Daily-EROtic 郁未

12/27
「…あ…!」
 お母さんの指が、ゆっくりと私の性器の上に当てられる。
 滑らかと言うよりも、しっとりと馴染んでくるような感触だった。お母さんはその指先を、私の性器のラインに沿って動かしていく。
「んん…んん…!」
 それだけなのに、私の体からはどんどん力が抜けていった。小さい頃から好きだった、台所の水気に満ちた匂いがお母さんの指先から入り込んできてしまうみたいな感じだ。いつもは、性器の刺激で気持ちよくなってしまう時はものすごく「今の自分」が近く感じられるのに…お母さんの指は、私を性的に興奮させながら懐かしさへと導いていく。
「お…お母さん…」
「郁未、座りなさい」
「うん…」
 お母さんの優しい言葉と同時に、私はぺたんと台所のフローリングに腰をついてしまっていた。お母さんはエプロンの端で指先を少しぬぐってから、私の身体の横に回り込んできて座る。
 ちゅ…
「…!」
 そして私の耳たぶにお母さんは唇を寄せて、舌で舐めてきた。
 ちゅ…ぺろ…
「あ…ああ…」
 普段でも、お母さんの吐息をそんなに近くで感じた事なんてない。お母さんの髪が触れるあたたかな感触も、包み込まれてしまうような柔らかい吐息も、赤ん坊の頃くらいしか感じる事ができなかったんだ。
 でも、今は…
 くちゅり…
「あ…あ…あ…!」
 お母さんは耳を舐めながら、私の性器に再び触れてくる。耳を舌が這い回っている間に、すっかり私の身体は興奮してしまっていた。浅く触れるだけで粘っこい音が立ってしまい、内側まで入ってきてクリトリスに触られると激しい快感が生まれてくる。
 くちゅ、くちゅ…くちゅ
「んっ…んっ…!」
 お母さんの指は私の突起を優しく転がしていた。ほんの少しも間を開けて休ませてくれたりしない、少し厳しさすら感じる責め立てだ。でも私はお母さんにそうしてもらう間に、ますますお母さんに依存したいという欲望を膨れ上がらせてしまった。
 くちゅ…くちゅ…
 体の奥からだらしなく愛液をあふれさせてしまうのが、とても心地よかった。フローリングの上に水たまりができていくのも分かったけれど、全然気にならなくて、むしろ興奮した。いつもなら、後になって自分で拭き取るときに空しさしか残らないけれど…今は後の事なんて気にならなかった。
「郁未…こんなに濡らして…」
「ご、ごめんなさい…」
 優しい叱りの声が、耳元から響いてくる。
「仕方ない子ね…」
「お母さん…おかあさんっ…」
 私は闇雲に手を伸ばして、お母さんのエプロンの下に手を入れる。少しでもお母さんに何かしてあげたかった。
「郁未、落ち着きなさい」
 お母さんはそう言って、私の手を押さえてくれる。そしてやんわりとした動きで、お母さんの足の付け根の部分へと私の手を導いてくれる。
 くちゅ、くちゅ…
 くちゅっ、くちゅっ。
 スカートの下に、お母さんは何も履いておらず…そこは、私と同じように濡れていた。お母さんが私と同じ物を持っているというだけで不思議でしょうがなかったけれど…私は指をかくんかくんと動かしてお母さんが気持ちよくなってくれるように努力した。
「上手よ、郁未」
「お母さん…私…」
 私の身体の中から、生まれて初めて経験するような大きな波がやってきている。
「怖くないのよ」
「お母さん…お母さんっ…」
「私は、ここにいるから…」
「うん…行かないで…お願い…だからっ…」
 ぶるっ…と私の体が震える。
 ビクンッ…! ビクンッ…ビクン、ビクンッ…! ビクンッ…!
「んーっ、んんーっ…んん…!」
 私はお母さんの匂いの中で…絶頂に達した…


「……何をしているの、あなたは」
(………!)
 聞きたくない…
 頭がグラグラする、空間も時間も姿勢も何もかも飛び越えさせられてしまったような不安定な状態。そんな中で、最初に頭に浮かんできたのがそれだった。なんだかわからないけど、聞きたくない。直感的、本能的にそう思っていた。聞きたくない。
「すごい事をしている物ね…」
「……あ……」
 私はむしろ静かな憂鬱さのような物を感じながら自分の状態を確認した。
(…やっちゃったんだ…私…)
 一度目ではない。
 私でない私に起こされるのも、私がこうなってしまうことも。
 蔑んだ瞳で、見つめられることも…
 一度目ではない。
 二度? 三度? もっと? 私には、そのどれかという事しか分からない。
 でも。
 いいんだ。もう終わるんだから…
(………)
 ぷち…ぷち…ぷち…
 私は、自分をつないでいたコードを切った。本当にコードがあったのかもしれないし、私がそう思いこんだだけかもしれない。それは分からない。だけど私は赤、白、黒の三本のコードを切った。暗闇の中でどうして黒のコードが見えたのかわからないけれど、コードを切った。
 ぶぅ…ん…
 そして私は闇より深い所に落ちていくのを感じた。



12/7
(クロス・オーバー)
「あ…」
 栞がベッドに上がってきた郁未の姿を見て、小さく声を上げる。
「…変?」
「いいえ…でも、男の人のも見たことがないですから…」
「そう…そうよね」
 郁未がさらりとしたうなずきを栞に返し、自らの身体を見つめる。
 全体にスレンダーながらも、胸とヒップの膨らみはそれなりのものだ。少なくとも、栞の少々未発達気味の体躯に比べたならば、かなり女性としての肉感に富んでいると言える。それに加えて、腰まであるのに枝毛すら感じさせない長い黒髪と張りのある白い肌、爽やかなメランコリを内包した美しい瞳がこの年頃の少女にあらざるような完成された魅力を醸し出していた。
 恐らく、その股間に女としてあってはならない器官がなかったのならば…それは完璧にすら見える裸体だったのだろう。
「怖い?」
「いえ、郁未さんがさっき力を使ってくださったせいかもしれませんけれど…ふわふわした気分で、あまり怖くはないです」
「気持ちいい?」
「まだ…そういうのをはっきりと感じているわけじゃないですけれど…」
 栞の目は少しとろんとした色を帯びている。郁未よりもさらにキメの細かい、純白すら感じさせる肌は薄紅色に染まり始めていた。栞が何らかの興奮を覚え始めているのは確かなようだ。
「見せて…」
「あっ」
 郁未がシーツの上をするすると栞の方に移動し、寝転がった栞の秘部にぴたっと指を伸ばす。
 くちゅぅ…
「濡れてる…わね」
「………」
 郁未が人差し指と中指で開いた部分を見つめながら言う。栞がかぁっ…と顔を赤くした。
「そんなに見ないでください」
「だって、栞のココかわいいから…」
 栞の秘裂には、そこを覆うべきヘアが生えていなかった。開腹手術を経ることなく退院できた栞なのだから、恥毛が全く存在していないのは恐らく人為によるものではない。
 ちゅく…ちゅ
 郁未はその子供のような秘裂に溶け出した透明な愛液を指に絡め、栞の微細な一点をそっと叩く。
「あぁ…」
「感じるでしょ…?」
「郁未…さん…」
 二・三度そこを刺激してくる郁未の指に、栞は細腰をくねらせて応えた。
「たぶん、これだけ濡れていれば大丈夫だと思うけど…少しは痛いだろうから、ガマンしてね」
 郁未はそう言いながら指を秘裂の中から抜き、身体をより前に進めて肉の棒をそこに近づけていく。
「いいえ…」
 栞は目にわずかな懐想と真剣さをにじませた。
「郁未さんがいなければ、私はもうこの世にいなかったはずなんですから…ちょっとだけの痛みなんて、なんでもありません」
「栞…」
「私の身体、好きにしてください…郁未さん」
「ありがとう…でも、本当に栞を抱きたくてあんな事をしたわけじゃないから…。ただ、私の力を少しでも役立てたかったし、その機会を探しているときに栞のことを本当にいい子だと思って、ああしただけだから…」
「わかっています…でも、郁未さん、もうそんな事を気にしないで、郁未さんが好きなことをしてください…」
 栞が脚を少しだけ開き、腰を浮かせて郁未を導こうとする。
「…うん」
 郁未は答え、肉の棒をぐいと栞の方に向かって突き出す。その先端はほどなく栞の甘酸っぱい液体が流れ出す部分を捉えた。
「力、抜いて」
「はい」
 腰を持ち上げられた栞は、少しだけ緊張を顔に浮かべながらも素直にうなずく。
「…栞っ」
 郁未は一声つぶやいて、腰を強く押し出した。
 にちゅっ…
 狭い部分を押し開いて、郁未のモノが入っていく。先端部分だけは栞の愛液の滑りを使って比較的スムーズに入ったが、そこからは栞の純潔の部分が郁未のモノを押し返そうとしていた。
 ぐぐっ…
「んっ…」
「ごめんね…」
「大丈夫です…」
 短いやり取りを交わし合い、自然と二人の手がつながる。そして郁未は力を込めて腰を押し出し、栞の処女を奪っていくプロセスを完遂させようとする。
「うっ…あ…」
「も、もう少しだからっ…」
「はい…郁未さんっ…」
 …ずっ。
 郁未のモノが栞の奥を突いた。
「は…入った」
「郁未さんの…とっても大きいです…」
「痛いでしょ…?」
「いいえ…郁未さん動いてください…」
「…栞」
「郁未さんが力を使ってくださったから、少し気持ちいいような感じもしますし…」
「本当に、痛かったら、言うのよ」
 郁未は確かめるように言ってから、腰を引いていく。
 …ずぐっ!
 そして、再び前に強く突き出す。
「………」
 栞は反応しなかった。
 ずずっ…ずぐっ!
 ずずずっ…ずぐぅっ!
 郁未はやや不安を顔に出しながら腰を動かしていたが、栞が苦悶する様子をあまり示さないために少しずつ動くペースを上げていく。
「し、栞の中…すっごい気持ちいい…」
「郁未さんっ…」
 栞はつないだ手を強く握る。郁未はそれを握り返す。
「わ、私もなんだか気持ちよくなってきました…」
「…本当にっ?」
 ずずっ…ずちゅっ!
 郁未は腰を動かしながら言う。確かに、最初から出てきていた栞の愛液が量を増してきたようにも思えた。
「あんまりよくわからないですけど…身体の中がジーンとなってきて…熱くなって」
「ん…栞っ…!」
 まだあどけなさを残す栞の、戸惑いと官能が入り交じった悩ましい表情。栞のきつい中を動いて高まっていた郁未は、それを見つめて一気に快感を発火させてしまった。
「あっ…ああっ…私…もう出ちゃいそうっ!」
 郁未はきつく目を閉じ、激しく栞に腰を打ち付ける。ずちゅずちゅっと粘っこく粘膜が絡む音が響いていく。
「ください…郁未さんの、私の中に」
「う…うっ、ううっ…栞…栞!」
 …びゅくっ!
 郁未が、長い髪をばっと後ろに振り下ろすようにして身体を後ろに反らした。
 びゅっ、びゅっ、ぷびゅっ…
 結合部分を通して、大量の液体が飛び出す。
「…これが郁未さんのなんですね」
 栞は呆然とした声で言う。
「あー…あっ…はぁ…うん…」
「とても…熱いです」
 欲望だけを凝縮したような、薄い半透明の白濁液が栞の中に射出されていた。もちろん子供が出来る性質の物ではないが、郁未はこの上ない愛の交歓を感じていつまでも栞と一緒につながっていた…



