詩子はますます表情の笑みを強調してみせたが、それはほとんど張り付いた笑みのように見えた。何かあればすぐ崩れてしまいそうな、そういう不安定な表情である。
「だから、そうしてると俺がかえって気使わなきゃいけないんだって。痛いんだったら痛いって言えよ」
「い、痛くないし」
「いいんだって。俺を信用しろ」
 詩子の手の甲へ重ねた手に、力を入れる。力強く、それでも繊細になるように浩平は心がけた。
「折原君、別にあたし」
「いいから黙れ」
「だ、だって…」
「いいんだって。お前は口数が半分くらいになった方が可愛いんだよ」
「え゛」
 詩子がちょっとすねたような顔をしながら、ぼっと頬を赤くする。
「な、なにそれ、なんだかそれってっ…んっ」
 目を大きく開いて、硬直する。
『………』
 ごくわずかな沈黙の後、浩平は重ねた唇を離した。
「折原君…」
「そういや、してなかったと思ってな」
「不意打ちは反則だよ」
「知るか」
 浩平は詩子の頬を撫でながら、ゆっくりと身体を動かした。
「…つっ…あ…」
「そしたら、少しガマンしててくれるか」
「だ、だから大丈夫だって…」
「今はっきり痛がったろ。誤魔化さなくていいって」
「……」
 ず…ずっ。
 詩子はぷーと膨れて口を尖らせていたが、身体の方は固くしていた。どれだけ言おうと、浩平が動けば傷口がこすられているようなものなのだ。その中で無反応でいる事は、詩子であっても出来ないらしい。
「折原君は、気持ちいいの?」
 多少しおらしい声になって、聞く。
「ああ。すごい気持ちいい」
「ちょっとずるいよね」
「そういうもんだからな」
 ず、ず…
「はぁ…」
「どうした?」
「ううん、なんでもないよ」
 ず…
「…柚木、ほんとに後悔してないんだよな?」
 浩平が詩子のお腹を見ながら言う。
「してないよ」
「嘘は言わないでくれよ。嫌だっていうのなら、今すぐにでもやめるし俺は全然怒らない」
「違うよ…あたしは折原君にして欲しいって思ってるよ」
「…信じるぞ」
 ず、ず、ず…
 しばらくの間、二人は無言になった。浩平が詩子の中で動く、鈍い音と二人の乱れた呼吸音だけがする。
「…あのさ」
「…なに?」
 切り出したのは浩平だった。
「何度もしてれば、お前も気持ちよくなるようになるのかな」
「そういう風には言うよね」
「そうだな」
「なんか、それってあたしは実感ないけれど」
「…なんでだ」
「なんでだろうね」
 詩子はかすれた声で言いながら微笑んだ。
 ず、ず。
「お前って自分のペース崩れるの嫌がるからな。だからじゃないのか」
「そうかも…」
 浩平の顔の、10cmほど前方を見据えながら詩子はつぶやく。
「折原君、なんでそんなこと聞いたの?」
「いや、別に」
「ひょっとして、そろそろガマンできなくなりそう?」
「…なんでそうなるんだ」
「なんとなく」
 浩平は同じペースで腰を前後に動かしていった。
「………まぁ、そうかもしれない」
「思ってたより男の子ってだらしないんだね」
「うっさい。こういうもんなんだから仕方ないだろ」
「中、いいよ」
「え…えっ?」
「大丈夫だから。嘘言ってないよ」
「柚木…」
「いいよ」
 詩子はベッドの上に身を委ね、髪をさらっと上げながら言う。
 ず、ず。
「………」
「………」
 また二人は無言になった。互いを見つめながら、荒い呼吸で性交は続く。浩平は同じペースで腰を動かし続け、詩子はそれを受け止める。
「……っ」
 びゅ、びゅ…。
 とても静かに、詩子の中へ浩平は射精した。
「折原君のが出てる…」
「…ああ…」
 浩平は射精しながら身を倒して、詩子の上に重なった。
「熱いね…」
「お前の中も…熱い」
 それからさっきのようなゆるい口付けを交わし、浩平も詩子も目を閉じる。眠りにつくわけではない。ただ、何かから本能的に、無意識的に目をそらしたくなったという感覚だけは共有している。
 説明のつかない不安のようなものは、浩平の射精がいつの間にか終わっていてもわだかまって消える事はなかった。


8/28
「ん…」
 電気のスイッチを消そうとした祐一の手が止まる。
 もう夜も更けていた。外は当然真っ暗だし、家の中で電気が点いているのもこの台所だけだろう。祐一が夜中にトイレに行った後、喉の渇きを覚えて来たためである。そしてコップ一杯のミルクを飲み終わった今、祐一がここにいる理由もなくなっていた。
 パチ…
 電気を落とす。祐一の周りは暗闇に落ちた。が、台所に来るまでは闇の中にあった祐一の目は、すぐに電子レンジやヴィデオのわずかな明かりで歩ける程度の視界を確保していく。
「…なんだ?」
 祐一の耳に、ごくわずかな音が聞こえてきていた。静寂に満たされているからこそ気づいたような、非常に小さい音である。しかし、この真夜中に水瀬家で音がしてくるというのも不自然な話だった。名雪が寝ぼけているならもっと分かりやすい音がしそうなものだし、どたどたと階段を下りてくる音も聞こえてきそうなものだ。
 小さいながらもずっと続く音など、祐一には心当たりがない。音が小さすぎるために何の音なのかもまるで見当がつかなかった。
 どこかで蛇口が開きっぱなしになってるとかか…?
 しかし、祐一はトイレから帰ってきたのだから、風呂場や洗面所から音がしているならその時に気づきそうなものである。
「………」
 祐一は音のしてくる方に向かって、歩き始めた。正確に音源の方向がつかめるわけではないが、リビングに出ると玄関とは逆の方向から音がしてくる事だけは何とかつかめる。
 自然と忍び足になりながら、祐一は廊下に出た。開け放してあったドアも閉めず、廊下を歩いていく。
 さっき行ったトイレ、洗面所。洗面所は浴室につながっている。そして…
「起きてたのか…?」
 秋子の部屋。音源はここのようだ。
 普通に考えれば最初からそういう結論に達しても良かったような気はするのだが、どうも秋子がこの時間に起きているという実感が持てず、その可能性を除外してしまっていたのだ。夜11時には寝てしまって、朝の6時半には起きているのだから。
 その時間帯に秋子が部屋でどうしているのか、祐一は全く知らない。ただ寝ているぐらいにしか思っていなかった。そもそも祐一は秋子の部屋の中を見たことすらないのだ。
 祐一は、手をグーの形にして引き戸の前に持って行く。そして、軽く戸を叩こうとした。
「………」
 だが、その手が戸の直前でぴたっと止まってしまう。なぜだかは分からない。分からないが、祐一は手を開き、引き戸の取っ手に指を引っかけて、ほんのわずか横にずらしていた。
 ヴ…
 緊張しきった祐一の鼓膜に、鈍い振動音のようなものが響いてくる。さっきから祐一の感じていた音に違いない。戸を一枚開けただけなのに、その音はこれまでとは比べ物にならないほどはっきりと聞こえてきた。
 部屋は真っ暗ではない。蛍光灯についているオレンジ色のミニランプが点けられて、部屋を薄ぼんやりと照らしていた。
 秋子にかけようとした声が、喉の奥に沈み込んでいく。そして祐一はドアに掛けた指を少しずつ横にスライドさせ、自分が通れるくらいの隙間を作り上げてしまった。
 そこを通り抜けると、無意識のうちに息をひそめてしまう。身を小さくしながら、祐一は秋子の姿を探した。
 部屋は思っていたよりも広い。本棚や机や化粧台など、あまり祐一達の前では見せない姿を感じさせる家具がいくつか。そしてかなり大きめのベッドがひとつ。それを、入り口のすぐ横にあるタンスに隠れながら祐一は確認した。
 そのベッドの上には…人のシルエット。秋子に他ならない。当然だ。が…
 聞こえてくる振動音…妙にボディラインを感じさせるシルエット…それから、寝ているにしては不自然な体勢…
 思わず、祐一はタンスの陰からこっそりと一歩を踏み出してしまった。もっと近くに寄りたいという気持ちが抑え難く膨れ上がってしまったのだ。
「はっ…!」
 ビクっ!
 秋子の上げた鋭い声に、祐一は身を縮こまらせる。
「ゆ、祐一さんっ!?こ、これは…!」
「あ、秋子さん…」
 祐一は我に返って言った。
「あ、あのっ…」
 生まれて初めて聞く、秋子の取り乱した声だ。
「お、俺、外に出てますっ!」
 次の瞬間。祐一は自分でも驚くほどのスピードで身を翻(ひるがえ)し、部屋の外に飛び出していた。
「はぁ…」
 戸をぴしっと閉めて、祐一は大きく息をつく。
 色々な感情があったが、とにかく今は驚きが祐一を満たしていた。それも、突然名前を呼ばれたときに慌てたのが一番大きい。何も考えられないほど大きなショックだったのだ。
 しかし少しずつ落ち着いてくると、秋子がしていた事の意味がむらむらと祐一の中に沸き上がってくる。
「いいですよ…祐一さん」
 それを整理する前に、秋子が祐一を呼んだ。

「ご、ごめんなさい…俺、何かおかしな事が起こっているんじゃないかもしれないと思ってて」
「いいえ…」
 きちんとした夜間着に着替えた秋子が言う。
 だが顔の赤みは隠しきれていなかったし、どこか潤んだ感じの目もさっきの状態の継続を感じさせた。名雪が慌てた時の雰囲気に、ちょっと似ているかもしれない。親子の共通点はのほほんとした性格くらいなのかとも思っていたが、こんな所もやっぱり似ているのだ。しょっちゅう慌てている名雪と違って、秋子が落ち着いているだけの話である。
「え、えっと…秋子さんの部屋、結構広いんですね」
 秋子から視線をそらすように、祐一が部屋を見回す。
「元々は、二人でいた部屋ですから…」
「やっぱりそうなんですか?」
「ええ」
 つまり祐一の叔父だ。祐一が物心つく前に、この世を去っている。名雪はよく覚えているらしいが、祐一には記憶がない。祐一にとって、この家は名雪と秋子しかいなかったのだ。
「それで、その…」
 祐一は言葉をつなごうとして、詰まってしまう。一度詰まってしまうと、もうだめだった。取りつくろうとしても、どうしていいのか分からない。なぜ言葉に詰まってしまったのかは明白なのだ。
「え…ええ」
 しどろもどろになる祐一に対して、秋子がうなずいた。ここでうなずける辺りが秋子の度量の大きさなのかもしれないが、顔は真っ赤になってしまっている。
「そ…そうですか」
 祐一は頭をぽりぽりと掻きながら答える。そして秋子の事を見た。
 秋子はベッドに座っているので、必然的に祐一を見つめ返す視線は上目になる。下ろした髪と潤んだ目のせいで、元々若い容貌がますます年少のイメージになっていた。そこはかとない余裕をかもし出す雰囲気も失せてしまっている。
 ぐっ、と祐一が手をこぶしに握る。
 普段の秋子と祐一の関係からすれば、もう祐一は去るべきなのだ。何をしても一級の技術と心配りを持つ秋子、それを尊敬する祐一。それを考えれば、もうとっくに去って然るべきなのだ。
「…秋子さん」
「なんですか」
 しかし祐一は秋子の方に向かって歩み始めていた。
「横、いいですか?」
「え…ええ…」
 ベッドに腰掛けた秋子の横に祐一は座る。
 至近距離で見ると、秋子はさらに違って見えた。つややかな髪と、紅を帯びた滑らかな肌は20代と言っても通用しそうなくらいに綺麗である。何より瞳が美しかった。いつもは慈愛を感じさせる目が、場を変えるだけでこれほども女性的な魅力にあふれて見えるのは驚異としか言いようがない。
 それを数秒間見つめただけで、祐一の中で何かが動いてしまった。
「普段から…ですか?」
「えっ」
「普段から…」
「時々です…」
「週に、何回くらいですか?」
「祐一さん…」
 秋子の表情が苦しそうなものになる。
 今の祐一の質問は、尋問でしかない。ぎりぎり世間話の延長線で済んでいた会話が、そこから外れようとしているのだ。そうなれば、祐一と秋子の関係も変わらざるを得ない。
「…ごめん、秋子さん」
 それを感じとってか、祐一も謝った。
「いえ…」
「でも、秋子さん」
 祐一が、膝の上に乗せられてていた秋子の手の上に右手を重ねる。
「俺は、今の秋子さんが綺麗に見えてしょうがなくなっちゃってますよ」
「…祐一さん」
「叔父さんの代わりになりたいとかは思わないです。でも、いつもの秋子さんを見ている時には気づかなかったけど…俺、秋子さんが…ずっと好きだったのかもしれない」
「だめですよ…」
 秋子がするっと祐一の手から逃れる。
「だめじゃないですよ…」
 それを追って、秋子の手を祐一がしっかりと握りしめる。
「秋子さんは、俺のことが嫌いですか?」
「可愛い甥として…とても好きですよ」
「本当にそういう関係だけで好きなんですか?」
 祐一の事を、何か暗い感情が衝き動かし始めていた。何なのかは分からない。ただ、意識の奥、あるいは記憶の奥の中とでも言うような深層からの命令が今の祐一を支配していた。
「…だって、私と祐一さんは…」
「親子ってわけじゃない。姉弟でもないです」
「もうやめましょう…祐一さん、部屋に戻って寝ないと明日起きられませんよ?」
「やめませんよ」
「…あ!」
 祐一は強引に秋子の手を引っ張って、自分の股間に当てさせた。
「…いいですか?俺は本気です」
 そして秋子の手を離すと、自分の着ていたパジャマをトランクスごと脱いでしまう。
「祐一…さん…」
「あとは秋子さん次第です」
 祐一は下半身を剥き出しにしたまま、突然秋子の股間に手を伸ばした。
「…うっ…」
「脱いでください」
 ぐりぐりとそこを撫でてから、そう宣言する。
 そして祐一はベッドの上に乗ると、自分の身を横たえていった。天を仰いだ肉棒を隠しもせずに。
「きっと、後悔することになりますよ…」
「構いません」
 背中しか見えない秋子は、震えているようだった。

