Daily-EROtic 真琴

10/20
 くんっ…くんくんっ
「馬鹿、そんなに露骨に匂いなんてかぐな」
「なんか変な匂いするっ…」
「風呂上がりだ。そんなこともないだろ」
「だってするんだから仕方ないでしょっ。こんな所、いくら洗ったって汚いものは汚いわよっ」
 真琴がぐにぐにと手でつかんで上下させる。
「………」
「え? どうかした?」
「……いや」
「い、痛くたって自業自得だからねっ?」
 言いながら真琴は両手を使ってそれを挟み込んで、ぶんぶんと振り回すようにいじくる。
「………」
「………はぁ…」
 祐一がいつまで経っても平然と真琴を見下ろしているのを見て、真琴はそれを手で触ることに興味を失ってしまったようだった。
「それで、祐一、ほんっっとーにくれるのね?」
「ああ」
「嘘ついたら秋子さんに言いつけてやるわよ」
「ああ」
「それからこの場で蹴るわよ」
「ああ」
「…はぁ」
 のれんに腕押しな祐一を見て、真琴はますます気勢をそがれたようだった。祐一のそれを手でつかんだまま、祐一の顔を不審そうな目でずっと見上げる。
「知らないわよっ…病気になっても」
 真琴が祐一の太股に手をついて、顔を前に大きく突き出す。そして、鼻先にまで近づいた祐一のペニスを舌の先ですくうように舐めた。
「………」
 ぺろっ。ぺろ…
 そのまま、舌先で大きく膨らんだ先端の部分だけを何回か舐める。
「…思ったより、変な味じゃあないかも…」
「そうだろ」
「鼻で息をしないようにすればだけど…」
 確かに、真琴は口からのはぁはぁという呼吸の音を大きくしているようだった。舌を使いながら、時折やや苦しそうな呼吸を何回か連続して行い、また舐める作業に戻る。
「はぁっ…なんか、もっと大きくなってきたみたい…」
「口全体でしゃぶってくれよ」
「う…ん、でも、あとどれくらいすればいいの?」
「そうだな。たぶん、2,3分くらいだ」
「たぶん、ってなんなのよ…」
 真琴はそう言いつつ、あーんと口を大きく開けてペニスを口内に含んでいった。
「んぅっ…うう」
 意外と奥行きがある真琴の口は、祐一のペニスを綺麗に根元までくわえこむ事に成功する。ペニスの太さの形状に合わせた丸さに口を開いたまま、真琴は祐一の事を何か言いたげに見つめた。
「ああ、それでいい」
「ひはふっ…んう…」
 そのままではしゃべれない事に気づいたのか、真琴はペニスをいったん口から離す。
「あうーっ…なんか出てきたあっ…」
「なんだよ」
「しょっぱいわよぉっ…祐一、おしっこしたっ…」
「違う。よく見て見ろ。透明だろ? それに、粘っこい感じだろ」
「えー…?」
 真琴は渋々と言った感じで祐一のペニスの先に目をやる。唾液のために見ただけでは十分確認できないので、指の腹で先割れの辺りをぐにゅぐにゅと触りながら祐一の垂らしている液体を確かめる。
「これは男も女も出すものなんだ。清潔なもんだ」
「ほんとう…?」
「本当だ」
「信じらんないー…」
 真琴は不信を口にしつつも、またOの字に開けた口で祐一のペニスを包み込む。
「そのまま、頭を振ってくれ。それからさっきしていたみたいに、手を使っていじってくれ」
「ん? ん…んん」
 意外そうな顔をしながら、真琴はそれぞれの要求に従った。ツインテールを揺らしながらリズム良く頭を上下に振り、幹の部分が露わになる度にそこを手で撫でたり振ったりしていじくる。
 どうやら、真琴は、手を使うと祐一が痛がると未だに思いこんでいたようだった。しかし祐一が何も言わないのを見て、段々手の方の動きもスムーズにしていく。唾液でべっとり濡れているのを利用してつるつると手の平で素早いマッサージを加えたり、力の限りで握りしめたりする。
「そ、そうだな。そんな感じだ」
 手淫の方は必ずしも効果的な動きとばかりは言えなかったし、時にはサディスティックな責めとしか思えないような痛みも走ったが、口と舌の動かし方が大胆なので快感は十分感じられる。勢いだけでしているにしては、真琴の口淫はかなり的確で良い物だった。行為自体の意味をよく理解していない事がかえってプラスになっているのかもしれない。