11/20
「ん…」
 私は鼻に掛かった息を吐き出しながら、相田君のペニスを軽く握る。
「あっ」
 それだけで、彼はぴくんと体を跳ね上げていた。私はくすりと微笑んで彼の驚いた顔を見つめる。
「あ、天沢さん」
「これくらいで驚いていちゃだめだよ…」
「え…あっ」
 ペニスの表面を私が指で撫でると、相田君がまた声を出して反応した。その初々しい様子に、私は思わず指での刺激を続けてしまう。
「う…うっ…天沢…さん」
 ひとなでする度に押し殺した声を出す相田君に、私は本格的に手淫を始めてしまいそうになった。だけど、それをとどめる。それだけじゃ、彼が自分でしているだろう行為とあまり変わらない。
「ねぇ、相田君もオナニーするの?」
 しかし、私は次の行為に移らず、そんな質問をしていた。子供の前でプレゼントを出し惜しみしている大人のような気分だ。
「え…」
「恥ずかしがらずに、答えて…」
「………う…うん」
「やっぱり、相田君でもするんだよね…」
 私はそう言いながら、相田君のペニスの先の方を握ってぐにぐにと動かす。
「う、うんっ…」
 少し強くなった刺激に、相田君はビクッと体を震わせながら反応した。
「相田君、私ってオナニーしていると思う?」
「……え……」
「どう思う?」
 私は微妙な笑みを浮かべて相田君を見やる。
「……あ、天沢さんは…していないんじゃないかな…」
「…ううん、してるの…」
 すこし視線を彼からずらして、私は告白する。
「こんな女の子、キライ?」
「う、ううんっ…そんなこと…ないよ…」
「ありがとう…」
 私のことを気遣った返答をしてくれる相田君は、やっぱり優しい。
「私、相田君が好きだから」
「…僕もだよ」
 彼の言った意味は、彼がナルシストであるという意味ではないはず。そんな勘ぐりを入れてしまう私は、性格が悪い。
「相田君が、好きだから…エッチなこと、するね」
 …はむっ。
「あ…!」
 私が相田君のペニスをくわえると、彼はまたビクッと体を震わせた。当然、さっきよりもその反応は大きい。
 ちゅぽ、ちゅぽ
「あっ…だめ…天沢さん、そんなところ…」
 ちゅぽっ。
「ううん、相田君のすごくおいしいっ…」
 私はぺろっと舌を出したまま、子供っぽく作った声で言う。
 …ちゅぽ、ちゅぽ…っ
「あっ…あ、天沢さんっ!」
 先の方を唇でしゃぶるようにしながら、舌を使って尿道口の近くを舐める。手も使って、根元の方をしゅっしゅっとしごいたりフクロの所を撫でてあげたりする。
「あ…あっ」
 彼も、私の動きに満足してきたようだった。いたずらっぽく彼を見上げている私のことをやや不安そうな目で見つつも、おとなしく私の行為に従っている。
「だ、だめっ! 天沢さん、僕もうっ!」
 そこへ、唐突に相田君が言った。
 ずいぶん早い。まだ私は男の子をメロメロにしてやったという達成感を、半分も満たしていなかった。私が口でしてあげる時の、ひとつの楽しみなのに。
 最初から慌てている男のコ、最初は平気な顔をしている男のコ、そのどちらも私がして上げている内にどんどん弱気になっていって、ついに耐えきれなくなって出してしまう。そのプロセスを、私はとても気に入っているのだ。
 ちゅぽ、ちゅぽ
 でも、おち○ちんを触っただけであれだけ反応してくれたり、変なことを答えてくれたりしたし、そんなに悪くもないかもしれない。
「だめ、だめっ…で、出ちゃうよ!?」
 そんなのは最初っから決まっていたこと。
「あっ、あっ…だ、だめっ! 天沢さんっ!」
 じゅる…
「あ!」
 相田君が、無理矢理な動きで私の口から逃げる。…タイミング的に…!
 びゅぐっ、びゅぐっ、びゅぐぅっ!
「っ!!」
 反射的に目を閉じた私の顔に、熱い白濁液が飛びかかる。
「ご、ごめん、ごめんっ! 天沢さん…!」
「う……」
 私は目の近くに飛んできた精液だけをこそげ取って、目を開く。最初の何回かのあとは彼が手で押さえたのか、私の顔に掛かる事はなかった。それでも、かなり溜まっていたらしい相田君の精液は、最初の数回分だけでも私の顔のあちこちにたっぷりとついている。
「…すごい出したね」
「………」
「ひどいよっ。こんなに、顔にいっぱい…」
「ご、ごめんっ…」
「ふふ…怒ってないよ。でも、お返しに…」
「え」
「私のも舐めてっ」
 下から、誘惑するような目で見上げて私は言った。
「…うん」
 うなずいた彼の目は、私の身体への興味を隠して静かに燃え盛り始めているようだった。

…これがあなたの認識?
「………」
…随分とまた、都合の良い記憶の改竄をしているものね。
…あなたは、真実より清楚…彼は、真実より淫乱…
「あ…相田君は…相田君は」
…そうね、あなたは真実を知っていて、その上に妄想を上塗りしているだけ。
…自分でも逃げていると知りながら、思い出す度にそこに妄想を貼り付けているのよね?
「だ、だけど…」
…なら、回顧してみればいい。
…あなたは、あの日のあなたになる。
…でも運命は変えられない。
…同じことを繰り返してくればいい。
…それで知ればいい。
「やめてっ…」
 私の意識が、混濁していく。逃れようとあがいても、ムダだった。



10/30
「…何をしているのですか」
 葉子が言う。
 厳しく諌めようとしているような、それでいてどこかに諦めの交じったような声。哀れんでいるようにも思える声。
 そんな声を発した葉子は、薄いタンクトップと下着しか身につけていないという状態でも、非常に強い理性と自制心を発しているように見えた。暗闇の中にぼんやりと浮かび上がった滑らかな肢体と長い髪は、いっそ神聖と言ってしまった方が説明が省けるほどに凛としている。
「よ、葉子さん…」
 一方、葉子に応えた声はしまりを失っただらしない物だった。声もそうだが、それ以上に吐息が獣のように荒くなっていることや、
 ぐちゅぐちゅ…
 ひっきりなしに立っている水っぽい音がさらに締まりの無さを強調している。何より、郁未の方は葉子と違って全裸だ。
「何をしているのかと訊いているのですが」
「………」
 2メートルばかり離れた所から葉子が郁未を見下ろす。郁未は呼吸法に不慣れなランナーのようにくっ、と息を詰めて葉子の事を一瞬見上げ、しかしすぐに視線を下ろして自分自身の体を恥ずかしい物であるかのような目で見つめた。
 ぐちゅぐちゅぐちゅ。
 慣れた手つきが、お椀のように整った乳房とじっとりと濡れそぼった秘部をまさぐる。今日や昨日に始めた行為というわけではない、毎日のように慣れ親しんできた行為だからこそ出来る動きだ。ただし、本来なら当然誰にも見られない所でこっそりと行うべきことである。
 しかしこのFARGOの中ではプライベートと言う物は極めて制限されている。郁未や葉子のようにAクラスの人間は個室を持っているが、郁未の部屋には同居人もいるのだ。シャワーもあるが、浴びているときも気分的にはとても独りとは言えない。郁未はFARGOに来て以来、性欲を爆発寸前まで抑え込んできていたのだ。それは事実だ。
「が、我慢できないから」
「何をしているのかと訊いているのですけれど…」
 葉子は表情一つ変えず問い続ける。
 ちゅぐ…ちゅぐ…
「オ…オナニー」
 指の動きを止めずに、郁未は言った。
「あ…あの…葉子さん、そういう言葉知らないのかな…」
「…知っています」
「あ、あ…そうなんだ」
「己の欲望と戦うための、ひとつの試練として。教えを受けました」
「………」
「もっとも、それは男の方の話としてです」
 葉子は目を閉じる。
「女性の体を持っている人間が、そういう事をするなど考えられませんから」
「………そ、そうなんだ」
 確かに、このFARGOも宗教団体である以上は欲望の制御を教えているのだろう。精子を排泄するという生理的目的すらない自涜が厳しく諌められるのは想像に難くない。いや、今葉子が言ったように、そんな事をするというのが想定されていないという所が本当なのだろう…
「で、でも、私はこういうのが大好きだし…あんまり、悪い事とも思わないし」
「欲望を制御できずに、暴走させてしまう事がですか?」
「他の人に迷惑をかけない事で我慢する必要って…」
「欲望は際限なく膨らんでいきます。今は郁未さんの中で収める事ができていても、明日も…いえ、一時間であろうと、一分であろうと、一秒であろうと、時が経てばいつでも押さえきれなくなり得るのです」
 葉子が目を開いた。
 空間が、くるりと歪んだ。