 足を広げた秋子が、肉棒を手で持って腰を落としてくる。
 鮮紅色の秘裂の内側が見えているのを隠しもせず、秋子はゆっくりと挿入口をペニスにあてがっていった。どこもかしこも、ぬらっとした半透明の液体に濡れて光っている。特に挿入口は今にも垂れてきそうなほど液体が豊富だった。
 ぬちゅっ。
 接触した瞬間、水音がして秋子が身を固くする。
「…祐一さん」
「してください、秋子さん」
 祐一が躊躇無く言うと、秋子は憂鬱さを帯びた顔を見せた。どれもこれも、秋子が普段見せたことのない顔だ。
 ぬぷるっ。
「…うっ…はぁ…はぁぁぁ…」
 そして秋子が腰をさらに落とし始める。液体のはぜる音と共に、祐一のペニスは秋子の中に飲み込まれていく。その入っていく部分の大きさに比例して秋子の脚も大きく開き、媚肉をあけすけに祐一の目に触れさせてしまっていた。
「はうっ…」
 最後にこつんと奥へ先端が当たり、秋子が小さくうめく。
「動いて下さいよ…」
 ぬぷっ…
「うんっ…」
 秋子が腰を持ち上げる。入れるときも抜くときも、祐一のペニスは秋子の中でうねうねと締め付けられた。もちろん、たっぷりとした熱い液体の感触もこれでもかと言うほど祐一の肉棒に絡みついてくる。
 ずんっ。
「はぁっ!」
 より強く速く腰を落とすと、秋子は自らもたらした衝撃に声を出した。そして荒くなった息を必死に整える。抽送が秋子に強烈な快感を与えているのは間違いない。
 ぬぷ、じゅぐっ。ぬぷ…じゅぐるっ!
「あっ、あっ、あぅっ」
 秋子が祐一の腹に手を当てて、リズミカルに腰を振り始めた。その度に秋子の中は柔らかく複雑に祐一のペニスを締め付け、未体験の快感を引き出してくる。秋子は顔をしかめていたが、性感を感じているのは確実だ。最初は探るようだった動きも、次第に秋子の中の特定の箇所をこするような動き方に変わってくる。
 それによって、熟し切った秋子のヴァギナは激烈な快感を生んだ。固くしこったクリトリスが祐一のペニスに触れる刺激と合わせて、秋子はどんどん乱れていく。
「秋子さん…気持ちいいっ」
「ゆ、ゆぅっ、祐一さんっ!祐一さんのがっ…奥に…」
 秋子は狂ったように腰を振り始めていた。恐らく、10年以上ぶりに男を感じたと言うことなのだろう。髪を振り乱しながら激しく奥に打ち付ける姿は、貪欲な女の姿でしかない。
「も、もう限界だっ…秋子さん!」
「私も…だめです…祐一さんっ…」
 性行為に未知な祐一と、既に十分すぎるほど高ぶっていた秋子の絶頂はちょうど合一を迎えようとしていた。
「一緒にっ…一緒に、秋子さんっ!」
 びゅぐっ、びゅく…びゅ…
 そして、祐一は激しいカタルシスを感じながら果てた。
「はっ…はぁっ…祐一さんのが中に出ていますよ…」
「秋子さんの中に…出てるんだ…」
「ええ…」
「俺…嬉しいです」
「祐一さん、昔はいい子だったのに…こんなに悪い子に育っちゃったんですね…」
「秋子さんが…」
「…私が?」
「…いや。なんでもないです」
 祐一は虚空を見据えながら言った。
「…祐一さん」
「はい」
「名雪に見つかったら大変です。後かたづけは私に任せて、部屋に帰ってください」
「わかりました…」
「おやすみなさい」
「ただ、俺は本気で秋子さんを愛してますよ」
「…祐一さん」
 ひくひくと痙攣し、繋がったまま、二人は話し続けた。


8/24
「えぇと…」
 にぎっ。
 ぎごちない手つきながら、意を決したように手がペニスをつかんでいた。
「………」
「………」
 そのまま名雪は自分の握っているものを見つめる。だが、ぽーっと赤くなった頬と困り切った目を見れば、それが何かを探るための観察ではないことはすぐに分かる。
「えっと」
 しばらくしてから、名雪は申し訳なさそうに顔を上げて上目に祐一を見た。
「どうしようか…」
「…俺に振られても困る」
「そ、そうだね」
 名雪は再度ペニスを握りなおして、またそれを見つめ始める。握っている幹の辺り、下にある袋の辺り、先端の膨らんでいる辺り。名雪の視線だけは忙しく動いていたが、名雪の身体は硬直して動いていなかった。もちろん手も動かない。
 時折、名雪がほんのわずかに唇を開く動作を見せていたが、すぐにまた口を閉じてしまっていた。
「名雪…」
「う、うんっ」
 返事だけはしっかりしていたが、やっている事はまるで変わらない。視線をあちこちに向けて、口を少しだけ開いたり閉じたりしているだけである。
 はだけたブラウスと白いショーツだけ、ブラジャーも取ってしまっている半裸の名雪が自分の前にひざまづいているのはなかなかエロティックな雰囲気を感じさせたが、さすがに祐一も焦れてくる。
「口、開けろ」
「え、えっと、口、口だよね…」
 名雪は一生懸命に口を開こうとする。だが、羞恥心なのか生理的嫌悪なのか、本人の意思に反して唇は開こうとしていなかった。喋るときは口が開くのに、大きく開口して維持しようとするとなぜか駄目なのだ。
「手離してくれ」
「え…」
 名雪は不思議そうに答えた。しかし理由は問わず、固く握りしめていた手をゆっくりと開く。
 それと同時に、祐一は腰を前にスライドさせていった。
「わ…」
 名雪は目を見開く。突然目の前にペニスが迫ってきたのだから、それも当然かもしれない。
 そのままだと目と目の間辺りに当たりそうだったが、祐一は腰を落としてペニスの位置を調整していった。その向ける先は、当然ひとつである。
「ん、んっ」
 唇の直前まで迫ってくると、思わず名雪は口を閉じてしまっていた。しゃべろうにも口が開かず、くぐもった声を漏らすだけである。そこに、祐一はペニスの先端をぴたりとあてがった。
「力を抜けば、大丈夫だ」
「ん、んん、んん」
 名雪は必死にうなずいて口を開けようとするが、どうにも上手くいかないようだった。段々名雪が目に涙を浮かべてくる。
「緊張したら上手くいかないって。別に無理矢理開けようとしなくてもいいから、とにかくリラックスしてくれりゃいい」
 祐一は片方の手を名雪に差し出した。横目でそれを見た名雪は、しっかりとその手をつかむ。つかんで、何かを確かめるように強く握る。
 それに加えて、祐一はもう片方の手で名雪の長い髪をそっと撫でてやる。
「………」
 しばらく経つと、名雪の唇からこわばりはほとんどなくなっていた。
 祐一は出来るだけ自然に、滑らかに腰を前に押し出す。
 くぷ…
「ほら…」
 抵抗はなかった。祐一のペニスの先端が、少しずつ名雪の口の中に吸い込まれていく。
 名雪が意識的に口を開いているわけではないので歯にペニスの表面が触っていたが、構わずペニスをかなりの深さまで押し込んだ。
「んむぅ…」
「どうだ?辛いか?」
 名雪は首を横に振った。動きにくい体勢のために少しだけしか首は動かなかったが、表情も落ち着いているし、目も「次はどうする?」といった感じで祐一のことをうかがっている。
 実際、名雪はほとんど不快感を感じていなかった。一度中に入ってしまうと匂いもあまり気にならないし、固くて太い圧迫はいつもの性交で感じていることである。
「そのまま、もう少し口開けて歯がぶつかっているのどけられるか?」
 くぽっ。
 言われると同時に、名雪の口はきちんと動いていた。
「あとは、舌を適当に動かせば…それでいい」
 にゅるっ。
「そ、そんな感じだな」
 名雪の舌が、ぬるんと祐一のペニスを押し上げるように動いた。
 にゅるぬる…にゅるっ、にゅるっ。
「うん…そう」
 ペニスの下に収まった形の舌が、ペニスをぽんぽんと跳ね上げるようにリズミカルに動く。と言っても柔らかくぬめった舌がするのだから、舌とペニスが触れ合う瞬間は何とも言えないほどに気持ちいい感触が生まれる。
 じゅるっ、ぬじゅっ…
 段々たまってくる唾液の滑りが、さらに快感を増していた。
「一回、腰を引くぞ」
 祐一は注意深く腰をスライドさせて、先端の辺りだけが名雪の口の中に残るようにした。カリ首がちょうど名雪の唇にはさまれている。
「そこで、思いっきり舌を使ってみてくれ…」
 …ぬちゅ。ぬちゅ。
 言い終わるとすぐに、名雪は舌で祐一の亀頭をぬめぬめと撫で始めた。同時に、唇をきゅうっとすぼめる動きも行う。それによって、カリ首が柔らかく、しかし強く刺激されていった。
「うっ…名雪…うまい」
 その言葉に後押しされるように、名雪は積極的に舌を動かし、唇でペニスを包み込んでいった。最初に口に入れる事が出来なかったのが嘘のような飲み込みの早さだ。
 じゅぶっ…ちゅっ、じゅぶっ…ちゅっ!
 名雪はいつの間にか、ペニスを深くくわえこんでからカリ首の所まで一気に引き戻す動きまで加えていた。思いっきり引っ張られるような刺激が敏感な所に加わり、痛いほどの快感が生まれる。いや、実際に少し痛いかも知れない。だが、それを上回る舌の丁寧な愛撫が、とろけるような快感をとめどもなく引き出して痛みをフェラチオのアクセントに仕立て上げてしまっているのだ。
 祐一も名雪も行為に酔っていた。もはやほとんど会話も交わさず、様々な攻撃の仕方を試す名雪のフェラに祐一がただ身を委ねているといった状況である。
 数分もしない内に、祐一は腰の奥へ爆発の予兆を抱え込んでいた。
「な、名雪…ストップ、ストップ」
 ちゅぽんっ!
「…ゆふいち?」
 そのまま果ててしまいそうになったが、理性を以て祐一は自ら腰を引いた。
「これじゃ、本番できなくなっちゃうからな」
「あ」
 名雪の顔に、久しぶりの恥じらいが戻ってきた。さっきは行為に夢中になりすぎていて、そんな感情はカケラも見えなかったのだ。
「でも、このまま入れたらすぐ終わっちゃうから…俺は少し休憩な」
 祐一はペニスをむき出しのままに、ベッドに上がる。
「名雪も来いよ?」
「え…うん」
 名雪は恐る恐る立ち上がった。ずっと同じ姿勢でいたために、身体の節々が痛くなっている。
 しかし、全身に回った興奮がそれをほぼ忘れさせていた。名雪は第三ボタンまで外されたブラウスで身を隠しながら、ベッドの上に向かう。
「ゆういち…」
 身体は自然に倒れて、祐一の前に無防備な姿を晒していた。いつもと同じ体勢だ。違うのは、唇が真っ赤に濡れて妖しく光っていること。性感帯を刺激された時とも異なる、独特な興奮が身を包んでいること。
「名雪」
 祐一は名雪の上に覆いかぶさって、指を名雪のショーツの上に当てた。そのまま名雪の秘裂をなぞる。
「うん…」
 名雪が身をよじらせる。シーツが乱れて、衣擦れのような音が立つ。その名雪を追いつめるように、祐一は割れ目をじっくりとショーツ越しにこすっていった。
「あ…あっ」
 熱っぽいあえぎの声。その声が高くなるごとに、シーツにどんどん皺が増えていく。
「っ!」
 じゅっ。
「…名雪」
「い、いやだよ…言っちゃあ…」
「いつもより、しまりないぞ」
「だ、だから言っちゃ駄目だよ」
 名雪は目を伏せながら言う。
 確かに、名雪のショーツの上に舟形のシミが出来るタイミングは、いつもよりも速まっていた。フェラチオが名雪に性的興奮、快感まで与えていた事は間違いない。
「名雪って、くわえるだけで濡れるんだな…」
「ち、違うよ…」
「そうかぁ?」
「うー…」
 名雪は恨めしそうに祐一を見たが、とろんと快感に溶けている瞳ではまるで怒っているように見えない。祐一が無造作にショーツを脱がしても、抵抗することすらしなかった。
「いくぞ?」
「うん、祐一、来て…」
 名雪が自ら脚を開き、迎え入れる体勢を作る。
 祐一はそこに、未だ名雪の唾液でべとべとになっているペニスを近づけていった。
 じゅぶ。
「…はぁっ!」
 挿入の瞬間、名雪が解放されたような声を出す。
 潤滑液は非常に豊富だった。唾液と愛液の両方が相まって、祐一のペニスをやすやすと名雪の最深部まで導く。
「んあぅっ」
 奥の奥に到達する瞬間、強烈なストロークを打ち込むと名雪がまた声を漏らした。
「お、奥まで入ってるね…」
「…ああ…感じるか?」
「うん…すっごい感じるよっ…」
 言葉と同時に、名雪の中がきつく締まった。
 偶然の産物か、自らの言葉がさらなる興奮を生んだのか。それは判断できなかったが、祐一にびりびりと来る快感がもたらされるのは間違いない。
「う…さすがにさっきのフェラはすごすぎたか…?」
「ゆ、祐一?すぐに出しちゃいやだよ」
「…安心しろ、お前もガマンできなくしてやるから」
「えぇっ…」
 祐一は名雪の秘裂を広げると、そこからピンク色の秘核をつまみ出す。
「だ、だめだよ…そ、そこは」
 指が動く度に、名雪は切なそうに腰をよじる。しかし祐一は気にせず、秘核を剥き出しの状態にしてピンピンと幾度かはじいた。
「う、うくっ…」
 それにより、名雪の秘核は小さいながらもかちりと勃起して、快感をむさぼるいやらしい器官となる。
「ほら、いくぞ」
「はああぁぁぁっ!」
 じゅぶ、じゅぶっ、じゅぶっ!
 祐一がペニスを鋭角に、激しく抽送する。
「は、はっ、ゆういちっ、すご、すごすぎるよぅっ…」
 それによって、祐一のペニスは挿入の度にぷっくりとした名雪の秘核をこするようになる。名雪はシーツをつかんで、もみくちゃにした。名雪に与えられる快感は倍増、いや数倍にもなっているのだ。
「ど、どうだ、名雪…これなら、もうすぐに駄目だろ?」
「うっ…ううっ、駄目…もう、ガマンできないよ…」
「よしっ、じゃあ絶対一緒にイクぞ、先にガマンしきれなくなるんじゃないぞっ!」
「祐一こそっ…先にイッたら絶対だめだよ…!」
「よし…!」
「あっ、はぅっ、くはぁっ!」
 名雪はあられもない声を上げながら、腰をくねくねと振った。祐一の突きに対応して、腰を祐一に向かって突き出す。その爆発するような激烈なストロークで、名雪は意識が飛ぶような快感を感じていた。秘核、膣壁、子宮口。その3点からの刺激を貪欲に飲み込み、名雪のヴァギナはぬめぬめと祐一のペニスを締め付けて離さない。
「いいかっ…名雪!」
 祐一がぐいっと名雪の乳房をつかんだ。そしてとどめとばかりに荒々しく揉みしだく。
「う、うんっ!はぁっ、祐一!ゆういちいっ!」
「名雪っ…」
 どくんっ!
 ビクッ!!
 脈動と痙攣が合一した。
「はぁっ、はぁ…ああ…」
「んあっ…ふぅ…ふぁ…」
 大量に注ぎ込まれた精液を、ひくひく震える名雪のヴァギナが全部飲み込んでいった。二人は放心状態で、密着した互いの肌と性器の重なり合いを感じる。
「祐一のが…私の中に…いっぱい」
「名雪の中、すごいあったかくてぬるぬるして気持ちいいぞ」
「好きだよ…祐一?」
「ああ…」
「もう一度、お誕生日、おめでとう」
「さんきゅ…プレゼントも、最高だったよな」
「だって、祐一だったらこういうのが一番だと思ったんだよ」
「名雪の誕生日も、俺がしてやろうか?」
「だめだよ…だって、それじゃいつものゆういちと同じだもん」
「…そりゃそうか」