「んっ、んっ、んっ」
 息苦しさのためか、多少潤んでいるような真琴の瞳が一心にペニスを見つめている。そして小さな唇が太い肉棒を一生懸命にくわえている。その様子を見ていると、普段の小憎らしい真琴の姿は感じられなかった。祐一の快感のために、心を捧げて奉仕しているようにすら見える。
 その想像が、祐一のペニスをずきんと衝いた。
「ま、真琴っ…一個じゃなくて二個にしてやるから、これから20秒間何があっても口を離すな」
「んん…? んん」
 真琴は一度口を止めて、こくっと頭を縦に振った。そして、すぐにまた口の動きを再開する。間断ないねっとりした刺激によって、祐一は瞬時に我慢の限界を迎えた。
「うっ…真琴!」
 がっ。
 祐一は真琴の頭をつかんで、無理矢理自分の股間に引き寄せる。
「んうーっ…?」
 びゅくっ! びゅっ、びゅっ…!
「!!!!」
 びゅっ、びゅっ…
「んっ、ふっ、んあああっ! は、はむぅーっ…ひょっほ! ゆーいひっ!!」
 口内に発射されたものを感じた瞬間、真琴は祐一の手から全力で逃げ出していた。そこまで強い力で抵抗されると思っていなかった祐一は、真琴を手の中から簡単に逃がしてしまう。
 びゅ…びゅくっ。
「ふあっ…ひゃだぁっ」
 しかし、直前まで押さえ込まれていたのだから完全に逃げられるはずもない。祐一の最後の大きい脈動が完全に真琴の顔に直撃していた。真琴は口の中に溜まった白濁液をどうする事もできず、舌っ足らずなままの声で嫌悪感を口にする。
「うっ…はぁっ」
 そして我に返ると、机の上にあったティッシュボックスに向かってダッシュする。
「う、うえっ…ぺっ、ぷぅっ! うっ…あぅ…にっがーいっ…」
 口の中のものを吐き出して、鼻の頭と目じりにくっついた液を取って、さらに口の中にまでティッシュを突っ込んで念入りに白濁液をこそげ取る。そこまで一気に済ませてから、真琴は怒りと不快と恥ずかしさのような物で顔をいっぱいにして祐一の方に振り向いた。
「ひ、ひどいっ! 祐一、何も言わずに出したぁっ!」
「だから、それも体に害はないものだって」
「そんなの関係ないわよぅっ…! すっごく苦くて、変な匂いもすごいし…まだ口の中に匂いが残ってるっ…」
 真琴はびしっ、と手の平を祐一に突きだした。
「あ?」
「あ、じゃないわよっ! お金ちょうだいっ」
「今からか? 今日はもう遅いし、秋子さんが心配するだろ。明日にしろ」
「口のなかがこんなままじゃあ眠れないっ…!」
「水でゆすいでこい。ついでに歯磨きしてこい」
「もうっ…肉まん、3個よっ!?」
「飲んでくれたら4個にしてやったんだけどな」
「頼まれてもやんないわよっ、そんなことぉっ…!」
 真琴のべろを突き出した顔。そこで祐一の意識はブラックアウトした。

 チ…チチッ…
(………)
 温かい布団、カーテンの隙間から差し込む線状の光。
 そして、下半身一帯には布団とは別の温かい感触があった。股間には、それとはまた別のぬるぬるした感触。
(はぁ…)
 祐一は分厚い布団と毛布とタオルケットをめくってみる。そこには、真琴がいた。祐一の股間の辺りに頭を載せて、無邪気な顔で眠っている。その真琴の体から発せられる自然な温度が、眠りの中に誘うような心地よさを持っていた。
「窒息するぞ、真琴…」
 祐一は下半身に覆いかぶさっている真琴の体から抜け出して、凍り付くような寒い空気の中に起き上がる。そして布団を真琴の顔が出る所まで下げてやった。
 股間のぬめついた感触も、まだ温かい。しかもペニスがカチカチに勃起していた。どうやら、性欲の処理を怠っていたために体が限界を迎えてしまったようだ。しかし生々しい放出後の感覚もすぐに薄れ、それはただの不快な濡れた感触になっていく。祐一は耳の後ろを掻きながら机の上に載っているティッシュボックスの方に向かった。