「…あぅっ…」
 郁未が低い声を出してうめく。
 少しだけ、違う姿勢になっていた。膝を立ててぺたんと座っていた状態から、膝を曲げた爪先立ちの状態になっている。野球のキャッチャーがしているような、それよりもっと不安定で恥ずかしい姿勢を郁未はしていた。
 しかし、うめきの原因は恥ずかしさではない。
「よ…欲望が膨らめば、こうなる事もあるのです」
 葉子は少し息苦しそうな声で言った。タンクトップと下着は身につけたままだったが、郁未の脚の間に入ってきて四つん這いになっている。そのすらっとした鼻先が、ねっとりした液体で濡れていた。一瞬のゆらめきの間に、葉子は郁未に口唇奉仕する姿勢を取っていたのだ。
「あ…ああ…葉子さんっ…」
 郁未は脚の付け根の部分が火のように熱くなって、ざわざわとしたものがその周りを駆け抜けるのを感じていた。そこに、葉子の顔が一瞬でも押しつけられていたと思うだけでも何かたまらない感情が郁未を支配していく。
「…あっ」
 その時、葉子が前のめりにバランスを崩した。
「あ…ああっ」
 郁未は偶然の事かと思ったが、どうも様子がおかしい。葉子は両手を床に突っ張ったまま、焦った顔をしている。葉子の顔と床に突いた手はぶるぶると震えて、よく見ると少しずつ前の方に、郁未の方に動いてきているようだった。
「よ、葉子さん?」
 まるで、見えないロープで前に無理矢理引っ張られているかのような…そんな感じだ。
「い、郁未さん、やめてくださいっ…」
「え? べ、別に私は何もしていないけれど…」
「行動だけではないです…郁未さんが、意志する事をやめなければ…っ」
 葉子の手の平が、ずずっと前に滑った。
「そうしなければ、私の体を引き寄せようとする力も止まりません…!」
「それって…」
「郁未さん…私の身体に何を感じているのですか!?」
 焦っていると同時に、険悪な声だった。
「よ、葉子さんの体…」
 キレイだ。
 教団の中で、禁欲的な教義の中で、純粋培養されるように育ったに違いない葉子は、郁未が教団の外では見かけたことがないほどにピュアな美しさを持っていた。興奮しきった郁未の体にとっては、交わり合いたくてゾクゾクするような対象だった。
「だ…だめですっ…私は、そんなことはっ!」
 葉子が顔を横にそらそうとするが、それすらも何かの力で防がれているようだった。葉子は15度ばかり顔を回転をさせた所で、郁未の欲情した性器から目だけでも必死にそらそうとしている。突っ張った両手の方は、もう郁未の脚の下に入り込みそうな所まで来ていた。
 郁未が体を引けば、それで済むはずだ。
 後ろを向くだけで、葉子の顔が密着するという事態は避けられるはずなのだ。
 で、でも…
 葉子さんの体が近づいてくるのが私のせいだなんて、信憑性がないし…それに、私が無理矢理押しつけさせようとするわけじゃなくて、私はただここに座っているだけ…そこに、勝手に葉子さんが顔をつけようとしているだけ…
「だっだめですっ! 郁未さん、何を…」
 葉子の顔が引きつる。
 私の責任じゃない。
 …ぐちゅぅっ!
「あっ…!」
 葉子の体は後ろから跳ね飛ばされたように動き、郁未の濡れそぼった部分に葉子の顔面が思い切り押しつけられた。
「くふぅっ…」
 郁未は思わず声を漏らす。
 さんざん弄くった部分は、ただ顔が押しつけられるだけでも激しい快感をもたらした。ましてや、それが清楚な葉子の顔だとなれば興奮は何倍にもなる。葉子の綺麗な頬が愛液でべっとりと濡れているさまを想像すると、郁未はそれだけで達してしまいそうになった。
「っ…あっ…」
「ううっ…ああーっ…葉子さんっ」
 息苦しさからか、葉子の唇が動く感触がある。郁未ははしたない姿勢のまま葉子の頭をつかんで、ぐいぐいと太股で葉子を挟んでいた。自然と腰が前後に揺れ始め、それによって葉子の口が郁未の性器を撫でる。
「あっ…はぁっ…!」
 葉子の口の中に、わずかであっても自分の愛液が入ってしまったかもしれないと思うだけで郁未は葉子を犯したような気になってしまった。麻薬を誰かに打ってやったのと同じような気分かもしれない。罪悪感と、無理矢理作り上げた仲間意識が得も言われぬ興奮をもたらすのだ。
「よっ…葉子さん、うっ…気持ちいいっ」
 郁未はいやらしく腰をくねらせ、葉子の唇をありったけに感じる。それはほとんどオナニーと変わらない行為だったが、郁未は下手なセックスをしている時よりも気持ちよくなってしまっていた。喩えるなら、好きな男の子の机に秘部をすりつけてオナニーをした経験の時の快感に近い。
「ふわっ…あー…ああっ」
 ぎゅう…
 太股を思い切り締めつけ、郁未は真っ白な意識の中に放り出された。
「あ…ああ…葉子さん…葉子さぁん…」
 天を仰いで、うわごとのように繰り返す。
「これが、あなたの欲望なのですか」
 郁未に見えない所で、葉子が言っていた。

「これが、あなたの望むことだと言うなら…あなたは何なのですか」
 …なんだろう?
「でも、私はあなたと同じものにされてしまいました。今の行為によって」
 ………
「十年近くも守ってきたものが、無くなってしまいました」
 私なら…十年前は…
「あなたと同じものであって、私がどこに向かえばいいのか…あなたは教えてくれるのですか」
 …わからない。
 私も、どこに向かいたいのか、確かめるためにこの教団に来たんだから…
「期待はしていません、全くしていません」
 確かめるためにここに来て…あいつのせいで、オナニーも満足にできないで…
「あなたに、私の気持ちがわかりますか?」
 どうだろう…
 わかるような…気もするんだけどな…
 そう思った時、意識は闇の中に落ちていった。



10/27
(細かいところでアラがあるのは必至っぽいですが、勘弁してくださいm(__)m)
「え…ここ、どこ…?」
 郁未がつぶやく。目の焦点がまだ合っていなかった。
「ど、どうする?押さえ込まないと、驚いて逃げ出す可能性もあるんじゃねーか?」
「い、いえ、次元転移した後ですから、そうそう身体を簡単に動かすことはできないのではないかと思います」
「そうか…」
「で、ティリアさん…」
「なに?」
 真顔で見返されて、エリアは沈黙する。
「あの、なにと言われましても…あ、あの、どうぞ」
「どうぞって…」
「ティリアがあの娘をやっちゃえってことだろ」
「そ、そうですっ」
 聞こえたなら理不尽に聞こえたに違いない台詞は、幸いなことに郁未の耳には届いていないようだった。郁未はまだ目の焦点すら合っていない状態で、高い天井をぼんやりと見つめているだけである。
「はぁ…わかったわよ」
「は、はいっ、頑張って下さいっ!」
「怖がらせるなよー」
 二人の声を背に、ティリアは赤く統一された服を少々気怠そうな手つきで脱いでいった。
 ぱさっ。
 肌にぴったりと張りつくような下着を脱ぎ去ると、ティリアは寝台の上に郁未に向かって歩いていく。
「…あ…?」
 その動きに、吸い込まれるようにして郁未の瞳の焦点が合った。
「気づいたかっ…」
 サラが警戒した声を出して、飛び出せるような身構えをする。
「え、えっ…なんで…ここは…」
「ちっ…」
 鞭を構えて舌打ちすると、サラは勢いよく地面を蹴りかけた。
「大丈夫です…! やっぱり動けないみたいです」
 それをエリアが止めて、ひそひそ声で伝える。
「か、からだ…うごかないっ…」
 郁未が怯えた声で言った事でそれは確認される。サラも鞭をしまい込んで、ティリアと郁未の動向をじっと見つめ始めた。
 きっ…きぃっ…
 ティリアが寝台の上に身を載せると、木の部分がきしむ音がする。
「だ、誰なの…あなたは…!」
「悪いけど…あなたも、こういうの、嫌いじゃないって聞いたし…手加減せずにやらせてもらっていい?」
「な、なにをっ…いやっ! 触らないでっ…!」
 ティリアの手が胸に伸びると、郁未は鋭い声を上げた。しかし身体はまるで動かない。首を左右に振るのが精一杯のようで、そこから下は完全に動かなくなっているようだった。
 ふにゅ、ふにゅっとティリアの手が動く。気のない手つきであるようでいて、緩急をしっかり踏まえた動きだった。7人もの少女を例外なく絶頂に導き、そこから加護の力を得てきたのは伊達ではない。
「や、やだ…何してるの…!」
 郁未が必死にティリアから目をそらしながら叫ぶ。しかし胸の先の蕾をつつかれたり転がされたりすると、郁未の中から長らく忘れていた甘い感覚がよみがえってきた。
「…乳首、立ってきてるな」
「情報は間違ってないってことでしょうか…」
「い、いや、あなた達なにっ…見ないでよっ!」
 郁未は完全に動けないと判断したのか、サラとエリアが寝台の方に近づいてくる。二人の平然と郁未の肢体をながめる平然とした目つきに、郁未は羞恥の感情を火のように燃え上がらせた。
「もっと、思いっきりやってやれよ。こんな風に」
 ぐにゅ、ぐにゅう…
「いや、いやあっ…やめて…」
 サラが片方の胸をつかんで乱暴に揉み回すと、郁未はすすり泣くような声を出して反応した。だが、既に興奮し始めた肉体はそんな乱暴な愛撫も快感として受け入れてしまった。数ヶ月間の禁欲も性に熟知した少女の愛撫の前には全く意味がなく、郁未は1分も持たずに快楽の中に取り込まれてしまう。
「サラ、そっちにしてあげていて。私はこっちをするから」
「オーケイ」
「やだっ…そこは…」
 郁未はティリアの指がすーっと秘裂をなぞった瞬間、全身をぴくりと震わせる。ようやく少しは動き始めた身体も、快感に反応している事を示すくらいの役にしか立っていないようだった。
 ぎしっ。
 サラも寝台の上に飛び乗り、郁未の顔の上にヒップを押しつけるような位置から郁未の胸の膨らみを両方からぐいぐいと揉む。そして、先端の蕾をぴしっぴしっとさばくような手つきではじく。
 ティリアの指の方はもう少しおとなしめの手つきだったが、敏感な粘膜に直接指が触れてきているのだから、快感でないわけがない。郁未はサラとティリアの身体に全身を覆い尽くされるような状態で、二重の快楽に悶え始める。
「顔が…真っ赤になってますね…」
 エリアはサラのヒップの下敷きにされそうな郁未の顔を見つめながら言った。それは心配心から出てきたものだろうが、快感に歪み始めた顔を見られている郁未はたまったものではない。なまじエリアが本当に心配そうな顔をするものだから、ますます恥ずかしかった。
「そりゃそうだ。こいつ、感じまくってるみたいだよ」
 サラが搾り取るように強く乳房を揉んで、それからピンピンと強く蕾をはじく。
「んっ…ふぅぅっ」
 郁未が目を大きく見開いた。
 くちゅくちゅ…
「あっ…この子、すごく濡れやすいみたい…」
 ティリアが少し驚いた声で言って、愛液を粘膜の全体に絡めるような指の動きをする。
「しかも、今胸を思い切りやってやった時だったよな。Mっ気もあるんじゃねーのか?」
「やっぱり、ティリアさんとサラさん相手でも興奮しているんですね…」
 エリアが言う。郁未は相対的には味方かと思っていたエリアにまで辱められる言葉を吐かれ、絶望的な表情で涙を流した。それでも、郁未はますます身体を興奮させてしまう。
「エリア、こっちに来て」
「は、はい」
 ティリアの声に、エリアは寝台の頭の部分からティリアの横の辺りまで移動する。
 つぶっ…!
「ひぃっ…あっ…あああーっ…!」
 エリアの見守る前で、ティリアは指を郁未の中に思い切り突き刺した。
「すごい…締め付けてくる…」
 つぶっ…くちゅ…くちゅっ
「あ…すごい…」
 脇から二本目の指をティリアが入れてもやすやすと飲み込んでいく郁未の許容量に、エリアも目を丸くした。しかも、郁未は苦しむどころか、余計にあえぎの声を大きくしたようだ。
「エリアも…ココを触ってあげて」
「………」
 こく…とエリアが唾を飲み込んだ。ティリアの指したのは、女の最も敏感な地点、三人の中では比較的奥手のエリアも十分に快感を感じられる事を知っている部分だ。そこを刺激したら、ティリアやサラよりも感度の点では勝っているかのように見える郁未はどうなってしまうのか。
「な、何をするのっ…!?」
 郁未が叫んだ。エリアは、サラの身体が邪魔になって見えない郁未の顔の方を一度だけ見やる。
 だが、知的な少女としてありがちな事に、エリアは自らの中に生まれた純粋な好奇心を内部にとどめおく事が出来なかった。細く真っ白な指が、郁未の充血した部分に近づいていく。ティリアが指を使って思い切り広げた割れ目の中に、綺麗な指先が恐る恐る侵入していく。
 一瞬、全員が動きを止めて沈黙した。
 …つんっ。
「うっ…ああっ…!」
 郁未は軽い雷撃の魔法を受けたかのように身体をひくつかせる。
 つんっ…つんっ。くりっくりっ…ぐにぐにぐにっ…
「い、いやあっ…やだ、やめて…そこは…そこはっ!」
「す、すごい大きくなってきましたね」
 エリアは寝台の横から指だけを突き出して、郁未の秘核を指で振動させ続けた。繊細な指の腹は郁未の最も敏感な部分を完全に捉え、離さない。
 ちゅぐちゅぐちゅぐ…
「そりゃそうよ、これだけ敏感な子があんまりした事がないなんて事があるわけないし」
「ティリアよりも好き者か…世の中は広いな…って、こいつは異世界の娘だったか」
 動きを再開したティリアとサラも、それぞれに郁未の敏感さと淫乱さについて感想を口にする。もちろん、その間も全く動きは衰えていない。
「い、いや…もう許して」
 郁未が喉をそらせて、力を失った声で言う。しかし、三人は申し合わせたかのように郁未を責め立てる手の動きを速めた。長い間共に戦ってきた三人のチームワークは、こんな場でも失われていないようだ。
 特に、エリアの指は驚くほど熱心に郁未の肥大した秘核を転がし、潰し、つまみ上げる動きを加えていた。高ぶりきってしまった郁未の肢体を見つめる目も、恐ろしく真剣だ。
「だ、だめっ…もう…はああああっ…!」
 郁未の声がうわずり、寝台に敷かれたシーツをつかんでメチャクチャにする。久しく感じていなかった強烈な快感が、眼前に迫りつつあった。三人の技巧的な少女に責められると言う郁未ですらもかつて味わった事のない攻撃に、郁未の身体は抵抗しきれない。ついに郁未はありたけの力を振り絞って自分の腰を持ち上げ、ティリアとエリアの指をより強く感じるように試み始めた。
「おっ…本性が出てきたみてーだな」
「だけど、もうイッちゃうみたいね」
「せっかくだから、これ以上ないくらいにしてあげましょう」
 エリアが秘核を二本の指ではさみこんで、力一杯に押さえつける。
「あっ…うあああああーっ!」
 非力な少女の指とはいえ、そんな所を思い切り刺激されて無事でいられるはずはない。郁未は全身をぐぐーっと収縮させて、そのまま達してしまった。
 ビクン…ビクッ…ビクッ…
 郁未は押さえつけられた中で全身を震わせ、あまりにも強いエクスタシーに身を委ねる。同時に郁未の全身が真っ白な光に包まれ、それが一気に膨れ上がって部屋中を満たした。