8/17
 ふにふに。
 乳房が表面だけわずかに変形する。非常に迷いの多い指の動きだった。
「これで…いいのか?」
「さぁ、どうかしら?」
「ちょ、ちょっとくらいは何か言ってくれても…」
「非常に問題が多い、とだけ言っておくわ」
「う…」
 予想通りの答えが返ってきた。椅子に座ったままの香里は、余裕たっぷりの顔で北川の事を見つめる。椅子の横からおずおずと香里の身体に手を伸ばしている北川は、あまりに頼りなさげだった。
 香里はまだダークパープルのショーツと濃紺の靴下だけは履いていたから、何も着ていない北川がより貧相に見えるのかもしれない。勃起したペニスを椅子の後ろに隠そうとしている姿は確かに堂々としているとは言い難いだろう。
 だが、それ以上に問題なのは両者の心理状態にあるのは間違いない。誰の目にも北川が行為に不安を抱いており、香里は抱いていない事が明らかだった。
「そ、それじゃあ」
 北川が指先にぐっと力を入れようとする。
 …の瞬間、香里がにこりとした笑みを唇の端だけで浮かべた。
 へなっ。
 途端に力を失った指先は、また香里の乳房の表面だけをわずかに触るだけにとどまる。相手が余裕をなくしているか、自分の愛撫を無条件で受け入れてくれるような状況ならそれも繊細な愛撫の1パターンになり得ただろう。しかし今の香里がなぜるだけの愛撫で変化するわけもない。思い切り目下を相手に将棋か碁でもしているような、それもいたぶるように指しているような、そんな状態なのだ。
 じょ…
 状況を変化させるには、もっと積極的に動くしかない。これじゃ起死回生の逆転なんてあるわけない。
 麻雀で一発逆転した時の教訓を胸の中で繰り返す。あの時は倍満直撃だった。
「…あら」
「!」
 桜色をした先端に触れようとした瞬間、香里が突然声を出す。北川は反射的を手を引っ込めてしまった。
「風が出てきたみたい」
 がくっ。
 窓の向こうの闇で、木々の葉がざわめいているのが確かに見えた。だが部屋の中に音も聞こえてこないし、第一窓の方向は香里の視界の中でもっともどうでもよさそうな所だった。
「どうしたの?」
「なんでもないです…」
 内心涙を流しながらも、北川は気を取り直して香里の敏感だと思われる箇所に指を引っかけようとしていった。
「…あら」
「!」
 また手が引っ込む。
「あのビル、4階の灯りが今ので全部消えちゃったわ」
「………」
 そういう反応が返ってくるのは予期できても、香里の声にいちいち戦(おのの)かずにはいられない自分の習性。北川の内心では滂沱(ぼうだ)の涙が流れ始めていた。
 ビルの灯りが本当に消えているのかどうかなど確かめずに、今度こそ香里の乳首に指を這わせようとする。
「…あら」
 指は止めない。そのまま、柔らかく乳首をなで回してみた。
「北川君、意外と小さいのね」
 がくぅっ…
 無視しようと決め込んでいた台詞のダメージが大きすぎた。北川はがっくりと床に座り込む。
「うううぅ…」
「…意外と繊細なのね」
「ううぅ…」
「…冗談よ。身長の話」
「…うぅ」
 北川はそれを聞いて、なんとか顔を上げることができた。
「…ほんとうにか?」
「本当よ。本当に本当」
 香里がぱたぱたと手を振る。普段の香里とは違う言葉と仕草の雰囲気はとても演技臭かったし、そもそも北川と香里の身長差などもうとっくの昔に把握されている事なのだが、それに頼りでもしなくては北川は立ち直れそうになかった。
「…ぐすん」
 涙を拭く振りをしながら、北川が立つ。
「よしよし」
「………」
 さすがにそれは言い過ぎだったのか、北川の表情が少々落ち込む。
「い、いいわよ、もうしばらくは何も言わないから」
 こくん。
 北川はうなずいて、またさっきと同じ位置に戻った。心なしか、ペニスを隠す姿勢が露骨になったような気もする。
 くにっ、くにっ。
 さっき始めようとしていた行為をそのまま北川は再開した。乳首を指先で柔らかく捉え、微少な円を描くように刺激する。まずは左の胸だった。
 香里は何の反応もしない。香里自身の言った事を守っているということになるが、それはやはり北川にとって不安だった。性急すぎるのはわかるが、何か反応が欲しい。身体の直接的な変化でも、香里の心理の動きが分かる変化でもいい。
 くに、くに…
 あまりの時間の長さにペニスがしぼんでしまいそうな気がしてきた頃、ようやく香里の乳首がちょっとずつ粟(あわ)立ち始めた。始まるとそれは意外なほど素直に進行し、香里のそこは充血して薔薇色に深まった突起となっていく。
 指先で撫でる感触が前と明らかに変わった事に、北川は素直な喜びを感じた。よく見ると刺激していない右の胸も少しだけ勃起を始めている。これが香里の身体全体に生まれた変化なのは間違いないようだった。
「はい、ご苦労様」
 不意に香里が椅子から立ち上がる。北川はあまりに香里の裸身に集中していたため、突然の香里の動きにバランスを崩してしまったほどだった。
「今度は北川君が座るのよ」
「え?俺が…?」
 次に香里がどのような行動に出るか待とうとした矢先に、香里がそう告げた。
「………」
 多少釈然としないものを覚えつつも、北川は椅子の正面に回り込んで腰掛ける。ペニスを思い切り露出させているのは少々気恥ずかしかったが、今更隠すわけにもいかなかった。椅子に深々と腰掛け、身体全体を突っ張らせるようにして香里の事を見上げる。
 北川を見下ろす香里は、妖艶なほどに色気を振りまいていた。
 きめ細かな肌と綺麗なボディ・ラインは、ショーツと靴下だけが身につけられる事によって一定の秩序性を放っている。そこになかなかのボリュームの乳房がぽろりと露わになり、ロングのウェービィヘアが包み込むように裸身に巻き付いている。そして決して低くない背の丈(たけ)と余裕に満ちあふれた表情。まだ二十にも満ちていない少女とはとても思えなかった。シャワーを浴びてノーメイクになっているとは思えないほどだ。
「さて…」
 香里の放った一言で、北川の思考回路を次に至る行為の想像というジョブが走り抜ける。
 妄想のオンパレードとしか言いようのない出力結果を適当に破棄して―――それらは破棄するのが惜しいほどに興奮する妄想だったが、実現しそうにないのではどうしようもない―――、結局導かれたのはひとつの、ある意味ではありふれた想像だった。
 それでも、バージンの女の子の方から積極的にしてもらうなどという経験を出来るという幸運に、北川は背筋がくすぐったくなるような気がしてくる。
 自分で組み敷いて、破瓜の痛みに切ない声を上げたり取り乱したり、しがみついて頼りとなるものを求めてくる香里を見たいという願望もあった。だが、香里が表情の変化を見られないようにと平然としたふりをしながら自分の体重で北川に処女を捧げていくというのも、良い。いやとても良い。
「美坂…」
 期待感に満たされながら、北川は香里の名を呼んだ。
「よいしょ…」
「っと」
 香里はそのままの姿勢で椅子に乗ってきた。北川を踏まない位置に足を置いている。思い切りショーツをアップで見せられて、香里の身体の真下にあるペニスはびんびんと勢いを強くする。
 そのまま香里は少ない足場を使って、身体を反転させた。今度はショーツに包まれた、むっちりとした香里のヒップが目に入ってくる事になる。こぼれ落ちるような淫靡さに北川のペニスはさらに膨れ上がったが、次の瞬間香里は腰をかがめていた。
「…え?」
 そして、すとんと香里の身体が北川の身体の上に着地する。香里は北川とほとんど同じ姿勢で、北川の上に座っている事になる。割とゆっくり座ったためにペニスが変な押しつぶされ方をする事はなかったが、香里の股の下をくぐりぬけ、クレヴァスに沿ってペニスが上に飛び出たような形になってしまった。
「こ、これじゃ…」
 ペニスがショーツの生地に擦られる感触もなかなかだったし、香里の性器と生地一枚を隔てて密着しているというのも悪くなかった。何より、北川のペニスは今香里の視界の中に思い切り現れている。ペニスはこの上ないほどの勃起を見せていた。
 しかしこれでは香里の中に入れる事など出来ない。ショーツを脱いですらいないのだ。
 すりすり…
「えぅっ!?」
 素っ頓狂な声を出してしまった。
「こ、これ…」
「北川君も動かしなさい」
「こ、これで最後までやれと?」
「もちろんよ」
 本当に当たり前と言った感じの声だった。香里は北川のペニスをこするように腰をグラインドさせながら、そう言ったのだ。
「そんな…そんなのって」
 北川は本気で泣きそうになっていた。小遣いとバイト代を叩き込んだのがこんな結末で終わるとは…
 すりすりすりすり…
 それでも、香里の動きに合わせて腰を動かし始めてしまうのが男の悲しい性である。乾いたショーツで擦られ続けているのは快感だけでなく摩擦感の痛みもあったが、もはや北川はそんな贅沢を言っていられなかった。
「あ、言っておくけど。この体勢で出したら本気で怒るわよ」
「うぇ?じゃぁ、どうやっってっ…」
 身体を動かしながらのために、変な声になる。とはいえそれを気にしているわけにもいかなかった。香里は聞き捨てならない事を言ったのだ。
「出しそうになったら言いなさい。もし出したら、来月の北川君のお小遣いは0円になるものと思いなさいよ」
「…うぅ」
「わかったわね?」
「……はい」
 抵抗が身のためにならない事はわかっていた。香里の日記をほんの1ページのぞいたのがバレただけで、実際にそれを食らった事があるのだ。来る日も来る日も百花屋でおごり。あの月北川は同情の嵐を買ったものである。
 でも、誰にも金はもらえなかったが。
「………」
「………」
 すりすりすりすりっ!
 北川はほとんどヤケになって身体を動かしていた。性感があまり強くないために、達するためにはそうしなくてはならないのだ。そのぶん、当然痛い。香里はマイペースに身体を動かしている。
 それにしても…
 北川は嘆いた。まさか初体験で、自分の痛みを緩和するために早く終わらせようとしなくてはならないとは…
 いや、これって初体験って言えるのか?
 たぶん、北川はまだ童貞を捨てていないと言えるだろう。と言っても、男にとってそれは慰めどころか屈辱でしかなかった。
 すりすりっ!すりっ!
 やりようのない想いをぶつけるような行為。そして痛い。まるで苦行だった。
 それでも、ようやく北川は射精感が近づいてくるのを感じ始める。既に北川は体力を使い果たしていて、ペニスの表面はひどく痛んでいた。見るも無惨である。
「で、でそう…」
「そう」
 北川が言うと、香里はひょい、となんのためらいもなく腰を浮かした。肘掛けに手をついたのだ。そのままとんっ、とジャンプするように床に飛び降りる。
「ぜはぁっ…」
 荒い息をつきながら、北川は考えた。疲れ切ってはいたが、このあとどうなるかが気になって仕方ないのだ。
 最低のシナリオなら…トイレで、自分でしてくるとか…
 しゅっ、かしゅっ、しゅっ、しゅっ。
 その時、ティッシュを連続で箱から取り出す音が聞こえてくる。北川は反射的に、それを自慰で処理しなくてはならないという合図だと思いこんでしまった。
 と・ほ・ほ…
 ため息をつくのに、北川はたっぷり3秒かけた。
 ととと…
 香里が手に重ねたティッシュを持って、こちらの方に戻ってくる。北川はうなだれてそれを待った。
 …いや、んなこたないか…
 トイレにティッシュは流せないという当たり前の事実を北川は思い出す。
 そして香里は北川の座っている椅子の前にくると、床に脚をつけた。ちょうどペニスの前に顔が来る体勢である。
 くいくいっ…
「あっ…」
 突然、ひんやりとした感触が北川のペニスを襲った。
 香里がすらっとしたその指でそこを握り、しごき始めたのだ。あまりに突然の行為、純粋に気持ちいい行為に北川は何も考えられなくなる。もう限界まで高まっていた北川は、すぐ射精まで追いやられてしまった。
「み、美坂ぁっ…」
 ばさっ!
 香里がおもむろに北川のペニスにティッシュをかぶせる。
 ビクビクビクっ…
 北川は思う存分、その中にぶちまけた。
「はぁ…」
 思わず声を漏らし、背もたれに完全に身を預ける。恋人の手で導かれる射精がこれほど気持ちいいとは北川は夢にも思っていなかったのだ。途中経過がどうだったなんて、小さな事のような気がした。
「美坂…ありがとう」
「気持ちよかったでしょ?」
「…すごく」
「素直ね…」
 ティッシュを北川のペニスの上にかぶせたまま、面白そうな表情で香里は北川の顔を見上げていた。

 同じ頃。
「しかし、あの二人も仲良いよな」
 ずずっ。
「そうだね」
 ずずー…
「ああいう風でも仲がいい状態って出来ちゃうんですね」
 ずっ。
 ふぅー…
 三者三様にしゃべり、茶をすすり、安心しきった息を吐いた。
「でも祐一にも北川君にもいい相手ができて、私は安心だよ」
「本人がいる前で言うなよな…」
「私は嬉しいですよ」
「栞も言うなよ」
「…そういうの見せられている私も、ちょっと文句言いたい気分だけど」
「あー…あ、まあそうだな」
 祐一が言って、栞がコホンと小さな咳払いをした。
「お姉ちゃん達って、あんまりそういうの人に見せませんよね」
「どーだか。意外と二人っきりの時はアツアツだったりして…」
「祐一さん、時々古い表現使いますよね」
「そうだね」
「別にいいじゃんか」
「祐一と栞ちゃんには似合いすぎている表現だけどね」
「だから、当てつけた事言うなって…」
「もちろん冗談だよ」
 ずずっ。
「そろそろおいとましましょうか」
 ずずず…
「だな」
 ごくん。
「祐一がそーゆう風に言うのは変だよ、ここが祐一の家なんだから」
「だけど、今から出るわけだしなぁ」
 外はもう完全に暗くなっていた。
「そうですよね」
「最近、ちょっと多いよ…」
「んー、まぁ行ってくるわ」
「はい。お邪魔しました」
「…うん」
 そう言い残して、二人はそそくさと名雪の部屋を出ていってしまった。
「………寝ようかな…」