 頭が沈んでくるような冷気の中、祐一は真琴のことをちら、と見る。
 「今の」真琴の状態で、自ら性欲処理をする気になどとてもなれない。かと言って、あの暗い丘で交わったときのようにする事などは論外だった。「今の」真琴と、夢の中のように口論をする事など正に夢物語なのだから…
「真琴」
 誰にともなくつぶやいて、祐一は快感の代償である醜い液体を拭き取り始めた。



9/3
「だーっ、しつこいな。なんだってんだ」
「あ、あう…」
 祐一が勢い良く寝返りを打って真琴の方を向く。暗い部屋の中で、忍び足の真琴はばつの悪そうな顔を浮かべていた。
「俺は明日学校があるんだって言っただろ。お前もさっさと寝ろ」
「え、えっと…ぴろがずっと鳴いていて眠れないから」
「なんだよ…」
 さっきとは違う言い訳に、祐一がぼりぼりと頭をかいて上半身を起こす。
「んー…なんか、鳴いてるかもな」
 祐一は真琴の部屋の方を向いてから言った。
「ずーっとにゃーにゃー言ってるから」
「部屋の外に追い出して寝ろ」
「かわいそうだよぅ…それに鳴きながら真琴の足に頭をすりつけてくるから、外にぴろを出してもそのままドアを閉められないし」
「じゃあ、なんで今ぴろはお前の部屋で鳴いてるんだ」
「あ…あぅ」
 真琴が言葉に詰まる。
「こんな夜にお前と遊んでるヒマはない。寝ろ」
「祐一、意地悪…」
「意地悪もへったくれもないっての。子供はもう寝る時間だ」
「子供じゃないわよぅっ」
「うるさい。部屋に戻れ」
 祐一はまた布団をかぶると、真琴に背を向ける。
「………」
 しばらくの間は沈黙が下りていたが、
「…おい」
「………」
 ごそごそ…
「おい、真琴」
 ごそごそ。
「………な、なに?」
「『なに』じゃない…」
 すっぽりと布団の中に身体を入れてしまった真琴に、祐一が言う。
「これは俺の布団だ」
「う、うん」
 真琴は身体を祐一の背中に押しつけながら答えた。
「お前はお前の布団があるだろ」
「祐一、前は一緒に寝かせてくれたのに…」
「しおらしくしてもダメだ。前は前、今は今だ」
 背中に真琴の胸が触れる感触がある。祐一はそれから離れるように、布団を持って身体を動かした。
「わ、さむい…」
 真琴はそれにぴったりとくっついていく。祐一はさらに身体を動かして壁に身体が密着するところまで動いたが、真琴も同じように動いて祐一に身体を押しつけてきていた。
「…なんなんだ」
「だ、だって」
「『だって』じゃないだろ」
「あぅ…」
 もじもじと身体を真琴が動かしている。それに合わせて背中に触れている色々な部分も動く。
「何してんだ」
「祐一…」
 真琴がひときわ身体の押しつけを強くする。
「したくない?」
「したくない」
 祐一は一言で終わらせた。
「そ、そんなこと言わないでよぅ…」
「したくないものはしたくない」
「無理してるでしょ」
「してない」
 一週間に一回というのが、祐一の定めたペースだった。
 祐一の部屋は学校に行っている間に秋子に片付けられている。その状況と秋子の洞察力を合わせて考えれば、監視カメラが各所に設置されているに等しい。かと言って屋外で抱き合うほどに大胆ではない。
 結局祐一の17歳のプライドが選んだのは、たぶん正常値に見えると自分で思った状態にとどめておくというやり方だった。
「真琴はいいって言ってるのに」
「俺はいい」
「あ、いいの?」
「あほか」
「あう…」
「大体、いつもお前の方からなんて言ってこないだろ。何企んでいるんだ」
「な、なんにも考えていないわよぅ」
「嘘だ」
「………」
 真琴は黙り込んだ。
「図星か」
「そ、そうじゃないわよ…」
「じゃあなんだ」
「あ、あの」
 祐一が言うと、真琴はゆっくりと祐一の左手に手を伸ばしていく。
「なんだよ」
 それを、真琴の身体の方に引き寄せていった。祐一の手は、真琴と祐一の背中の間に割り込む形になる。
「んしょ…」