「あ…」
 郁未にまたがっていたはずのティリアの腰が、かくんと寝台の上に落ちる。
「消えた…な。帰っちゃったのか?」
「え、ええ、そうです」
 エリアは先だけが粘液に濡れた指を見つめながらうなずいた。
「あの子…加護が…」
「いや、久しぶりに楽しんだなっ…」
「八番目の…? でも、そんな」
 ティリアは独り、何事かをつぶやき続ける。
「それが第一の目的じゃないんですからっ…」
「私の中に…加護が来たのは間違いないし…」
「いいじゃねーか、やる事は同じなんだから」
「何か…良くないことが…」
「そんな短絡的な…」
「私…ちょっと、調べたいことがあるから…しばらく、ここに戻ってこないかも…」
『…えっ?』
 突然ティリアが放った言葉に、エリアとサラは素っ頓狂な声を出してティリアの顔を見つめた。
「今ので、次元のバランスは整ったはずですが…」
「そうじゃなくて…ちょっと嫌な予感が」
「なんだよ、ティリア…話せよ、水くさいだろ?」
「………」
 ティリアは、何かの憂鬱な予感を顔に湛えながら、サラとエリアの顔をずっと見つめていた。
<END>



10/23
「………」
(うわぁ…)
 由依は思わず唾を飲み込んでいた。頬が赤くなってしまったのが自分でもわかる。
 その理由は、由依が覗いているものだった。皓々と電気がつけられた部屋のドアの、ほんの少しの隙間。その廊下側。由依はその隙間に片目を当てて、中を興味津々の様子で見ている。隙間はわずかだったが、部屋全体を見渡すのに十分なだけの視界は確保できていた。
 それから聴覚。かしゅかしゅかしゅ…と、何かをこするような音は由依の耳にもしっかりと届いてきている。そして、ぬち、にちゅっという妖しげな音もそれに交じっている。さらに、何かに必死で取り組んでいるような速い呼吸音も聞こえてくる。
(これってやっぱり…)
 由依の頬を、つつっと汗がつたった。
 郁未の体はちょうど由依に背を向けている状態だった。そして、何一つとして身に服を纏ってはいなかった。スレンダーなボディラインと滑らかな黒髪を惜しげもなく蛍光灯の白い光の下に晒している。その足元に、郁未の服が乱暴に脱ぎ捨てられていた。さっき由依が郁未とご飯を食べた時にも着ていた、タンクトップとスカートだ。それからブラジャーとショーツだ。郁未がどうやってそれらを脱いでいったのかが想像できるくらいに生々しい形で床に散らばっていた。
 もちろん、由依は最初見たときに「郁未さん、現在着替え中」という言葉を頭に浮かべた。しかし10秒経ち、20秒経っても郁未が同じ姿勢を保っているのを見れば、着替えにしては不自然過ぎる事は明白である。それに、郁未の手の位置は着替えようとしているにしてはどう考えても変な位置にある。由依に見えているのは背中だけだったから、体の前に回された手がどの辺りに当たっているのか断定することは出来なかった。
(えっと…でも、でも、あれわ)
 由依の脳裏には、一つの想像しか浮かんでこない。
(あっ)
 その時、由依はひとつの記憶に思い当たった。由依は郁未の部屋に一回だけ入った事がある。その時の家具の配置からすると、郁未は現在壁に掛けられた大きな鏡に向かって立っているはずだった。少し目の位置をずらせるようにすれば、見えるかもしれない。
 き、き、きぃっ…
(あっ…)
 由依はこっそりとドアの隙間を大きくしようとしたが、思ったよりも大きなきしみの音がした。由依は息をひそめて身を固くする。
「………」
(よかった…気づいてない)
 胸を撫で下ろし、詰めていた息を小分けに吐き出しながら由依は少しだけ視線を横にずらした。
(あ…い、郁未さん、してるっ)
 鏡の反射に映し出されていたのは、やはり由依の想像したとおりの光景だ。角度の関係で部分的にしか見えなかったが、郁未の手が胸と秘部に当てられてせわしなく動いているのだけは間違いない。
 何より、鏡に映った自像を見つめる視線がおかしかった。血走ったような惚けたような目。由依の経験した事がある、襲いかかってくるような凶悪な欲望の目とも違う。由依には形容できなかったが、何か間違っているような、見てはいけないような目だった。
(郁未…さん)
 由依はどうしたものか迷う。プライバシーの事として見なかった事にするのか、郁未のおかしい様子を気遣って見ているべきなのか、ただの好奇心で見続けていてもいいのか。由依の中では、どの感情が突出しているわけでもない。強いて言えば、何か変な声が聞こえてくる部屋をのぞき込もうとしたのは好奇心のためだろう。
 だが、今の郁未を見ていると、やはりどこか、おかしい…
「…え゛」
(え)
 郁未の手が止まる。
「わっ、わっ、わわわわわわわわわわっ!!? 由依っ!?」
「え、あの、わ、私じゃありませんっ! じゃ、じゃないや、えーとっ、あの…ごめんなさいっ!」
 がんっ。
「い…いたいぃ…」
 由依は慌てて頭を下げて、半開きのドアに思い切り頭をぶつけた。
 その衝撃でドアがふらりと開き、郁未の肢体の全てが由依の視界の中に入ってくる。郁未が胸と秘部に手を当てているのは変わっていなかったが、それは隠しているからであって、由依がいるとわかったのに変な事を続けているわけではない。
「あ、あの、これはね、これはね、これわね、由依」
「は、はいっ…」
 郁未が上げた声に、由依は思わず身を引き締めて次の言葉を待つ。
『………』
『………………』
『………………………』
「あ、あのね、由依、そんな真剣な顔しなくても…」
 由依の大きな瞳から放たれる強い視線に、郁未は困惑してしまったようだった。
「は…はい」
 いつの間にか普段通りの表情と声に戻っている郁未に、由依も毒気が抜かれたような顔になる。
「これは…」
「はい」
「これはぁ…」
「はい」
「これはっ……」
 郁未は適当な言葉で誤魔化そうとしたが、そんな適当な言葉があるわけがない。自分の行為を指示語対象としてしまった結果、そこから全く抜け出せなくなる。
「…はい」
 沈黙してしまった郁未に、5秒ほど遅れて由依がまた相槌を打った。
『……………』
 場の空気がどんどん気まずくなってくる。何と言っても、由依の方はフォローのしようがない所が問題だった。由依は悪夢的な性体験を経た事はあっても、気持ちいい性体験など知らないのだ。そんな由依に郁未の行為を感情のレベルで理解しろと言うのは無理な注文だ。
 かと言って、由依は論理的なフォローをきちんとこなせるような人間ではない。だが郁未自身が論理的なフォローをするほど間抜けな事もないだろう。かくして、どうしようもない沈黙がひたすらに二人の間を覆っていった。
「…由依がいけないのよっ!!」
 と、そんな論理を自分の中で展開させた結果、思わず郁未は叫んでいた。
「は、はいっ?」
「…いや…なんでもないわ…」
「え、え?」
 由依はぱちくりと目をしばたたかせる。
「あの、私が何か…あ、覗いたことは謝りますけどぉっ…」
「なんでもないわよ…ほんっっとうになんでもないから、気にしないで」
「は、はぁ」
 うなずきながら、由依はとりあえず郁未が困っている事だけは理解した。
「え、えっと、郁未さん」
「…なに?」
「やっぱり、気持ちいいんですか? そういうのって」
「……………」
「あ、なんだか…郁未さんが、すごく気持ちよさそうな顔していたから…思ったんですけど」
 由依はぎごちなく笑いながら、あまり思ってもいない事を言った。
「…そりゃあ、気持ち悪ければしないわよ」
「あ、あはっ、そうですよね」
 意外とストレートに返してくる郁未に、由依はまた小さな汗を頬に伝わせる。ますます会話が収束出来なくなったようだった。
「由依はしないの?」
「そ、そんな、私はしませんよぉ」
 3つめの汗が伝った。由依はぱたぱたと小さな手を振りながら後ろに一歩下がる。
「ふぅん…」
 郁未が一歩前に出てくる。
「み、見えちゃってますよっ…」
 同時に郁未は手で体を隠すことをやめていた。由依が慌て気味の声で指摘するが、郁未は特に気にする素振りも見せない。それどころか、その由依の動揺を引き金にしたかのように廊下の由依に向かってすたすたと歩み寄ってくる。
「あ、あの、郁未さん…もしもーし?」
 由依は言いながらさらに後ろに下がろうとしたが、そこはもう壁だった。
「………」
 郁未は無言でどんどん由依の方に近づいてくる。態度が急変した郁未は、表情も段々変わりつつあるようだった。由依がいる事に気づいた時に日常の顔に戻ったのと、ちょうど逆の変化が起こっている。
 由依はどこでそんな変化をもたらしてしまったのか理解できなかった。どこかにターニングポイントがあったはずだったのだが、自分ではよくわからない。だが、由依の何かしらの行動や言葉が郁未の何かに反応してしまったのは確かなようだ。ついさっきまでは可笑しいほどに動揺していた郁未が、今は座った目をして由依の方に近づいてきているのだから。
「い、郁未さん、気を確かに」