8/8
 車が窓の外をひっきりなしに過ぎていく音がする…
 ちゅっ。
「ふぁ…」
 その中で、瑠璃子さんの小さな声が僕の耳にはっきりと通っていく。
 生まれたときから聞いてきた、朝から晩までひっきりなしの都会的なノイズ…小学生の時くらいは当たり前の事みたいで全然気にならなかった。高校に入ったくらいから、自分を取り巻いているくだらない事物の象徴みたいに思えて仕方が無かった。
 でも、そこに瑠璃子さんとのコントラストが生まれると、なんだか可笑しいくらいのBGMになってくれる。
 ちゅっ、れろ…
「あ…あぁ…長瀬ちゃん…」
 僕が桜色の部分に舌を這わせる度に、瑠璃子さんは可愛い声を漏らしてくれる。演技ではあり得ない。瑠璃子さんなんだから。そういう、不思議すぎる純粋さを手に入れてトラックやバイクの群れに見せつけている、露出狂のように。
 壁一枚を隔てた世界に対しての、余裕を持った含み笑いみたいなものだ。
 ふにゅっ…ふにゅ
 逆側の白い乳房を優しく揉んでいくと、瑠璃子さんの息が少し上がったのがすぐに分かる。にじり寄っていくようなじわじわとした揉み方を続けていくと、瑠璃子さんは顔を左右にふるふると振る。
 さらっ、さらっと髪の毛がワンテンポ遅れて揺れるのが、いつもの瑠璃子さんとセックスの時の瑠璃子さんの境界線に見えた。綺麗な髪の毛はいつも通りのピュアな瑠璃子さんを感じさせるが、少し涙目で頬をぽうっと赤くした様子は性的なものを感じさせずにはいられない瑠璃子さんだ。
 どっちも、大好きだけれど…
「長瀬ちゃん…?」
 僕は何となく瑠璃子さんの腰に腕を巻き付けるようにして、低い体勢で抱きしめていた。顔はちょうどお腹の上だし、瑠璃子さんの性感帯を刺激する行為ではない。
 でも、ぎゅっと強めに抱きしめてみると、瑠璃子さんは吐息を漏らした。もう一度抱きしめてみると、やっぱり息を漏らす。おへその下を舐めてみると、瑠璃子さんは高くかすれた声を出す。
 愛情をストレートにぶつけているみたいな行為で、それでも感情は高ぶっていくのだ。僕と瑠璃子さんの間では。時折それを確認できて、僕は嬉しくなる。
 だからといって、ずっとこうしているのも不満でしょうがない。
「…あ」
 僕が回した腕をゆるめて、自分の胸と瑠璃子さんの下腹部の間に指を入れると瑠璃子さんが予感した声を上げた。
 もちろん、僕はそのまま指を真下に滑らせて、瑠璃子さんの性器に到達する。既に熱くなっているのが、数センチ離れたところからも分かった。
「…っ」
 性器の開いている部分の一番上から指を侵入させていく。すぐに指は、カチカチに固くなってしまっている瑠璃子さんのクリトリスを探り当てた。瑠璃子さんが必死に声を押し殺しているのが分かる。
 意地悪くそこだけを集中していじめると、瑠璃子さんは間もなく膣孔の部分から透明な液をにじませ始めた。
 ちゅぷ。
 僕はそこから潤滑の液を取って、クリトリスにたっぷりと塗りたくる。そしてぬるぬるとしてしまったそこを、指の腹で滑るように上下左右に転がす。
「な、長瀬ちゃんっ…」
 瑠璃子さんは口元に手を当てて、身を小さくしながら僕の行為を感じていた。ところが、その恥じらいの様子とは裏腹に、瑠璃子さんの潤滑液は量をどんどん増して、シーツに大きなシミを作っていく。
 このまま瑠璃子さんが感じている姿を見ていたいとも思ったが、そろそろ僕の方も気持ちよくなりたいという欲望が限界に達してきていた。
「……はぁ」
 僕が指を抜くと、瑠璃子さんは安心した声を上げる。そして、やや不安そうな目で僕の事を見ていた。
「いくよ?」
 手を瑠璃子さんの肩に当てて、ゆっくりと押していく。瑠璃子さんは抵抗せず、ベッドに身を横たえていった。そうしながら瑠璃子さんの身体に覆いかぶさる体勢に移動していく。瑠璃子さんが枕に頭を乗せるのと同時に、屹立したペニスが瑠璃子さんの入り口に密着していた。
 瑠璃子さんの割れ目を開いて、ペニスを膣孔に導く。開いた拍子に、いじっていた時は陰になっていたクリトリスが綺麗なピンク色なのがよく見えた。改めて、瑠璃子さんが激しく興奮している事を確認する。
 …ぬちゅり
「ん…」
 力を加えていくと、瑠璃子さんの性器はスムーズに僕のペニスを受け入れていった。熱いぬめりを帯びた粘膜に優しくくるまれていく感覚は、何度経験してもこの上なく気持ちいい。
 やがてコツン、と一番奥に当たる感覚があった。
 つん、つん…と、確かめるように何度か軽く瑠璃子さんの奥を叩く。
「う…ん…」
 ぬちゅ……ちゅくっ…
 ぬちゅ…ちゅくっ
 瑠璃子さんの艶めかしい声が聞こえてくると、僕は本格的な抽送を開始した。4,5回の内に段々スピードを上げ、やがて激しいセックスの運動に移行する。
「あ…ああ…長瀬ちゃんの…」
「瑠璃子さんの中、どろどろだね…」
「うぅっ…」
 ちょっぴり意地悪な表現をすると、瑠璃子さんは悲しそうな目をする。こういうストレートな感情表現は、単純にセックスの悦びを増してくれた。でも、あんまり多くは言わない。言ってはいけない気がするのだ。
「あ…あっ…あっ…あっ」
 瑠璃子さんがすぐに切羽詰まった声になっていく。両手を完全に投げ出して、腰を少し浮かせながら僕の抽送を感じている。
 僕はさらに指でクリトリスを愛撫した。
「だ、だめ…長瀬ちゃん」
 それによって瑠璃子さんは瞬時に臨界まで高まってしまう。
「僕も…でそう」
「は、はぁっ、はぁぁっ…だ、だめ…」
 僕は瑠璃子さんのクリトリスを刺激しながら、とどめの抽送をした。尿道を何かが通り抜けていく。
 …びゅくんっ!びゅくびゅくっ…びゅくんっ!びゅっ、びゅっ!
 ビクビクビク…
 僕と瑠璃子さんの絶頂は、完全に合一した。瑠璃子さんの中に精液を放出し始めた瞬間、瑠璃子さんが全身をわななかせて、ペニスを搾り取るように強く締め付けてくる。
 びゅ、びゅ…
 僕は瑠璃子さんの中を心ゆくまで感じながら、一滴残らず瑠璃子さんの奥の奥に出した。至福の満足感を感じる。
「気持ち、よかったよ…」
「長瀬ちゃん…」
 目に涙をいっぱいにしたまま、瑠璃子さんはかすれた声で僕に呼びかけた。
「……ん」
 中に入ったまま、僕は瑠璃子さんに近づいて小さなキスをする。
 瑠璃子さんが恐ろしく敏感なのに気が付いたのは、抱き合うようになってすぐだった。最初はそれが当然なのかと思っていたが、やはりどう考えても感じすぎているように思えて仕方がなかったのだ。
 たぶん、電波の影響なのかもしれない…
 それがどこから来ているのかは分からなかった。瑠璃子さん自身かもしれないし、僕かも知れない。月島さんの電波が何らかの形で影響したのかも知れない。
 だけど、それは学校からすぐに帰ってきて、共働きの両親が帰ってくるまでにセックスを終了するという僕たちの状態にひどくぴったりな事だった。
 そういうのを、楽しんでしまってもいいんじゃないか?
 瑠璃子さんには聞いた事がないけれど、そう思っていた。


7/30
「どうだ?声、聞こえるか?」
「き、聞こえるけど…なんか、変やわ」
「どんな風に?」
「な、なんか、自分の声が頭の中に響いてしもーて…藤田君の声がめっちゃ遠く聞こえる…」
 智子の耳には、良く見るとオレンジ色をした耳栓がつめてある。オレンジ色の、ポリエステルで出来た簡単な耳栓だ。
 それに加えて、目にはブルーのアイマスクである。それらは安眠用のふたつの道具に過ぎないが、使う場が選ばれると独特の意味を持ってくるのは間違いない。
「こうすると…いつもと違うか?」
 浩之は智子の乳房に手を当てて、じわじわと迫るように揉み始める。
「あっ…」
「いいか?」
「なんか…声遠いから、藤田君の手まで遠くに感じるんやけど…」
「だけど?」
「そ、そのせいで、緊張して…すごい、『来る』わ…」
 智子は自分の額に片手を添えながら言った。
「じゃあ、こうすると?」
 浩之は次第にスピードを速めて、乳房を大きく変形させながらの愛撫に切り替える。敏感な突起が刺激されるのも気にしない。
「ひっ…でも、やっぱりなんか…自分の身体まで遠くに感じてしもうて…」
「感じるんだな?」
「い…言わんといて」
 段々と息を荒くしていきながら、智子は答えた。
 浩之は途中で右手を胸の愛撫から離脱させ、肌にぴったりと当てた状態で智子の身体を下に降りていく。
「うぅ…」
 滑らかな肌に強く当てられた手の平の感触だけで、智子の中の何かが高まっていく。強い圧迫感と、閉ざされた視覚と不自然な聴覚。そのアンバランスが絶妙な焦らしとなって、智子を煽る。
 意識してか無意識にか、そうやって智子をたっぷりと待たせながら浩之の手が智子の秘部にまで到達する。
「よっ、と…」
 浩之が割れ目を開いた。
 視覚と聴覚が不自由な中で、秘部を晒しているという感覚すらも奇妙に遠く感じられる。だからこそその事実が客観的に智子を襲って、恥情を激しくかき立てる。
「蛍光灯つけっぱなしだしな…すげーよく見えるぜ」
「や…藤田君っ…」
「ヒダヒダも、クリも…」
「いやぁ…いややっ」
 言葉の責めと、未だ続けられている胸への責め…
「あ…あっ、ああっ!」
 ぷぢゅるっ…
「わっ…」
「いっ…いややぁぁ…」
 委員長は身を震わせながら、アイマスクの裏で涙を流す。
「いつもよりも…絶対敏感だよな」
 浩之はあふれてきた液体を確かめるように指で撫でながら言う。
「やっぱ委員長ってそういう気があるんじゃねーか?」
「う、嘘やっ…」
「だって…ほら」
 浩之が指でヴァギナの周辺を繰るだけで、透明な液体の量はますます増えてくる。智子は必死に我慢しようとしていたが、それは完全に逆効果だったようだ。
「どんどんあふれてくる…」
 胸への愛撫も止めて、秘部に両の手を集中させる。
「わ、私…こんな…」
 智子が何事か言おうとした瞬間、浩之の動きが止んだ。
「藤田くん…?」
 ぬちゅっ…
「えっ!?」
 ずりゅっ!
「わっ…ふ、藤田くんっ!」
 腰がつかまれたかと思うと、次の瞬間には挿入されていた。愛撫の手が止まってから、ほんの数秒の出来事である。恐らく、浩之は智子の知らないうちに体勢を整えて準備していたに違いない。
 アイマスクがあったからこそ気づかなかったわけだが、心の準備が出来ていない状態での挿入は確かに特別なものを与えてくる。
「あーっ…あっ、あっ」
 次々に送り込まれてくる力強いストロークに、委員長は言葉をなくす。その突かれる時の衝撃の音が、耳栓のせいで強調されて聞こえた。身体が動いてシーツがこすれる音も、はっきりと聞こえてくる。
「委員長…感じてる」
「うぁ…こ、こんなのおかしいわ…身体が…ふわふわして…」
 智子の性感は、普段はもっぱらクリトリスによるものである。だが、今回はほとんどそこを刺激されていないにも拘わらず、性感をしっかりと感じているのがわかった。愛液の量も豊富で、ひょっとするといつもより多いくらいかもしれない。
 その水音はあまり智子の耳には入ってこなかったが、身体感覚から想像しただけで、どれほどいやらしい音を奏でているのか不安になってくる。それがまた智子の性感をかき立てて仕方がない。
「俺も…委員長の中、いつもよりもいい気がする」
「藤田君…」
 身体の高まりを感じながら智子はつぶやいた。
 その高まりは、ゆるやかなものではあったが、いつまで経っても鎮まる様子がない。普段の即時的な快感とは違って、身体全体に蓄積されていくような感覚だった。このままどこかに行ってしまいそうな感覚とも言える。
 無論、その不安感はアイマスクと耳栓が増幅させたものなのは間違いない。
「そ…そろそろだな」
 数分間その状態が続いて、浩之が言葉を発した。
 智子は何も言えない。かなり苦しそうに呼吸をしながら、浩之の抽送に身を任せているだけだ。全身がかあっと熱くなって、思考もほとんど出来ない状態になってきている。恐ろしさを感じるほどだった。
 ぐちゅぐちゅっ…
 浩之が最後のスパートをかける。智子も、何か境界を越えてしまいそうな感覚の高まりを感じてくる。
「委員長っ…」
 びゅっ…
 智子の深くに突き刺さったペニスから、熱いものが放たれた。
 びゅ…、びゅ…
 身体の底の底に、灼熱の液体がぶつかる感覚がある。智子は真っ白になった意識のなかで、それだけを感じていた。
「ふぅ…委員長、どうだった?」
 智子は返答できなかった。身体も意識も、自分のコントロールを離れている感じだった。
 ヘンタイ…なんかな、やっぱ、私…
 薄い意識の中で、智子はその事だけしか考えることができなかった。