「無理に引っ張るなって。痛い」
 やがて、祐一の手は真琴のパジャマに触れた。
「?」
 しかしすぐに一度その布地から手が離される。そして次の瞬間祐一の指先が感じたのは別の感触だった。
「なんだこりゃ…あ?…おいっ」
 祐一が手を跳ね上げようとする。だが、真琴はその手をしっかり握って離さなかった。
「ゆ、祐一…」
「バ、バカっ、真琴、手離せ」
「やだ…」
 祐一は手を離そうと努力するが、いつの間にか両手でぎゅっと握られている手はなかなか動かなかった。そして、その指先には温かくぬめぬめした感触がある。
「あ…あぅ…」
 祐一の手が逃れようとして動く度に、真琴が熱い息を吐き出した。それに気づいた祐一は、手の動きをぴたりと止める。
「…真琴」
「なに…?」
「どうしたんだ、これ」
「ま…真琴もわかんない…」
「自分で、したのか?」
「な…なんだか…ぴろがずっと鳴いているの聞いていたら、頭が段々変になってきて…いつもはこんなことしないよぅ…」
「…はぁ…」
「祐一、助けてよぉ…」
「…わかったよ」
「ホ、ホント?」
「特別だからな。今日だけだぞ」
 真琴のショーツの状態を考えれば、しようがしまいが秋子に何か想像されるのは確実だった。
「うんっ…」
 真琴はいそいそと布団から抜け出していく。祐一も頭をかきながら、それを追った。

「…あうっ」
 真琴が頭を垂れて、はぁはぁと息を吐き出す。そしてヒップを高く突き上げて、侵入してくる物体の感触を受け止める。
 じゅぷ、じゅぷっ。じゅぷじゅぷ…
「っ…祐一…きもちいい…」
「真琴…」
 祐一が試すように腰を前後に動かしてみるだけで、真琴はあえいだ。普段とは比べ物にならない量の愛液に祐一のモノはすっぽりと包まれ、しかもひくひくと蠢(うごめ)いて締め付けてくる。
 じゅぷじゅぷ。
「あっ…あっ、あぅっ!」
 真琴が床すれすれまで顔を下げて、声を漏らした。頭を低くしたため、髪が背中の方から身体の横に垂れていく。祐一が腰を突き出すために髪は動いて、真琴の身体の左右にヴェールのように広がっていった。
 祐一は真琴の腰をしっかりとつかんで、力強く真琴の中を突いていく。普段はもっとゆっくりとした動きにするのだが、そんな事を気にせずに済むほどに真琴の中は潤滑液で豊富だったし、突く度に気持ちよさそうな声を真琴は上げていた。
 じゅぷ…ぬぷぬぷ、ぬぷっ。
 真琴は胸を床に押しつけてつぶすようにしながら、身体を前後に揺らしていた。時折身体を少し動かし、片手を乳房に当ててぐいぐいと揉む。そしてバランスを崩しそうになると、また乳房を押しつけてすりつける刺激を行っていた。もちろん、身体を動かすタイミングは祐一のストロークに合っており、奥をより強く突かれるようにしている。
「あぅーっ!」
 祐一が真琴のクリトリスをこねくり回してみると、鋭い声を上げて真琴が全身の力を抜いていった。
「そ、そこはもう…」
「しなくていいか?」
「う、うん…」
 真琴が身体を何とか持ち上げながら言う。
 普段はそこをいじくる事によって何とか真琴に快感を与えているようなものだ。祐一が触っていないのにクリトリスが既に固く尖っていた事を考えると、恐らく真琴が自分の指でいじった後だったのだろう。それにしても、真琴は敏感すぎるとも思えるほどの反応を返していた。
 じゅぷ、じゅぷ。
「はぁ…あぅぅ…」
 一定のペースで真琴の中を突いていくと、満足げな声が上がる。しかし同時に、その声は時間を追うごとに高く切羽詰まったものになっていった。祐一のモノを締め付ける力も強くなる。射精感も近づいてきた。
「真琴…俺も、そろそろ」
「う、うん…真琴も、もうダメだよぅ」
「もう少しだけガマンしろよ。もう少しだから」
「うん、頑張るっ…」
 真琴は床を両手の指でつかむようにして、身体を固くした。息を殺して、身体の動きも止める。
「…あぅ。…あぅぅ…あうぅぅ…」
「待て。もう少し」
「あうぅ…」
 じゅぷじゅぷっ!