 身の危険すら由依は感じ始めていたが、逃げようがない。由依はこの天沢家に3日前から居候しているのだから。他にどこにも行きようがない。しかし、そんな境遇に思いを馳せるヒマもなく郁未は刻一刻と由依に近づきつつあった。
「…由依」
「は、はいっ、なんですかぁっ?」
 由依はできるだけ自然に、かつ少し甘えるようなニュアンスを含ませて返事する。普段からそういうしゃべり方を貫いている由依だからこそ出来るような芸当だ。
「こっちに、いらっしゃい」
「え…あの、ちょっと」
 誤魔化し笑いを浮かべたまま、由依はまた頬に汗の珠を浮かべた。
「いいから」
 郁未の手が、由依の手をつかんで軽くひっぱる。
「うぅ…わかりました」
 びくびくしながら、由依はその手に従って郁未の部屋の中に入っていく。
 向こうに見える鏡には、見るからに動揺している由依自身の姿が映っていた。郁未の顔は、さっき由依がのぞいていたときに鏡に映っていた顔に似てきたような気がする。
 かちゃん。
「あ」
 郁未は、家には二人しか住んでいないというのにわざわざ部屋のドアをぴったりと閉めた。由依はますます不安を募らせる。
「由依…」
「は、はい」
 郁未の方が裸で由依がきちんと服を着ている状態なのに、まるで逆のようだ。
「由依、やっぱりこういうのを見ると何となく嫌だって思っちゃうんでしょう?」
「べ、別に郁未さんがそういう事をするのは自由だと思いますし、郁未さんの事を嫌いになったりしませんよ?」
「そうじゃないわ。つまり、自分でこういう事をするなんて、夢にも思わないんじゃない?」
「そ、それは、あんまり思いませんけど」
「由依は、こういう事にいい想い出を一つも持っていないから、そうなっちゃうんじゃないかと思うの」
「は…はぁ、そうなんですかねぇ…」
 自慰をするのが普通の女の子なのか、どうなのか、自分のトラウマがそれに影響しているのか、どうなのか、由依は判断しかねた。ただ、何とはなしに身の危険が高まったような気がした。
「辛いのはわかるけれど、逃げてばかりじゃいつまで経ってもそれを克服することはできないわ」
「う…は、はい」
 まがりなりにも正論だ。由依は上手い逃げの理由を引っぱり出すことができなかった。テレビでしょっちゅう流れている、レイプのトラウマについての番組を由依は密かに呪った。
「ねぇ、由依…服を脱いで」
「い、郁未さん」
「こういう事がどういう物なのか、歪んだ形ではなく知ることが出来れば由依も辛い記憶に立ち向かいやすくなるだろうし、男の子にも近づきやすくなるわ。そうすれば、辛い記憶をきちんと忘れ去る事もできるはずよ」
「は、はい」
 由依は確かに異性と話すのが苦手だが、それはどちらかというと女子校育ちに起因していると由依自身は思っている。レイプがそれに拍車を掛けたのではないかと言われれば、そうかもしれない。そうかもしれないが…
「私は、真剣よ」
「…ええ」
 とりあえず、たぶん、郁未の今の言葉は事実だ。
 由依は内心涙しつつも、郁未の家に何から何まで世話になっているという事実の前では、郁未に無理矢理逆らおうとも思えなかった。
 …しゅる。
 シャツを脱いで、スカートを脱いで、ブラジャーを取って、ショーツを取る…
 由依は、ひとつ脱ぐ度にそれをきちんと床に畳んだ。郁未の脱いだ服は、相変わらず向こうに乱れた形で散らばっている。それだけでも、二人の立場の差が出てきているように見えた。
「ぬ、脱ぎました」
 華奢な裸体を手で隠しながら、由依は報告する。郁未は舐めるように由依の体を頭から爪先まで見ると、まずは由依の小ぶりな胸に手を伸ばした。
「リラックスして」
「はい…」
 由依の手をどかして、郁未の手が乳房に触れる。郁未はそこをさわさわと感触を確かめるように手の平で転がしてから、口を先端の部分につけた。
 ちゅっ…ちゅる。
 小さな突起を唇で包み込んで、飴玉のように何度も何度も舐めていく。さらに舌先でねとねととした愛撫を加える。片方を舐めている間はもう片方の手が吸い付くように逆の乳房を揉んでいた。交互に繰り返していく間に、由依の小さな胸はすっかり唾液に濡れてしまう。わずかながら、小粒の乳頭が勃起して粟立ち始める。
「ん…」
 しばらくすると、郁未は口を離す。そして、由依の事を少し責めるような目で見上げた。どうやら、由依があまりに冷静なのが気に入らないらしい。かと言って由依はどう反応する事も出来ず、郁未から目を少しだけそらすしかなかった。
 ふぅーっ…
 郁未がやれやれとでも言いたそうなため息を吐き出す。そして、由依の体に全身を絡みつかせるようにして体の位置を少しずつ下に下げていった。由依はお腹や脇腹を郁未の髪にくすぐられ、背中を回された腕で濃厚に愛撫され、郁未の熱くなり始めた吐息をいたる所に吹きかけられ、困惑した表情を浮かべる。どんどん緊張が高まってくる。
「あ…郁未さん…」
 最後に郁未はすとんと膝を床に落として、自分の顔を一気に由依の性器に押しつけるところまで来た。ヒップを思い切り抱えられ、脚に郁未の裸身をぴったりと押しつけられ、由依は一段と不安を高まらせる。
 郁未は鼻を由依の秘裂に何度かこすりつけるようにしてから、
 ……ぺろ…
 やや勿体ぶった様子で、舌を差し込んできた。
 なまあたたかな粘体の感触が変な所に生まれる。由依は反射的に腰を動かしそうになったが、しっかりと郁未が抱え込んでいるためにほとんど動かすことは出来なかった。
 べろんっ…んちゅぅぅっ…
 秘裂の底を思い切り舐め上げてから、唇で強力に吸引される。真空のできる音と、それが解放される肉体的な音。
 べろ…ちゅううううぅぅっ…
 郁未は、しばらくの間それを繰り返した。由依の、あまり起伏のない媚肉が郁未の唾液に濡れていく。由依はそれをただじっと見ていた。どう反応すればいいのかわからない。とりあえず、今のままでは郁未の唇が変な所を吸っているというだけでしかない。
 固い物が膣孔の近くに当てられたりすれば由依も恐怖を感じるのかも知れないが、柔らかくてあたたかな物が当てられているというだけでは特に恐怖も不快感も感じなかった。恥ずかしいという事と、
(ど、どうやったら郁未さん満足してくれるんだろう…)
 その二点を由依は一生懸命考えていた。しかし名案は浮かばない。二回も男の性器を受け入れさせられたにも拘わらず、全く優しく扱ってもらえなかった由依の性感は完全に未開発なのだ。知らないものを感じようとするわけにもいかない。だが、郁未は、やはり性器を執拗に舐め続けていた。
 由依が郁未に、このまましていても無駄なような気がするという事を告げようとした瞬間、
 べろん…ちゅうっ
 郁未は突然動きを止めた。
 諦めたのかと思った瞬間、由依を妙な感覚が襲う。
 ちろちろちろ…ちろちろっ
 郁未の舌は、今までと違って蛇のように小刻みに一箇所をくすぐり始めていた。刺激自体はさっきに比べて小さい。
 ちろちろ…ちゅっ。
(な…なんだろう、これ)
 軽い吸い上げを食った瞬間、由依はぴりっと不思議な感覚が背筋を駆け昇るのを感じた。
 ちろちろちろ…
 郁未は、そこばかりをひたすらに舐め続けている。由依はなぜそこばかりを郁未が舐めるのかわからなかったが、次第に郁未の舌が自分の性器の一点に引っかかるような感触があるのに気づき始めた。どうやら、そこだけポツンと点のような粒があるらしいという事を由依は理解する。
 ちろっ、ちろっ、ちゅう…ちゅう
(気持ちいい…)
 由依も、それが快感だと認識することが出来た。由依にとっては、生まれて初めての性感の体験だ。由依はそれを恥ずかしいと思ったり嬉しいと思ったりするより、不思議な気分になった。体の一部を刺激されるだけで気持ちよくなれるというのは、言葉で聞いて知っていても、由依にとってはあまり本当らしく感じられなかったのだ。
 知らず知らずの内に、由依は口を半開きにして、少し呼吸を荒くしていた。乱暴な陵辱しか経験したことのない膣孔も、半分開いたようになって透明な液体をわずかにとろかせていた。
(あ…)
 十分ばかりもそうされていると、不意に由依の意識がくらっと揺らめく。
 …ピク、ピク
 由依は、郁未の口の当たっている辺りをかすかに痙攣させた。微細ながらも、それは由依の体験した生まれて初めてのエクスタシーだ。
 …ぺろ。
 郁未は、外に出てきていた透明な液体をひと舐めで全てすくい取ると、由依に密着していた体を離す。
「…どうだった?」
「なんだか…不思議な気分でした」
「気持ちよかったでしょ?」
「そうかもしれません」
「また今度してあげるわよ。今度はもっとたくさんね」
「は、はぁ…ありがとうございます」
 郁未のずっと由依の性器に押しつけていて憔悴したように見える顔を見ていると、由依は郁未の意識がどのような所にあるのかよくわからなくなってしまった。
「それまで我慢できなかったら、ひとりでするのよ」
「し、しませんよ、そんなの」
「ふふ…そう」
 妙な笑い。由依は少しだけ口を尖らせてから、そそくさと服を身につけ始めた。