7/25
(このシチュを、某栞萌えのお方に捧げます。批判禁止(を)
 こんこん。
「はい」
「…栞?」
「いいですよ」
 かちゃり。
 静かな音を立てて、僕はノブを回した。
 そうするつもりは無くても、栞の部屋に入るときにはドアノブの音が静かに響く気がする。それも、静謐な空間に合わせて音が自ら滑らかさを演出しているような、そんなイメージだ。
「…どうしたんですか?」
「え?」
 突然疑問を投げかけてくる栞に、僕は少し戸惑う。いつもなら、入ってくる時に理由を聞くことなどしないのに…
「お兄ちゃん、なんだか難しそうな顔をしています」
「あ、いや…なんでもないよ」
「そうですか?」
「うん」
 内心苦笑いをしてしまったが、嫌な心地ではなかった。栞の部屋に入ろうという時に心を少しファンタジックに高鳴らせてしまうのも、けして悪い癖ではないだろう。僕にとっても、栞にとっても。
「調子は?」
「いつもと同じですけれど…お兄ちゃんが来てくれたら、少しよくなったみたいです」
「栞…そこまで合わせてくれなくてもいいよ」
「…でも、嘘じゃないです」
「嬉しいけどさ」
 そう言って、僕は栞の寝ているベッドにゆっくりと歩み寄っていった。自分の部屋の隣にある部屋なのに、どこか他人めいた、女の子の感性がゆき届いているような部屋。基調になっているのは抑え気味のトーンのライトブラウン。栞に一番似合う色だ。
 ころん、と栞が僕の方に身体を向ける。
「お兄ちゃん…」
「なに?」
「ただ、言ってみただけです」
「…そう」
 滑稽な会話だったかも知れないが、小さな笑みを浮かべながらそう言う栞の姿は僕に何よりの安心感と、高揚感…そういうと、少し語弊があるが…を与えてくれる。
「栞」
「なんですか?」
「ただ…」
「言ってみただけ、ですね」
「そうだよ」
 そう言いながら、僕は栞のベッドの横で立ち止まった。栞を上から見下ろす形になる。栞はそれに合わせて、少し身体の向きを天井の方に戻した。布団がごそごそという音を立てて、栞の前髪が少しだけ乱れる。
「お兄ちゃん」
 そう言いながら、栞は前髪をゆるくかき上げた。どこか憂鬱を感じさせる仕草だったが、僕は出来るだけ自然な微笑みを浮かべるように努力しながらそれを見つめる。
「寂しかった?」
「…はい」
 同じ家に住んでいても、基本的に部屋で寝たままでいる栞と、普通の兄妹のように気軽に会うこともない。アルバイトや趣味の忙しさもそれに拍車を掛けているかもしれない。だから、会う度に栞にそういう事を問いかける事になる。
 その忙しさに後ろめたさはあったが、栞と会う一度(ひとたび)の意味をしっかりと噛みしめるためにはかえってプラスになっているのかもしれない。それが、僕と栞の暗黙の了解だと、少なくとも僕は解釈していた。
「ごめん」
「いいんです…こうやって、来てくれる事をお兄ちゃんが忘れなければ」
 こういったやり取りのひとつひとつが、僕と栞の、遠さと近さを内包した関係を維持するための糸なのだ。
「………」
 僕はベッドの一角に手をついて、栞の上に覆いかぶさるような体勢になった。そして逆の手で栞のショートヘアを軽く撫でる。
 やや色素の薄い髪の毛は、差してくる日光の加減で茶色がかって見える。染めている僕の髪とは違う、ナチュラルなブラウンだ。その手触りも、一本一本が絹糸のようにさらさらと指の間を流れていく。
「栞…」
「お兄ちゃん…私…」
 栞が多少瞳を潤ませながら、僕の腕をつかんだ。そして、離す。
「……うん」
 僕は起き上がって、体勢を元に戻した。
 栞は、布団を少しだけめくり上げると、そのまま指を自分のパジャマのボタンに持って行く。僕は何も言わず、それを見ていた。
 ぷちっ…ぷちっ、と音無き音が立って、栞は一番上からそれを外していく。薄いピンク色をした栞のパジャマが、上から3ボタンだけ外される。
「………」
 栞は無言でそのパジャマを横に開いた。白い肌が露わになる…つまり、胸をはだけた状態になる。そこに下着はつけていなかったから。
 かすかな恥じらいの表情を浮かべつつ、栞は布団の中に手を入れてしまった。パジャマの間からは、ふたつの小さな膨らみがはっきり見えている。
 僕はベッドに上がり、布団の上からその栞をまたぐようにして覆いかぶさった。膝立ちのまま左手をベッドの上に突いた、栞に全く体重を掛けていない姿勢だ。
 その姿勢になると、控えめな栞の膨らみの様子がくっきりと僕の視界に入ってくる。その先端にある桜色の小さな突起も含めて、すべてが僕の目の前に露わになる。
 でも、栞は恥じらいの表情すら消さなかったが、嫌がる素振りを見せる事は決してなかった。
「栞…」
 呼びかけと同時に、僕は自由な右手を栞のパジャマの間に忍ばせた。そして、左右の膨らみを交互に優しくさする。柔らかで弾力ある感触を楽しむように、ゆるゆると撫でていく。
「栞の、いつもみたいに柔らかいよ」
「でも…」
 小ささを気にしているのはいつもの事だ。だけど、この小ぶりにまとまった形良い栞の胸は、変に大きいよりも絶対に魅力的だと僕は思う。
 右手しか自由にならない不安定な姿勢だったが、僕は栞の乳房を慈(いつく)しむようにゆっくりと丁寧に愛撫していった。そうすると、栞の小さな胸でも、先端がポツポツと膨らんでくる。
 それから後は、指先で転がしたり、つまんでみたり、膨らみ全体を包むようにしながら先端を指の間ではさんだり、いろいろだ。段々頬を紅潮させて、泣きそうに目を潤ませて、それでもどこか嬉しそうに見える栞の顔はたまらなく可愛い。刺激の度に少しずつ切なそうに上がってくる吐息も、魅力的だ。
「はぁっ…」
 そうしてたっぷりと膨らみを愛してあげてから、僕は栞を解放した。栞が深く息をつく。はっ…はっ…と、上がってしまった吐息を隠しきれないままに、栞は僕の次の挙動を待っている。
 僕はにこりと笑った。行為自体の持ついかがわしさとは無縁なほどに、清潔に微笑むことができた。
「いくよ?」
「はい…きてください、お兄ちゃん…」
 栞がけなげに言う。いつ見ても心を揺り動かさずにはいられない瞬間だ。
 その瞬間を堪能してから、僕は栞の布団をさらにめくり上げていった。パジャマのボタンが外されていない、お腹の部分を通り過ぎて、さらにその下まで。
 そこまで達すると、何も履いていない栞の下半身が少しずつ露わになってくる。正確には、膝の辺りまで脱いでしまっているのだ。パジャマも、下着も。
 肝心の部分はパジャマの上着の部分で隠れている。僕はそれをたっぷり10秒かけてめくり上げていった。
「いやっ…」
「栞の、キレイな部分…」
「そんな事言う人…嫌いです…」
「…ごめん」
 時々言って、栞に嫌がられる言葉だ。僕は素直に謝った。
 ぴったりと合わされている部分は、一本のスリットでしかない。そこを多少でも隠すべきヘアがないのは…病院のためか、元々なのか、さすがにそれはわからない。
 僕は右手の人差し指をぴとっ、とスリットの真ん中に当てた。
「ふっ…」
 栞がわずかに身体を震わせる。それを合図に、僕はスリットに沿って指を上下し始めた。
 最初のうちは無反応に近かった栞も、時間が経つにつれて脚をよじらせたり、大きく息を吐き出したりと、目に見えた反応をするようになる。
 頃合いを見計らって、僕は指を沈めた。
「あふぅ…」
 栞の熱い息。そして僕の指も、あたたかな粘膜に包まれる。
 全身、すべすべとした肌とさらりとした髪の毛に覆われている栞も、この部分はぬちっ、ぬちっと絡みつくような感触を持っている…
「あっ…あ!」
 でも、栞が体躯を震わせながら上げる高い声は、栞らしさを感じさせて仕方がなかった。それが僕の指の動きに連動しているのだ。いきおい、行為全体も栞の軽やさに包まれざるを得ない。
 僕は栞の反応を見極めつつ、栞の熱い部分を少しずつ上に昇っていった。そして、栞のピンク色の突起がある所の周りを、指でくるくると回る。
「お、お兄ちゃんっ…お兄…ちゃんっ」
 栞がぐっとシーツをつかんで、ひっきりなしに僕の事を呼ぶ。思わず先を急いでしまいそうな状況だったが、僕は理性でそれを抑え込んだ。広げてみたならツンと尖り始めているのがわかるだろうその部分の周りを、僕は執拗なほどに刺激していく。
 そうする間に、栞が少し腰を浮かせ始めた。さらに僕は指の動きを速めたが、刺激する部分は変えていない。
「あっ…ああっ…あーっ」
 栞がきゅっと身を縮めた。
 僕は素早く指を下の方に移動させる。そこには、粘膜とは違う、明確な液体の感触が存在していた。
「は、恥ずかしいです…お兄ちゃんっ…」
 幾度経験しても、栞にとってこれは恥ずかしいらしい。でも僕は、そのぬるぬるした液を指先に十分なすりつける。
 そして、糸を引きそうになったその指先を、おもむろに栞の突起に押し当てた。
「ふうんっ…あ…」
 くりくりっ、と左右に転がすと、栞が身体をくねらせて応える。僕は液の潤滑にまかせて、次第に動きを大きくしていった。でも、ここまで十分に下準備をしてきたために、栞はいたがる素振りを見せない。
「栞…いくよ」
「は、はいっ…」
 僕が言うと、栞が身を固くした。
 そして、僕はその栞の敏感な部分に、集中的な愛撫を加えていった。さっきのように転がす動きから始まって、軽く叩いたり、押しつぶしたり、はじいたり、やや強めにつまんだり、ありとあらゆるバリエーションでそこをいじめ立てていく。
「くぅん…お兄ちゃんっ…私…私っ」
 栞がシーツをさらに強く掴んで、感極まった声を上げる。同時に、浮かせた腰が段々とせり上がっていって、栞の表情が切羽詰まったものになっていく。
 あとは、夢中で指を動かすだけだった。何も考えない。栞の上げるかん高い嬌声を耳に、無言で愛撫していく。
「くっ…んっ…おっ、お兄ちゃんっ!!」
 きゅんっ、と栞の身体が一瞬大きく跳ね上がった。
 そして、パタンとベッドの上に落ちてくる。
「んっ…はぁっ…はぁっ…お兄ちゃん…私…」
「…可愛かったよ、栞」
「お、お兄ちゃん…言わないでください…」
「本当だから、仕方ないよ」
 しどけない服装の栞は、いまにもスリットの間からとろっと液体がこぼしてしまいそうな様子だった。僕は身体を動かして、栞の額にそっとキスをする。
「あ…お兄ちゃん」
 栞がつぶやく。今してきた行為に比べればとても小さな行為なのに、それだけで夢に連れて行かれたというような表情になる。
 僕は、身体を起こしてベッドから一度下り、そのままベッドに腰掛けた。
「栞…」
「お兄ちゃん」
 栞の乱れた服装を直すことすらせずに、僕と栞は呼び掛け合う。
 はじまりは、何かのおまじないだったような気もする。迷信めいた行為を、ふたりで共有するためのものだったような気がする。
 だけど、きっかけなんてどうでもいいことだ。
 そのあとで、何も言わずに栞の横に座っている時に…ふたりが一緒にいるという感覚をより濃密にできる事を、僕も栞も知ってしまったから。
 妹との不思議な交歓を、きっと僕は信じ続ける。