 祐一が早くしようと思ってスピードを上げると、真琴の感じる快感も強くなってしまう。真琴は眉をしかめ、口元をぎゅっと引き締めて飛んでしまいそうな理性をつなぎ止めていた。
「よ、よし。いいな?真琴」
「う…あぅっ…はあああっ!?」
 ぎゅっ!
「あ、あっ、あっ…ああっ…あうーっ…」
 ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ。
 真琴は悲鳴のような声を上げながら、身体をビクビクと震わせていた。その痙攣に合わせて祐一のモノは強烈に締め付けられる。
「先にイッちゃったか…」
「あぅ…」
 目に涙をいっぱいにして、真琴がうめく。もういいという安心感で、一気にタガが外れてしまったのだ。
 …びゅっ、びゅっ、びゅっ!
「あ…」
 ようやく生まれた、熱い液体が奥を叩く感触。祐一は真琴のヒップに腰をぴったり押しつけて、絶頂感を味わっていた。
「…ふぅ」
「祐一…」
 真琴は後ろを向いて、少し申し訳なさそうな声になる。
「別にいいって」
「ご、ごめん…ガマンできないくらい気持ちよかったから…」
「だから、気にすんな…あ」
 射精を終えようとしていた祐一が、突然硬直する。
「…お、お前さ…今日って」
「…え?」
 未だぼうっとした声のまま、真琴は答える。
「だ、だめな方の日じゃねーか!?」
「え、え?あ…そうかも」
 きちんと交わる日をスケジュールに組み込んでいたために、その点をすっかり見落としてしまっていたのだ。
「ど、どうすんだっ…」
「どうしよう…」
 青くなる祐一、危機感の感じられない真琴。春の夜に、ぴろの鳴き声だけがずっと響いていた。


7/21
「わーっ!わーっ!ノ、ノックぐらいして入ってきなさいよっ!!わっ、わっ、わーっ!」
 どたっ。
 真琴がバランスを崩してひっくり返る。
「…何やってるんだよ」
「あうーっ…祐一が何も言わずに突然入ってくるからでしょぉっ…あっ」
 尻餅をついたまま抗議して、それから開いていた脚を慌てて閉じる。同時に身体を丸くして、裸の下半身を全身で隠す。
「ス、スケベーっ!へんたいっ、祐一ーっ!出てきなさいよーっ!!」
 目を閉じて、全力で叫んでいた。
「…場所が変わっても結局言うことはおんなじなんだな」
「ほ、本当なんだから、仕方ないでしょっ」
 上目遣いに目を開ける。祐一が部屋の中に入っていくと、真琴は少しずつ身体をずらして、何とか露出している肌があまり祐一の目に入らないように努力していた。
「ち…近づかないでよっ」
「…なんだこりゃ」
 真琴の警戒とは裏腹に、祐一が目をやったのは真琴の後ろに置いてあった雑誌だった。つまり、部屋に祐一が入ってきた時に真琴が見ていた雑誌である。
「勝手に見ないでよぅ…」
 言いつつも、真琴は身体を隠す方で必死である。その雑誌を気にしつつも、手を出して押さえるというわけにはいかないようだった。
「俺の部屋に侵入できないから自分で用意したのか…」
「知らないっ…」
「お前みたいなガキに、よくエロマンガが買えたもんだな」
「ガキじゃないもん」
 よく見ると、部屋の隅にコンビニの袋があった。祐一が冗談でそういう本を買いに行かせた時は、間抜けな質問をする真琴を店員が何かの勘違いをした子供だと思ったのだろう。だが堂々とコンビニでそれを買っている人間に対しては、コンビニの店員がわざわざ気を使う事もないというわけだ。
「なんだこれ、女の子同士のじゃないか」
 開かれていたページには、制服姿の少女が惚けた顔で互いの身体をまさぐり合っている漫画が描かれていた。
「知らなかった。お前はそういう趣味だったのか」
「ちっ…違うわよっ!」
「じゃあなんでこんなページ見てるんだ」
「え…えっと…そ、その子がちょっと真琴に似てるかなって思ったから…」