10/14
「お疲れさまです」
「ん」
 郁未はうなずきながら、背中に回していたエプロンの紐を外す。キッチンの洗い場には、二人の夕食の食器が綺麗に洗われて並んでいた。大きな鍋が逆さまになって乾かされているのを見ると、今日も夕食はシチューだったらしい。
「あれで足りたの?」
「はい」
「そんなに少食だと、外に出た時に何にもできないよ」
「そうでしょうか」
「そうだよ」
 郁未はエプロンで濡れた手を拭くと、近くに置いてあった椅子に掛ける。
「それで、どう? もう結構慣れた?」
「まだ…少し」
「そう。私は葉子さんがいいって言うまで大丈夫だけれど、ずっとこうしてばっかりいるわけにもいかないんだから、きちんと努力もしないとだめ」
「はい、すいません」
 葉子が郁未に頭を下げる。
「ううん、そういう意味で言ったわけじゃないから」
「でも、郁未さんにはお世話になりっぱなしで」
「あはは…私も葉子さんにお世話になりっぱなしじゃない」
「こんなことくらいしか…できませんから」
 葉子が、少し顔を赤くする。
「いや、だけどね、やっぱり、私も、助かるから」
「郁未さんなら、私なんかがいなければきっといい男の人と」
「ううん、私男運ないみたいだから。もうこりごり」
 郁未は二人掛けのテーブルに座っている葉子の所までやってくる。そして、あっという間に顔を近づけると葉子の唇に自分の唇を重ねた。
「んん」
 二人の舌が素早く絡んで、刺激し合って、離れる。
「いい?」
「もちろん、郁未さんが言うなら私はいつでも従います」
 葉子は椅子からフローリングの床に下りて、お尻からぺたんと座り込む。葉子の脚の間に、ヘアに覆われた秘部がのぞいた。Tシャツを羽織っているだけなのだ。
「…葉子さん、そのままもっとこっちに来て?」
「はい」
 郁未の誘導に従って、葉子は座った姿勢のままずるずるとフローリングの上を動いていく。郁未はそのまま後ろに下がって、キッチンの方に入っていった。葉子もその後をついていく。
「えっと、そこでいいや」
 冷蔵庫の所で郁未が止まる。葉子はそこから数十センチ離れた所で止まった。
 がら…
 郁未は冷蔵庫の一番下の野菜室を引き出す。葉子はその様子を何も言わず見ていた。
 葉子の視界にも、郁未のヒップと恥丘の膨らみは見えている。Tシャツしか羽織っていないのは、郁未も同じだ。葉子のTシャツよりは大きいから、普通に立っているぶんには陸上部の女の子風の外見になる。しかし身を曲げている所を下から見れば、隠すべき部分も丸見えだ。
「ふふ…これ」
 恐らく、もとより隠す気もないのだろう。郁未はごく当たり前のように冷蔵庫から何かを取り出して葉子に示す。
「郁未…さん」
 がらっ。
 冷蔵庫のドアが閉まる。
「葉子さんが食べたくないっていうから、残っちゃった」
「は、はい」
「もったいないよね」
 郁未はにこにこしながら手に持った「それ」をしごくように撫でる。そして、葉子の頬をその先でつんつんとつついた。
「上のお口で食べるのがいやなら…」
 使い古された文句を、郁未はこの上なく嬉しそうに言う。
「こっちのお口で食べてね」
「………」
 Tシャツの裾から突っ込まれた小さめのニンジンに、葉子は言葉を失っていた。郁未の顔をうかがいつつも、何も言うことができない。不安なのは間違いないようだが、面と向かって嫌とは言えない。
「ほら、とっても美味しいよ」
 ずにゅ…
 ニンジンの先が、まず葉子の秘裂を割る。
「あ…」
 冷え切った固い感触が、粘膜に到達した。その先は葉子の入り口を求めて、妖しくうごめく。
 ぬちゅり。
「葉子さん? 物を食べるときには?」
「え…」
「あいさつ、あいさつ」
「あ、あ…い、いただきます」
「はい」
 ぬちゅぷっ…
「あ…ふぁっ…」
「ほーら…とっても美味しいでしょ?」
 郁未はうっすらと頬に汗を浮かべながら、葉子に笑みかける。
 ぬちゅぷ…ちゅぐっ。
「ああ…はああっ…」
 もう既に濡れていた葉子のヴァギナは、ニンジンを簡単に飲み込んでいった。正確に言えば、まだ乾いていないのだ。前に分泌した興奮の果汁が、まだたっぷりと残っていたのだ。
 冷え切ったニンジンの、段々太くなっていく形状が葉子を責める。最初の内は簡単に入ったが、奥に進めていく程に差し込むのが難しくなっていった。
 じゅちっ…ぐちぃっ…
「こっ…これが限界かな」
「はぅっ…うっ…」
 苦しさにも似た異物感を感じつつも、葉子は耐える。
「葉子さんはニンジン嫌いかもしれないけど、頑張って食べなきゃダメだよ」
「は…はい」
 無理矢理押し込まれなければ、自分の膣壁が収縮してニンジンをやわやわと締め付けるのが少しずつ快感になってくる。最初は冷たかったニンジンも、葉子の熱い愛液の中ですっかり熱を帯びてしまったようだ。
「わ、私はニンジン大好きだから」
 郁未は床に転がしておいたもう一本のニンジンを手にして、自分の秘部に躊躇無く埋め込んでいく。
 ちゅぷん。
「あ…あっ…」
 片手で秘裂を開き、もう一方の手でニンジンを押し込む。そして先端が入ると、瞳を閉じながら両方の手を使ってぐりぐりとニンジンを奥へと押し込んでいく。
「うっ…いっ、いいっ…わ、私、ニンジン大好き…すごく美味しいっ…!」
 ポニーテールにまとめた長い髪を揺さぶりながら、郁未は淫らに腰を揺らす。
 ぎじゅるっ。
「はぁっ…あ…はぁ」
 郁未は最後までニンジンを飲み込んでしまった。葉子の中に入っている物に比べれば多少小さく細長い形状のニンジンとは言え、かなり無茶をしているのは間違いない。
「わ、私、いただきますをするの忘れてた…」
 目を開くと、郁未はぎらぎらと欲望に光る目で葉子を見下ろし、ばたんと体をフローリングの上に崩れ落ちさせる。両手を前に出した土下座するような格好で、郁未はしばしはぁはぁと息を荒くした。
「よ、葉子さんのおマメ、いただきますっ」
「え…!」
 郁未は文字通り獣のような姿勢と勢いで、ニンジンの生えた葉子の秘部にむしゃぶりついていった。
 ぐにっ…ちゅぷ、ちゅぱっ、ちゅぱ…
「あっ…ああああっ…はああっ…!」
 突如訪れた強烈な快感に、葉子は目を半開きにしてあられもない声を漏らす。郁未と同じポニーテールにした髪の先がフローリングにつくほど頭を反らし、天井に向けてはっはっと熱い息を吐き出していた。
 ちゅぱっ…くりゅっ、くりゅくりゅ…
 はみ出たニンジンで口を動かしにくいはずなのに、郁未は長く伸ばした舌を使ってべろべろと葉子の突起をついばみ続ける。つんと高い郁未の鼻の頭には汗の珠がびっしりとついていた。
「んっ…んうううっ」
「くはぁ…あっ…ふああっ…」
 しかしそれも、郁未がムリヤリに顔を突起の近くまで突っ込もうとしたために汗なのか愛液なのか区別がつかなくなってしまった。もう郁未の顔は、どちらのものかわからない体液でぐしょぐしょだ。
 ぐりぐりぐりっ。
 郁未はたまらなくなったのか、空いている手で強烈に自分の突起をまさぐり始めた。赤く大きく肥大した突起は、常人に比べてもおとなしめの形状をしている葉子のものと比べると別の器官であるかのように大きい。郁未に四六時中激しい煩悩をもたらす中核のようなものだ。それを、最も自分の気持ちいい触り方を知っている郁未自身の人差し指が襲う。
「うっ…うう」
 ニンジンの少しいびつな刺激も合わさって、郁未は激しく昂ってしまった。
「ひっ…ああっ…郁未さんっ…も、もう…私は」
 葉子が長い脚をピンと突き出して、ぴくぴくと震え始める。
「う、うん…もう、私もイクから…葉子さんも一緒に」
「は…はいっ…」
 ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅ。
「くっ…ふぅっ…」
「あっ…あ」
 戦場にいるかのような、郁未の血走った表情。その悪魔的に熟練した性の技巧に、葉子と郁未自身は極限の快感を味あわされる。
「うっ…郁未さん」
「葉子さんっ」
 …ビクンッ! ビクビクンッ! ビク! ビク! ビクビクッ!
 二人は、不規則に突き進む稲妻に絡め取られるかのように、爆発的な絶頂を味わった。
「うっ…ううー」
「あ…あ…ああ」
 死に瀕したような声。二人の恍惚と苦悶が混ざり合ったような表情。そして二人の肢体は、同じものをくわえ込んで同じ感覚を共有している。
「ごっ…ごちそうさま」
「…ごちそう…さまでした…」
 二人は互いの瞳を舐め取るような見つめ合いを、ひゅくひゅくという体の痙攣が終わるまでずっと続けていた。



10/3
(8/7のつづき…というかアナザーというか)
 だが、晴香はそこで舌を止めてしまった。
「あ…あ…ど、どうして…」
「郁未ばっかり気持ちよくなっているんじゃ、ずるいわよ…」
 晴香は自分のスカートに手をかけると、私に見せつけるようにそれを脱いでいった。ショーツも一緒に。
 同い年の同性と、下半身だけを裸にして向き合っているというのは奇妙な気分だった。子供が悪気なく互いの性器を見比べているようなくすぐったい気分が生まれてくる。
 当然、自分でも腹が立つほどこましゃくれていた私の幼年時代はそんな経験を経ることなどなかった。自分の裸については異常なほど早くから興味を持っていた気もするが、他人のそれについて興味を持ったことなど小さい頃はなかった。二次性徴を経て性の快感を知ってから、他人の裸の興味を持つようになったのだ。
「今度は、私の番よ…」
 少しふらつきながら立ち上がった晴香に、私はひざまづいた。ちょうどさっきと身体の位置の高低が逆転する。
 こういう、かわいい女の子の裸と、敏感な部分にも興味を持っていたのは比較的早めの頃のような気がする。どこからそういう気持ちが生まれてきたのかはわからない。バイセクシャルというのは理屈ではなく、身体がそう求めるだけのことなのかもしれない。
 ぺちゅ…
「あ…」
 私は晴香の秘裂に唾液で濡れた舌を押しつけ、初めからぴちゃぴちゃと大きな水音を立てて舐めた。柔らかい舌先を使って晴香の性器の表面を撫で回し、段々と中に向かって舌を進めていく。イヤだとは全く思わない。むしろ、興奮する。
「郁未…」
 晴香の腰がほんのわずかだけ突き出され、鼻に恥丘がくっつけられるのがとても快感だった。晴香も愉(たの)しんでいる。私の舌で快感を感じて、もっと私の事を求めようとしている…
「う、うう…郁未…すごく上手…」
「ありがと」
 ほのかな潤いを帯びた粘膜を細部に至るまで味わいながら、私は晴香の太股を撫でたり内股を指先でつついたりした。味覚や触覚や、いろいろなものが合わさって晴香の恥ずかしさや快感を私に伝えてくる。
 まったく同じ器官を備えている同性として、私は晴香の快感に同調することが出来た。晴香がどうされているのかを考えることで、自分の性神経を鋭くしていくことができた。
「はっ……っ! あ…」
 そして、それ以上に晴香は性感を高めている。私を舐めている時に、今の私と同じようにずっと性感を昂(たかぶ)らせていたに違いない。私はこういう事に慣れているぶん冷静にしている事ができるが、晴香はそうはいかないようだった。
 晴香も、性感は十分に発達している。クリトリスはこりこりとしていて、舐めるだけでも充血しきっているのがわかるし、愛液も少しずつだがにじむ量が増えてきた。しかし、私がちょっと舐めるだけでひどい動揺を見せる辺りからすると、こういう事に慣れきっているという事はけしてないようだ。
「い……い…郁未…」
 私の名前を呼ぶ声も、呼びかけというより喘ぎ声の一部になってきているようだった。晴香の方から言い出した行為にも拘わらず、もう晴香は私の舌の虜のように腰をうごめかしている。晴香は申し分ないほどにエッチで申し分ないほどに無垢だった。
 それに合わせて、私はクリトリスを中心とした優しめの舐め方を維持する。包皮も剥かずに、おだやかな刺激を焦らずに続ける。
「っ……あうっ…」
 段々と晴香は芯まで震えるような深い呼吸を吐き出し始めた。私の方は抑え気味にしているつもりでも、晴香はそうはいかないらしい。
 私は置き去りにされた自分の性器を触ってしまいたい欲望にも駆られたが、今は晴香に尽くす快感に身を任せることにした。私にしてはびっくりするほど禁欲的だ。
「はぁぁ…郁未ぃ…」
 私は、晴香の持っている純粋な女の子の可愛い性を感じてみたくなったのかもしれない。声や肌の感触や、私も持っているはずなのにどこか汚れて感じられるもの。それを晴香から純粋な形で感じてしまいたくなったのかもしれない。
 じゅる、じゅる…
「はぁっ! ああっ…」
 晴香の匂いに満たされた愛液を、晴香の高い喘ぎを誘うように強く吸う。顔がべとべとになっても気にならない。私はむしろ積極的に顔全体をこすりつけるようにして、晴香の身体が熱くなっている事を感じた。
 がしっ、と晴香の手が乱暴に私の髪をつかむ。そして逃れようとしているように、あるいは私の顔をより押しつけているかのように、定まらない動きをした。私は晴香が腰を引いた時はそれを追い、腰を押しつけた時は情熱的なキスをしているかのように二つの唇を強く押しつけ合った。
「い、郁未…私…もうだめみたい…」
 しっかり者の晴香とは思えないほど、弱々しくかすれた甘い声だ。私はずきんと脳の中がうずいたような気がした。
「い、郁未っ…好きっ…郁未…」
 ずき、ずき…
 脳の中に生まれた痛いほどの官能を感じながら、私は夢中になって舌を繰った。血瑠のように不自然に膨れ上がった快感は、不安感も生んだがそれ以上に私を興奮させる。
「イっ…イク…イッちゃう…だめ…だめぇっ!」
 じゅぅ…
「っ…くぅっ…ううううっ…」
 晴香の中から噴き出すように愛液が飛ぶ。晴香が全身を小刻みに経験させる。私は晴香に震いつきたくなるような衝動と脳の中で脈動する疼きを感じながら、舌をちゅくちゅくと動かして晴香の愛液を心ゆくまで味わう…心ゆくまで、味わう…