7/22
 さらっ、と表面を掠めるように祐一の指が滑る。
「…どうかしましたか?」
 一度だけそうしてから、動きを止めてしまった祐一に佐祐理が問うた。
「いや…佐祐理さんの身体、綺麗だなって思って」
「…あははーっ、突然そんな事言うなんて、祐一さんらしくないですよ」
「そうかもしれないけど…なんか」
 何かを確かめているかのように、乳房の上でゆっくりと左右に手を動かす。そのたびに柔らかい感触が返ってきて、抵抗無く膨らみの形が変わる。しかし手を離すと、また形良い元通りの状態に戻った。
「なんだか、そんな風にしていると、祐一さん子供みたいです」
「ん…そうかもしれないなぁ」
 言われて、祐一は一度手を離す。そして優しい瞳で自分を見つめている佐祐理の顔を少しながめてから、両の手の平を広げて、すっぽりと乳房に覆い被せる。
 なんとか、手の平の中に収まるくらいのサイズだった。端の方がすこしはみ出しているかもしれない。
「結構大きいよな、佐祐理さん」
「そうですか?」
「間近で見るのはじめてだからわからないけど…そうなんじゃないかって思う」
 そうして、さっきよりもやや強めに全体をくっ、くっと揉んでいった。返ってくる柔らかな弾力はさっきと変わらない。ただ、さっきのように様子をうかがうという動きではなく、佐祐理の身体を感じようとする動き、佐祐理に自分を感じてもらおうという動きだ。
「ふぅ…」
 佐祐理が息を吐き出す。
「見た感じ、舞は結構大きいみたいだったけど、どうなんだろ」
「佐祐理も、見たことないからわかりませんけど」
「そりゃそうか…」
 祐一はなんとなく、佐祐理の背中に下に広がっているロングヘアーに目をやる。
 リボンを解いた佐祐理の雰囲気はいつもと違う大人びた装いを見せていた。普段、舞と佐祐理と祐一の三人でいる時の佐祐理とうまくつながらない。だから、舞の胸の大きさを佐祐理の胸の大きさと比較してみようなどという試みも、なんだか上手く進まない。
「ふぁ…」
 佐祐理が、また息を漏らす。かすかに熱っぽい様子が感じられた。
「佐祐理さん…」
「あははーっ…なんだか、ぼうっとしてきちゃいました」
 白い頬も、少しずつ紅潮してきたように見える。乳房を覆った指を少し広げてみると、隙間から膨らみかけた薔薇色の突起がのぞいた。
「気持ちいい?」
「祐一さんに触ってもらっていると思うと…なんだか」
 佐祐理がわずかに目を伏せながら、恥ずかしそうにつぶやく。それでも、祐一から完全に目をそらそうとはしなかった。
「ここ舐めても、大丈夫だよな」
「構いませんよ」
 祐一が手をどけて佐祐理に聞くと、すぐに返事が返ってきた。
「………」
 舌を出したまま近づけて、固くなった部分をそっと舐める。
「…でも、やっぱり子供みたいですね」
「…ほうかな」
 舌を出したまま答えたので、変な答えになった。佐祐理がくすりと笑う。
 その照れ隠しなのか、祐一は思い切り顔全体を乳房に近づけて、ぺろぺろとしきりに突起を舐め始めた。
「ん…ふぅ」
 段々突起の固さが増してくるのに合わせて、佐祐理が熱くなった息を吐く。だいぶ高まってきたと思しきその吐息は、かなりの色っぽさを感じさせた。今の祐一は視界が狭いから佐祐理の全身を捉える事はできなかったが、もし全体をよく観察したなら、佐祐理から年相応の、あるいはもっと成熟した妖艶さを感じる事が出来ただろう。
「あはは…祐一さん、上手ですから、佐祐理気持ちよくなっちゃいました…」
 だが、どうしても幼さを感じさせる言葉と声質が、そこに近寄り難さを生じさせるのを防ぐ。他愛ない会話をしている時と同じように、佐祐理は自分の性感を表現しているのだ。冷静に見たならば大分不思議な状況なのかもしれないが、それなりに長く佐祐理とつき合ってきた祐一はそう言った点も含めて飲み込む事ができた。
 …ちゅ…
 最後に先端を軽く吸い上げてから、祐一は唇を離す。
「もう…いいか?」
「大丈夫です…」
 佐祐理はうなずいた。
 祐一は出来るだけ目をやらないようにしていた、佐祐理の脚の付け根の部分に目をやる。佐祐理は別段隠そうともせず、祐一の眼前にそこをただ晒していたのだが、どうも直視する気が起こらなかったのだ。
 いざ見てみると、柔らかそうなヘアが見えている中心に、すっと一本筋が入っているようにしか見えなかった。このままでは、中の様子はまるでわからない。
 点々と脇腹の辺りを指で伝いながら、祐一はその部分に近づいていった。へその下辺りまで来て、いったん指を止める。
「ここ、触っても大丈夫なんだよな?」
「ええ」
 確認ばかりする祐一を、佐祐理は笑うこともなく気分を損ねることもなく、ただうなずく。
 薄いヘアをかき分けるようにしながら、祐一は割れ目の延長線上に指を滑らせていった。緩慢な動きではあったが、すぐに秘裂の所まで来てしまう。
 一瞬の躊躇のあと、祐一は秘裂の上に指を移動させ、それを割り開いて指を侵入させた。
「んっ…」
 粘膜に包まれた指を慎重に沈めていくと、やがて指が進まなくなる。押し込むとぐっとへこむが、進める事はできない。
「あっ…う…あ…祐一さんっ…」
「え?佐祐理さん?」
「そ、そこは…すこし…痛いです…」
「えっ…あ、ごめんっ」
 祐一が慌てて指を引き抜く。
「で、でも…そしたら、どうすれば」
「あ、あの、その一番上の奥辺りの部分、そこ以外だったら大丈夫です」
「え?…この辺?」
 祐一が、直接には触らずに秘裂の上端部を指さす。
「そ、そうです」
「わかった…ごめん」
 今度は、秘裂のかなり下の辺りから指を差し入れた。
 指に来る感触はほとんど変わらない。少しだけぬめりを帯びた感じで、あたたかかった。また痛みを感じているのではと佐祐理の方をうかがうが、特に佐祐理が苦痛を感じている様子はない。
 ぷちゅっ。
「あ…」
 その時祐一の指先に、粘膜とは違う、はっきりとした液体の感触が感じられた。
「…気持ちいいから、だよな…」
「…そうです」
 心なしか、佐祐理の全身がさっきよりも弛緩しているように見える。中から熱いものをあふれさせてしまった事で、力が抜けてしまったのかもしれない。
 祐一はその液体の感触を指先で味わいながら、指が突き当たった部分の粘膜を優しく撫でた。にちゃ、にちゃっという粘り気のある水音と佐祐理の滑らかな肌のギャップがなんともエロティックである。
 その感触を十分に楽しんでから、祐一は指を抜いて、てらてらと光ったその部分を見つめた。
「…いい?佐祐理さん」
「はい、来て下さい」
 佐祐理はだいぶ上気した顔だったが、はっきりと首を縦に振った。
 一枚だけ身につけていたトランクスを脱いで、自分の分身を取り出す。ずっとトランクスを突き上げていたペニスは、佐祐理の前で浅ましく屹立していた。
「あ…」
 だが、後ろめたさすら感じた祐一自身の反応とは逆に、佐祐理は愛おしそうな、嬉しそうな瞳でそれを迎えた。少し潤んでいるようにも見える。
「さっきの、とろとろになってた所だよな…」
「はい、そこです…」
 佐祐理はそう言うと、自ら脚を開いた。さっきはあまりよく見えなかった鮮紅色の秘部を、自分で露わにする。
 清潔感に富んだ佐祐理の肢体の中で、そこはひどくアンバランスで、見てはいけない所のように見えた。祐一は思わず、自分の分身を押しつけてそこを視界から隠す。
「じゃあ、いくよ」
「はい」
 すぅ、と佐祐理が息を吸い込むと、さらに佐祐理の全身が弛緩していったようだった。祐一は右手を使って先ほど触れていた部分を探り出し、指を分身に添えて、先端を入り口にぴったりとくっつける。
 力を入れると、先が入っていく感触があった。祐一はペニスから手を離し、佐祐理の身体をぐっとつかむ。
「いくよ」
「はい」
 もう一度同じやり取りを繰り返してから、祐一はぐぐっと力を入れた。
 ずっ…と、意外とスムーズに中へと入っていく。
「ふっ…」
 途中で、急に反発が強くなる部分があった。だが、ペニスはまだ半分も入っていない。
 ここは、通過する部分なのだ。そう言い聞かせて、祐一は佐祐理の身体を腕でしっかりと固定してから思い切り前に力を入れていく。
「あくっ…!はぁ…あっ…」
 ずずっ、と重い扉をこじ開けるような感触と共に、先が開けた。そして一気に進んで、祐一の分身が全て埋没する。
「う…はぁ…はぁっ」
「痛かったろ…ごめんな、佐祐理さん」
「あははーっ…これくらい、全然大丈夫ですよ」
「無理しなくていいよ…でも、思ったより簡単に入ったよな」
「だから、そんなに痛くないんです」
「やっぱり、それは嘘だろう…ほら、血、出てる…」
 結合部分から、紅い液体がにじみ出していた。
「それは、はじめてだから仕方ないんですよ」
「だから、痛いんじゃないか…」
「血は出ていますけど…見た目ほど、中は傷ついていないんです」
「…そりゃ、俺にはわからないけどさ。無理はしないでくれよ」
「あはは、当たり前ですよ」
 祐一は腰を引いてみた。決してきつい締め付けではないが、ぬめって温かな感触の部分に柔らかく全体をくるまれる感触は、何とも言えないほどに気持ちいい。
 そして、もう一度押してみると、ちゅぐっという水音が立った。
「結構…濡れてるのかな」
「そうみたいですね」
「俺はすごく気持ちいいけど…佐裕理さんは」
「こうなっちゃっているのが、女性が気持ちよくなっている証拠ですよ」
「そんな気はするけど…やっぱり、はじめてなんだし…痛いのは間違いないと思うけどな」
「そんな事ありませんよ、佐祐理も気持ちいいです」
「でも、はじめてなのに」
「あははーっ、佐祐理ってえっちな子だったんですね」
 佐祐理が自ら腰を動かすと、ちゅくちゅくと愛液のはぜる音がする。
「こうすると…じんじんって、祐一さんのを感じられます」
「…わかった。じゃあ、俺も動くよ」
 何を言っても、事実は確かめられない気がした。だったら、動いた方がいい。
 …ちゅぐっ、ちゅぐっ、ちゅぐっ…
「ふぁ…ぁ…ぁ、ゆういち…さん」
「佐裕理さんっ…」
 祐一が腰を動かす度、佐祐理の内部は絶妙に祐一を包み込んだ。祐一は佐祐理の腰をがっしりとつかんで、夢中に腰を前後させる。どうすれば痛みを軽減できるのかという事も考えたが、結局良いアイデアは思いつかず、早く達してしまうのが一番だと結論づけたのだ。
 それ以上に言葉を交わす事もなかった。何を言っても、佐祐理は自分も気持ちよくなっていると言うに違いない。それに悩むよりは、ただ佐祐理の中を感じていた方がいい。
 ちゅぐちゅぐちゅぐ…
 そうする事数分、ようやく祐一に限界が近づいてくる。
「佐祐理さん…そろそろ俺」
「佐祐理も…」
 全身をよじらせ、息を速くしながら佐祐理が言う。その様子は、本当に絶頂すれすれの所にいるように見えた。
 ぐちゅ、ぐちゅっ!
 祐一は何も言わず、激しく分身を奥底に叩きつける。
「あ、あっ、あっ!」
 鋭い嬌声が上がって、最後には裏返った。脳の中心を刺激するようなその佐祐理の声に、祐一は限界を迎える。
 ずるっ…
 びゅっ!
 引き抜くのと、放出するのがほぼ同時だった。
 びゅっ…びゅっ!びゅびゅっ!
「あ…」
 勢い良くほとばしった精液が、佐祐理の腹部から胸、そして顔にまで点々と付着していく。汚した、という表現がこれほど合う状態も珍しいだろう…と、脱力感の中で祐一は思っていた。
 ぺろ…
「さ、佐祐理さん」
「あははーっ、祐一さんのおいしいですよ」
 口の上についた精液を、舌で舐め取ってからにっこり微笑んで言う。顔のあちこちには、まだ白濁の液が付着していると言うのに。
「…無茶しないでいいって…」
「そんなことないです、祐一さんのだったら、佐祐理の口の中に全部出してくださっても、佐祐理は喜んで飲んじゃいますよ」
「…佐祐理さん…」
 事実だろう、それは。
 それが…舞とはプラトニックな関係なままでいて、それに並行して佐祐理を抱くという行為を祐一にさせてしまった原因かも知れない…


7/15
「お姉ちゃん達が知ったら…どう思うんでしょうね」
 マナは両手で身体を隠すようにしながら、小さくつぶやいた。
「まぁ、向こうも子供じゃないんだしね。気づいているんじゃない、もうとっくに」
「やっぱり、そうなんですか」
「由綺とか変に鋭いとこあるからな。だいぶ前から気づいていたみたいだよ」
「お姉ちゃんはそうかもしれないけど、藤井さんみたいな鈍い人が…」
「ん、まぁあの青年を馬鹿にしちゃいけないよ。由綺とマナちゃんで二股かけたあげくに、由綺を俺から奪っていったんだからね」
「それは、私にも責任がありますけど…」
 マナはそう言いつつも、少しすねたような顔になってベッドの脇に目をやってしまった。
「あーあ、そんな顔するなって。別にマナちゃんの事責めたわけじゃないんだから」
「でも、やっぱり」
「だからなに? 傷を作って欲しいから俺に抱かれるっての?」
「そういうのは、私は嫌いです」
「ま、そうだな。マナちゃんの平べったい身体でそういうのをやっても、ちょっとイタすぎるね、いろんな意味で」
「なっ、何言ってるのよっ…!あ…」
 マナは一瞬顔を真っ赤にしてから、ばつが悪そうな顔をする。
「ごめんなさい、私」
「いいって。そっちの方がマナちゃんらしいわけなんだろう」
 英二はややくどい言い方をする。
「でもこの状態で蹴るのは勘弁な」
「し、しませんよっ、そんなことっ」
 今蹴り上げてしまえば、覆いかぶさるような体勢の英二のどこにヒットするかは推して知るべしである。
「藤井青年もなかなか苦労したと見えるね」
「べ、べつに藤井さんは少しくらい蹴ったって大丈夫なひとです」
「ほんとにしてたのか…」
「い、いっつもバカな事してたんだから、当たり前です」
「彼も面白いね…本当に」
 英二はそう言いながら、突然マナの胸を隠す手に右手を添えて、ゆっくりと横にどけさせた。
「あ」
「恥ずかしいかな?」
「す、少しは」
 マナは唇を固く結ぶようにする。身体をこわばらせているのがはっきりとわかった。
「あー、もっとリラックスしようよ。リラックス」
 英二はなだらかな膨らみの上を、マッサージするように軽いタッチでなで回す。引っ張られるようにしてマナの乳房が少し変形し、また元に戻る。その繰り返しだった。
「ふぅ…」
 マナが少し吐息を吐き出すと、英二は唇をマナの乳房の先端に近づける。その桜色の突起は乳房のサイズに比例して小粒だったが、ラインがゆるやか過ぎる乳房の先端にあるため必要以上にぷくんと膨らんで見えた。
「ん…」
 英二が舌の先でゆっくり転がすと、マナの表情が段々ほぐれてくる。そして、そこがつんと尖り始めた頃には、マナは頬を紅潮させて任せきった表情になってしまっていた。左の手は、うっすらとかき始めた汗をぬぐうように額に当てられている。
「うん。結構固くなってるね」
「……はい」
 先ほどに比べて固く大きくなった突起は、ますますマナの小さな乳房とアンバランスに見える。そこだけが不自然にせり出して自己主張しているのだ。と言っても、標準的な胸に比べれば、どちらもやはり小さいと言わざるをえないだろう。
 しかし、英二はそれに言及する事なく、今一度乳房全体をやさしく揉み上げるようにして愛撫した。
 左手だけはその愛撫を続けさせて、右手は滑るようにマナの腹部を降りていく。こつん、とマナの右手に英二が触れる。
「はい」
 英二が小さく言いながら手をスライドさせると、マナの手は素直に横に動いて自分の秘めやかな部分を露わにした。
「しかし、綺麗なもんだね」
「っ…恥ずかしいですから、あんまり見ないでください」
「いや。恥ずかしいのはわかるけど、これはシンプルに美しいよ。本当に」
 この年になっても、卵のようにつるんとしたままのマナの秘裂…大いなるコンプレックスであると同時に、何か病気なのではないかとマナが心配するところでもあった。
 つつ…と英二が秘裂の合わせ目のところへ指を移動させる。そして、軽く指を沈めて、中の粘膜を外気に露わにした。
「うん、やっぱり中も綺麗だね」
「……や…そんなにじろじろ…」
「いや、美しい物はいくら観察しても飽き足りないよ。表現する事なんかより、観察する行為の方がどれほど楽しいか知れない」
 マナのピンク色の粘膜を傷つけないようにそっと撫でながら、英二は左手での乳房への刺激も継続した。
「藤井君と、行為に及んだことはあるのかな?」
「な、ないです」
「してもいいと思ったことは?」
「…ないわけじゃないかもしれません」
「なるほどね」
 英二は、微妙な変化を続けながらふたつの愛撫を続けていった。沈黙が下りた中、英二がその愛撫をずっと続けていく。二人とも、何もしゃべろうとはしなかった。これまでに比べて、同じ愛撫を繰り返す時間はかなり長い間になってきている。それでも英二は飽きたり疲れたりする素振りは見せなかった。普段と同じ、薄ら笑いのような、ちょっとした憂鬱のような表情を浮かべながら丁寧な行為が続けられていく。
「も、もうそろそろ…」
 そして、マナがつぶやいた。
「本当に?」
「え、ええ、もう大丈夫です」
「でも、こっちはまだ全然濡れてないね」
 英二がマナの入り口を撫でる。確かに、そこは粘膜それ自体の感触以上には湿り気を返してこなかった。ただでさえ狭いに違いないマナのそこが、簡単に受け入れられるようにはとても思えない。
「もう、これ以上やっても変わらないと思いますから…」
「…だからって、マナちゃんが死ぬほど痛いの見てるのは俺も頂けないね」
「だ、だけど、仕方がないです」
 マナは身体をベッドにぐっと押しつけるようにして、表情を固くし、苦痛に耐えるための体勢を作っていた。
「ま、頭は使うためにある。これは人間のアレが勝手に考えついた本能かもしれないけどね」
「………?」
「マナちゃん、ちょっと身体起こして」
「…はい」
 マナは不思議そうな顔をしながら、ベッドの上に起き上がる。英二はそのマナの後ろに回り込んで、ベッドに座り込んだ。
「俺の身体の上に座るみたいに…あ、入れるんじゃないよ」
「……え? は、はい、わかりました」
 後ろを向きながら、マナはぎごちなく英二の腰の上に座っていく。英二はその下敷きになりそうな自らのペニスを手で誘導して、うまくマナの脚の間を通す形にした。
「あっ…」
 マナが頬を染める。目の前に、英二のペニスが勢い良く飛び出してきていた。
「脚を閉じて…それから、指でさわれる?」
「はい…やってみます」
 マナが太股を閉じていくと、英二のペニスはふっくらとした弾力に包まれた。さらに、マナの細い指がおそるおそる英二のペニスの先に触れる。
「うん…いいよ、そんな感じ。指でわっか作って、上下に動かすとかできる?」
「え?ええ…っと」
「こんな感じで、こう」
 英二が自分の指を宙で動かし、マナに示す。
「わかりました…」
 マナは言われたとおりにする。しゅっしゅっという乾いた音が立ち始めた。それほどぎごちなさも感じさせない動きで、マナは根元を締め付けたペニスにしごき立ての動きを加えていく。
「うん、うまい。しばらくそうしていてくれるかな」
「はい」
 英二がさっきしていたように、マナもまた微妙な変化を加えながらその動きを行った。時間が経つにつれてマナの動かし方もスムーズになってくる。
「あっ」
 マナが少し驚いた声を上げる。ペニスの先端から出てきた透明な液を見たのだ。
「はは、女の子が濡れなくて男だけが濡れているのか。それもいいかな」
「これ…そのままでも」
「うん、大丈夫」
 マナはやや悩んだ挙げ句、同じ動きを継続した。自然と液体は先端やペニス全体にまとわりついていき、マナの指の動きもいっそう滑らかになる。どんどんあふれてくる液体を見つめながら、マナは夢中になってペニスをしごいた。
「はい…ストップ」
 英二が言う。
「最後だけは、俺に動かさせて。あ、脚は閉じないで」
「え…きゃっ」
 おもむろに英二はマナの身体を持ち上げる。言われたとおり脚は閉じたままだったので、ペニスは太股に締め付けられ、秘裂にこすれて微妙な摩擦を与えられた。そして身体を落とせば、また摩擦が起こる。
 英二はそれをかなり速いペースで行った。軽いマナの身体とはいえ、運動をしない人間にとってはかなりの運動量だろう。だが、それはきちんと計算されていたようだった。五秒もすると、
「マナちゃん…出る」
 びゅっ!
「あっ!」
 マナが食い入るようにペニスを見る。そこから白濁の液が発射されたのだ。
 びゅっ、びゅっ、びゅっ!
「…きゃ」
 それを見つめていたせいもあって、勢い良くほとばしった精液は例外なくマナに向けて飛んでいった。しかも間隔が短かったため、四発目がかかるまでマナは顔を動かさずにいて、思い切り鼻の頭や唇を直撃する。
「あぁ…」
「逃げればよかったのに。男が出すのをそんなに見たかった?」
「そ、そんなわけじゃ」
 マナは口元についた精液をとりあえずぬぐって話す。
「ま、俺もトシだし、こんなに飛ぶって思わなかったよ。マナちゃんって男を誘惑する才能があるかな」
「そんなもの…ないですよ…」