 しどろもどろになりながら真琴が言う。
 確かに、ショートカットの少女の上に覆いかぶさっている少女の髪型は真琴に似ていたし、ややきつい目つきも少し似ているかも知れない。髪の毛が黒髪ではない事も真琴に近かった。
「だからってな…」
「あう…も、もういいでしょっ…出てってよぅ…」
「ううむ…」
 祐一の中には様々な判断が交錯していた。良心的な物、真琴の将来を考えたもの、好奇心、私怨、自己本位の物、etc。
「罰が必要だな」
「…なっ…なんで……そうなるのよぅ…」
 真琴は不服そうな顔をしつつも、どこか元気が無かった。
「これまで俺にあれだけイタズラを仕掛けてきて未だ反省をしていない真琴には、少し罰を与えなくちゃダメだと思わないか?」
「なっ、なんで真琴に聞くのっ…!?」
「だが痛めつけるのは忍びないし、怒ってもまるで効果がない」
「なに考えてるのよっ!」
「そう言えば、18歳未満でこんな本を買ったという事で、青少年条例への違反もある」
「ゆ、祐一もおんなじでしょ…」
「以上から導き出される結論は」
「い、いい加減にしなさいよっ、ゆういちっ!」
「俺の前で今やってた事を続けるということだ」
「……!……!………!」
 真琴は目をまんまるにして、何事か叫ぼうとした。だが声にならず、口をぱくぱくさせるだけである。
「じゃあ開始だ」
「バ、バカーーーーッ!祐一、最低っっっ!」
 ようやく真琴が思い切り叫ぶ。
「しないのか?」
「しないわよっ!」
「お前、立場を結構分かってないな」
「あ、秋子さんに言いつけたら、怒られるのは絶対祐一に決まっているんだからっ」
 少しは判断能力があるらしい。
「名雪もいるからな」
「…え」
「この本を持っていけば、名雪も納得するだろ」
「ゆ、祐一の本だと思うかもしれないじゃない…!」
「残念なことに、ここにレシートがある」
「だから何なのよぅ…」
「今日の日付がついてるだろ。今日家の外に出たのはお前と秋子さんだけだ」
「っ……!」
 今日の昼、祐一と名雪はずっと今でテレビを見ていた。その時、どこかそそくさと真琴が家を出ていくのを、祐一も名雪も目撃している。
「あの時お前の態度おかしかったからな。名雪も絶対納得するぞ」
「あ、あぅ…」
「あいつみたいな奥手の奴にとって、こういう本見てひとりエッチしている女なんて軽蔑の対象でしかないだろうな」
「あ…あぅーっ…」
 それは、嫌らしい。真琴が悔しそうな悲しそうな顔になる。
「や、やっぱり祐一みたいな変態と一緒に暮らすのが間違いだったのよっ…」
 真琴は歯をきりきりと食いしばりながらも、恐る恐るに上半身を上げて脚を開いていく。
 やがて、粘液にぬめった真琴の秘部が少しずつ露わになってきた。
「前は履いたまましてたよな」
「うぅ…」
 何事か抗議しようとするが、全く意味がない事に気づいたらしい。真琴は潤んだ瞳で祐一をにらんでから、指を股間に這わせていく。
「じろじろ…見ないでよぅ…」
「罰だからな」
「そんなの嘘なくせにっ…」
 だが、そう言うと同時に真琴は指を秘裂の中に差し込んだ。ついに観念したらしい。くちゅ…と水っぽい音が聞こえる。
「随分濡れているんだな」
「…見ないでよぉ…」
 真琴は祐一の目を見たり、すぐに慌ててそらしたり、落ち着かない素振りで指を上下に動かす。
「あ…あぅ…」
「感じてるのか?」
「そんなわけ…ないでしょぅっ…」
 しかし真琴の秘裂は、言う先から負け惜しみだと言うことが分かるような状態だった。たっぷりとあふれ出した透明な粘液は、真琴が指を動かす度に、まるで中からかき出しているように外へ出てくる。ぴたりと合わさった割れ目の中はあまりよく見えなかったが、外側の部分からも真琴の状態を十分過ぎる程に判断できる。