 ヴィーッ…!ヴィーッ…!
「…!」
「…精神殻に…か、陥没発生!いや…もう崩壊して…マイナス値100を突破しつつあります…!」
「な、なんとか阻止しろ!時間稼ぎだけ…い、いやムダかっ!?至急コントロール体を…」
 バ、バチ…
「うああっ…」
「に、逃げるか…?!」
 バチ…バチチチ…
『だ、だめだぁっ…!!』



9/15
 ぺろ。ぺろ…
「んあぅっ」
 郁未がまぶたを閉じて口を大きく開く。
 ちゅ…ぺろっ、れろっ…
「………!あ…あ…そ、そこ…」
 何かを求めるような、甘く切ない声。ふるふると顔を左右に振りながら、郁未は身体を震わせていた。
「気持ちいいのね?」
「き、気持ちいい」
 自分の上に乗った少女の声に、郁未は素直にうなずいていた。
 ちゅっ、ちゅっ、ちゅぅぅっ…
「あ、あっ!も、もっと…もっと、してっ…」
「こうされることが何よりの望みだったんでしょう?」
「………」
 郁未はかくかくと頭を縦に振る。
「それ以上に望む事もあるんじゃないの?」
「………」
 郁未が薄く目を開く。
 目の前には、郁未の上に乗っている少女のヒップがあった。何も身につけていない。少女のクレヴァスも、ごくごく近くにある。
「ほら」
 促されるかのように、少女は腰を落としてきた。もう少女の恥ずかしい部分は、郁未の口から数センチしか離れていない位置になっている。そこから少女の香りがした。
「ほら…」
 ちゅっ。ぺろぺろぺろ…
「んっ!んんーっ!」
 声と共に、再び攻撃が始まる。郁未は反射的に唇を押しつけていた。
「んっ、んっ、んっ」
 闇雲に唇を動かし、クレヴァスを割るように舌を出して中の粘膜を無茶苦茶に舐め上げる。しばらく経つと、郁未の舌は少女のかなり大きめのクリトリスに向かっていた。じゅるっ、じゅるっと唾液をたっぷりまぶすように舐め上げる。弱ってきたところで、ぐりっと強く転がして包皮をくるりと剥いてしまう。
「………」
 郁未は舌をべろんと出し、はぁはぁと息を荒くしながら少女のクリトリスを観察した。固く勃起して紅真珠色の部分が丸見えの、少女にとって最も隠すべき部分だ。そこを刺激されれば、どんなに清楚な少女であっても牝としての本能を目覚めさせられてしまうのだから…
 ぺろぺろっ。
 郁未の舌が、愛おしそうに少女のクリトリスを繰る。
「…くっ」
 どこか悔しそうな声がした瞬間、郁未の舌先に酸味の強い液体の味が触れた。
「んむぅ…んふぅっ」
 じゅるじゅる…じゅるっ。
 郁未は舌を少女のヴァギナに当てて、吐き出された少女のエキスを思う存分に舐めて味わった。さらりとした感触で、量が多い。一度あふれ出すと全く止まらないようで、郁未の口元はすぐべとべとになっていった。それでも郁未は夢中になって少女の興奮の証拠を味わっていく。
「ココ、好きなのよね」
「んん…」
 郁未は舌を動かし続けた。
「自分で舐めたくても、どうしても舌が届かなくて…仕方なく、指ですくってぺろぺろ舐めていたのよね?」
 じゅるじゅるっ。
 何も言わず、郁未は少女のヴァギナを吸い立てる。
「美味しいでしょう?あなたの愛液は」
「お…おいしい」
 郁未は舌を離し、理性を失った声でつぶやいた。
「思う存分味わいなさい、あなたの愛液と、あなたの舌を」
 ちゅっ。ぐりゅっ。ぐりゅぐりゅ。
「うああ…あっ、あっ」
 少女は再び舌を動かし始めた。郁未のクリトリスはもうとっくに露出させられて、少女の巧みな舌の攻撃にさらされている。身体の奥からはしたなくあふれ出す液体をとどめる事など、不可能だった。失禁したかのように自分の中から液体を漏らしているのを感じながら、郁未は自分も舌を動かし始める。
「ん…んんぅ!」
 郁未は口をぴたっとクレヴァスにつけて、好きなだけ少女の愛液を舐め、味わい、飲み干した。時折クリトリスも舌先に絡めて、そのくりくりと固い感触を楽しむ。郁未は、仮に一方的に少女へ奉仕をしている体勢だったとしても、自分がそうされたらという妄想だけで濡らしてしまっただろう。ましてや今は実際に少女の舌戯が郁未のクリトリスにも向いているのである。郁未の中の淫乱な本性には燃え盛る火がついてしまっていた。
 そう、少女は郁未の舌に連動させて郁未を責めているようだった。郁未がクリトリスを舐めれば少女もクリトリスを、ヴァギナを舐めればヴァギナを。それは取りも直さず、郁未が自分の性器を舐めている行為に他ならなかった。
「う…あ…あっ」
「イクのね」
 …くりゅっ、くりゅっ。
「ほら…ほら、イキなさい」
(だめっ…)
「我慢できると思っているの?」
(でもっ…)
 郁未の腰がピクッピクッと速いペースで痙攣し始める。郁未は少しでも少女の行為を阻害しようと舌を激しく動かしたが、少女はそれに連動して郁未のクリトリスを強烈に責め立てた。
(イ…イク…)
「ほら…ほらっ!」
「あ…あ…イクっ!私…イクっ!」
 ついに郁未が口を離し、絶叫する。
 全て見抜かれているというのは分かっていたのだ。郁未の抵抗は、爆発寸前の性感を限界まで押さえ込んで、狂おしい快感を感じたかっただけに他ならない。
「ほんと、救いがないほどいやらしいのね」
 しかし、それもやはり見抜かれているのだ。それを知っていて、郁未を言葉でも責めたのだ。
「う…ああっ、イクぅぅ…っ」
 少女の言葉を聞いた瞬間、郁未の性感のボルテージが突き抜ける。
 ビクビクビクッ!ビク…ビクン!ビクビク…
 郁未は若鮎のように激しく身体を躍らせて悶えた。背中をビクンビクンと反らせて、少女の顔に性器を何度も押しつける。それを、絶頂の波が続く間延々と続ける。
「はぁっ…!はぁっ…はあああっ…!」
 息も絶え絶えになりながら、それでも郁未は最高の快感を逃すまいと少女の口の刺激を自らの動きによって感じていた。
 ヒク…!ヒク…!
 そして絶頂が収まってきた辺りで、郁未の意識はブラックアウトしていった…

「………」
 ただ無言で見つめ合う。
 郁未も少女も、きちんと服に身を包んでいた。一瞬前までの痴態の様子など、カケラも感じさせない。身体も興奮している様子はない。
「………」
「なにか言ってよ…」
「………」
「なにか言ってってば…」
 郁未の震えた声。
「………」
 蔑んだ眼。
 痛い。
「なんとか言ってよおぉっ!」
「………」
「…今したことをよく反芻してみることね」
 それだけを言い残し、郁未と同じ姿をした少女は消えた。