 一通り後始末をした後。
「次までに、自分で少しは感じられるようにしておいて」
「えっ!?」
「このままじゃ俺だけが一方的だからさ。一ヶ月くらいあるわけだから。それまでに」
「じ、自分でって」
「したことはなさそうだね。オナニー」
「い、いやっ!緒方さん、そんなの」
「嫌い?」
「きらい…とかそういうんじゃなくて、普通そんな事しません…」
「普通しないってのは違う気がするけど。何か、特に毛嫌いする理由があるの?」
「な、ないですけど、生理的に受け付けません」
「……じゃあマナちゃん、なんでそう思うのかの答え出してくるのと、きちんと感じられるようになってくるのが次までの宿題ね」
「な、なんでですかっ…!」
「考えてみると、勉強になるかもよ。いろいろ。一日一回、自分でいじりながらゆっくり考えてみて」
「……緒方さんが言うから…するんですよ…」
 マナはうなずいてしまった。
「うん、いい子だ。じゃ、また来月」
 パタン。
 英二は部屋から出ていった。
 な…なによっ…どうせ、私がナルシストだって言いたいんでしょ…自分の内面のキタナイ所を認めたがってないって…そう思っているなら、はっきり言えばいいじゃない…!
 そういう、どこにもぶつけられない言葉。同時に、英二への依存と敬愛。英二に見捨てられたら、今のマナは孤独に耐えきることはできないだろう。
 マナは身体を震わせながら、誰もいなくなった部屋で指を秘裂に這わせていった。


7/12
「んっ…」
 二つの唇が重なった。
 久しく忘れていた柔らかな温かさが、浩平の唇に伝わってくる。そのまま、触れあった茜の唇を浩平は感じようとした。
 ぬっ…
「……ん」
 浩平が唇の隙間から戸惑った声を漏らす。茜が、唇を割って舌を滑らせてきたのだ。
 そういうキスを経験するのははじめてだった。少し違和感がある。それに、茜が積極的に動いてくると浩平は思っていなかったのだ。とっさには反応できず、逡巡している間に茜の舌ははっきりと浩平の口腔の中に侵入してきて浩平の舌と絡む。
 ぞくり、と浩平の身体をくぐもった快感が走り抜けた。どこか不安になってしまうような快感だったが、茜が潤んだ瞳で見つめながら幾度も舌をくすぐってくる内に、段々その行為の虜になってきた。
 浩平も、舌を少しだけ動かしてみる。やってみると、意外とはじめてでも上手くできるものだという事がわかった。大胆な行為に見えても、実際に必要なのは、相手の唇の向こうに進み出す勇気だけのようだ。
 茜は浩平の背中に両腕を回して、固く抱きしめてきていた。決して小さくない茜の乳房が思い切り押しつけられてくるのがよくわかる。密着した肌と肌の、ぴったりした感触が一緒だという感慨を深くした。
「ふっ…」
「ん…」
 やがて、茜の方から唇を離す。綺麗に光る糸が二人の唇の間を伝っていった。
 そして茜は前に降りてくるロングヘアーをかき上げると、静かにベッドへ身体を倒した。頬を紅潮させながら、やや目を細くして視線を脇にそらす仕草が妙に色っぽい。
「茜…」
「浩平」
 茜は視線をそらしたままつぶやいた。
 浩平はじっと茜の肢体を見つめる。何も変わっていない。滑らかな長い髪も、きめ細かな肌も、前に交わった時と何も変わっていなかった。
 それを確かめるかのように、浩平は両手を伸ばして手の平で茜の乳房をすっぽりと包み込む。
「あ…」
 茜が熱っぽい息を漏らした。
 浩平は、くっ、くっとゆるやかな力で乳房全体を圧迫するように揉んでいく。ぴんと張りがある唇の柔らかさと違って、そこはふわりとした儚い柔らかさだ。だが、にも拘わらず、力を加えてから離すと元の滑らかなラインにきちんと戻る。
「ああっ…」
 浩平が力を強めていくと、茜が身をよじらせながら甘い声を上げた。そして前髪をまたかき上げる。どこか物憂げにも見える表情だったが、それが恥ずかしさと嬉しさの混じった複雑な表情であるという事は浩平にも分かる。
 すぐに、茜の乳房の先端は紅く膨らんで固くなり始めた。
 そこを指で転がすと、茜はぎゅっと目を閉じてふるふると頭を振る。だが、浩平が幾度も執拗にそれを繰り返すと、
「こ、浩平…」
 茜が目を開いて、艶めかしい声を上げた。
「気持ちいいか?」
「…はい」
 意外と素直に茜は認めた。
「前の時はずっと恥ずかしいとか言ってたのにな…」
「こ、浩平にしてもらっていると、どんどん切なくなってくるんです」
「茜…」
 ちょっと大胆な発言だったが、浩平は茜のそういう言葉に愛しさを感じた。
「こっち、触るぞ?」
「はい…」
 茜は小さく頷いて、少しだけ脚を開いた。
 浩平は、茜のぷっくりと膨らんだ恥丘の上に指をするりと滑らせていく。
「ああ…浩平…」
 それだけで、茜は瞳をさらに潤ませたように見える。
 割れ目の上に到達した指を、浩平はゆっくりと沈めていった。
「ああっ!」
 少し浩平が驚くほどの声を上げて、茜は身を弾ませた。同時に浩平の指を温かなものが包んでいく。茜の愛の雫だった。
「茜…もうこんなになってる」
「い、言わないでください…」
 今の浩平の指をきっかけにそうなったのか、それとも乳房を刺激している段階でそうなったのか。いずれにしても、茜の身体がとても敏感なのは間違いない。
 ゆっくりと中をかき回すと、茜は逃げるように腰を動かしながら、高い嬌声を上げた。その度に新たな液体が染み出てくるのがわかるほどである。
「あ、茜」
「浩平…すごいです…」
「ひょっとして…してたか?」
「こ、浩平っ…」
 茜が目をそむけながら、視界の隅で浩平を見る。はぁ、はぁと荒く息をついているその視線は、恥じらいを映しているものの、否定を示していなかった。
「茜…」
「せ、切なかったんです…一年も…浩平と…」
「だから、こんなに…」
 浩平が茜のピンク色の真珠を転がす。
「ふあっ!あっ、浩平っ!」
 茜がびくびくと腰を震わせながら反応する。指を一往復させる度に、茜はこの上ないほど悶えた。浩平が、まるで自分の指に何かの魔力が宿ったのではないかと思ってしまったほどだ。
「もう…十分だよな…」
「は、はい、浩平、私の中に…」
「…ああ」
 かつて交わったときとはまるで正反対の言い方に、浩平は心の中で苦笑した。だが、茜が愉悦に悶える姿に浩平は惹かれたし、抱きたいと深く思った。今日ここで茜の服を脱がしたときよりも、一層その念を強くした。
「茜」
 浩平が一度身を起こすと、茜の視界の中にいきり立った浩平のモノが入ってくる。
「こ、浩平の…」
「ああ…」
 自分の性器が見られるのは少々気恥ずかしかったが、浩平自身を見つめるのと同じ目で見つめている茜の姿を見て、浩平はただうなずいただけだった。
 ゆっくりと茜の身体に覆いかぶさり、茜の入り口に狙いをつけていく。
「いくぞ…」
「はい…」
 ぬちゅっ。
 入れるときにも、淫らな水音が立つ。
「ふ…」
 その瞬間、茜は雷に打たれたように身をすくませた。
 浩平が一気に身を突き入れると、
「あああーっ!」
 解放されたように茜が大きな声を出す。
 ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ…
「あっ!ふああぁっ!浩平っ、浩平っ!浩平ぃっ!いいです!そこ…もっと、ああっ!」
 じらしは不要と判断した浩平が最初からハイピッチにストロークを行うと、茜はあられもなく叫びながら腰を激しく動かした。浩平の抽送に連動して、自らの奥底に肉棒が叩きつけられるように腰を押し出す。茜の長い髪は揺れ、汗が飛び散った。
「茜…茜、茜っ、茜っ」
 はじめての時よりも、茜の中は何倍もぬるぬるして熱かった。締め付ける力も、同じくらい強い。浩平は無我夢中で腰を振った。茜の叫びに応えるように、獣のような性交を行った。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 やがて体力の限界か茜の勢いは落ちてきたが、天井を開ききった瞳で見つめながら腰をうねうねと動かす様子は、貪欲な性への欲求を感じさせた。浩平はそれに向けて、ありたけの力で自らをぶつけていく。
「くっ…茜、もうっ…」
「き、きてください…浩平の、浩平のを…私に…」
「茜…茜、茜っ!」
 最後に、思い切り全身を茜にぶつけた。
「はあぁぁぁぁぁぁっ!」
 茜が喉を反らせる。
 ビクンッ!ビク、ビクンッ!ビクンッ!
 浩平と茜の絶頂は強烈に合一した。
「こ…浩平…浩平、浩平、浩平…」
 身を痙攣させながらうわごとのように言う茜を、浩平は身を倒して力強く抱きしめた。
「浩平…」
 茜も、それを抱きしめて、しっかりと応えた。そして二人は絶頂の余韻に浸っていった…