 祐一の部屋でしていた時はショーツの下にあって見えなかった部分だったが、明らかに前よりも性感の高まり具合が違う事は祐一にも理解できた。
「う…う…うぅ…あぅーっ…」
「なぁ、真琴、ひょっとして帰ってきてからずっとしてたのか?」
「ち、違うっ…んんぅーっ」
 真琴が息を荒くしながら答える。だが、よく見ると、真琴の周りの床は、かなりの広範囲に渡って何かの液体できらきら光ってしまっていた。出てくる答えはひとつしかない。
「…感心したな」
「……ひくっ…」
 真琴が少ししゃくり上げる。泣き出しそうな様子は無かったが、涙が出てきているのは間違いない。
「………」
 くちゅくちゅっ、くちゅくちゅ…
 不意に真琴が指の動きを速めた。
「我慢できなくなったのか…」
「も、もうこんなの早く終わらせたいだけよぅっ…!」
「すごいな…そこまでぐちゅぐちゅになるほど濡れているのか」
「…バカッ…!」
 真琴は短く叫んで、指をとある一箇所に当てて激しく動かした。ごく小さな円を描きながら、押しつぶしているような動きである。
「そこが一番感じるのか」
「…うっ…あっ…あうっ…あうぅっ…ふ…あっ!」
 ピン、と真琴の身体が伸びた。指を割れ目の中に差し込んだまま、全身をぐぐっと反らせる。顔には不安きわまりないといった表情が浮かんでいた。
 …ビクンッ!
 そして、一気に痙攣する。がくんっ、と真琴が身体を折って、ビクビクと身体を震わせる。
「あ…あぅーっ…あう…」
 責め抜かれた後のような憔悴しきった真琴の表情は、意外と大人っぽくも見え、しかしやはり子供っぽかった。
「ご飯よー」
「あ…」
 階下から聞こえてきたその声に、真琴が我に返る。
「だそうだ。俺は先に行ってるから、後始末してから来いよ」
「ゆ…祐一っ…はぁ…はぁ…今日の夜は…眠れないと思いなさいよぉっ…」
「…お前、意味を理解して日本語使っているか?」
「言葉通りよぅっ…はぁ…ぜはぁっ…」
 いっぱいに涙を浮かべた目で祐一をにらみながら、真琴は息を整えるのに必死だった。


7/14
「おいおい…」
 思わず祐一は小声でつぶやいていた。
 直後にしまったとばかりに口を押さえるが、それでも全く真琴は気づいた様子がない。
 真琴はベッドの上で四つん這いの姿勢だった。ちょうど祐一からはスカートの方が見える。そして真琴の顔の横辺りに積まれているのは…祐一が隠しておいた雑誌だった。
 クローゼットやら机やらの引き出しは泥棒でも入ったかのように開けっ放しにされている。部屋に入ってきて、手当たり次第に探したのだろう。いたずらに使える何か、あるいは隠してしまっていたずらにする何か。
 確かに、あの本達が真夜中にリビング辺りに移動させられていたなら、祐一はしばらく秋子に頭が上がらなくなっただろうが…
 すり…すりすり…
 服の生地が擦れる音が聞こえてきている。真琴のスカートの下で、真琴の指が動き回っているのは明白だった。不自然な体勢ながら、差し入れた手は一生懸命に動いているようだ。
 最初に祐一が声を出してしまったのは、真琴の指が服の生地の上で動くすりすりという音が一端途絶えて、ごそごそという音が聞こえてきたからだ。恐らく、その時にショーツの中に指を入れてしまったのだろう。
 ぺらっ…
 真琴が一瞬指を止めると、左手で本のページをめくる音がする。
 そして、真琴は一層激しく指を動かし始めた。勢いのあまり、スカートがめくれて見えそうになったり、ずり下がってきたショーツの端が見えたりしてしまっている。
「あ…あぅ…」
 真琴が小さく声を漏らす。それ以来、指を動かすときにする音はすりすりという乾いた音ではなく、ぬちぬちという濡れた音になった。
 あ…あいつ、前からこんなことしてたのか?