8/21
 …ずぶ!
「ひっ…」
 由依の身体がのけぞる。
「こ…コイツは狭いっ!」
「い、痛いですっ!抜いてくださいぃっ…!」
 泣きじゃくる。それもそのはず、由依の性器は挿入によって無理矢理に押し広げられているのだ。気遣いも配慮もなく、濡れていない中にいきなりぶち込んだ。処女ではないとはいえ、まだ処女の状態とほとんど変わっていない由依にとっては破瓜の激痛の再現に他ならない。
「だが、そのぶん締め付けもきついっ…」
 ずぶっ…!ずぶぅっ…!
「いっ、いやぁっ…いたっ…いたいっ!」
「も、もう少し手加減してあげなさいよっ!」
 独りよがりな抽送と由依の苦悶の声に、思わず郁未は口を出す。
「ふん…お前もまだ立場がわかってない…Aクラスのぬるま湯待遇に慣れきってやがるな?」
「ぬるま…」
 下のクラスに比べればマシと言っても、そこまで言われるほどの楽をしているわけではない。郁未は一瞬そちらの怒りに意識を奪われそうになるが、涙をぼろぼろ流している由依の顔がそれを押しとどめた。
「やりようってもんが…あるでしょっ」
「いいか?お前達は宛われた棟と別の棟にいたんだぞ?本来なら、その場で撃たれていても文句は言えないところだ」
「っ………」
 郁未はぐっと拳を握る。
「これは、特別のお目こぼしで助けてやろうっていう俺の慈悲なんだぜ?俺が血も涙もない悪党みたいに言われたら困る。な? そうだよなぁっ?」
 ずぶずぶっ!
 由依の顔を見ながら高槻はそう言って、一際強く由依の奥底を衝いた。
「ぎっ…ううっ…う…痛い…」
「ゆ、由依はまだ慣れていないんだからっ…少しは…」
 郁未はよっぽど怒りをぶちまけてしまおうかと思ったが、今はそれどころではない。由依の代わりに自分が犯される危険性も感じたが、そのおぞましい状況も仕方ないと思えた。由依達はこれまでこういう陵辱に何度も耐えてきたのだし、自分は…
「じゃあ、お前が何とかしてやれよ」
「う…」
 想像通りの言葉が返ってきた。
 郁未はぐっと奥歯を噛みしめながら、自分の服のボタンに手を伸ばす。
「馬鹿。そうじゃない。俺はこいつを犯すと決めたんだ。今更変えられるか。それに、お前にはまだ色々やってもらわなくちゃならないこともあるからな」
「色々…?」
「っひくっ…えぐぅっ…」
 動きを止めた高槻。由依の嗚咽(おえつ)が、小さく聞こえてくる。
「それは秘密だ。それより、お前が何とかしないと、ほらほらほら」
「あっ!ああっ…!あぐぅっ!」
 高槻が馬鹿にしたようなひょいひょいという腰の動きを見せる。それだけでも、膣壁が残酷にこすられて由依は激痛を感じていた。
「なっ…何をしろと言うのっ…」
「鈍い奴だな。こいつが痛くて可哀想だって言うんなら、お前が気持ちよくしてやれって言ってるんだ」
「…!?」
「………」
 由依は放心した、信じられないという瞳で高槻の事を呆然と見ていた。郁未は硬直し、また奥歯をぎゅっと噛みしめる。
「…わかったわ」
「ほー、素直だな。こいつに気でもあったのか?」
 郁未は何も言わず、結合している二人の横に回って腰を落とした。
「い、いくみさんっ…?」
 由依は混乱しているようだった。無理もない。郁未も混乱している事には変わりなかったが、ここで躊躇すればまた由依が苦しむことになるのだ。それよりは、自分の出来ることを少しでもした方が救いになる。
 ちゅぱ…
 郁未は自分の手の指を、よく唾液で濡らしていった。そして、その指を結合部分の近くに添える。
「そうだよな。そこだなっ…」
「…!」
 郁未が触れた瞬間、由依がぴくんと震えた。
 唾液の滑りにまかせて、軽いタッチでそこを何度かこする。
「え……え…?」
 由依が戸惑いの声を上げる。郁未が性器に触っているという事もその原因のひとつだったろう。だが最大の原因は、自分の身体の中に未知の感覚が沸き上がっていることにあった。これまで痛みだけに支配されていただけに、その新しい感覚は極めて大きな存在感を以て由依に感じられた。
「うまいっ…オナニーの要領だな…女同士だってのに、スムーズにしてやがるっ…」
 郁未は無心に指を動かし続けた。それでも、緩急をつけたり探るような動きを加えたりのバリエーションが自然に出てきてしまう。もちろん、基本は優しい動きなので由依に苦痛を与えてしまうこともない。
「はぁ…はぁ…」
 無意識の内に、郁未の息は荒くなり始めていた。いつの間にか行為に熱中してしまっていたのだ。郁未の指先は既に小さいながらも勃起のしこりを捉えていて、そこをなぶるようにリズミカルに刺激している。勢いも、最初に比べれば格段に増していたが由依は苦痛を感じている様子は無かった。
 今の由依の顔には…数々の?が浮かんでいる。身に起こっている変化を理解できていないのだ。
 しかし、そんな由依の姿を見ているともっと反応を引き出してみたいという願望が出てくる。特に深い考えはない、ただ無反応だから反応させてみたいというシンプルきわまりない感情だ。郁未が我に返ればそんな不条理な行動は打ち消されたのだろうが、郁未はもはやこの愛撫に集中しきってしまって、他のことに対する意識がまるで薄れてしまっていた。天才タイプの人間にありがちな事ではあるが、由依の方はたまったものではない。
「…んんんっ…?」
「濡れた…こんなガキが、見事に濡れやがった」
 高槻は感動の声を上げる。
 ちゅくちゅく。
「え…え…え…!?」
 長らく静止していた高槻が、腰を軽く前後に振った。そこで生まれた水音と、苦痛の少なさに由依は驚かずにはいられなかった。起こっている事態が、全然わからなかったのだ。
「まだ…まだあふれてくるっ…!」
 ちゅくっ、ちゅくっ…ぐちゅっ。
「な、なんでっ…こんなの…郁未さん?ど、どうなっているんですかぁっ?」
「感じているんだっ…今お前は目一杯セックスの快感を感じているんだっ…!」
「ち、違います!そんなことありませんっ!」
 由依はいやいやと顔を振る。
「こんなに濡れるのは淫乱だけだっ…そうかっ、お前は見かけによらず淫乱だったのかっ…」
「い、いんら…?」
「スケベだっ!セックスのことばかり考えている、性欲のカタマリだった…!中学生みたいな顔して…恥ずかしいと思わないのかっ!?」
「う、嘘ですっ…」
「このぐちゅぐちゅした音が聞こえないのかっ!?お前のあそこが嬉しがって出している、いやらしい涎(よだれ)の音だっ!こうだっ!こうだっ!」
 ぐちゅっ! ぐちゅぷっ!
「い、いやぁ…」
「ぬめぬめ締め付けてくる…俺のこれがそんなにいいかっ!?クリトリスをいじられれば、レイプされていても感じるのかっ!?いいかっ!?お前は今、身も知りもしない男に犯されているんだぞっ!?そしてこのままなら、中に精液を出されてしまうんだぞっ!?」
「ひ…やめてくださいぃっ…」
「中で出して欲しくなかったら言えっ!私は犯されて感じている変態ですっ!私の中に高槻様の精液をたっぷり出してください、となっ!!」
「そ、そんなのっ…」
「時間がないぞっ!お前が締め付けるせいで、俺はもう限界だっ!」
「で、でもっ…」
 由依は言葉に詰まる。言っても、その後でどういう展開になるのかは明白だ。しかし、言わなければ…
「馬鹿だっ!お前はどうしようもない馬鹿だっ!」
 どくんっ!
「ああっ!」
 どろどろした液体が放出された感覚。由依は絶望を浮かべた。
 …きゅっ。
「うぁッ!?」
 どくんっ!
 だが、その瞬間、しばらくの間クリトリスの表面を撫でていただけの郁未が強くクリトリスをつまむ。
 どくんっ、どくんっ!
 きゅっ。きゅぅっ。
「ひ、あ…ああっ…あっ」
 身体の奥に叩きつけられる感覚と、絞り上げられるような快感。
 きゅっ。
 もう一度つままれた所で、由依はぐうっと身を縮めた。そして、ピクピクと身体をひくつかせてからぐったりとなる。
「コイツ…イキやがった…」
 高槻は誰かに言い聞かせるように言う。
「そして、こいつはイカせやがった…女ってやつぁ…これだ」
「………」
 郁未は頬をぽうっと火照らせて、未だわずかにひくつきを見せている由依の身体に目を落としていた。もうすぐ理性が戻ってくるだろう。そうすれば、今自分のした事を認識せざるをえない。
「俺は…もう…行くっ…」
 ごぷっ…
 ペニスが引き抜かれると、大量の精液と愛液が混ざり合った液体が流れ出た。
 由依…由依…由依…由依…
 郁未の思考を、単一の感情が満たしつつあった。危険な徴候だ。


7/24
 ごそごそっ…と、制服の生地が擦れ合う音が立つ。静やかに着衣を取り払う時や姿勢をゆっくりと変える時のような微細な音ではない。もっと乱暴な、どちらかと言えば生活臭のようなものが感じられる音だ。
 一通りその音が立つと、今度は静かになった。しかし、よく耳を澄ませれば、かすかな衣擦れの音が聞こえてくるのが分かる。と言っても、その響きは静やかでも微細でもない音だった。音のデシベルだけは小さかったが、今し方の生活臭が感じられる音に近い。しゅるしゅるという、滑らかで薄い生地の上を規則正しくこするような音だった。
「………」
 郁未は正面を見つめる。
 そこには、制服姿のままスカートの下へ手を突っ込んでいる髪の長い少女…自分の鏡像があった。
 鏡に映った姿を見ているだけでは、スカートの下に入れられた手が何をしているのかはわからない。そのままだと、全く動いていないようにも見えた。
 表情はどこか冷たく正面を見据えているし、きりっと結ばれた口元は何か真剣に物事に取り組んでいるような雰囲気を漂わせている。それに加えて非の打ち所のないほどに整った顔立ちが、彼女にこの上ない自信を与えているように見えた。
 でも、違う。
 郁未の左手が動いて、スカートに手をかけた。同時に郁未の視線が上に動いていく。郁未の視界の中には、鏡に映る自分の胸から上の部分しか入ってこなくなる。
 そして郁未が自分のスカートを下げる。すると、鏡の中の郁未がにやり、と笑みを浮かべた。
 続けて郁未が右手の指をショーツの下から取り出すと、じわりとショーツに舟形のシミが広がる。さらにショーツを両の手でゆっくりと下ろしていくと、秘裂の外側にもぬめった液体をあふれさせている郁未の秘裂が明らかになった。
 鏡の中の郁未がさらに笑みを深くする。もちろん、鏡の中の郁未は胸より上しか映っていないのだから、鏡中の郁未の下半身がどうなっているのかは見えない。だから、郁未は一方的に自分の痴態を見られていることになる。
 ショーツとスカートを下げたまま、郁未の指は秘裂の中に入っていった。鏡の中の郁未は表情ひとつ変えなかったが、郁未の身体には痺れるような快感が走る。
 くちゅくちゅというはっきりした水音を立てつつ、郁未は秘部の至る所を撫でていった。やがて左の指も加わり、密壷の中への挿入が企てられる。
 ぬぷり、とした感触と共に郁未は抵抗なく自分の指を受け入れていった。さらに中指までを合わせて挿入してから、右手はクリトリスを集中的に撫で立て始める。
 速いピッチのクリトリス責めと、ヴァギナの中のぬちっ…ぬちっ…というゆっくりとした愛撫。郁未は既にヴァギナの中で最も良い部分を探り当てているようだった。腰が砕けてしまいそうになるのを、必死で抑えている。
「………」
 鏡の郁未は多少頬を火照らせているようには見えたが、基本的には冷笑するような表情を崩していない。その端正な顔の上に浮かんだ表情を見つめているだけで、郁未の身体の奥からは止めどもなく熱い液体が溢れてきた。
「はぁっ」
 郁未が、目をぎゅっと閉じて熱い吐息を漏らす。そして、身体をゆっくりと折って床に腰を下ろし、そのまま身体をフローリングに横たえた。
「あっ…」
 自ら大きく開脚し、ピンと伸ばす。左の手も同様にばたんと床に投げて、やはりピンと伸ばす。すると、その三箇所は動かなくなってしまった。暗示的な拘束とも言える。
 くちゅくちゅ…くちゅ…
「んっ…だめっ…郁未さん…はぁっ」
 鏡の中から抜け出た少女を夢想しながら、郁未は必死で指を繰る。自分で指を動かしているという感覚はなかった。あくまで、「郁未」が自分を責めているのだ。
 自分の身体にのしかかってくる少女と肌をぴったり合わせる感触すら幻覚しつつ、郁未はあっという間に高ぶっていく。唇を自分でしきりに舐めるのが、キスの代替だった。
「す、好きっ…郁未さん…大好きっ…抱いてっ…抱きしめてっ…」
 ぎゅっ。
 郁未は左の手で自分の身体をきつく抱きしめ、両の脚を閉じて激しくすり合わせた。拘束の幻覚に反しているが、既にそんな事は気にならない。もはや郁未の身体はクライマックスを迎えようとしていた。
「いっ、郁未さーーんっ!」
 ビクっ!
「は、ああっ、郁未さんっ、郁未さんっ、郁未さんっ!」
 ビクっ、ビクっ、ビクっっ!
 自分の身体を抱きしめて痙攣しながら、フローリングの上をごろごろと転がり回る。そして、最後にはぐちゅぐちゅになった生の秘裂を思い切りフローリングの上に押しつけ始めた。
「んーっ、んふぅ、んふぅ…」
 ぬちゅっ、ぬちゅっ…
 胸が押しつぶされる感覚も合わせて味わいながら、郁未は絶頂の余韻に浸る。フローリングの床がべたべたになってしまっていた。
 でも、いいのだ。汚れたショーツを洗濯するのも、ひとりには広すぎるリビングのべたべたを掃除するのも自分。それを見ていたのも自分だし、気持ちよくなって濡れたのも自分なのだから。
 コトン。
 その時、玄関のドアの郵便受けの中に郵便物が入れられる音がした。