7/4
「うあぁっ…浩平っ」
 瑞佳は必死に浩平の身体にしがみつく。
「だ、大丈夫か?長森…」
「う、うん、大丈夫」
 目には涙がうっすらと浮かんでいたが、瑞佳はそう答えた。両腕で浩平の身体を固く抱きしめながら、挿入の痛みに耐える。
「痛くなく…はないか」
「ちょ、ちょっとは痛いかもしれないけれど」
 しかし、そう言いながらも瑞佳は無意識のうちに腰を不安定に持ち上げようとしてしまっている。浩平が身体を突き出す方が安定しているために入っていかないという事はなかったが、その姿を見ていると浩平は躊躇を覚えてしまう。
「なぁ、長森、お前、はじめてじゃないよな?」
「えっ…浩平、何言ってるのっ」
「いや、そりゃそうなんだが」
「こ、こーへいが、風邪引いてるのに無理矢理したんだよっ」
「確かに。そうだな」
 挿入が半ばまでしかされてない、中途半端な状態で二人は問答しあう。瑞佳は全身を固くこわばらせて、ペニスを引き抜いたり呑み込んだりしないように努めていた。もっともそうすれば自然と締め付けが強くなってしまって、苦痛が生まれるのは間違いない。
「いやだから、だったらもう少しこういうので痛がらなかったり、自然に入っていったり、積極的に動いてくれたりしてくれてもいいと思うんだが」
「ば、ばかぁっ、浩平、そんなの思いこみだよっ」
「そうなのか?」
「だって、一年もしていなかったんだから…」
「ふさがっちゃったわけだ」
「ば……ばかばかぁっ!浩平、何言ってるのっ!」
「長森の言うことを翻訳すると、そういう風にしか取れないと思うんだが」
「はぁっ…浩平、こんな時にも相変わらずだよ…」
 瑞佳は不自然な体勢のまま、嘆息する。
「でもとにかく、このままじゃ仕方ないと思うんだが」
「う、うん」
「ということで、腰を下ろしてくれるか?」
「えっ!な、なんで」
「いや、俺が腰を上げても長森が腰を下げても一緒だと思うぞ」
「気分の問題が違うよっ」
「じゃあ、このままでずっとしてるか?」
「うっ…わかったけど」
 瑞佳は慎重に腰を下ろし始めた。狭い部分を押し広げるようにして、浩平のペニスが徐々に内部に侵入してくる。
「いっ…いたあぃっ…」
「なんだか、最初の時よりも辛そうに見えるんだが…」
「あ、あのときは我慢してたんだもん…痛いよっ」
 それでも、瑞佳は少しずつ身体を落として、ついには完全に浩平の腰の上に座る体勢にたどりついた。深々と突き刺さったペニスは、ちょうど瑞佳の一番奥を叩く位置にある。
「ご苦労様って感じだな」
「痛いよ…」
「そうだなぁ」
 浩平はふと思いついたように、瑞佳の秘裂に指を伸ばす。
「な、なに?浩平」
「確か、ここって気持ちいいんだよな」
 結合部分の上の辺りに指が当たって、適当なタッチで触り立てる。
「ひぅっ…こ、浩平、駄目だよそこっ!」
「お、長森が感じているぞ」
「違うよっ!ただ、びっくりして、ぎゅってなっちゃって痛いから…」
「ぎゅっ?」
「ぎゅ、ぎゅって…」
 浩平が再びそこを触ると、瑞佳の中が収縮してきつく締め付ける。
「ほ、ほらぁっ」
「俺は気持ちいいんだが」
「そんなの、浩平のひとりよがりだよっ」
「ということで、長森がここで感じれるようになれば万事OKだな」
「全然OKじゃないよっ…こ、浩平、もうやめてよっ」
 瑞佳が身体をよじりながら抗議する。だが浩平は何かを探るような手つきでその部分を刺激していった。
「なんだか、固くなってきたみたいなんだが」
「し、知らないよ」
「それから、長森の中のぬるぬる感がアップしてきたような…」
「へ、変な表現しないでっ…」
「これって、ここの皮剥いていいんだよな」
「だめっ!絶対にだめだよっ!」
「じゃあやってみる」
「あっ…こ、浩平のあまのじゃくっ」
「何を今さら…」
「ほ、ほんとにそうだよっ…はぁっ…」
 しかし嘆息している間もなく、すぐに露わになったピンク色の突起に対する愛撫が開始される。瑞佳は眉をしかめながら、しきりに脚を閉めたり開いたりの落ち着き無い動作を始めた。
「なんだか、急に静かになったな」
「あ、呆れてるんだよ」
「そうか…」
 ここぞとばかりに、浩平は突起を押しつぶすような強い刺激を連続して加えていく。
「だっ…だめ…そこ、だめだよぉっ…こうへいっ」
「何が駄目なんだ?」
「い、痛くなっちゃうから…なっちゃうから…なっちゃうからあぁっ!」
 ピクン…!
 突如、瑞佳が全身を小さく震わせた。
「え?」
「…はぁっ………はぁっ……」
「な、長森?長森?どうかしたか?」
「……んはぁっ……はぁ………どうも…しないよ…」
「今、突然飛び跳ねたよな」
「痛かったんだよ…」
「ひょっとして、気持ちよくて」
「違うもん…」
「そ、そうか」
 なぜかぎごちなく浩平は受け答えした。
「え、えっと、少し動いて良いか?」
「うん…」
 普段のしっかりした姿とは違う、どこか憔悴したようにすら見える瑞佳。浩平はやや不安感を持ちながらも、上下の運動を開始していった。


6/23
「浩平君…」
 みさきが小さな声を上げる。その顔は、不安げな表情と嬉しそうな表情が混じって泣き出しそうに見えた。
「いい…よな?先輩」
「はじめてじゃないんだし、嫌だとは言わないよ」
「嫌だとはって…」
 浩平がやや躊躇の色を見せる。
「…ごめんね、いいよ。浩平君に抱いて欲しいよ」
「本当だな?先輩」
「うん、なんだか色々な事を思い出しちゃって、不安になっちゃっただけだから、心配しなくても大丈夫」
「…大丈夫、俺はここにいるから」
「うん」
 みさきは手を伸ばして、浩平の手を握る。浩平は一度それをしっかりと握り返してから、
「あのさ、先輩身体をつかんでいてもいいけど、できれば手じゃなくて別のところの方がやりやすいんだけど」
「できれば手の方がいいよ」
「せめて服を脱がすまで待っていて欲しい…」
「…うー、わかったよ」
 みさきは名残惜しそうに手を離し、ベッドの上に横たえた身体の力を緩める。
 浩平はしばしの間、みさきのその様子を見つめていた。
「…浩平君?」
「ごめん、俺もちょっと考え事してた」
「やっぱり」
「悪い、すぐする」
「なんだか変な言い方だね」
「そうかもな」
 言いつつ浩平はみさきのスカートのホックに手をかけて、外した。
 そうしてから、思い直したように淡いブルーのTシャツをつかんで、脱がしていく。
「お腹がすーすーするよ」
「前にも言ってたっけな、先輩」
「そうだね」
「冷房強すぎないか?」
「大丈夫だよ」
 ブラジャーの所までめくり上げてから、浩平は少々迷う。
「先輩、手上げて」
「はい」
 みさきは片手を上げる。
「いや、両手」
「あ、はい」
 慌ててもう片方の手を上げる。どうやら本気だったらしい。
「なんか、先輩相変わらずだな」
「うー、たまたま勘違いしたんだよ」
「そうか?」
「浩平君、意地悪だよ」
 と、Tシャツが首から頭へと脱がされている時にも間延びしたやり取りが入ってくる。
 すぽん、とTシャツを抜くと、みさきの髪の毛は好き放題な方向を向いていた。それに気づいたのか、みさきは手ぐしを入れる。浩平はみさきが髪の毛を整えている間にも、みさきの背中に手を入れようとする。
「あ」
「先輩、もうちょっと背中上げてくれるか」
「浩平君、気が早いよ」
 髪を整える動きを止めて、みさきは言う。
「早くしてって言ったのは先輩だろ」
「そうは言ってないよ」
「ともかく、背中上げて欲しい」
「…うん」
 みさきが背中を上げた隙間に浩平は手を入れる。そして、苦労しつつもなんとかブラジャーのホックを外すのに成功した。
「お腹から上が、全部すーすーするよ…」
 そうみさきが言うと同時に、みさきの胸の膨らみを浩平の手が覆う。
「浩平君の手…」
「先輩の、前と変わっていない」
「は、恥ずかしいよ」
「柔らかくて、すべすべしてる」
「…うー」
 浩平はその部分を包み込むようにして、じっくりと愛撫していった。慎重な動きは、敏感な突起の部分を避けるようにして続けられていく。それでも、浩平が諦めずに愛撫を繰り返していくと、突起の部分がかすかに固く膨らみ始めた。
「…先輩、何か変わってきた?」
「す、少し熱いよ」
「冷房入っているけど」
「そうじゃなくて、浩平君に触られている部分が熱いよ」
「先輩、気持ちいい?」
「それはどうかわからないけど」
 みさきの言葉を聞いて、浩平は少しだけ大胆になった。触る事を避けていた突起の部分に、かすめるような小さな刺激を加えてみる。
「ん…くすぐったいよ」
「ちょっと我慢しててくれるか?」
 少なくとも痛がっていない事を確認して、浩平はほのかな愛撫を繰り返していった。次第に突起が大きく膨らみ、ぷつぷつと粟立ち始めたのもわかるようになってきた。
 試しに、そこを指先で転がしてみる。
「あ…」
「先輩、痛い?」
「いたく…ないよ」
「もっと強くしても良さそうか?」
「たぶん」
 浩平は二本の指ではじくような動きを加えたり、そっとつまんだりしてみる。みさきは、はぁっ…とため息にも似た吐息を漏らしてそれに応えた。
「下、行くけど」
「わ…わかったよ」
 少し身体をこわばらせながら、みさきは言う。
 浩平はさっきホックだけ外していたスカートに両手を伸ばし、そのままずりずりと引き下ろしていった。みさきは恥ずかしそうにしつつもヒップを浮かせて浩平の動きを助けた。
 自分の身体も少しずつ後ろに下げていくようにして、ようやく浩平はみさきの脚からスカートを抜き取る。あとに残っているのはホワイトのショーツだけだった。
「脚もすーすーするよ…」
「先輩、可愛いぞ」
 全身の肌をほとんど露わにしたみさきの身体は、浩平にとって初めて見るものだ。普段のおっとりした雰囲気とも違う、何とも言い難い魅力があった。
「こう言うときに言われても、恥ずかしいだけだよ」
「でも、本当に可愛いんだから仕方ない」
「うー」
 浩平は再び身体をみさきの上に戻し、ショーツに手をかけた。
「そ、そしたら全部見えちゃうよ」
「そうだよ」
「恥ずかしいよ」
「俺は恥ずかしくないぞ」
「当たり前だよ」
「と言うことで、脱がすぞ、先輩」
 さっきと同じように両手で生地をつまみ、ずり下ろす。みさきは最初ヒップをシーツに押しつけて抵抗したが、すぐ諦めて浩平のするがままに任せた。
「す、すーすーしちゃうよっ」
「どこが?」
「言わないよっ!」
 みさきは顔を真っ赤にしながら、脚をぱたぱたと動かした。しかし浩平が脱がすのに支障が出るほどの抵抗ではない。
 浩平は太股、膝、ふくらはぎ、くるぶしと全て通過させて、ショーツを脱がしきる。一糸纏わぬみさきの姿がそこにはあった。
「じ、じっと見てちゃやだよ」
「んな事言っても」
 浩平は、つつしまやかな秘裂に目をやる。前見たときは闇の中で、しかもスカートの下だったのだが、今は明るい光の下ではっきりと見えてしまっている。
 そこは、一度浩平を受け入れたにも拘わらずほとんど変わっていないように見えた。清潔できれいな縦の筋が、薄いヘアに覆われているだけである。
 浩平は指を一本突きだして、秘裂の上を撫でた。
「あっ」
 みさきがシーツをぎゅっとつかむ。そして、逆の手を必死に浩平の方に突き出した。
「手、手」
「え?あ、そうか」
 浩平は左の手を伸ばしてみさきの手を握る。
 そのまま行為を再開した。表面を撫でる上下運動に段々力を入れて、秘裂の中に指が沈み込むようにしていく。
「痛くないか?」
「大丈夫…みたいだね…」
 みさき自身もどこか戸惑っているような声だった。
 浩平はとりあえず強く指を動かし過ぎないようにだけ留意しながら、秘裂の中を適当に探っていってみる。
「ん!」
 ぎゅっ!
「せ、先輩?痛かったか?」
 強く強く握り返された手とみさきの顔を交互に見比べながら、浩平は問う。
「な、なんだか、びっくりしたよ」
「なんでだ?」
「ずんっ、って身体の奥に何か入ってくるみたいな感じだったんだよ」
「え?ここ?」
 ぎゅぎゅっ!
「あっ…なんだか、不思議な気分になっちゃうよ」
「気持ちいいのか?」
「そ、そうかもしれないね」
「なるほど」
 浩平は言われた部分を集中的に愛撫していった。
「あ、あ…あっ、あっ!」
 みさきが首を振りながら嬌声を上げる。その激しい反応に驚きつつも、浩平は夢中でそこをなで続けた。そうしていくうちに、浩平の指の先が触れているところに何か固いしこりがあるのがわかってくる。
「だ、だめ」
 みさきが情けない声を上げた。
「先輩?」
「み、みないで」
 浩平がふと視線を動かすと、みさきの身体の中から透明な液体がにじみ出てきている。
「あ…これ…」
「こ、浩平くん見ちゃだめだよっ!」
「先輩…」
「だ、だめっ!」
「もうそろそろ、いいか?」
「うっ…うん、私はいいよ」
 みさきが肩すかしを食らったような声を出した。
 浩平は素早く自分のズボンとトランクスを脱ぎ去り、準備する。前に交わろうとした時とは全く違う印象があった。悲壮感などない。ただ温かい安堵感だけがある。
「先輩、いくぞ」
「…うん」
 浩平は再びみさきと手を握る。そして自らのペニスをみさきのヴァギナにあてがうと、そこにはぬるりとした感触があって浩平を迎え入れようとしていた。前には無かった感覚だ。
 それでも慎重に、浩平は腰を前に進めていった。
「っ…あ、あっ」
 ぬめった感触のために挿入は比較的スムーズだったが、やはり狭い。みさきはやっとの事といった様子で浩平を受け入れていく。
 押し返されそうな圧迫感を感じながら、浩平はやっとの事で一番深くまで到達する。
「先輩…最後まで、入った」
「う、うん…浩平君のが、わかるよ」
「動くけど、いいか?」
「…いいよ」
 みさきが身を固くするのを感じつつ、浩平はゆっくりとペニスを抜いていった。途中まで抜いてから、また入れていく。どちらの動作も、している間にみさき自身のきつい締め付けが強すぎるほどに感じられた。
「うあ…浩平くんっ」
「先輩、ごめんな」
「だ、大丈夫だよ…私は、大丈夫だよ」
 言いつつもみさきは強く浩平の手を握りしめる。処女でないとは言え、一年もの間行為を経験していないのだから苦痛を感じているのは間違いないだろう。
「俺は、すっごい気持ちいいぞ」
「うん、浩平君、気持ちよくなって」
 涙を目に浮かべつつも、みさきはなんとか微笑みを浮かべようとしていた。
 少なからず罪悪感に苛(さいな)まれながらも、浩平は抜き差しの運動を続けていく。そのたびにみさきは手を強く握り返し、同時にみさきの中が強く締まって浩平に性感を与えた。
 悦びと痛みが入り交じった時が数分間流れ、やっと浩平は限界を迎える。
「みさき先輩、俺もう」
「うんっ…うん」
 浩平の頭を様々な判断がめぐる。だが、結局出来たのは直前に引き抜く事だけだった。
 びゅっ、びゅ…
「ん…」
 みさきの身体に、浩平の出した白濁の液がかかっていく。ほとんど顔に到達しそうなまでの勢いで、腹部から胸のところまで。前のままの髪型だったなら、髪の先にもほとばしった液が付着したかもしれない。
「熱いよ…」
「ごめんな、先輩」
「でも、浩平君のをいっぱい感じるよ」
 みさきは惚けた声で言った。
「はは…」
 綺麗な肌の上に点々と白濁の液が飛び散った様子はどう見ても汚された姿だったが、みさきはただ肌の感覚だけでそれを感じているのだ。
「俺も、良かった」
「うん」
 どこまでもずれている二人だったが、浩平は静かな幸福感を噛みしめていた。