 祐一も、さすがに呆れて見ているというだけでいる余裕がなくなってきた。ズボンの下で、分身が頭をもたげてきているのがわかる。
 特に考えずに真琴はこういった方向に疎いと決めつけていたが、どこの馬の骨とも知れないのだから、見かけによらずという可能性も否定できない。
 祐一の視界には、くちゅくちゅという水音とリズミカルに揺れる真琴のヒップがあった。まるで祐一を誘っているかのように。
 でも…
 祐一は自問する。
 こういう事に詳しい人間が、男の部屋に忍び込んでエロ本漁ったりするか…?
 祐一は真琴の事をじっと観察した。表情は全く見えない。しかし、その向こうに妖艶な笑みを浮かべた真琴がいるとはとても思えなかった。戸惑いと恥ずかしさでいっぱいになったまま、食い入るように本を見つめているとしか思えない。
 くちゅくちゅくちゅ…
 真琴は指を動かすピッチを速めていた。身体を前傾させるようにして、ほとんどあごがシーツについてしまっている。
 ………
「いや、なかなかいいものを見せてもらったな」
「えっっ!!?」
 部屋に足を踏み入れた祐一に、真琴は電光石火の速度で振り向いた。
「あうっ……わ、わわ、わーっ、祐一〜〜〜っ!」
 真琴は向き直ろうとしたが、足を絡ませて無様に転ぶ。取り乱しきっていた。
 ベッドの上で、真琴は尻もちをついたまま祐一に真っ正面から向き合う体勢になってしまう。
「あっ、あうっ、あ…だ、だめ…」
 かくんっ。
 真琴が首を折って、ぴくぴくと身体を震わせ始めた。
「あ?真琴?おい?」
「う…あぅ…」
 ビクンッ…
 真琴が、ひときわ大きく体を痙攣させた。そしてもう二、三度震わせてから、ぐったりとする。
「あ…はぁぁっ…」
 どうやら、祐一が声をかける直前に、崖っぷちまで来てしまっていたらしい。行為をやめても、絶頂に達するのを止められなかったのだ。
「…真琴、思いっきりパンツ見えてるぞ」
「えっ…見、見ないでよぅっ!祐一、スケベ、変態っ!」
 だが、祐一はそんな言葉をかけてしまっていた。真琴が両脚を閉じて、祐一のことをにらみつける。ぐしょ濡れのショーツは、一応祐一の前から見えなくなる。
「真琴の方がよっぽど…」
「あっ、秋子さんに言いつけてやるもんっ」
「それって、墓穴を掘るってわかってるか?」
「………お、覚えてなさいよぅ」
 その前にどうやって真琴の自慰を秋子に証明するかなのだが、真琴はすごすごと引き下がってしまった。ふらふらしながら立ち上がり、ドアから出ていく。
「やれやれ…」
 生まれて初めて女の子のオナニーと絶頂を目の前にしたというのに、全く感慨もなかった。
 祐一のベッドに残ったのは、少々のシミと、自慰をしている少女の写真が載っている雑誌の一頁だった…